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ワイルド・ワイルド・ガールズ  作者: 虹野サヴァ子
後編『月よりも優しい少女達』
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九龍大夜総会 その4


 おかしな話で私達とマヤ達で直通で話が通すという事ができなかった。

 というのも、もう周りはあちこち火事だからである。幸いな事にこの激しい雨のおかげで道路まで火が出てるというところはわずかだけどあちこちから火の手があがっているのは暗い夜空でもよくわかる。


 降り行く雨の雫と舞いあがる火の粉の乱舞は不謹慎だけど綺麗だと思いもした、がおかげで消防車はあっちこっち軍隊はそっちこっち、ウォン家と連合はそっちあっちでどっちみっち連絡がとれたとしても混乱するだけだけど。


 私達は見た目は少女、それらに見つかっては話がこんがらがるだけだし。何でも屋である事がバレたらいらん事を詮索されるだろうし、ウォン家と連合とも少なからず関係があるとしたら面倒な事になるだけである。


 それでどうやって近づいているかというと、なんとムーの占いの吉凶だけで進んでいるのだ。


 正直頼りにはしてなかったんだけど、ここまでそういった連中に出会う事もなく進んでいる。少しだけアンナさん達のムーへの信頼度がわかった気がする。通信機の向こうの布団みたいな黒いムーへの言及はよしておこう。


「次は南南西の方向が吉です! BBさんおかえりなさい!」


「あ、BB帰ってきたの?」


「ケッケッケ、勝ったよ! 証拠を残す事無く戻ってくるのに手間がかかったけど。モモもいるしこっちは多分だけど大丈夫だと思う。状況はだいたいアンナから聞いてるわよケッケッケ。心配した? 心配した?」


「まぁ、無事だとは思ってましたよ。BBなんて殺しても死ななそうだし」


「そうだね~、だからマチコも心配いらないって」


「あ、心配なんてしてませんよ」


 私が言うとBBはちょっとだけ普通の笑顔を見せる。


「ふ~ん、ちゃんと成長してるんだねぇ。BBは嬉しいわよん」


「……BBなんか気持ち悪い」


 私が思っている事をアルミに先に言われてしまった。


「う! なんかアルミに言われると堪えるわね」


 まぁ、形はどうであて心配してくれてるんだろう。

 ここは私も気合を入れなおさないと!


「心配は無用です! すぐに元通りですよ!」


「ケッケッケッケッケ! その心意気や良し、任せたわよジョニー!」


 そこで私は通信機を切る。

 眼下に広がるのはちょっと面白い光景。

 なんてったってマヤ達3人が多くのヤクザ者に囲まれた状態で、加えて中央ではフェイフェイとシャオロンが一触即発の雰囲気で睨みあってるのだ。


 シャオロンとフェイフェイの身長差は二十センチ以上、身長差以上にかもしだす立ち振る舞いですら大人と子供くらいの差があるけれど、その差を持ってしてもフェイフェイは臆する事無くシャオロンに詰め寄っていた。


「ここに来てフェイ、お前に邪魔をされるとはね……」


 シャオロンは自嘲するように笑った。


「フェイフェイ、シャオの事をここから一歩も通さない。シャオ、フェイフェイ思うんだけどこんな事をしてもどうにもならないよ」


「どうにもならない? 確かにどうしようとかは思っていないさ。ただ、私達が飲まされた辛酸をお前達にも飲んでもらおうというだけだ」


「何ソレっちゃ! もとはといえばお前達がちょっかい出したせいでこうなったっちゃ、それなのに偉そうに言うなっちゃよ!」


「私も調べましたけど、たしかにウォン家の内乱はそちらに問題があったと思います」


 言われて口を閉ざしたシャオロンのかわりに、フーが言い返した。


「あなた方部外者の異論に聞く耳を持つ気はありません、根の深さをここで説明する気もおきませんし、それにここまで来て、それを言われてハイ、そうですかと言う気もありませんのであしからず」


「なっ、何その横暴な理屈っちゃ! それに大体あなたさっきと言ってる事がち」


 ドロシーが言っている途中でフーが跳ねてドロシーの頬をかすめるように小刀を突き出した。

 ドロシーの白い頬を鮮血がツーと流れる。

 直情型でも暴力が好きではないドロシーだから、繋がりは薄いとはいえ知らない仲ではないそのフーの行動に呆気に取られる。


「ドロシー! フー! 何をするのさ!!」


「フェイフェイさん、私達も時間が惜しいのです。意思を完結に行動で答えただけですよ」


 ここに来てフェイフェイもはじめて身構えた。


「さぁ、もう馴れ合いのおしゃべりの時間はおしまいだよ」


 シャオロンが槍を構え直し、ビッとフェイフェイに指を着きつけた。


「フェイフェイ、ドロシー! 来るよ!」


 マヤの言葉と同時に回りのヤクザ者も一斉に動き出した。10数人のヤクザ者が蟻のようにわらわらと見た目は少女の3人にむらがるというのは道徳上はどうかと思うんだけど。


 この三人も普通の少女じゃないので問題はなかった、ヤクザの何人かに犬が襲い掛かる。


「雑魚は邪魔だっちゃ!」


 ドロシーの手元から次に牛と鳥と猿が放たれヤクザ者に襲いかかった。

 悲鳴をあげるヤクザ達、私達は慣れてるからなんともないけどいきなり動物が襲ってきたら普通はこういう反応か……


 しかし、この場で一番非常識である牛をシャオロンの槍が一突きで仕留めると浮き足立っていたヤクザ者達が一斉に静まり返る。


「ガタガタ騒ぐんじゃないよ、たかがケダモノじゃないか!」


 シャオロン恐ッ!

