スーパーソニックジェットガールズ その5
ダイアが戻された後にアルミが何を話したのか私達が知る術はないし、聞きたいとも思わない。
でも、アルミはこの星に帰って来てから何か変わったような気がする。
私達がそう思うんだからドロシーとフェイフェイはもっとそう思っているだろう。
だから聞きたいとは思わない、いずれ何があったのか話してくれるその日がくるとアルミを信じているのだから。
「お嬢様、剣をお持ちしました」
私達が屋敷に戻ってからすぐに、アルミは決着をつけるとだけ言って中庭に歩を進めた。
あのプライドの高そうなダイアが何も言わずにセバスチャンを呼びつけレイピアを持ってこさせる、話の流れから察するに姉妹で剣をまじえようというのだろう。
「ドロシー……」
アルミの言葉に反応してドロシーは一枚のカードを投げる。
ぶぅんという音と共にカードがアルミの武器である大型の蛮刀へと姿へと変える。
しかし、それを見てダイアは再び激昂。
「そのような正反対の太刀筋……やはり姉さんは私とは相容れないのですね」
「ダイア……私はそうは思ってないわ」
「よくもぬけぬけと! 姉さんは家を捨て、私は家に残った。流れに身を任せた姉さんと違って私は流れに力ずくで逆らった! 結果、何も残さなかった姉さんと違って、私は全てを取り戻した。全く違うじゃない!」
ダイアの素早い攻撃がアルミを襲うものの、アルミはまったく動じない。
その攻撃の全てを見切っている。
私が剣だけで戦ったら五分五分ってところの腕かな、まだちょっと私の方が強いかもって腕。だからダイアは決して弱くない。
でも、それだけではアルミを捕らえる事はできないだろう。アルミはまだ剣さえ振っていないのだから。
「確かに私は家を出たわ……そして一切ヒルデの名前を使わなかった、確かに私がこれまで何かを自分で決めた事はほとんどなかったし……成長なんてしてないかもしれない。でもやっぱりそれはあなたも同じ。ダイア、あなたは結局ヒルデの家という名前を利用してその中であがいていただけ。もとかるある物を使ってもともとあったもの無理やりとりかえしただけ。そう……ただそれだけ。大変だったとは思うけれど、あなた自身が手に入れた物なんてそれだけ」
「それで何がいけなくて? 私はそれで手に入れてきたの、何も手にしなかった姉さんとは違うわ!」
「そう……わかったわ。そう思うならダイア、私を殺しなさい」
え?
そういってアルミは剣を下ろす。
「あなたの考え方では私は手に入らないわ、だから私を殺しなさい。力ずくで手にするのならそれしかなわ、私が死ねばあなたの心の中の私は手に入れた事になる。さぁ……心臓はここよ」
「なっ、何を馬鹿な事を言ってるです!」
「そうよ姉さん、そんな無茶苦茶な」
「できないの……? 私の友達を傷つけても自分の友達を傷つけてもできた事がなぜできないの? あなたのやり方はそういう物なのでしょう? あなたはヒルデとして行動した。でも、ダイアとして行動したとは思えない」
「……」
「私をそうやって手に入れても……私が死ねばドロシーもフェイフェイも、ジョニー達も黙っていないわ。私は流されつづける中で……うまくは言えないけどそういう物を手に入れたの……だから私が怒った理由もわかるでしょう」
「……」
「……駄目な姉ね、あの時はあなたを思うあまり……私はあなたのそれに気がつけなかった……だからそれに盲目になった……今のあなたがいるのは私のせい……ごめんなさい」
「……姉さん……姉さん! 姉さんがいたからいつも私は!!!」
ダイアがアルミに斬りかかった。
「でも、だからって私の友達に手をあげた。だからあなたに初めて罰を与えるわ……お互い……未熟ね。これから……学んでいきましょう。」
いつも眠そうにしているアルミの目が開き。最小限の足運び、最低限の剣さばきで、最速の一撃を放つ。
ゴッ!
