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ワイルド・ワイルド・ガールズ  作者: 虹野サヴァ子
前編『太陽よりも激しい少女達』
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失われし砂漠の遺産 その3

「墓荒らしに話す事なんてないわ!」


「そう、さっきから気になってたんだけど……その墓荒らしって……何?」


 彼女達の勢いとふざけたエネルギーに気を取られて聞く事もできなかったけど彼女達は根本的に勘違いをしている気がする。


「あのー、私達は墓荒らしじゃなくて正規の依頼としてこの星に昔の祭具を取りにきたんですけど……」


 マヤが羽交い締めにした背中越しにパトラに説明する。


「え、そうなの!?」


 って、それだけで信じるのかよ!!


「い、いちおうほら、この人が依頼主で……」


 さすがのエクレアもパトラの切り替えの早さにたじろぎながら携帯のメール画面から依頼主の顔を見せる。

 浮き出たホログラムを見てパトラは「あ!」と顔を上げる。


「これはアヴドゥールさん、それじゃ本当に!?」


 気にしてなかったけど、なんだかまた著作権という事葉が聞こえてきそうな名前だな、アヴドゥールさん。

 何にせよパトラの体から敵意がなくなった事を確認できたらパトラを自由にして、クレオを起こす。


 彼女達が言うには、やっぱり彼女達もアヴドゥールさんに言われてここまで来たらしい。話しをまとめると私達に依頼をしたのはいいけれど、その後に墓荒らしが狙っているという話しを聞いて彼女達にお願いしたらしい。


