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ワイルド・ワイルド・ガールズ  作者: 虹野サヴァ子
前編『太陽よりも激しい少女達』
16/123

宇宙の地平線 その3

「さてと、ルーシアさん」


 三人そろったところで私からルーシアに切り出す、私達からしてみればこっちが本題だ。


「ここしばらくこの宙域でおかしな噂があって、私達はそれを調査してるんだけど。ルーシアさんここ最近この宙域で何かしてます?あと、声だけじゃなくて映像もこっちに流してほしいんですけど?」


 そう、今のところルーシアさんの声は届いているけど、いわゆるサウンドオンリー状態。こっちとしてはここまでしてあげたからには顔を見せていただきたいとこ。


「えーと……すいません、操縦席の映像を送る機能が見当たりません……」


「古い型だからですかね?」


「ぜんぜん見たことのない機体だからねぇ」


 エクレアとマヤも頭を捻る。人工AIで動いてる機体ってわけじゃないし内部カメラが無いっていうのは聞いた事ないんだけど、確かに見た事ないしなぁ。

 こんなのはメーカーとか作る側の変な気まぐれもあるだろうし、しょうがないか。


「それじゃ、ルーシアさんはどうしてこの宙域にいるのか、どれくらい前からいるのか、あと襲われてた相手の事を教えてくれますか?」


「はい、事情で詳しくは言えませんけどこのポイント付近に父がいるんです。一人でこっちに住みこみで働いていて、私もやっとこっちまでこれたので会いにきたんですが、そしたら急にあの機体に襲われて……」


 そう説明してくれるルーシアさんだけど、イマイチ意味がわからない。

 嘘はついてない様子だけど、なんだかこれじゃ解決のしようがないなぁ?


「父は宇宙技術の開発者でいつも忙しくて、いつもメールのやりとりばかり。父との記憶は子供の頃にちょっと遊んだくらいしか記憶しかなかったんです」


 瞬間、私の心がしゅんとなった。

 この人も私と似たような人だ。

 そう、私も父……いや、両親と過ごした記憶があいまいだ。

 物心ついた時にはすでに兄と姉と過ごしていた記憶しかない。

 それを不幸だと思った事もないところも一緒、でも会ってみたいという気持ちも。


「私も父と似たような仕事について、やっと久しぶりに会えると思ったのに……オヨヨ……」


 って、私がセンチメンタルな気持ちに浸ってる間にルーシアさん泣き出しちゃったよ。

 どうしよう、こんなシチュエーションはあんあまなれてないぞ。慌てて二人に視線をおくっても二人とも困った顔してるし。


「え、えっとお父さんとはどんな事して遊んだんですか?」


 マヤがとりあえず場をつなぐために会話を切りだしてくれた、グッジョブ!


「はい、トランプで遊んでくれました」


 トランプ? 何ソレ?


「なぁ、トランプって何さ?」


 私のかわりにエクレアが聞いてくれた。


「えーと、いろんなゲームがあってですね……何て説明しよう」


 なんかルーシアさんも困り始めた、泣いたり困ったりと忙しい人だ。泣かれるよりははるかにいいけどさ。


「ジョニー、エクレア。ソリティアはわかるでしょ?」


「「はいはい」」


「あれのオリジナルっていえばいいのかな? あとはスピードとかポーカーとか。あれを昔は紙でできたカードでやってて、それをトランプっていうんですよ」


「「あー、なるほど」」


 やっと納得。そういえば数字とかマークの数とか、みょーに共通するものがあるなぁって疑問に思った時が確かにあったな。


「へぇ、楽しそうね」


「はい!」


「どのコンピューターにも入ってるからねアレ」


 エクレアの言うとおり、ジャンク街の店の外のワゴンのご自由にお持ちくださいコーナーの旧世代のOSにすら入っている普及率で、さらに台所で見かけたゴキブリのようなインパクトがあるからなぁ。


「父が言ってました、コンピューターは決められた範囲でしか物を考えられない、でも人は自分の経験や考えでその先まで到達できるんだって。だからいつか宇宙の地平線も越える(・・・・・・・・・・)だろう(・・・)って」