鈍い音がして蛮刀のみね打ちがダイアの後頭部を殴打した。
「それでも……姉さん……大好きよ……」
そう言って気を失うダイア。
「目が覚めたら……二人であの日から……やりなおしましょう……」
崩れ行くダイアをアルミが抱えた。
こうして、主にプリクラを巻き込んだ壮大な姉妹喧嘩は幕を下ろし。
ダイアが目を覚ましたのはその日の夕方だった。
「はっ……姉さん……それに皆さんも……」
「目が覚めた、ちょっと強く叩きすぎたかしら……久しぶりで加減がわからなくて……ごめんなさい」
ダイアはアルミの言葉よりも私達を見て目をそらした。
「すみません……皆さんには謝罪だけでは足りないほどのヒドイ事を」
「まったくだっちゃ! どうおとしまえつけてくれるだっちあがっ!」
「フェイフェイ達は気にしてないよ~、あれじゃん? 若気の至りとかそういうやつ、さぁ盗んだバイクで走り出せ! あがっ!」
「何でいきなりひっぱたくっちゃ! フェイフェイはあのお馬鹿さんと遊んでただけだからいいっちゃけど! 私はこの姉妹の仲を取り持とうとそれはそれは頑張ったっちゃよ!」
「そーそー、フェイフェイ聞いてたよ! それはそれは恥ずかしい台詞で……」
「わーーーわーーーーやめるっちゃーーー!」
そういってもみくちゃになる二人。
ドロシーじゃないけど、やっぱりこの3人もいいチームだと思う。
「ごめんね騒がしくて。でも私も気にしてないし、ジョニーもエクレアも気にしてないから、もう忘れちゃって」
「……ありがとうございます。私もいつかこういう……」
バタンとドアが開いた。
「お目覚めですかダイア様、ご気分はいかがでしょうか?ディナーはいかがいたしましょう?」
「セバスチャン……」
「あなたは痛みを感じてる……でも、だからといって一人では生きていけないものよ」
―――――3日後。
「アルミ、本当にいいの?」
「はい、姉さんの居場所というのがこれでもかというほどわかりましたから」
そう言うとチラリとギャーギャーと騒いでいるドロシーとフェイフェイをちらりと見るダイア。
「まぁ、姉さんは無気力すぎるのから皆さんのようなエネルギッシュな方と一緒くらいで丁度いいかもしれません」
「そうね、私もそう思うわ」
……私達は遠まわしに馬鹿にされてる気がする。たぶんアルミも。
まぁ、アルミは気にしてないというか気がついてないような気もするけど。でも、もはやトレードマークとかしたアルミの寝癖に文句を言わないあたり。
ダイアも随分と変わったんだなと思う。
「で、これからどうするのジョニー?」
「う~ん、実はカイバーベルト社の社長にあん時に会ってさ。その人が黒幕みたいなのよ」
「って、そんな事があったっちゃか? って黒幕が白状しちゃっていいっちゃ?」
「うん、それが無ければカイバーベルト社に殴り込んでやろうかなと思ったんだけどさ。そう言われるとね、フェイフェイのシャオロンの問題もあるし」
「そういえばダイア……あの人達の事を何か知らないの?」
「期待にそえれず申し訳ありませんが、あの人達は戦闘機や武器の取引で会っただけですので」
「う~ん、あいつ等がどこにいったかもわからないし。かといって会社に乗り込んでも駄目な気もするし」
エクレアも頭をひねる。
「そういえば夜叉姫なんてどうかな? あの人有名人じゃない!」
「そういえば彼女はグラントさんと別な話しをしていたような……」
そういえば、あの人もあのメンバーの中では異彩を放っていたからな、ダイアが言うのだから間違いないだろうし。
「あ、私ならKANATAのスケジュールとかわかりますよ」
「よし、あの面子じゃあ一番やりやすそうだし。まずは夜叉姫を相手にしますか!」
「だっちゃ、それじゃあ今度はこっちから追い詰めてやるっちゃよ!」
目的も決まったところでクロックスの発進OKのサインが出る。
「姉さん……お気をつけて」
「……おちついたら帰って来るわ」
そしてクロックスは惑星ラシアを後にした。
一つの姉妹の仲を取り持ち。
私とエクレア、いや私達が私達であると考え直した思いで深い星になった。
飛び立つ船の中で、私はグラントのじいちゃんの事を考えていた。あの爺さんも私達の事を知っていた、夜叉姫と別の話しをしてたってのも私のどこかで気にかかる。
まぁ、もう何でもいいや。
私もエクレアも、もう迷わない。もやもやはあの連中のかわりにぶっ飛ばした。これから先に何が起こっても皆で乗り越える。
私達の反撃の狼煙は今あげらたのだから!
「ブラニー、このデータの事は二人には伏せておけ」
「はっ、先日より二人の様子の変化がきになりますのでその方が私もよろしいかと思います」
「ブレンダの様子は?」
「……変わりありません」
「事がうまく運びすぎていると思ったよ……まぁ、当初の予定に戻すだけだが。計画の遅延も現在はない事だし、あとは彼女が目覚めるのを待つだけか」
「はい、あとはブレンダが残したログの通りにオデッセイを機動させるだけかと」
「あとは、グラントの都合しだいか……ククク……ヒャハ……ヒャハハハハ! あと少しだあと少しで! 過去の忌々しい汚点を……ヒャハ! ヒャヒャヒャヒャヒャ!!」
Bey Bey Space Girls.
See You Next Pranet!