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ワイルド・ワイルド・ガールズ  作者: 虹野サヴァ子
前編『太陽よりも激しい少女達』
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宇宙の地平線 その2

「「「ギャーーーーーーーーーーーーーー!!!」」」


 私達の目に映るのは当の昔に製造が終わっているはずであろう、ふっる~い十世代くらいまえの軍用機体!

 それが動いてる! 向かってきてる! お、オバケ!? オバケなの!?


「って、何か様子がおかしいですよ」


 古い軍用機の回りに起こる小規模な爆発、あきらかにあの軍用機、何物かに狙われている。

 でも、相手の機体が見えない。

 レーダーの反応は回りの廃棄物だけ、攻撃している追ってきているって事はレーダーに写ってもいいはず。

 ならば行きつく答えは一つ!


「ステルス迷彩機能のある機体!」


 さすが、極度のホラー嫌いといっても気持ちの切り替えの早いエクレア。

 我に帰ったようにしっかりとした声をあげる。


「どうやら話しが見えてきたよ、あれが幽霊の正体ってわけね!」


「とりあえず、内容にあった骨董品にレーダーに映らない機体。話しはあいますね!」


「くそっ、私の心を踏みにじりやがって!」


 こっちが元気と勢いを取り戻している間に骨董品が軽い衝撃と共に私達の船にへばりついた。


「わ、わ!?」


 揺れる船体に思わず声を上げるマヤ。


「金属伝達通信かな、とりあえず回線開くよ?」


「随分とレトロだなぁ」


 席から振り落とされそうになったマヤの肩越しにエクレアが手を伸ばして、船の通信回線をオープンにする、と途端に声が聞こえてきた。


「民間の方ですか? 巻き込んでしまってすいません。こちらはスマートブレイン社所属、機体名オブセッション。パイロット名ルーシアです」


「あー、はいはい。こちらはあなたの事を調査に来たものです」


「え、!? やった、これで帰れる! じゃあ、早く助けてください!」


 私の返事に感激の声をあげるルーシア。でも、だからといってそんな事を言われても困る。


「いや、えーと……助けるって話しでは無いので……それになんかよくわからないし」


「やっと帰れるんです、はやくしないとやられちゃいます。ここまでくるのにどれだけ苦労したと思ってるんですか! 早くこのステルス機をどうにかしてください!」


「何にせよジョニー、このままじゃとばっちり食らうし。成り行きで助けるしかないんじゃない?」


「しぶっててもしょうがないですしね」


 確かにその通りなんだけど、なんか背中と心にひっかるんだよねぇ。

 なんか本能がコレ以上かかわるなって警告をしてるっていうか、気持ち悪いんだよなぁ。

 それでも、確かにこっちも攻撃を受けている以上はしょうがないか。


「やっと出番ですよエクレア!」


「おぅけぃ! 正体がわかれば恐くない目にものみせてやるぜぇ!」


「とりあえずここはしのぐけど。そのかわりルーシアさん、ある程度の事情だけは後で説明してくださいね」


 鼻息荒く私の横を通りぬけて超空間ゲートの前に立つエクレア。

 敵の持つステルス迷彩機能は便利なかわりにとてもデリケートで機体の表面にある程度の傷がつくとそこまで透明化させる事ができないシロモノだから、エクレアの機体の持つ火力がモノをいうのだ。


「ボナペティエ発進!」


 エクレアの機体はここの宙域みたいにゴミゴミしたところの邪魔なものを吹き飛ばす担当の機体だから火力が突出していている。。

 こんだけ鉄の塊があれば、おおよその見当さえつけば撃ちまくって多少のキズをつけるなんてお茶の子サイサイだ。

 そもそも、そういう弱点をもってるんだから、どんな事情にせよこんな宙域までノコノコやってくる方が悪い。


「吹き飛べぇ!」


 エクレアの機体、ボナペティエは腰回りに付いた二本のランチャーが主装備。

 その二本を豪快にぶっぱなす!

 ガガガガガガガガガ!!!! という勢いで鉄屑が吹き飛び、その爆風にのって周囲の鉄屑も吹き飛ばされる。


「シールド、展開します!」


 マヤの声と同時に電磁バリアがクロックスの周囲を包む。

 私達の張るシールドはただ弾くための防御、アルミのヴァンピールが使ったオブセッションシステムとはまた違う。

 と、いうかあれは何だったんだろう?