 さすが若くしてヤクザの頭を張るような大人の女は違うな……


「さぁ、とっとと片付けるよ。ウォンに味方するやつもまとめて締めちまいな!」


「そういうわけです皆さん、よろしくお願いしますよ」


 シャオロンとフーの言葉で再びしきり直された戦況。


「忍術力ソバットー!」


 ヤクザの一人を回し蹴りで吹き飛ばすとマヤが先陣を切った。


「やってみれば? やれるものならね。全力でかかってきなさいよ! シャオロン、あなたを心配してくれる人が全部受けとめてくれるから!」


 どこかマヤは嬉しそうに言った。好戦的な子じゃないはずなんだけど。


「何を!」


 そしてそんなマヤの言葉にどこか不自然に反応するシャオロン。

 その一瞬のスキをついてフェイフェイがシャオロンに蹴りを放った、不意をついた形になったけどその蹴りはシャオロンの槍で受けとめられる。


「なめるな! やれ! 全員だ、そしてウォンの家に乗り込め!」」


「……ドロシー!」


 って、うぉっ! いつのまにかアルミが隣にいない。

 ごちゃごちゃに入り乱れた中に飛び込んでシャオロンを見据えている。


「なんでアルミがここにいるです!? とりあえずパスです!」


 ドロシーの手から御札が投げられそれはアルミには、いやよほどの大男でないと不釣合いな大きな蛮刀へと姿を変える。

 重さをささえきれず、ギンと剣の切っ先を地面に落とすアルミ。


「お嬢ちゃん、そんな大きな剣でどうしようってんだい?」


「こうするのよ……」


 シャーーー、っというアスファルトと金属が擦れる音、切っ先から火花をあげながらシャオロンの前に立ちふさがるヤクザに向かっていく。

 直前で火花で円を描くように一回転、その遠心力と隠し持った瞬発力を利用してヤクザに空中横回転から一気に肩口へと刀を振り下ろす。

 メギョ!

 骨が折れる、いや砕けた鈍い音。


「うわぁ、ヤスー!」


「しっかりしろヤス!このガキャー!!」


 いきまくヤクザ達。

 でもそんなやくざ達をすっげー冷たい眼で見下すアルミ。


「何を言ってるの? ダイアの受けた痛みはこんなもんじゃないのよ」


 ……恐い。

 普段は大人しい人がブチ切れると怖いってのは本当だね、ヤクザの人達も思わず足をすくませる。

 ……とはいえこれでは私の出るタイミングもなくなってしまった。


「とー!」


 もうなかばヤケっぱちで戦いの輪の中に飛び込む。

「ジョニー!」


「やっほー、マヤ。タイムマシンはみつからないし、ロサには襲われるし、シドウ達はみつからないわで私、もう泣きそうだよ」


「愚痴らない愚痴らない、とりあえずここをどうにかしようか?」


「そうですねー、どうにかしないといけませんねー」


 私の代わりに別の誰かが答える、口調だけなら人をなめたような感じでフーのようだけど、フーのようにトゲトゲとした感じはない。

 私は建物の上へと目をやる。

 そこには頭の片方ずつに髪をまとめた二人の影。


「ツヴァイ!」


「こんにちはジョニーさん、ほらドライちゃんも挨拶して」


「……こんにちは」


「こんにちは」


 いや、マヤも素直に挨拶返すなよ!


「何でアンタ達がここにいるのよ!」


「何と言われましても、グラント様のご命令なんですよー。少しだけ足止めをしてほしいと。あと姉さんのために私達の意思で時間を稼ぎたいので」


「そういうわけです」


 ツヴァイがニコニコ、ドライが無表情でそう言う。何がそういうわけなのかわサッパリわからないけれどとにかくやっかいで、そしてチャンスだ。


「こっちとしても都合がいいわ!グラントの事、タイムマシンの事、あらいざらい話してもらうわ!」


「ん~、もう構わないっちゃ構わないんですけど。でももうちょっとお待ちくださいな!」


 そう言ってツヴァイが屋根から飛びかかりハンマーを振り下ろしてきた。


「うわっっと!」


 ドガンと地面を揺らす一撃。

 それでもチンピラ連中はともかく誰も怯んだ様子はない、が、一瞬のスキはできてしまう。

 その隙を一番突いたのはシャオロンだった。


「フェイお前達に付き合う気はない!」


「シャオ、駄目!」


 なんとかシャオロンにかしずくフェイフェイ、この二人が団子状態の戦いの輪から抜きに出る。


「フェイフェイ!」


「おっと、させません。気持ちはわからにでもないですが僕も同じようにシャオロンさんが大事ですから。僕はシャオロンさんをずっと見てきました、だからシャオロンさんの望むようにしてあげたい。だから死んでもあの人の邪魔はさせません」


「フー!」


 ドロシーとフーが一触即発の状態。

 私とマヤもツヴァイとドライから目を離せない、思えば初めてあった時もこの二人とはマヤと組んで戦ったっけ。

 あの時はアンナさんがボコボコにしちゃったからうやむやになったけど、それならきちんと決着をつけないと

いけないからね。


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