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ワイルド・ワイルド・ガールズ  作者: 虹野サヴァ子
後編『月よりも優しい少女達』
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テニスのメイド様 その2


「……説明は以上だけど。他に質問はある?」


 マヤのルール説明をとりあえず頭に叩き込む。

 私としてはルールどうこうよりもこのヒラヒラしたミニスカートの方が気になる……恥ずかしい。


「このスカートじゃ武器もそんなに隠せないし、パンツも見えちゃうじゃない?」


「テニス道はパンツを気にしない心を持つ事から始まるんです!」


「廃れちゃえよそんなスポーツ!!」


 マヤがドヤ顔でそんな事を言うけど、実際にはそうじゃないだろう。

 実際にそうだとしたらエクレアの言う通りだ。

 まぁ、パンツではないのだけど。でも、恥ずかしい……。


「ルールはいいとして、マヤは怪我は平気なの?」


「大丈夫だよエクレア、ジョニーに毎日治してもらったし」


 そう、あのツヴァイにひっぱたかれた怪我を治すのには随分とかかったのだ打撲とかならいざしらず切り傷は私の能力では右から左とは治せない。


 かといって、新陳代謝を高める能力だから無理やり治すわけにもいかないので、ここんとこ毎日治療していたのだ。

 まぁ、言う通りほぼ完璧に治っている。


「今回のルールはダブルスだから二人一組になるようなんだけど、とりあえず経験者と未経験者で組んだほうがいいかな?」


「経験者ってフェイフェイも入るの?」


「まぁ、三人はそもそもやった事がないっていうしね」


「じゃあ、ドロシーはフェイフェイと組もうか!」


「ん、アルミお願い」


「エクレアがアルミと組んだから私はジョニーだね、どうしよう、一組はコートの外で練習して……」


「うわぁ! カンザキさん! 絶好のテニス日和ですよ!!」


 どっかで聞いた事のある、底抜けに明るい声、それにその声がどっかで聞いた事のある名前を口にしている。


「「「「「「ムー!」」」」」」


 男の子用のテニスルックに身を包み、不必要なまでに爽やかな笑顔でコートを見ていたムーに私達の視線が集まる。


「あ! 皆さんお揃いで、奇遇ですねこんな所で!! あ、エクレアさん体が緑色に変色してたりしませんがッ!!?」


 挨拶しながらエクレアにむかってダッシュしてきたムーをラケットでひっぱたくエクレア。

 ムーはもんどり打って勢い良くコートに転がって、地面を苦しそうにわしゃわしゃと少しかきむしると、やがて動かなくなった。


「さて、と。こんにちはカンザキさん」


 恒例の儀式のようなものを終えるとエクレアは遅れて出てきたカンザキさんに目をやる。

 ……思えばカンザキさんがメイド服じゃない姿を初めて見た気がする。


「モモにはあいさつなしか!」


 そう怒りながらカンザキさんの後ろに隠れていたモモちゃんが顔を出す。

 あ、モモちゃんのテニスルック可愛い。


「ごめんモモ、んでまたどうしてこんなところにいるんです?」


「テニスをやりに来た、大会が近いからな」


「カンザキさんも大会に出るのかい?」


 フェイフェイの言葉を聞くなり眉をピクッと動かすカンザキさん。


「無論だ……まさかお前達も大会に出場する気か……?」


「そうなんです、でも私もジョニーもエクレアも初心者なんです」


「そうか……テニスはいいぞ。そして俺は強い」


「あ、そうだカンザキさん。できたらテニス教えてくださいよ」


 マヤが話しを切り出すと優しいカンザキさんが珍しく鼻で笑う。


「今回は敵同士。普段ならともかく、敵に塩を送るような真似はできない……」


「そうだ、できないぞ!」


 確かにそうかもしれないけど、カンザキさんって以外とケチなんだな。

 そう思っていたところにマヤがカンザキさんに耳うちする。


「黒髪に映える白いカチューシャ……写真撮影OK……」


「何をやっているお前達……はやく並べ……練習を始めるぞ……」


 チョロかった。


「そうだそうだ! はやくならべ!はじめるぞー!」


 たぶんモモちゃんは何もわかってない。

 そしてカンザキさんもそれ以上に何もわかってない。いや、何も考えてない。

 経験者が練習相手になってくれるのだから文句はないけど、いいのかなぁ。





「勝てねぇよ!」


「強すぎるよ」


 私とマヤがコートにがっくりとうなだれた。

 そんな私とマヤを見下ろすのがカンザキさんとモモ。


 カンザキさんは強い、強いでわかるんだけどさ。モモちゃんの飛んで移動って反則じゃないのか? どんなに左右に打ち分けても打ち返されるし。


「あれから五日、素晴らしい上達だ……そう悲観する事はない……」


 私とマヤにポンと肩に手をのせるカンザキさん。


「お前達が学園の柱になれ」


「「何ですそれ?」」


「気にするな……言わないといけない気がしただけだ」


 ちょっとした間が訪れる。


「モモちゃん強いね」


 話しをすりかえるようにマヤがモモに話しを振った。


「ああ、とっくんしたからな! カンザキともーとっくんしたんだぞ! がけからころがるいわとかこわしたり! あれはキツかったぜー!」


「モモ、その特訓は別な時だろう」


「……あ、そうかー! モモちょっとまちがえた!」


 さらっと流したけど、何の特訓で崖から転がる岩を壊したんだ。

 いたいけな幼女に何をさせてるんだろうアンダーソン商会は……


「そういえば商会は何か仕事を受けてましたけど、カンザキさん達がこんな事してていいんですか?」


「ああ! それはですね!!」


 ガッ!

 いきなりムーが飛び出してきたもんだからエクレアじゃないけど驚いて反射的に顔面を殴ってしまった。

 ま、いいか。


「俺の趣味というのも半分あるが、モモを少しでも一目のつくところに見せるという目的もある。もしかすれば知っている人がいるかもしれないからな」


 ああ、そうか。

 つい忘れがちになってしまうけど、モモちゃんは商会が仕事の際に保護してそれからずっと一緒にはいるだけで、モモちゃんは親の事がわからないんだった。


「ただ、一つだけ問題があるんだが……」


 なんだろう……

 そうか、私達にしてみればもうあたりまえだけど、モモちゃんは空を飛べる特殊な能力があるんだ。

 それを見て悪い奴に目をつけられるかもしれないし、そうじゃなくても問題になるかもしれない。


「モモが空を飛ぶのはどうやらルールでは反則らしくて出場できないんだ……」


「やっぱりそうっすか」


「まぁモモがむりやりおねがいすればBBもしぶしぶなっとくするからな、そういういみではだいじょうぶだ」


「BBさんも大変ですね……」


「はい! そうです! あとはBBじゃなくてブリ・ブラって恥ずかしい本名を呼びまくればたいがいの無茶は通ります!」


「それにこんかいはマチコもエロマンガでいそがしいっていってたしな」


「一番大変なのはアンナさんだね……」


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