彼女の戦い
マヤ編 ~彼女の戦い~
「う、ううっ……これは……」
混濁する意識の中でマヤは朦朧としながらも起きあがった。
「睡眠薬……なんでまた……」
彼女はダイアのもてなしを受けていたはずだった。
しかし、急激な睡魔に襲われたのは覚ええていた。周りではジョニー達も寝ている。
どれだけの効果の睡眠薬をどれだけの量を盛られたのかは想像だにできなかった、父と一緒にくらしていた時に毒とかそういった訓練を受けていたとはいえ、さすがに長い時間の中で耐性はだいぶ弱くなっていた。
それでも、すぐに目を覚ませたあたり忍びの訓練は生きていた。
「ドロシー……フェイフェイ……ジョニー……アルミは別としてもエクレアは……」
ふらりふらりと立ち上がり椅子に座ると考えをまとめはじめた。
「えっと……エクレア……ツヴァイとドライがおかしくて……KANATAにさんが来て……ご飯に……そうだエクレアがいないんだ!」
マヤはふいに立ちあがり廊下のドアを空けて左右を確認する、次に窓から顔をのぞかせる。
不意にマヤの意識が覚醒した。
なびく銀髪。
「ブラニー……それにあれはツヴァイとドライ……エクレアも!」
連れていかれるエクレアを見てマヤは頭をフル回転させる。
「みんなを起こして……駄目だ、三人も起こしてたら見失う……ジョニーだけでも、いやブラニーと会わせるのはまずいし……ドロシー達は……余計な面倒を起こしたらダイアとしこりを残すか……くそっ、やっぱこうなるのか!」
マヤはため息交じりにそう呟くと窓から跳ねた。
「うちの子をこんな夜中にどこに連れて行くんですか?」
「あらあら? あなたはマヤちゃんですね」
マヤが呼びとめると、特に慌てた様子もなくツヴァイが答えた。
「エクレアさんは私達が連れていきます、理由は昼間に説明した通りです。しこりは残るかもしれませんが、こちらにも事情もあります」
「そんな事は聞いてません!この人さらい!」
「……ジョニーはいないのね。今回は任務を優先するつもりだったのでいいとしましょう」
「エクレアは返してもらいます」
「昼間説明しましたのに……」
「ツヴァイ、ドライ。まかせます」
ブラニーはツヴァイとドライからエクレアを預かると歩を進めた。
「あ、こら! 待ちなさーい!」
マヤが走り出そうとしたところで、マヤの足元がドカンと爆ぜた。
「うふふ♪ 今宵のハンマーは一味違いますよ~♪」
「邪魔しないでよ!」
「不可解です、ジョニーならまだしもなぜあなたが私達の前に立ちふさがるのですか?」
ドライの言葉にマヤは臆する事なく答えた。
「何言ってるの? 友達だからに決まってるでしょ、もうどっちかと言うと姉妹みたいなもんだけどね!」
その言葉にドライがピクリと反応する。
「なら……私も負けられません」
ドライの手からブーメランが投げられる。
「この前の狭いところならまだしも、この開けた空間で!」
トンと跳ねてブーメランの軌道を避ける、しかしブーメランとマヤがすれ違う瞬間に。
「あんたを……ターミネートします」
「何っ!?」
人型サイズの大型のブーメランからドライ言葉を合図に小型のブーメランが無数に飛び出しマヤに襲いかかった。
さすがに不意の攻撃でマヤも避けきれる事はできず、髪をしばっていた紐が切られ髪が乱れる。
ドライの手元に最初に投げた大型ブーメランが戻る前に、発射された小型のブーメランが再び収納されていた。
「ていやー!」
崩れた体制でいたマヤの額にツヴァイのハンマーが振り下ろされた。
ガコッ!!
前のめりに倒れ地面に勢い良く顔面を打ちつける。
もう、マヤの意識がまだあるというだけで驚きを隠せないほどのクリーンな一撃だった。
「やりました! 姉妹の絆の勝利です!」
「姉さん……これはやり過ぎです……」
「加減なんてできないですよ~。でも、マヤさんならこれくらいなら死にはしないでしょうし。姉さんがいないと計画進まないんですから。ほらほらダイアちゃん行きましょう」
「……ごめんなさい、でも私達は……」
マヤは地面をかきむしりながら立ちあがる努力を試みる。
しかし、足に力がはいらない。
「くそっ……何よ……ジョニーとエクレアがあんなんじゃ……私がしっかりしないといけないのに……」
マヤが体を起こした時、もうツヴァイとドライの後姿も見えなかった。
額から流れ落ちる血がポタポタとマヤの靴を染めた。
「二人は……友達だから……私の初めての……大切な友達だから……絶対に! こんなんじゃ!! 終わらせない!!」




