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ワイルド・ワイルド・ガールズ  作者: 虹野サヴァ子
後編『月よりも優しい少女達』
117/123

星空に戦う その7


 その時であった。

 ジョニーのアースウィンドアンドファイアが炎を取り戻し、その形を変えた。


 それは以前のジョニーがアースウィンドアンドファイアを解放する時に見せた通常よりも巨大な剣の形のソレであった。

 火力だけならば先程の渾身のジョニーロジャーに見劣りするものの、それに比べてムラの無い安定した炎。


 アースウインドアンドファイアに巻き込まれる形の炎の発動とは違い、ジョニー自身と剣の炎の火力が合致した理想の炎の形であった。


 言うなれば名騎手と名馬が完全にシンクロした形。


 キレたという言葉があるが、この場合は意識が飛んでタガが外れたといった方がいいのだろう。


 言うなればジョニーという人間特有のキレた姿。

 怒りとかそういった感情にまかせてガムシャラに動くというわけ目ではなく、余計な思考が取り払われ今までジョニーが思っていた事、経験してきた事、理想と信じ夢に思う事に忠実に動くという姿。


 守ろうとする意思と、倒すべき相手、その感情がエクレアが傷つけられたという事を目の当たりにして爆発し、そしてそのジョニーの意思に剣が呼応した。


 呼応したというよりも、この剣の本当の姿であり。

 本当の姿という言葉も正しくなかった、この剣はジョニーの分身であり、正しい形という物でもなかったのだから。


 確かにジョニーの気力はからっぽだった、しかし0という事は裏を返せば無限という事である。


 先程と同じように炎、いや灼熱の塊とかしたジョニーは本能のままにシドウに剣を振り下ろす。

 威力は先程よりも減ったために、その一撃は防御される。


 しかし、威力がさがったとはいっても今回の攻撃は一撃で終わりではない。


 手数が欲しい。

 ジョニーがそう思えば剣は形を変える。


 剣は二つにわかれ連続でシドウを斬りつける。


 突如蘇ったジョニーにシドウは状況を把握できるはずもなく、反撃も忘れて戸惑っていた。


 また、そのジョニーの変貌ぶりと突如の猛反撃と怒涛の連撃。その姿をみるエクレアもただ閉口するばかりであった。


 シドウが距離を置こうとその身を後ろに下げれば、ジョニーの剣は今度は槍へと姿を変えて追撃する。


 キレの良い攻撃、そして自身を包む炎。

 確かにシドウに油断はなかった、先程のように慌てず防御に集中すれば、もしかしたらこのジョニーの攻撃も受けきれたかもしれない。


 しかし、今までのジョニーがコートに愚直に蓄積させてきたダメージと現状の火力、しかしもっとも大きいのはこの瞬間にシドウに恐怖を与えていた事が一番大きな決定打となった。


 さらにジョニーの剣が形を変えて手を覆う拳になる。

 慣れない両手武器よりも原始的に殴るという事に集中したほうが結果手数が多くなると判断したのだろう。


 舞い散るは炎、吹き荒れるは拳。

 全身の急所という急所に撃ち込まれる拳弾は、いくら防御を勝手にやってもらえるとはいえシドウが反応できる早さではなかった。


 コートはどこを防御していいのか追いつかなくなり、ついにはジョニーの拳がシドウに直撃した。


「ぐほぁつ!」


 バキッ!

 ベキッ!

 状況が一変し、シドウの頭が右へ左へと揺さぶられる。


「ふーーーっ……ふーーーーっ……!」


 野生の獣のようなジョニーの息遣い。

 意識が朦朧としているであろうシドウの腹にジョニーの拳がめり込んだ。












「あれっ!?」


 次の瞬間、私が目にしたものはたたらを踏んで、血反吐を吐きながら地面に倒れるシドウの姿だった。


「何だ? 何でシドウが倒れてるんだ?」


 わけがわからない。

 手を見てみれば剣も握っていない。変わりに手甲がついてる。


「うぉつ! 何だこりゃ!?」


「ジョニー、正気に戻ったの?」


 エクレアがフラフラの身体を銃で支えながら近づいてくる。


「何これ? エクレアがやったの? つーかコレ何?」


「ちょっ、覚えてないの? それもとはジョニーの剣で、シドウをぶちのめしたのもジョニーだよ」


「うえ、覚えてないんだけど? これ元に戻るのかな?」


 いきなり武器が手甲になってしまったのは驚きだ、個人的に剣のがいいんだけど。

 そう思うといつものように剣に戻った。


「およ?」


 また、手甲にならないかなと思うと手甲になる。調子にのって槍になれって思うと今度は槍になった。

 何これ、おもちろーい!


「うぅっ……」


 おっと、アースウィンドアンドファイアにこんな機能があったのは驚きだけど、そんな新機能で遊んでる場合じゃなかった。


「お、炎もまた出るじゃん!」


 もともと病気っぽい体のシドウ。

 まぁ、パンチはかなりいい物をもってたけど実際に殴られるって事はほとんどなかったんだろう。

 さっきの私を見るようにふらふらと立ちあがると、逆に私に殴りかかってきた。


「そんな……なんでこんな……私の夢は!!」


「そんな事知るかーーーーーー!!!」


 シドウの拳を避けて胴に剣を振る。

 コートにこの一撃は防御される、あれ防御されてる?じゃあ私はどうやってシドウに攻撃をあてたんだろう?