 宇宙の地平線、宇宙は宇宙というものが誕生したその瞬間から今この時も拡大を続けている。

 昔見た教育番組での知識だけど、拡大しつづけている事は端までいってもループする事はないって事。つまり、宇宙には伸びつづける端っこが存在するわけでその端っこの事を宇宙の地平線と呼ばれているらしい。


 ワープ航法は地点と地点を結ぶわけだから、存在するその場所を認識できなければ使えないし。

 ただ、爆発的なスピードではないらしく、どんだけ宇宙が広いかもわかんないけど、それこそ天文学的時間を費やして、頑張ってまっすぐ進み続ければ到達する事もできるかもしれない。

 と、やっぱり教育番組でやっていた。


「ふーむ、深いですね」


 こういう話しが大好きなマヤがうんうん頷いてる。


「ところでですね、父が見つかるまでの護衛をたのまれてくれませんか?」


「嫌です」


 私はキッパリと言い放った。


「ええっ、そんな即答しなくても……そこをなんとかお願いしますよ」


 キッパリと断ってるのに怯むことなく食いついてくる、でも嫌なものは嫌。

 エクレアもマヤも「嫌です」オーラを振りまきながら押し黙っている。

 嫌な理由は三つ。


 1、これは仕事の範囲じゃない。

 2、手がかりが曖昧だし見返りが少なすぎるし、さらに余計な気遣いをしないといけない。

 3、もしもの場合の保険が適用されにくい。


 この三つがでっかい。

 本人の顔をまだ見ていないとかそういう問題はとりあえずどうでもいい。

 特に2と3はマジで厳しい、なので渡る世間は鬼ばかりという事を教えてあげるためにも、ここはやっぱりキッパリと断るのがスジ。


 すると再び大きな衝撃がクロックスを襲い、私が二の句を告げる前に船体が大きく動いた。


「攻撃!? 直撃!? そういえばジャミングはまだ生きてましたね!」


「そもそも、私達はそのジャミングの元の調査にきたんだからね!」


 マヤが船のカメラをいじくりまわして外の機影を探しまくる、レーダーを見ないのは理由があって、これが今回の話しなのであるのだが。


「いや、着弾点はずれてたみたい。かすっただけで船体の損傷は少ないようだけど、はやくしないと二波目がくるよ!」


「あー、船検が目の前だっていうのに~!」


 あ、仕事を受けるにあたって嫌な理由の四つめをマヤがいってくれた。船検、いわゆる車でいうなら車検が近づいているために余計な傷とかトラブルとかを背負いたくない、っていってもこの状態じゃどうしようもないか。


 この前の仕事でお金にはかなり余裕があるけど、それでも余計な出費はしたくない。


「もう、嫌とも言ってられないわ! とりあえず手助けだけはしてあげる!」


「機影発見!二波目きます! エクレア操縦かわって!」


「あいよ!」 


 ぐぐっ。

 マヤがエクレアに操縦桿を渡すと、エクレアは不意の攻撃でレーダーがないにも関わらずカメラの目視だけで敵のレーザーを避ける。

 船体が大きくかたむき、私とマヤが壁に向かって吹き飛ばされる。


「これはキツイわ、とりあえず三人でなんとかして!」


 レーダーが使えないため、モニターからあ目を離さずにエクレアが言うと手だけふって挨拶をする。

 こうなりゃヤケだ。

 確かにこの船の操舵を空にして落とされたら戦闘機が超空間に戻ったときに私達は宇宙に放り出される事になる。


「外に出たら目標の位置を教えてよね! アンダンテ起動!」


「まずは私がおとりになってクロックスから連中を引き離します! 月凪で出ます!」


 超空間の出口が開き私のアンダンテとマヤの機体の月凪が宇宙に波紋を作り飛び出す。

 私の上でマヤの月凪が変形し、スピードを上げて飛び去って行く。


「報酬とかの話しは後になってしまますから三人ともお願いします!」


 そう、話しを断っていたのはこの子ルーシア。

 私達の船、クロックスにせみのように張りついた型が10世代くらい前の、骨董品のような戦闘機。

 このルーシアの機体、やっぱり見たことの無い種類の上にどう考えても軍事用。


 この戦闘機の編隊といい、どうもこの宙域の状況に関わりがあるとしか思えないんだよなぁ。

 とはいえ、やらなきゃやられてしまうこの状況、やられるくらいなら私達はやる女よ!


