テンテテレンテテン
夕闇の森 安全地帯 8.20 AM10:38
通常、VRMMOに限らずRPGというものは一人でやるものではなく、役割分担をしなくてはクリア出来ない仕様になっていることが多く、MMOだとそれが顕著に出てくる。
まあ、プレイヤー側のレベルが高いと話は別だが。
さらにVRMMOになると自分をコントローラを介すのではなく、自分の体を動かすように操作しなくてはいけないので個人の現実での資質や経験等が動きに直結するため、どうしても得意不得意が出てしまう。
そこでその差を埋めるためにパーティーが、ボス戦だとレイドが組まれる。
敵の攻撃を身を挺して味方を守り抜く壁役。
相手を翻弄し、着実にダメージを与えていく攻撃役。
気づかれず獲物を一撃で殺す狙撃手。
物理で貫けない装甲を壊す魔法使い。
味方を癒し、戦闘持続時間を高める回復役。
トラップやダンジョン内の地形、敵の居場所を把握し危険を未然に防ぐ斥候。
これに俺みたいに自由に動く遊撃もいるのだが、基本的にはこのように分かれることが多い。
今回のボス戦では200人位からレイドの最大パーティー数9組、つまりパーティー最大人数の8人×9で72人まで絞られたらしい。
俺は推薦多数で、んなもんやってたことすら初耳だったが。
まあ、そんなことはどうでもいいので、どこぞの赤い石を嵌めてある涼しげな目をした仮面を使ってほぼ無敵化した生物を殺すかのようにどこかの活火山の火口に戦闘機で落としておくとして、今何をやっているのかと言うと、
「これより、第一次『レオンウルフ』の討伐を開始する!」
戦闘前のリーダーたちの演説タイムである。
「まずは、ボス情報におさらいからだ。
名前にあるとおりに姿形は狼で、大きさは3メートル以上あり普通のモンスターより遥かに大きい。
これで動きが遅かったらただの的だったんだが、狼のイメージどおりに速い。
だが、俺たちが動きに着いてこれるぐらいであることは斥候が確認済だ。
技は引っかきなどの単純なものばかりだが、魔法も少し使ってくる上、一撃の威力はかなり高いのでHPの管理を怠らないで、5割切ったらすぐに下がれ。
後、ボスのHPが5割と2割を切ったらパターンが変わる可能性も考慮して動いてくれ」
今、演説しているのはジンバ。
リアルの友人の一人だ。
イケメンよりの顔なんだが、何故か一向にモテない。
アイツより顔の良い奴らは......近場にはいないはずだ、うん。
性格もなかなかのものなんだが、一度もアイツに告白したという噂は聞いたことがないし、本人からも告白されたという話は一切ない。
BLとかでもないし、鈍感という訳でもないし、アイツも好きな人ぐらい居そうなんだが。
残念系とか性格ブサイクというわけでもないのにとにかくモテない。
あれだ、リア充撲滅派の亡霊に憑かれているんじゃないかな。
「配置は昨日の手筈通りに。
目標は全員生還。
行くぞ!」
「「「「「「オー!!!」」」」」」
夕闇の森 ボスの間 PM1:36
「バフ頂戴!」
「ステンバーイ...
ステンバーイ...
ビューティフォー」
「どこを見ている、このマヌケが!」
「ガァアアア!!!」
「HP2割!上から来るぞ、気を付けろ!」
さて、現在戦闘は順調に進んでいる。
色々とネタは混じっているが余裕はあるので問題はない。
HPが2割になって明らかに速くなったり、範囲攻撃を放ってきたりしてきたが他もこういう敵に慣れている奴らだけしか居ない驚きもしないし焦ったりしていない。
約五名は知らんが。
「付加・ウォーターカッター」
「ズパンッ「ゴガァア!?」」
「うるせぇ、8重バインド。
おい皆、このバインドは俺特性のだから後2分は持つ。
・・・・・・あとは判るな?」
「総攻撃、開始ーーー!!!」
え、何があったか説明しろ?
速くて面倒→足斬ろう→チッ、1本だけか。しけてやがる→バインドバインドバイ(ry→ヒャッハー!リンチの時間だ!(今ココ)
ということをやったのだ。
色々と思考がぶっ飛んだりしているのは否めないがそんなことはいつも通りだから置いておいて、今さら思うのだがボスにリンチする俺たちって何なんだろうな?
どうでもいいことではあるが。
とまあ、こんなことになるようなことをした俺が言える台詞ではないが、
ドンマイ☆また来世でガンバレ。
と最後に言っておくべきかね。
AIだから何か違う気がするがそんなものは知ったこっちゃない。
「せい」
「ザクッ「ウォォォ......」ドサッ......」
さて、帰りますかね。
You won!
討伐タイム 2:50:26
「gy...gyoooooo‼︎」
うん?イベントかね。
「gyoo!!「ドゴンッ」」
「ジンバ、黒これは...」
「穴掘って逃げたな」
「うん、逃げたな」
まあ、こうなるのはよくあることなんだが…
「…追うか?ロープはあるぞ」
「じゃあ行く、念のため俺一人でだがいいか?」
「OK、一応気を付けろよ」
なんだかなぁ。