九龍大夜総会 その1
「なージョニー、これってどっからはいるんだ?」
「今、考えてるとこ。私が出てきたところが開いてればそっからかな?」
「あめつよいー、モモもうおりるー!」
ウォッ、モモちゃん速ぇ!本気で飛ばすとあんなにスピードが出るんだ、やっぱり商会の人はどっかおかしい。
でも、今日の私は何か体が軽いから余裕でついていけるんだけど。私も何か移ったかな?
「ジョニーあそこにだれかいるぞ! だれだー!?」
「あれは……誰だっけ」
私が出てきた橋の穴のところにたたずむ小さな影、そうだアレは。
「「マテリアだー!」」
急降下する私とモモちゃん。モモちゃんなんかマテリアを見た途端に戦闘モードはいったのか(丈太郎にはなってないみたいだけど)さらにスピードをつけて急降下。
手をグーに握ってウルトラマンみたいな姿勢でマテリアへと体当たりをしかけた。
「……危ないよ」
まるで一筋の矢のような、スピードの乗った一撃をマテリアは抱きかかえるように優しく包み込んだ。
モモちゃんはある程度の衝撃を覚悟していたようでキョトンとしてる。
「おまえてきか!」
「たぶん敵だと思う」
「じゃあモモとしょうぶだ!」
「い……や……」
そう言って構えを取るマテリア。
構えといっても両手を前に突き出しただけで、戦いをするとはとても思えない。そもそもモモちゃんとモモちゃんよりちょっと年上ってだけで本当にただの子供にしか見えない二人がこう睨み合ってる姿は年長者の私としては本来止めなければならないような……
「とー!」
あ、はじまっちゃった!
まぁ、止めるとしても止められない状況だったけどなんか複雑。
かけ声と共にモモちゃんは膝をかかえて丸くなるとグルグル縦回転しながらマテリアに突っ込んでいった。
もと野生児だからってその攻撃は……と私が思っているとマテリアの前で急停止してマテリアの腹と顔に向かって上下に蹴りを繰り出した。
でも、モモちゃんの攻撃はマテリアの生きているかのようにすら見えるコートによって防がれる。
やっぱりオートガードなんだろう、ここまでやってマテリア自身からは戦おうという気配が感じられない。空中できをつけの姿勢になったモモちゃんは今度はドリルのように横回転してそのまま回し蹴りの要領でマテリアの顔を蹴飛ばそうと蹴りを繰り出す。
それもコートに防がれるが、ここで私はやっと気がついた。
モモちゃんは野生で育ったからその外見と年齢よりも遥かに高い身体能力を持ってる。
けど、だからといって私よりも力があるかといえばそれは違う。
モモちゃんの戦い方は飛べるという自分の能力を最大限に利用した独特のものだ、回転や加速で遠心力や速度による威力の上昇さえできれば腕力なんてなくたって大男だろうがうまくあてれば昏倒させる事ができる。
野生の中で生きていたモモちゃんは自分の能力の使い方をしっているのだ。
「あ!」
思わず声をあげてしまった。
私の剣だってそうだ、私の剣は私以外には使えない特殊な剣。
それなら私にそなわった、私の一部といっても過言じゃない。
戦闘機だって自分の一部と思って制御するのだ、同じシステムを組み込んでいる私の剣で同じ事ができないはずがない。
イメージとしては自分の一部と思い、考えとしては剣を使うのではなく剣に使われている、そんなイメージ。
「どいてモモちゃん! 試してみたい事があるの!」
「お、おー?」
剣も、そして炎も自分というイメージ!
「おー! ジョニーにはねはえたー!」
モモちゃんに言われなくてもわかった。
「なるほど! 使いこなすってそういう事か!」
おっと、嬉しくて思わず口でも言っちゃったぜ。
今までは言葉で制御していたけどもともと制御なんて必要なかったんだ。刀身だけが桃色に変化している、形までいままでかわっていたけど本当のお前の姿はそれなんだねアースウィンド&ファイア。
出すだけで全力疾走したかのようなダルさが襲ってたけど今はそういう事は無い、とはいえ無害というわけではなく重くない重りを身体中につけられた感じ?