「ジョニーもとにかく離れて、なんとかなるようなら私も出るから、これ以上、船に被害。もとい出費がかさまないようにしなきゃ!」


「うん、了解。そういうわけでルーシアさん行きましょう!」


 マヤが大きく動いて囮になってくれてるおかげで、とりあえず私達の船、クロックスに被害がおよばない状況にはなりつつある。

 さて、あとは野となれ山となれだ。


「皆さんの機体はどんな性能があるんですか?」


「えーと、主にマヤのは速度重視の可変機体で兵装は二つの砲門と羽についてる刃、さっきのエクレアのは火力型、兵装はいろいろ使い分けられる砲門二つにオプションで小型ミサイル。私の大型の作業刀と射出ウインチだね」


「あまり戦闘向けじゃないですね」


「まぁ、宇宙でドンパチやるなんて今の時代はないからねルーシアさんの性能も知っておきたいんだけど。作戦も立てやすいし」


「私のはその……兵装は全部使い切ってしまっていて……」


 まぁ、こんなクラシックな機体が戦うってのも想像できないし、察するに希少価値の高い機体なんでしょ。

 ハナっから期待はしてないし、それなら逃げ回ってもらうしか!


「やるからには!」


 戦闘機に変形したマヤの月凪の両翼から二本のビームが放たれる!

 あいかわらずカッコイイ機体だ、機体変更する時は私も可変式の機体にしようかな。

 でも、そんなかっこいいマヤの機体の攻撃は軽く敵機に避けられる。

 っていうか、敵の動きがさっきと違う!なんかキビキビ動いて本気モード?

 うわっ! 大きく旋回してこっちに突っ込んでくる敵機、ヤベェ!!


「さがって!」


 あわててルーシアの機体の前に回り込み刀を組み合わせのスタッグカットラリを構える。

 とはいったものの……凄い早さだ……野球選手って実は凄いのね……


 ダラララララ!


 弾撃ってきたー! カットラリを回して防御するけど数が……

 駄目、防御が間に合わな!?

 私の背後に回り込んでいた戦闘機の頭をマヤの月凪の刃が刎ねた!

 さすが高機動変形機体、すごいスピードだ!


「大丈夫!?」


「サンキュー、マヤ!」


 さぁ、仕切りなおしだ! かかって来い!

 って、あれ? 敵の機体が動かないぞ?


「どうしたんですかね?」


 月凪が飛行機形態から戦闘機の形に戻る。

 戦闘機ではその場所でホバリングするにはむいていないからだ、つまりは今は様子見。

 でも、ホントどうしたんだろう?


「通信はこないねぇ?」


 オープンチャンネルも開いているから通信をくれれば聞こえる、こっちから話しかけるのもアリなんだけど「何でこんな事を!」とか聞くのも何か間抜けのような気がする。


「この宙域の任意的なジャミングはあなた達に関係があるんですか?」


 マヤいいぞ! それなら的を得ている!

 でも質問の答えは言葉でなくて行動で帰ってきた、ゆっくりと近づいてくる敵機。

 攻撃するにしても、なんで飛び道具があるのにリスクを背負って私に近づく必要があるんだ?

 何かおかしいぞ?


「どうします!」


 そう言われてもなぁ?


「どうってもね?」


 思いをそのまま口にする。

 いきなりヤラレルって事はないにしてもどうすっかな?


「様子をみるしかないんじゃない?」


 エクレアから通信が入る、まぁそうとしかやりようがないけど簡単に言わないでよ、めっちゃ恐いよこれ。

 ガインと敵機に腕を掴まれた!

 と、同時に私の横をマヤの月凪が飛びぬけて行く、裏切りおった。


「作業機のパイロット、聞こえるか?」


 と、いきなり私の機体に謎のお爺ちゃんの声が響き渡る。あーびっくりした。

 ……察するに声の主は敵機のパイロットかな?

 私の機体の通信のラインを開いててる人からこんなタイミングではこないだろうし、しかもこんなお爺ちゃんの知り合いは私はいないし。

 そうなると、私達に触れないと通信ができないとしか。

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