 ギロリとシドウが私を睨む。

 そして再び振り下ろされる拳。


 ガンッ!


 その拳は私には当らない。

 剣は盾となり、私を防御する。

 ブロックワード無しで変化するって事は本当に便利だ、思い知れ勝手に防御される事の腹立たしさを!


 炎を巻き上げる。

 羽だけじゃなく、剣や槍やいろんな武器をかたちどった炎。

 そしてその炎の武器がシドウに襲いかかる。

 いろんな形に武器が変わるならば炎だって変えられるはずと踏んだら、ビンゴだった!


 今度こそカラッポになるまで炎をぶちこんでやる!

 炎の武器の数々がシドウに命中し、シドウを打ち上げる!

 そして、次第に防御しきれなくなるコート。

 なるほど、こうやって私は防御を崩したのか!


「うおおおおお!」


 宇宙の部屋に打ち上げられるシドウよりも私は炎の翼で高く舞いあがり、さらに突き上げる。


「馬鹿な、私の愛はッ!」


 今度はシドウよりも高く舞いあがり、威力の大きそうな大剣へと武器の形を変える。

 技に名をつけるならそう、業火剣乱の締めだ!


「終わりだ!」


 ドガン!

 病気がちの顔に爆発をともなう一撃を叩き込む。

 防御された気配はない。

 悲鳴もあげずにシドウは落ちていき、地面じ落ちて動かなくなる。


「か、勝った!」


「お疲れジョニー」


 私と同じくらいにふらふらのエクレアがやっぱりふらふらしながら寄ってきてハイタッチをかける。


「これで、あとは……」


 私が言ったところで星空の真ん中に光球が現れる。

 そのまぶしさといったら、まるで太陽!


「なんじゃこりゃ! タイムマシンはまだ!」


 私がそう叫ぶと、エクレアが頭をかかえて苦しそうに声をあげる。


「あれは……そう、あれが……あれが!」


 このエクレアの震え方尋常じゃない!


「ジョニーあれは駄目、あれが全部の現況なのあれが光ると!」


 なるほど、察した。

 つまりあれがタイムマシンの中枢か、つまりはアレを壊せば!

 大丈夫かわからんが……とにかくあれを!

 太陽を斬ろうと走りかかると、衝撃波に全身を打たれて吹き飛ばされた。


「ぶぉつ!?」


 私もよくよく学習力がないのか、またしても地面に転がる。


「大丈夫ジョニー!?」


「なんとか、しかしなんだあの全身攻撃判定!」


 さすが太陽というか……ここまできてこれか!?


「フレアボール!」


 それならばと火球を飛ばすも、謎の衝撃波によって炎はかき消される。


「ああっ、炎が! くそっ私も弾がのこってれば!」


 これで届かないとなると……

 あの太陽に近づく術は……あ!

 私は倒れているマテリアに駆け寄ると彼女のコートを奪い取り着込む、サイズは小さいけど私が壊したと思われるシドウのよかはマシだろう。


「これなら、防御してくれるから直接ぶったたけるはず!」


「ジョニー!」


「うおりゃああああ!!」


 再び衝撃波を放出しつづける太陽に走り寄る私。

 頬にちょっと痛みが走ったと思うとコートが私を庇うように私を被った。

 これは便利! と思いながら私は太陽に斬りかかる。


 ガイン、と鉄を斬りつける衝撃が私の手に残る。

 と、同時にコートがビキビキいい始める。

 あれだけ離れていて私が吹き飛ばされるんだからこんだけの至近距離だと威力は相当なもんなんだろう。


 コートにしても時間にしても再トライはできそうにない、ならばこのまま押し通す!


「ジョニーーーーーロジャーーーーーー!!」


 もう駄目だもう駄目だと思っても人間死ぬ気になればなんでもできるもんだと思う。

 ここまで来て、やっぱ駄目でしたじゃ。



 この先、生きてる意味がないんだよ!!!



 何かの手応えが手元に感じ始める。

 炎の翼が太陽を包み込む。

 そう、きっとブレンダはあの中でこの太陽を止めようとしてブラニー……いやブラウニーはこの太陽の光を抑えようとしていたのだろう。


 ならば、今度は私の炎の翼で!

 ニルギルスのやった事の再現のように私の炎の翼が抑え込む。

 その様子を見て、エクレアが何か切迫したように叫ぶ。


「ジョニィィィィーーーーーーー!!!!」


 そんなに心配しなくてもきっと大丈夫だよ。

 さぁ、クライマックスだ!


「私の剣よ! 最後の奇跡を起こして!!!」


 炎が溢れ、太陽の光をも飲み込むまばゆい光を放ち、太陽に剣が食い込んでいく。


 よし! これで!


 次の瞬間さらに強烈な閃光が私を包み込む。

 見れば何か怖いものを見るようなエクレアの顔。


「ああっ……そんな……ジョニィーーーーーーーーーー!」


 また、エクレアの叫び声。

 私はその叫び声を聞きながら、眠くなっていく。

 全身が熱くて寒い。

 そして高いところから落ちていく感覚を覚え。


 目の前が真っ白になった。







                                           Bey Bey Space Girls.

                                         See You Next Pranet!

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