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ワイルド・ワイルド・ガールズ  作者: 虹野サヴァ子
後編『月よりも優しい少女達』
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交響詩篇エクレアセブン その6

「ハぜロ!」


「炎の翼で!」


 私の目の前で起きた爆発は物を払う手ののように動いた私の翼に飲まれて消えた。

 それでも爆風の勢いだけは残り私の速度は失速する。


「オンナのイノチごと殺してやる!」


 ロサの手が私の顔面を握らんと伸ばされる。

 ちゃんと女の子扱いされたのがちょっと嬉しかったりするけど、このロサの攻撃をかわすいしたって私としては紙一重で命がけ。

 単純な戦闘能力では私達とロサでは悲しいかな圧倒的にロサの方が上で勝ちを拾うのは難しいだろう。


 だが、しかし。


 私達の勝ちはロサを倒すという事ではなく、シドウの計画そのものを止める事。

 なにもここでロサに勝つ必要はなく、戦う理由にしても悔しいかなマチコさんの事を考えるにロサの望む通りアンナさん達が戦うべきでもある。

 つまり、ここでの私達の勝ちは全員がここから逃げ延びる事。

 それならばロサの性格を考慮するならばいくらでもやり様はある、それに私はロサの能力のめぼしはついている。


「ジョニーロジャー!」


 ロサの懐で私は自らを炎の塊へと爆発させる。

 ダメージというよりもコケオドシに近い、けれど全身から吹き上がった炎はロサをギョッとさえるには十分だった。

 加えて私の最初のエクレアへの掛け声を私に注視していたロサは気がついていなかっただろう。


「マザーテイスト、トッピング!」


 大物で狙う一瞬の間。

 エクレアならこの一瞬だけでロサを狙うには十分!


「めーしあがれー!」


 ドガガガガガガガガ!!

 アンナさんのスカートの秘密よりもさらに意表を突くこの火力。

 案外、これで倒せるか?なんて希望的な観測をしていたがやはりそれは甘かった。


 爆風をあげながら床と壁をえぐるもロサは紙一重のところでよけられる、加えて埃がまいあがりそれを目隠しに私はツヴァイとドライを抱きかかえる。


「エーーークレアーーー!」


「ほいよう!」


 掛け声一閃、私はえ~っと……ドライの方をエクレアにぶん投げた。


「ナンだと!? 爆ぜ……」


「この煙で火なんか使ったら粉塵爆破であなたも逃げ場ないんじゃない?」


 大急ぎで通路へと駆出す私とエクレア。


「おのれ……待て!」


 ロサも怒りから我を忘れて追ってくる、単純な身体能力ならロサのが上。加えてこっちは私もエクレアも人を一人かかえている状況。

 それでも逃げ切る自信があった。

 キンキン声だったのに声の張りがもとにもどっている。


「エクレア、これからあのケーブルが通っている土台を撃って」


「あの金具ね、ずっと?」


「そう!」


 エクレアがあ土台を恐し私は通路へと垂れるケーブルを無造作に斬り飛ばす。

 点いていた通路の明りは落ち、散る火花の光と緑の非常灯のみの光という視界、さらに勢いがケーブルを躍らせ、後続のロサの追従をさまたげる。

 これでもロサに追いつかれる可能性は大きい、だからこそ駄目押しに一言そえてやる。


「さんざん偉そうな事をいっておいて、結局また私達に逃げられるの?」


「逃げられる? 同じ展開三度とない、アンコールはもう無しだ。潔くよく消え去りたまえ」


 ボガン!

