掻き鳴らせユニゾン・チョーキング その5
ドゴッ!
確認すると同時に鈍い蹴りが私の腹に直撃した。
「----!!」
来る、そうわかっていても苦悶の声をあげる。正しくはあげる事もできないくらい強烈だったけど。
でも、意識は飛んでいない。
「ジョニー、無茶しすぎやで! 靴に何か仕込んどったらどないすんねん!」
「性格的に姑息な事はしないと思って……」
アンナさんはニコリと笑うと、私と一緒にキッとロサを見据えた。
「あの棍の弁償、してもらわんとなぁ?」
「いろいろと聞きたい事もあるからね!」
その様子を見てロサは再び狂ったように笑い出す。
「フハ! フハハ! フハハ! これは素晴らしい、見事なまでの競演、さしもの私もスタンディングオベーションは否めないよ、ジョニー君、君は素敵だ、素敵で、甘美で、そして素敵だ、フハハ! でも脚本進行上で君に素敵な最後を与える事はまだできないのだよ!」
「気安く呼ぶな! 友達ならジョニー、礼儀正しい後輩はマクレーンさんって呼ばれるけど、お前達はどっちも駄目だ!」
「フハハ! 素晴らしい、心に染みる台詞回しだ。アンナお前もみならうところがあるな!」
「ええかげんに……!」
アンナさんが先に跳んだ、が!
「爆ぜろ」
ドガン!
アンナさんの目の前で小規模の爆発が起きる。
いや、起きた!
私も同じ能力だからわかる、これは異常だ。
炎を出すだけでなく爆発自体なら、私もできるから納得できる。でも、それは何らかのリアクションが必要だ。
銃だって的に向けなければ撃つ意味がないし、爆弾だって相手に投げなければいけない。
そのリアクションがロサには無い。
人の中には超常的な能力でそういう事ができる人がいるらしいけど、ロサがそれならばそもそもコートを着る必要がないし、なによりアンナさんが知らないはずがない。
あの声がリアクション?
それでどこでも爆破できるなら無敵の能力じゃないか!?
私が混乱している間にロサが迫る。
ドムッ!
へたに何が起きたか考えてしまったぶんだけ反応が遅れてもろに腹に膝蹴りを食らう。
「くそっ!」
半ばヤケクソ気味に剣を振るう。
悔しさにまかせて爆破してやるけど、意味は皆無だった。
「よしてくれないかしら、そんな事をされてはせっかくの殺陣が台無しよ。いや、これは良い方向に取りましょうか。これで私が怒りに身を任せてジョニー君を苦しめたらもっと今後の展開の説得力がさらに素敵に増すものね」
「……クソアマ」
呼吸もままならない状態で負け惜しみを言いつつも、陶酔しきっていたロサの顎を蹴り飛ばすイメージを固める。
剣と炎の攻撃に気を取られすぎて意識してないだろうから、蹴られたおかえしをしてやる。
弾けた顔面にまずは火球をぶつけてやろうと剣をふりかぶり、発射する。
ふんぞり返ったロサの顔が戻ってくる、直撃しろ!
だが、ロサは満足そうに微笑むと。
「堕ちろ」
何か赤いムチのようなものが私の作り出した火球を弾ぜて消す、さらに私の足にも赤いムチがからみつく。
痛い!
いや、熱いのか!?
どっちだかわからない。
とにかく足首がもげてしまうほどの激痛がムチが巻かれる部分から全身を駆け巡る。
「ありがとうジョニー君、個人的にはここでご退場願いたいのだけれども、かわりに休憩時間をあげましょう。次の幕があがるまで休んでもらって結構よ。満場の皆様にお礼の声を投げかけなさい、それにしてもさすがはアンナが目をかけているということか。そう、アンナが、アンナが目をかけているんだ。予告編といこうか! ジョニー君、君は人気者だからね私の知人にも君に用がある者がいてね。その者にも顔をたててあげないといけない。まったく困ったものだよ、私はおあずけをくらうのが好きじゃないから、しかしながらクライマックスは盛り上げるものか、これはねジレンマだよ、しかしながらそのジレンマも心地いいよ、素晴らしい作品とは作り手にすら予想させないものなのだからね!」
早口でまくしたてるロサ。
句読点なんてあったもんじゃない、鯉がエサをねだるときの口パクくらいの早さで息継ぎをして数秒で今の台詞を言いきった。
「ロサ……あんた……」
「……爆ぜろ」
ドガン!
爆発音がさらにアンナさんを吹き飛ばす。
みんな、シドウとマテリアから離れられない。
口々にみんなが私の名前を叫ぶ。
私が皆の名前を叫ぼうとした刹那、ロサは昂揚した声で叫び始める。
「劣等感を抱き堕ちろ、傲慢を悔いて堕ちろ、隠し持った憂いを嘆き堕ちろ、蜘蛛の巣のような人間関係の中で、終局へと向かって堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろ、堕ちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろちろ!!!!!!」
私は声を出せなかった。
堕ちろという言葉がロサの口から発せられるたびに赤いムチが私を縛った。
最初の三回で残る足首と手首を縛られて自由を奪われた。
その全てが熱さと激痛をともない、声が出せるような状況にならない。
痛いくて神経の全部がもっていかれるみたい。
「ジョニィィィィーーーーーーーーーー!!」
エクレアが叫んでいる。
かろうじてその声は聞こえた。
拷問のようなロサの攻め、いやもう拷問だなこれは……
ロサの声しか聞こえないなくなってる中でエクレアの声だけははっきりと聞こえた。
やがて攻撃の手が止まり、私は地面に落ちたようだった。
もうわけがわからない。
もしかしたらもう死んでるのかも……
「拍手喝采、悼みいります。ありがとう! しかしながらアンコールはございません、名優は長く舞台に立つからこその華なのですから。第二幕が始まる前に花と別れの言葉を用意しておくことをお勧めします、近々訪れる再演にご期待をフハハ! フハハ! フハハ!!」
死ぬ、って事を意識しながら眠気に体をゆだねる。
耳に残るはロサの高笑い。
「絶対に……私が……ぶちのめしてやる!!」
そしてエクレアの噛み殺した怒号だった。
Bey Bey Space Girls.
See You Next Pranet!




