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ワイルド・ワイルド・ガールズ  作者: 虹野サヴァ子
後編『月よりも優しい少女達』
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テニスのメイド様 その3


「ヘイ、マヤ!」


「ヘイ、ジョニー!」


「「ヴィクトリー!」」


 そんな感じでマヤとハイタッチをしたあと勝利のポーズを決める。

 私達は全員が順調に予選を勝ち進んでいた。

 驚いた事にカンザキさんはシード選手らしく、予選に出る必要はないので私達のセコンドについてくれた。


 のだが……


 スポーツサングラスをかけた顔は丹精でそれこそ凄いプレイヤーなのだなという存在感を感じるのだけれど、着ている服が試合をしないので相変わらずのメイド服!

 おかげで一種異様な空気を外野からかもし出している。


「二人ともお疲れさまだっちゃ、これでエクレア達が勝てば本選出場だっちゃ」


 ドロシーが差し出してくれたドリンクを受け取ると、疲れた体に水分補給する。


「フェイフェイが思ってたよりもウマイ具合に事が運んだね」


「うん、一組くらい本選にいければいいかなと思ってたんだけどね。まぁ、あとはエクレアとアルミだけだね」


「そろそろ試合が始まると思うですけど……」


 そう思っているとエクレアが出てきた。


「トール・ハンマー、エル・マリアッチ組み対エクレア、アルミ・ヨシュリア・ヒルデ組みコートへどうぞ」


 エクレアの対戦相手は、また随分と個性的だな。

 ナイスバディーの眼鏡のねーちゃんに、随分と小さな兄ちゃんだ。


「さあ、トール!ケチョンケチョンにブチのめしてやるわよ!」


「エル……汚い言葉を使うのは……よくない。」


 個性適な二人だけど試合はわりと白熱したけど、結局はエクレア達が勝った。


「はい、お疲れエクレア」


「いや~、強かったけど……ジョニーあの二人見た?」


「見た、すげぇおっぱい揺らしてた。なんだか、個性的な人達だったね」


「でも……面白い子達だったわ」


 そう言って笑うアルミ。

 と、いうかアルミはテニス強すぎる。人は見かけによらんもんだ。


「まぁ、何にせよこれで全員が決勝トーナメント進出だ」



「あ~~っ! お前等は!!」


 雲一つないテニス日和の青空の下。

 いきなりな言葉を私達にあびせるその人の名前は夜叉姫さん本人。

 とりあえず、事の経緯を説明しよう。


 私達は全員が勝ちあがり、今日この日の決勝の舞台にあがったわけなのだが選手宣誓がその夜叉姫。

 しばらくは普通に挨拶をこなしていたのだけども、私達の姿を見つけるやいなや選手宣誓もそっちのけでこの有様である。


 しかもただ叫んでくれればまだいいものの、しっかりと私達を指差して叫んでいるあたり。確信犯めいたものを感じる。

 会場の視線が痛い……


「ここで会ったが百年目! 特訓をかさね進化した私とバクテンオー……いやバクテンカイザーの力とくとその目に焼き付けろ!!」


 もう、主催者側はおいてけぼり。マイク片手に夜叉姫の世界に突入してしまっている。


「爆裂機動! レッツゴーーーーー! バクテンカイザーーーーッ!!!」


 バチンと指を鳴らすも、うんともスンともない。

 それはそうだ、重力圏内じゃ安全装置が働いて出てこない。


「うおお! なぜだカイザー! なぜ来ない! うわっなんだお前達!」


 慌てふためく夜叉姫を大会運営委員の人達が担いでいってしまった。

 なんだろう、すっごいこの大会に不安感を覚えるんだけど……

 そんな感じでとどこおりまくりの開会式をよそに大会を始まった。

 私とマヤはみんなと別れそれぞれの控え室へと戻った。


 ここまで出来すぎな展開だったけど、一回戦でエクレアとアルミ、ドロシーとフェイフェイがぶつかてしまうとは思わなかった。

 私達も準決勝まで勝ちあがらないと目的の夜叉姫に当たれないし、そもそも夜叉姫も勝ちあがってこないといけない。


 そもそもなんでゲストなのに普通に参加してんだか……

 まぁ、あの性格からしてガチで勝ちにくるとは思うけど。

 さて、シード枠という事でカンザキさん達が最初の試合が最初か。

 なんだかんだでカンザキさんの試合は始まって見るまで見る事はなかったしなぁ。


「カンザキ・ゲンゾウ、ムー・ロズウェル組み対ワッキヤーク・マケヤク、モブ・ナマエナシ組み、コートへどうぞ」


 カンザキさんとムーの名前が呼ばれて本選の最初の試合が始まる。


「マヤ、はじまるよ」


「うん、いざ試合となるとどんくらい強いんだろう」


 なんだかんだ言って、いざスポーツとして覚えてしまうと強い人の戦いってのを見てみたいと思ってしまう。

 これも私の負けず嫌いのサガかな。


「さぁ! 頑張りましょうカンザキさん!」


「フッ……任せておけ……」


 会場が声援に包まれ。

 そして……その声援が一瞬で止んだ。


「……カンザキ選手、すぐに着替えてきてください」


「……ッ!」


 淡々とした口調の司会進行に目を見開いて苦悶の表情を見せるカンザキさん。

 だってカンザキさんメイド服のまんまだし……


「カンザキさん! やっぱり駄目じゃないですか!」


「……なぜだ……この大会のために……新調までしたというのに……」


「君は前大会でも服飾で問題を起こしているね、早くしなければ失格扱いにしますよ」


「俺の……戦いは……終わった……」


「あ、待ってください! カンザキさん!! カンザキさーーーん!!」


 ガックリとうなだれて控え室に戻るカンザキさんと慌てて追うムー。

 普通のテニスウェアに着替えて戻ってきた時のカンザキさんの顔に覇気は全くなかった……この人は何をしに来たんだろう……。


「モブ、シード選手と当たったっていう時点で諦めてたが、これなら行けるぜ!」


「ワッキ、こんな名前でも俺達は輝けるんだ! 神は見捨ててなかったんだ!」


 試合開始。

 終了!


「ゲームセット! 勝者カンザキ・ゲンゾウ、ムー・ロズウェル組み」


 いやー、一方的な勝負展開だった。


「やりましたね! いやー、ワッキヤークとモブは強敵でしたね、カンザキさん!!」


「フッ……これもメイドのたしなみ……当然の結果だ……」


 二人のコメントはさておいて。まぁ、相手は気の毒だったけど……名前が名前だし、しょうがないな。

 やっぱりカンザキさん強いな、それにムーも思った以上に強い。

 当たるとしたら決勝か、ちょっとワクワクしてきたぞ。


「いや~、レベル高いねぇ」


「でも、今の私達ならいけます。折角なんですし、狙うは優勝ですよ」


 マヤもやる気ムンムン、せっかくだしね。


「ってかさ、初めてすぐの私達がここまで来れるってこの大会ってそんなに凄くないんじゃない?」


「ええ、凄くないですよ」


 ガクッっとずっこける私。


「あれ、知らなかったんですが? 今、KANATAのハマってる漫画がテニスの覇王様って漫画で、テニスがしたいからってスケジュールの都合で出れそうな大会に飛び入りで来たんです、大会の名前もKANATAつき納涼凄い花火大会チバテレビっていうのです、テレビ局主催の民間イベントみたいなもんです。読みます? テニスの覇王様」


 そう言ってマヤはビデオボードを手渡す、私はまるで興味が湧いてはこなかった。

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