 映画とかなんかはかっこよく爆発したりするけど、現実はすっごい地味で嫌になる。


 宇宙は音を伝えないからサイレント映像を見るように爆発だけが起きるし、周囲の物は四方八方に三百六十度に広がるからこんな事やると自分達にもおはちがまわってくるのだ。

 やっぱり理想と現実は違うのだなあと機体での戦闘をやるたびに思うよ。


 煙も出るわけじゃないから視界は良好って点だけは今の状況をみると現実のがいいって思うけどね。


「みぃーつけたぁー!」


 目の良いエクレアは私達よりも先に敵機を発見したらしい、エクレアの進む方向に目をこらしてみれば、確かに宇宙の黒バックに絵の具でもこぼしたような灰色の点が見えなくもない。

 ほんとによく気がつくなぁ、大したもんだ。


 って、おやおや?


「レーダー反応! 数は十二……十三……いくつあるの!」


「また、数ばっか! 数だけは多いぜ!」


 灰色の点に殴りかかるエクレア。

 さすがにもう意味がないと感じたのか敵機もステルス迷彩を解除して姿をあらわす。

 って、軍用の戦闘機じゃん!


 しかもわりと新しいしタイプのような?確かこの前テレビで見たぞコレ、なんでこんなのがいるんだ!?こんなのに攻撃されるルーシアって何者!?


 そんな事よりもエクレアはそんなのが相手で大丈夫なのか!?

 固唾を飲んでエクレアの様子を見守る私とマヤ。


「こんな近くまで、こんのぉ!」


 現れた戦闘機の一つがボナペティエの近くにいた、それを殴りかかるエクレア。や、距離をとるんだ!らしくない!

 ボナペティエのパンチは空しく宙をまった、がくりと態勢を崩すボナペティエ。


 でも敵機も態勢は不充分、近接戦闘用の兵装があるのかは覚えてないけど、それを使用するスキはないはず。

 どんな兵装をもっているのかはイマイチわからないけれど、それでもボナペティエを殴り飛ばすくらいの余裕はある。


 やばい、やっぱり近すぎだ!

 私の不安をあざわらうかのように敵機の拳がボナペティエに向かって振り下ろされる。

 しかもよりにもよって運転席をめがけて!


「エクレア!!」


 思わず身を乗り出して叫んだ。


「ちょこざいなー!」


 私の不安をよそにエクレアは予想をしてかのようにその攻撃に反応し、前のめりになった態勢を利用して後回し蹴りを敵機にぶちかます!!

 いつも一緒にいるから気にならないけど、エクレアは本当に凄い。

 私なんてもう駄目だと思って涙目になったよ。


「もういっぱーーーーつ!!」


 吹き飛ぶ敵機をさらに追撃し、両手を組み合わせて敵機の頭に振り落とす。

 後に吹き飛んだかと思えば、頭と足が百八十度ひっくりかえってさらに吹き飛んでいく敵機。

 敵もさるもので、不意にくらった2発の攻撃を受けて態勢を立て直すのか飛行機型に変形し高速でこの宙域から全機逃げだした。


 なんでまた逃げるんだ、いまのところ状況としては向こうが有利だったのに。

 さっきエクレアが吹き飛ばしたとはいえ、まだまだゴミゴミしているこの宙域をあんなスピードで離脱してくんだから敵も何か考えあっての事だろうけど。


「駄目だ追いつけない、無理無理」


「とりあえずしばらくはこれで大丈夫でしょう。お疲れ、エクレア」


「あいよ、帰還します」


 とにかく高速移動ができる状態に変形されてはエクレアの機体では追いつく事は難しいため、マヤのナビゲートでエクレアが帰還する。

 まぁ、相手を捕まえる事ができれば話ははやかったんだけど。やっぱり危険度が高すぎるからね。


「ただいまー」


「「お疲れ様」」


 帰ってきたエクレアをハイタッチで出迎える私達、こういう時やっぱり命あってのものだねだといつも思いなおすのだ。


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