 ロサのお得意の空間爆破攻撃が来る。

 しかし、私達には当らない。

 理由は簡単である。

 ロサの空間爆破の正体、それはそこにあるという事を認識しそこを爆破しているのだ。


 なぜ、見た物を爆破できるか?それは炎を媒体としている物の正体がロサのつけているサングラスに他ならない。

 暗いとはいえあの赤いレンズはそれでも見やすかったかもしれないし、暗くても平気という事を意識したのかもしれないが……いや、あんだけ赤で固めているんだから、そこまで考えずにただ赤いサングラスにしたのだと思うけどね。


 ともかくあのケバイ趣味のサングラス、明るいところで明るいものを見るのなら別にもんだいないのだろうがこの薄明かりでさらに火花が散りまくっている空間。


 火花で白くなったところは見難いし、さらにこのスダレのようにたれさがっているケーブル、走る私達のスピードを予測し正しく爆破する事はできるわけがない。


 普通に追えばおいつけるものの、そこに頭がいってしまっていてそんな判断もできていない。

 ぶち切れてところが落ちついてしまったのが災いして、キレてしまった時を取り返そうとして焦ってしまい、得てして未だに冷静な判断ができないでいるからだ。


 そこまで悪条件をそろわせれば、逃げ切る事はそんなに難しいことじゃない。

 そしてこれで確信した、このロサの空間爆破の弱点。

 それは隠れる場所や目隠しになるような物が沢山あるゴチャゴチャした空間、そういう場所でさえあればそんなに恐ろしい能力ではない。


 サングラスが媒体というのは予想だけど、よもやコンタクトレンズというわけではないだろう。顔面に一発いれて外してしまえばもう使う事もできない。

 あの無駄とまで思えるあの余裕がこの弱点を見ずらくしていたが、マチコさんといった実力が拮抗していた人には使う余裕もなかった。


「大丈夫です……」


「これくらいの距離なら私達も走れますよ」


 お米をかつぐように私達の肩に乗っている二人が朦朧とした意識を少しハッキリさせたのかゆっくりと下ろしてくれうながす。

 とりあえず二人を下ろして私達もツヴァイとドライの状況を確認する。

 ドライはまだともかく、ツヴァイはあれだけの攻撃をくらったのにもかかわらず足元もしっかりしている。

 正直な話、後に変な症状とか出られても困るので動かしたくはないのだけど、頭部に何かくらったわけでもないし、追いつかれた時に私達が盾になってあげるっていう選択肢を増やすのにもおりてもらったほうがいいか?


「わかった、無理はしないでね。戦闘機は動かせる?」


「「はい」」


「よーし、いい返事だ!ジョニー、ロサはどんな感じ?」


「相変わらずブチ切れてる……急いだ方が良さそう」


 四人で狭路を走り抜け、やっとの思いでアンダンテ達が降着しているドッグまで辿りつく。


「ウェイクアップ、アンダンテ!」


 機動と同時に脱出をはかる私達、とりあえず怪訝だったツヴァイとドライも問題なく戦闘機が機動しているあたりなんとかなりそうだ。

 全機が機動した時点でふとみわたせば小型の宇宙艇がある事にきがついた私。

 おそらくロサが乗ってきたものだろう、思わず口元をにんまりとさせる私。


「スタッグカットラリィ!」


 ギュウーンというビーム音と共に特殊なコーティングがなされていないロサの小船は真っ二つにぶった切られる。

「よし、これで追ってこられないはず脱出しよう!」

 私を先頭にドッグから射出される戦闘機達。


「これで駄目押しだ!」


 ボガーン! という音と共に今までいたドッグが爆発する。

 ボナペティエの搭載されている小型ミサイルを全てぶち込んだのが原因だ。

 あれ、高いのに随分と派手にやったな……


「な、なにもそこまでせんとも……」


「だって、ジョニーだってあれくらいやられたじゃん。それに個人的にあそこはもう見たくないしね……」


 何か研究所の重要な機関を今の一撃で攻撃でダメージを与えてしまったのか時間差でボコボコと研究所のあちこちから爆発が起こる。


「これで終わりかな……エクレアじゃないけど何か感慨深い物があるね……」


「……爆発が大きすぎます」


「これは離れた方がいいかもしれませんよ~」


 ……確かに派手に爆発しすぎてるような。

 いや、これは……・逃げろーーーー!


「エクレアやりすぎ!」


「いや、まさかこんな事になるとは思わないじゃない!」


 チュドーーーーーーーンという音と共に周りのガレキの仲間入りをはたすB2研究所。

 私達の運命を変えたこの場所は、ちょっとしたやりすぎの下に消滅した。

 ……まぁ、いつもの事か!!


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