もしくは水の抵抗のない水の中で動いてる感じ?
よくわからないけど、とにかくこれが自分自身の持ち味というやつか。とにかくぶっつけ本番にしてはかなりいい感じ。
「大人気ないって思うけど、行くよマテリア!」
「こないでー!」
うぉっ、と思わず言って立ち止まる。
マテリアのコートがまるで殻で覆うようにマテリアの身体をくるんでいた、さすがにこんな状態の少女に斬りかかれるほど私も悪党じゃない。
でも、この私の燃えあがった熱いボルテージはどうしたら……
「えっと、マテリア……ちゃん?」
「知ってますジョニーさん……おと……シドウ様の邪魔をしにきたんですよね。だから私の敵で……私もあなた達がきたら迎え撃つように言われてます……でも、戦って私もジョニーさんも、誰かが痛い思いをするのは嫌です」
「あ、うん……いや、私もそう思うよ……ねぇ、マテリアちゃん。じゃあ通してくれたりしない?」
思ってもいない言葉だったのでこっちもどうしたらいいかわからなくなってしまう。
とりあえず手をあわせて身体をくねらせて可愛くお願いしてみる。
「ごめんなさい、それもできないです……できたら帰ってもらえませんか?」
「う~ん、私達もそうはいかなくって……」
「そーそー、エクレアとかマチコとかあとなんかきかいをこわさないといけない」
「そうですか……そうですよね……じゃあ、どうなってもしりませんよ」
今度こそマテリアの様子が変わった。
構えこそ同じだけど明らかに戦うという意思をもってきている。
途端。
その意思がコートを使って形になるようにコートの裾が伸びうねり、私達に襲いかかってくる。
「この雨ではジョニーさんの炎は半分以下の力でしょう、ほんとにしりませんよ!」
ギィン!
布であるコートを受けとめたとは思えない金属音が響く。いや、まぁ布だとは最初から思ってないけどさ。
ボガン!
私が受けたと同時にマテリアの身体が爆ぜた。
「野郎……面白くなってきたぜ……」
……今のは私の言葉じゃない。
「あの……モモちゃん……」
「俺がここでコイツを引きうける、内部を知ってるジョニーが中に乗り込む。問題ない、ただの任務続行だ」
どうやらモモちゃんのスイッチが入っちゃったみたい……こうなるとヘタにかかわらないほうがいいかな……
「モモォ!」
ボガンと再び爆発する。
原理はよくわからないが、とにかくモモちゃんから発射される謎のエネルギー弾に今度はマテリアの方がめんくらった顔になる。
「そんなデタラメな……」
「頼むよモモちゃん!」
「モモォ!」
「あっ、ジョニーさん!」
マテリアの防御を潜りぬけて落ちてきた配管工に頭から突っ込む。
剣さえ前に突き出してさえおけば飛んでよじ昇れるから本当に便利だ。
出口にくっついてた蓋を豪快にふっとばしてなんとか潜入成功。
は、いいんだけどアンナさんとカンザキさんは入ってこれたんだろうか?入り口って入り口って他には私は知らないんだけど……まぁ、あの二人なら心配無用か。
チーム編成的にはアンナ、カンザキさんチームがメインの任務遂行班、私とモモちゃんとBBが陽動撹乱と遂行班のアシストチーム。マヤ、ドロシー、フェイフェイがシャオロン保護チームなんだけど前二つと違ってマヤ達のチームはほぼ別行動だからなぁ……
「さて、どうしたんかな?」
「どうにもならんやんなぁ?」
「本当にどうしたものだろうな……」
……あれ?
「アンナさん、カンザキさん!」
「オッス、ジョニー奇遇やな」
「……オッス」
「いや、カンザキさん無理に合わせないで……アンナさんどうしてここに?」
いきなりでいきないりな再会に私は拍子抜けする。
ってか、これでは別れて行動した意味がないじゃないか。