希夏の呼び出し③
俺と希夏が再び会ったのは病院の霊安室だった。
希夏はもう冷たく硬くなっていた。
目の前で希夏のご両親が泣いている。
萌咲も当然来ている。
「しょーくん………」
「……………。」
「翔太くん、高校入っても希夏と仲良くしてくれていたのね……ありがとう……」
希夏のお母さんはボロボロになって泣いていた。
「いや、でも俺……」
言葉が出てこない。何をいえばいいんだろう。
「翔太くん、最後の最後まで仲良くしてくれてありがとう……」
おばさんはその場で座り込んだ。
「小篠くん、君は自分を責めることはないよ。君は悪くないからね。」
おじさんも軽く涙を流していた。
萌咲も、凄く泣いていた。
「小篠くん!」
川上さんと希夏のマネージャーも来てくれた。
「川上さん……」
「こちらノノカさんのマネージャーの星野さん」
「ノノカのマネージャーの星野です。この度はご愁傷さまです。」
「希夏をありがとうございました。」
「いえいえ…。何でも刺された、とか。」
セフレさんの顔を思い出す。
俺は走って病室へ向かった。
「希夏の……元カレさん……」
セフレさんも希夏を刺した後自殺をはかろうとしていたらしい。
でも、そこまで行かず今は入院している。
退院したら逮捕されるらしい。
「お前何で……俺はちゃんと約束守っただろ!!」
胸倉を掴み、怒鳴りつけた。
「希夏が……僕の方向いてくれなかった。君の方ばかり見ていて……僕は……」
「だからって……殺すことないだろ……あいつは……モデルとして頑張ってたのに……」
どんどん涙が溢れてくる。
「お前何でそんなこと出来るんだよ。希夏が死んで悲しくないのかよ!」
「だから一緒に死のうと思ったのさ。なのに僕は……助かって……」
「……………。」
「あの……」
「……………」
「……すいません……」
俺は無言でその部屋から出ていった。
そしてこの日から俺は”小篠翔太”という名前を捨てた。