 きっと仕事がダブルブッキングしないようにとアブドゥールさんが配慮してくれたんだろうけど、なにもこんな子達を派遣しなくても……


「というかあなた達が祭具を取ってくればいいんじゃない?」


「いえ、ピラミッドの中ではファラオ力は使えないのです」


「それに宗教離れが進んでいるせいか、当の祭り以外にはみんな興味がないらしくて……」


 なんだか暗いエジプティア事情を聞いた気がする……


「それにピラミッドの中に行けるのは女性のみでして」


「もしも墓荒らしに入られた時のためにエジプティア文化遺産保護教会でもっとも腕の立つ私達が派遣されたというわけです」


「ん~、なるほどですね」


 話しを聞いて納得。

 まぁ、それならそれで仕事は急いだほうがいいかな。


「じゃあ、クレオとパトラ。道案内くらいはできるかな。その話しの様子じゃやっぱり罠とかあるみたいだし」


「罠があるならアヴドゥールさんも地図くらいくれればいいのに」


 エクレアが愚痴を漏らす。


「いえ、知恵と勇気を試す試練もかねてるそうなので地図とかはないんです」


「その変わり罠をなぞらえた歌はありますのでそれを参考にしていただければ」


 なんともやっかいな伝統だ事……でも、そんな事を正直に口したら、この二人ユタ州を馬鹿にされたケントさんのごとく怒り出すだろうし、ほんとなんだかなぁ……


「とにかく隠し扉をあけてもらっちゃいましょう」


 マヤの言葉にうなずくとクレオとパトラは階段の石をガチャガチャといじり出す。

 ガコッっていう鈍い音と共に石畳がせりあがって閉所特有の湿った空気とカビの匂いが鼻につく。


「うわー、やだなー、それっぽいー」


 ホラー大嫌いなエクレアが私の後ろに隠れて泣き声をあげる。やめてよ私も恐くなっちゃうじゃない。

 目をやると石で作られた長い回廊の奥は日の光も刺し込まずまっくらな闇が全てを飲み込むように口をあけている。


 春に近い暖かな陽気とはうらはらに、真冬の寒さにもにた冷気が闇から流れ、私達の背筋を氷つかせている。


「じゃあ、いきましょー!」


 って、そんな中で何も気にしてない様子でマヤが蛍光灯をつけてズンズンと歩き出す。

 いつもは消極的なくせに、たまに元気だよなー、この子は。

 蛍光灯で照らされる闇、さすがに遺跡だけあってところどころに老朽化が目立つけど崩れるような危険性は微塵にも感じない。

 私も、もう闇に慣れてペースを取り戻していた、ペースがた落ちなのは私の後ろに隠れているエクレア。


 小刻みに震えながら「何か声が聞こえた気がする……」「何かいそうな気がする……」とかえってこっちが恐くなるようなことをボソボソと呟いている。


 そんな身内からの精神攻撃以外に気になる事といえば、やっぱりトラップだ。


「さっきから考え無しに歩ってるけど、罠とかは大丈夫?」


「え~と……長い廊下が~あなたへの道~まがり角でドンとぶつかるの~♪」


「曲がり角がありますね」


 歌の通りなら罠がある場所か!


「ぶつかった~その先のあなた~♪」


「えっと、じゃあ曲がらないで壁を押せばいいんですね?」


 マヤが壁をグイと押すと壁がグルリと回った。

 お約束のように壁の先の落とし穴におちそうになるマヤ。


「はわわわわわわ!!」


 両手をぐるんぐるん回して耐えるマヤ、最後は両手を広げてピシッと決めた。


「あなたは怒って~私を見る~♪」


「リズムははやく歌ってください、っていうかこの罠って歌を知らなきゃかかりようがない罠じゃないですか!」


 続きを歌うクレオに向かってマヤが怒ってる。まぁ、確かに突き当たりの壁は普通は押さないよね。


「えーと、続きはなんだったかしら……?」


 マヤの意見は気にしてないようでクレオは歌を思い出せずに頭を捻っている。


「クレオ姉さんこうですよ。手探りでさがす~道開けるスイ~ッチ♪」


 曲がってからしばらくたってパトラが思い出して歌いはじめる。


「お、これだな」


「押してはいけない~それは自分のため~♪」


「ボタン、オッケーーイ!!」


 オッケーじゃねぇよ。

 しっかりボタンを押したマヤに目の前から矢が飛び出して襲いかかってくる!


「はわわわわわわ!!」


 さすがはいちおう戦闘民族、たぐいまれな運動神経で飛び交う矢を避けるマヤ。


「「ゴメンナサイ」」


 今度はマヤに怒られる前に謝ってしまうクレオとパトラ、さすが技が深い……。


「もう、やんなっちゃいますよ!」


 プリプリしながら進むマヤ、そんなマヤの後姿を追うようにクレオとパトラが続いて歌う。


「「もう一度探す~道開けるスイ~ッチ♪」


 なんか、後を歩ってる私でも確認できるあからさまなスイッチが壁から突き出てる。


「もう、押しませんよ!」


「押さずに進んではいけない~♪」


「進んじゃいました~……」


 まぁ、そんな事だろうと思った。

 音と共に天井から落ちてきた砂に埋まってしまうマヤ。どっちゃりと盛られた砂の山がモゾモゾと動くと山のてっぺんからボスッと首だけ出てくるマヤ。


「「ゴメンナサイ」」


 ってな事を十数回繰り返しているうちにやっとそれっぽい部屋に辿り着いた。

 気の遠くなるような年月がたったはずなのに。まるで昨日に塗装されたような壁から床、天井まで白い大きな部屋

 その部屋の奥にまるで体育館にあるようなステージがあり、そのステージの中央に棺のような箱が祭られている。

 すでにボロボロのマヤは目をつりあげて顔をひくひくさせながらため息を吐き出す。


「はぁ~、やっと着いた~……」


「これを持って帰れば依頼達成ね」


「はやくかえろ~よ~」


 エクレアをこれ以上ここにいさせるのも精神衛生場よくないだろうし、こんなアホな遺跡は私も早く出たい。

 たたっと棺に駆け寄る私達。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!

 私達がステージに上った瞬間に轟音が鳴り響き、唸り声のような怨念じみた声が聞こえてくる。

 げげっ、ここに来てマジか!?

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