悪役令嬢を押し付けられたので、言い返してはいけませんか?
「リシャーナ、婚約を破棄してくれ。もう俺は君に耐えられない。」
そうおっしゃるのは、私の婚約者、
コーリス・アクタル
コーリス様は男爵ながらも、凛々しいお顔、紳士的な性格なので、令嬢達の噂では持ちきりになっておりました。
そんな中、コーリス様の婚約者に選ばれたのが私、
リシャーナ・ユリアルト
たった今、婚約破棄を言い渡された子爵令嬢です。
何故婚約を破棄を言い渡されたのか・・・
訳を聞いておりますと、私がある令嬢をいじめていたと、身に覚えのない事をおっしゃるのです。
「君はラキラを今までいじめてきただろう!?全く・・君には失望したよ・・・」
「っ!リシャーナ様を、責めるのは、止めて、下さいませっ!・・・私が、悪いので、ございます。リシャーナ様の、婚約者だと、知っていながら、コーリス様に近づいたからっ!」
「ラキラ・・・」
そして二人は見つめ合い・・・
・・・何だよこの茶番劇は
おっと、失礼致しました。つい素が出てしまいまして・・・
イチャイチャするのは他の所でやってほしいものです。
ラキラと言うのは、私と同じく子爵令嬢の、
ラキラ・ヒサーノラ
私をいじめた令嬢です。
彼女はコーリス様の事をお慕いしていらっしゃったようで・・・
全く、呆れますよね?
それなら別の方法でコーリス様にアプローチすれば良いのに・・・。
・・・黙ってても何なので、私がいじめた数々の事を聞いてみましょう。
「私がいじめた・・・と、言うのは?」
「とぼけるな!絵が下手だとか、ラキラのドレスをビリビリに破っただとか、ベッドの所にあった手紙を見れば、死ねと書いてあったりだとか・・・
他にも色々出てきているんだぞ!」
「はっ、それ全部お前の隣に居るラキラが私にやったことの数々じゃねぇか。」
「なんだと!?」
あらら、心の中で思ったことが声に出てきてしまいました。
こうなったら、言い返すしかなさそうですね?
「貴様っ・・・ー!」
「だいたい、私がその女にいじめたという証拠がどこにあるのですか?」
「そんなの、ラキラの「証言だけとは言いませんよね?」」
・・・当たりですか。
全く、呆れますね。このことを思ったの二回目ですよ・・・?
こっちはちゃんとした証拠があると言うのに・・・
「っ!だが!お父様にこの事を話て、婚約は破棄させて貰ったからな!
寄りを戻してと嘆いてももう遅い!俺はラキラと結婚するんだ!」
「コーリス様・・・」
そして二人は私の前で抱きしめあった。
ラキラは私の事をチラッと見ると、口元をニヤッとさせて笑った。
・・・全然ダメージにならないんですけど
私はコーリス様の事恋愛的なキュンキュンな感情、これっぽっちも持っておりませんし・・・
まあ、そんな事よりも。
どうして私達三人以外に人がいるのかしら?
コーリス(もう呼び捨て)の両親、私の両親、野次馬・・・そして私のクラスの皆まで・・・
「俺は証言がラキラだけとは言っていないぞ。」
「!」
「ここにいるクラスの皆も証言しているんだ!さっさととぼけるのは止めたらどうだ!」
・・・これはちょっとピンチですね。
だって私はクラスの皆にいじめられているのですから。
だから私、友達が一人もいませんの。
何でかしら、ね?本当に・・・
私は涙を必死にこらえ、コーリス、ラキラ、クラスの皆を真っ直ぐ見た。
・・・これで、ラストフィナーレ。
私はスッと、服のポケットの中から証拠を出した。
「?何だそのペンは」
「これはペン型レコーダ。これに録音されているもの流してみましょうか?皆の前で」
ポチッ
私は再生ボタンを押した。
『・・・あなた、ウザいのよ』
最初に聞こえてきたのはラキラの声だ。
チラッとラキラを見ると、ラキラの顔が青ざめている。
私はラキラがやっていたのと同じように、口元をニヤッとさせて笑ってやった。
『ここにいる皆、あなたの事嫌いなのよ。ねえ?そうよね?』
ラキラがそう言うと、次々に聞こえる私の悪口。クスクス笑い声も聞こえる。
誰も、これを止める気は無い。むしろ参加している。
『わかったでしょ?だから、早く消えてくれない?私達の目障りなのよーーー』
ザーッザーッ
ここでテープが途絶えた。
クスクス笑い声が聞こえていたこの場所は、今、シーンと静まり返っている。
驚いていたのは、コーリス、コーリスの両親、私の両親、野次馬だけだった。
この沈黙を破ったのは・・・
「・・・謝って下さい。皆さん。」
え?
そう低い声で言ったのは、私の従者、テオだった。
だが、テオの服がいつもと違う・・・
「だ、ジ、ジオルド王子!?」
そう声をあげたのはラキラ。
え?第二王子?
「何故第二王子がここに!?」
「リシャーナ、今まで黙っていてすみません、私はこの国の第二王子なんです。」
いやいや、見た目で分かりますけども!
「・・・何故、テオ・・・第二王子様が私の従者に?」
王子は顔を赤くしながらポツリと答えてくれました。
「ジ、ジオルドでいいですよ?あとそれは・・・あなたを愛していたからですよ」
「え?」
「本当はプロポーズしようと思ってたんです。けれど君には既に婚約者がいた。」
「だから、私の従者に、と・・・?」
「ええ、すみませんでした。・・・ですがもうリシャーナには婚約者がいない、ので・・・」
そして王子は一息吸って私を真剣な眼差しで見て、こうおっしゃったのです。
「リシャーナ、私と結婚して下さいますか?私は必ずあなたを幸せにしてみせます。」
私は涙がポロポロと溢れ出してきました。
ああ、きっと私はテオ、ジオルド様を愛していたのだと、それと同時に嬉しい時にも涙はでるのだと心から思いました。
「ええ、はい。勿論喜んで」
ジオルド様はパアっと笑顔になり、私を抱きしめて下さいました。
そして、ラキラ達の方に向き直ると、
「さぁ、リシャーナに謝って下さい。謝らなければ・・・どうなるか分かりますよね?」
ラキラ「すっ、すみませんでした!」
クラスの皆「本当にすみませんでした!」
さらにジオルド様は、笑顔(目が笑ってない笑顔)でラキラ達にこうおっしゃいました。
「ああ、そうそう、あなた達は国から追放しましたから、ここを出て行って貰いますよ?
出て行く用意をなさってくださいね?」
ラキラ達の顔が更に青ざめていくのが分かった。
「ではリシャーナ、行きましょうか?」
「まっ、待て!リシャーナ、俺のことを愛しているんじゃないのか!?」
今まで呆然と成り行きを見ていたコーリス様が声をあげていった。
私は歩みかけていた足をピタリと止め、コーリスに
向き直り、こう告げました。
「あなたにこれっぽちも感情を抱いた事は一度も御座いません。
私はジオルド様をお慕いしているのです。」
そう言い、ジオルド様と私は彼らに背を向け、出口へと向かい始めた。
ーーこれから幸せな未来を掴みにーー
~fin~
ここまで読んで下さった方、ありがとうございました!m(_ _)m