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ワイルド・ワイルド・ガールズ  作者: 虹野サヴァ子
前編『太陽よりも激しい少女達』
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失われし砂漠の遺産 その4


「く、クレオ姉さん、これは!?」


「わからないは、これはいったい何!?」


 二人にもわからない異常事態なら私達がわかる道理は無い、すくなくてもこの様子じゃ事態がいい方向に傾くという事だけはなさそうだ。

 オロロロロ~~~~ン!!!

 腹の底に響く嫌な声、ここで我慢の限界に達した娘が一人。


「うっぎゃーーーーー出たーーーーーー!!!」


 エクレアが恐怖状態で発狂して、銃を取り出す。いくらなんでもこんなところで乱射されたら私達の命が危ない。


「どうどう!」


 マヤがエクレアを押さえつける、泣き叫ぶエクレアの目にジャストタイミングで薄い紫色の煙のようなものが人の形をなしはじめる。

 一人や二人じゃない!

 ステージ下に広がる無数の人形、この流れどう考えても幽霊以外のなにものでもないだろう。


 オロロロロロロロ~~~~~~~ン!!!


 うめき声がより大きくはっきりと全身の毛を一本一本なでていくように冷たく体を通りすぎる、お世辞にも幽霊達は冷静な状態ではないようだ。

 そうなるとステージ下のクレオとパトラが危ない、彼女達は幽霊と仮に戦えたとしても、いざ戦おうにもファラオ力は使えないのだ。


「クレオ、パトラ、こっちへ!!」


「そ、それが!」


 ステージ下に伸ばした私の手がみえない何かに触れてバチッと弾けた。


「痛ッ!」


「そっちに行けないんです!」


 最悪の事態、これじゃもし幽霊が暴れ出したら私達はどうしたら!?こうなったらイチかバチかエクレアに銃を撃ちまくってもらって壁に穴を開けるしか……。

 いや、結界の事を考えると爆風に私達がやられる可能性もある、棺おけに隠れるにしても三人は無理だ。


 呪文で強化した私の剣の一撃ならなんとかなるかもしれないが呪文の詠唱は間に合うのか!?


 私の頭がフル回転してるなか、エクレアの叫び声にまじってマヤの絶叫が聞こえる!


「ジョニー! あれ!?」


 マヤの指の先、部屋の中心に紫の幽霊とはまた違った黄色の煙が立ち込める。

 煙は円を描くように集まり、やがて形を成し始める、頭にコブラがかたどられた私達のよく知る古代の巨大な金の仮面。


『悲しい……』


 恐らく仮面の声なのだろう、心に響くようにズシリと私達に訴えかけてくる。


『私達の良く知る景色は眠りの間に無くなってしまった……悲しい……』


 仮面ゆえに表情を変えず、唇も動かさず、瞬き一つせずに仮面の嘆きが私達の頭の中に響く。

 確かに祖先から見れば確かに今のエジプティアの有様は理解できないかもしれない。


『私の守るべきエジプティアはもう無い……ならば黄泉へと旅立つ前に……共に眠る民と古きエジプティアの祭りが観たい……』


 嘆き。

 それはただただ、残された私達に対する嘆きだった。

 それは見守りつづけたエジプティア人が祖先にした仕打ちからの怒りとかそういった感情からではない。

 長い年月を見守りつづけた彼等にとってその事に対しては悟りにもにた感情をもっているのだろう。


 だからこそ、最後に見届けるのは古き良き時代に見た物。

 彼等の悲しみと願いをダイレクトに受けた私達は彼等に敵意は無い事、そして望む事を知ってしまった。


「ジョニー……」


 いつのまにかエクレアも泣き止んでいる。

 クレオとパトラは逆に声も出さずに泣いている。

 彼等の手向け。

 本当はエジプティア人である彼女達にやってもらいたいのだけど……。


「駄目です、結界は消えてません……」


 マヤの手がステージと部屋の間でバチッと弾かれる。


「……クレオ、パトラ。いいかな?」


 私としても不本意、でもこの状態では仕方が無い。


「私達からも……」


「お願いします……」


「「どうか彼等に栄光の時代をもう一度見せてあげてください……」」


 エクレアとマヤもうなずく。


 私達は意を決して棺の蓋を開けた。

 ……なんだこりゃ。


 エクレアもマヤも同じ事を思ったらしい、今までに見た事も無いような味のある表情をしてる。んで、たぶん私も同じ顔。

 三人で顔を見合わせた後、一呼吸おいて三人仲良く棺の蓋を閉める。


「見た……?」


 さらに確認のため念を押して聞いてみる。


「見ました……」


「見たよ……」


 どうやらこの反応って事は私の見間違いって事でもないらしい。

 意を決してギイと開けたのだった。


 棺の中に入っているのはまず一冊の本。

 そこまではまぁいいのよ。

 おそるおそるその下にある衣装と思われるものを取り出す。


「こいつは……」


「うわぁ……」


 手にした服。

 いや、服という概念で語るにはやや語弊がある。

 それは褌だった。

 平仮名で表記するなら『ふんどし』

 

 それも情熱の赤。

 赤フンでだった。

 砂漠とピラミッドという関係性は絶無でり、私は意識を手放しそうになった。

 


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