萌咲の恋心③
───「ごめんな、萌咲」
……え?今、萌咲って……?
「……しょーくん……?」
え、待ってこれってまさか……?
七瀬ちゃんがそっと離れる。
そして自分の髪の毛に手を添える。
そのまま勢いよく引っ張った。
「なな……」
少し茶色かかった髪の毛に、黒くて綺麗な瞳。
「これが佐藤七瀬の本当の姿だよ、萌咲。」
そう、そこにはしょーくんがいた。
「しょーくん……?しょーくんなの?本物……?」
「ん、本物」
「……しょーくんっ……!!」
思いっきり抱きついた。
「ごめんな、萌咲。ずっと黙ってて。」
「寂しかったよぉ……しょーくん……」
しょーくんの手が萌咲の頬に触れる。
優しく包み込むようにキスをされる。
「ん…」
舌が絡み合って、とろけそう。
しょーくんの不安、寂しさ、苦しさが伝わってくる。
「しょーくん……」
「俺さ、希夏が死んでから"俺"として人に関わるのが怖かったんだ。だから"七瀬"という壁を作った。」
「……辛かったよね、1人で頑張ってたんだね……」
「だから萌咲にいつも飛びついてたんじゃん。」
「え!?」
「寂しかったから、つい(・ω・`*)」
「……しょーくんんんんん!」
しょーくんを押し倒して激しくキスをする。
しょーくんも負けじとキスをしてくれる。
「萌咲、俺ねモデルやめる。」
「え!?」
「川上さんといつも話してたんだ。辞めるタイミング逃すと大変だ、って。」
「……うん。」
「希夏のことがあって仕事減ってきたじゃん。だから川上さんに言われてるんだ。今がチャンスだ、って。」
「でも、それ、川上さんがマネージャーのお仕事出来なくなるよ??」
「俺もソレ言ったよ。そしたら、『マネージャーの仕事はもうしない。今度はマネージャー達のまとめ役をする』って。」
「……すごいね。」
「萌咲は続けるの?」
「んー、七瀬ちゃんが居なくなるならやめようかな〜」
「今がチャンスだぜ」
「しょーくんと普通の学校生活送りたい!」
「俺学校辞めてるんでむりっす( 'ω')」
「じゃあ七瀬ちゃんとして!」
「そうと決まれば事務所へgo!」
七瀬ちゃんは、しょーくんだった。
しょーくんは、七瀬ちゃんだった。
こんなにも近くにいたのに気が付かなかった。




