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ワイルド・ワイルド・ガールズ  作者: 虹野サヴァ子
前編『太陽よりも激しい少女達』
45/123

宣戦布告は右の拳で その4


 …………ん。

 ……あれ?

 気がつくと私は横になっていた。

 頭がガンガンする、視界もぐにゃぐにゃしてるし。

 状況を整理するべく、最後の光景を思い出す。


 カナタさんが来て、メインディッシュが届いて、カナタさんとツヴァイが五月蝿くてダイアが怒って席を立って、アルミがそれを見て脅えて、私達が気まずくなって、デザートが届いて、そんで急に眠くなって、最後に見たのは慌てるエクレ……


「やられた!!!」


 痛む頭を抑えて私はベットから跳ね起きた。

 隣でドロシーとフェイフェイがぐっすりと寝ていた。


「ちょっと! ドロシー、フェイフェイ起きて!」


「フェイフェイ……思うんだけど……もう食べれないよ……」


「う~ん……むにゃむにゃ……あと5分です……」


「やられたわ! 睡眠薬よ! エクレアとアルミだけじゃなくてマヤもいないの!!」


「あんにゃ~……モガモガ……」


「寝てるです……起きないですよ……」


 スパコーン!!

 なんだか起きてるくせにふざけているような寝言に腹が立って思わずスリッパで二人の頭をひっぱたく。


「いたた、何するです……」


「フェイフェイ何だか頭がいたいのに~」


「何をノーテンキな事を言ってるの! 大変だよエクレアもアルミも、マヤもいないの!」


 そう言ったところでギィと扉が開いた。

 ふと振りかえると、これでドロシーもフェイフェイも目が覚めるだろうという事態。


「よ、よかった。起きてる……みんな大変……」


「「「マヤ!!!」」」


 トレードマークのポニーテールはほどけ、割れた額から流れた多量の血でその長い髪が服にへばりついている。

 私達を見て安心したのか、ドアを潜った時点で転びそうになるのを私が抱きかかえた。


「エクレアが連れていかれたよ……アルミはわからないけど……あと、ブラニーもこっちに来てる……」


「にしても何だってこんな事になったのさ!?」


「サンプルがどうとか……わかんないけど……とにかく……エクレアが危ない……追っかけたらあの二人にやられた」


「何で私達を起こさなかったの!」


「……ブラニーもいたからね……余計な事を言われてジョニーとエクレアを混乱させたくなかったし……」


 なんてこった……

 はらわたが煮えくりかえってるのが自分でもわかる……

 それによりにもよってまたあの女のせいか!


「この血の跡は!? マヤ様!!?」


 床にしたたった血をおかしく思い調べていたのだろう。

 セバスチャンさんが血相を変えて部屋に入ってきた。


「誰か、治療道具をはやくここへ! 大丈夫ですか、マヤ様!?」


「悪いんだけどセバスチャンさん、知ってるならダイアの居場所を教えてもらえますか?」


「ダイア様はもう当屋敷にはおりませぬ……」


「まさかブラニー達と一緒です!?」


「……ハッ……そのブラニー様からこちらを……」


「何です?」


 渡されたのはビデオメールが見れるボードだった。


『おはようジョニー、ツヴァイとドライが思ったよりも手間取っていたみたいでね、こっちにも事情があるからエクレアはもらっていくわ。いや、もとを正せばこっち側だから返してもらうって言った方がいいのかしら?あなたが起きる頃にはエクレアも全てを知ってるでしょうし、別れが辛くないように配慮したつもりよ。あ、安心してママのこの仕事が終わったらあなたは私個人の意思で殺すから。では私は仕事が忙しいから、オ・ルヴォワール』


 はっ、はは、ははは

 気がつけば私は心の中で笑っていた。

 こっちの気も知らないで!

 エクレアの気も知らないで!!

 ツヴァイとドライの気も知らないで!!!


「じょ、ジョニー?」


「仕事が忙しい……?はっ、はは、ははは、何ソレ……」


「ジョニー!?」


 私はビデオボードを宙に投げると、そのまま停止した画面のブラニーの顔面を殴りつけていた。

 ガシャンと画面が砕け、ビデオボードが2,3回地面をバウンドして転がった。


「ざけんじゃないわよ! こっちから喧嘩を売りたいと思ったのは初めてだわ! 忙しいっていうなら、こっちから出向いてってブン殴ってやるわよ!!」






                                 Bey Bey Space Girls.

                                 See You Next Pranet!

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