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ワイルド・ワイルド・ガールズ  作者: 虹野サヴァ子
後編『月よりも優しい少女達』
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振り向けば馬鹿がいる その1



 輪は断たれた

 叶わぬ思いの先は残酷な結末

 思いは儚く

 残された思いは切ない

 しかし、それで人は歩みをとめず

 歩みを止めるのは絶望ではなく

 諦めなのだから

 だから、前を見よう

 希望は常に目の前にあり

 進み続けるのはその希望があるからではなく



 その人の持つ意思なのだから







 輝く閃光が私の視界を奪う。

 このまま視界が戻らなければとか思ってしまう。

 ツヴァイもドライも、こんな目にあう必要なんてなかったんだ。


「ロォーーサァーーーー!!」


 もう、何も考えられない。

 私は分断されたデュエルバルツァを睨みつける。


「そ……そんな……そんな想定外のサプライズ……私は認めない……リテイク、リテイク、リテイクだこんなもん!」


 あったまきてる私は完全無視のロサ。

 ってか、何がどうなってるのか。ロサは完全に脅えているようだった。


「まったく、世話がやけるというか……まず、怪我人達にここまで無茶をさせるお前達に呆れ。そしてここまでこぎつけたお前達の執念に関心するよ」


 聞いた事のある声。

 この声は……


「「「「「マチコさん!!」」」」」


 そう、サグラーダとバーディクトを撃ちぬいたと思ったデユェルヴァルツァのビームはマチコさんのサザエーのビームによって相殺されていた。


「ど、どうして!?」


 開いた口が塞がらないロサに代わって私が声をあげた。


「確かにロサに吹っ飛ばされて、川に叩き落とされたんだけどね。古い知人に助けられたのよ」


 意味ありげにニヤニヤとした口調で話すマチコさん、もったいぶるなよ。


「そ、それで誰に助けられたのさ」


 さすがのエクレアも動揺を隠せない様子でマチコさんを問い詰める。

 でも、マチコさんのニヤニヤ口調は変わらない。


「本当、助かったわよ。こんなに頼りになる人がいるなら先にいっておいてくれればいいのに。特にマヤ」


「ふえ?」


 マヤがすっとんきょうな声をあげた時に、それを狙ったように聞きなれた声が響き渡った。


「はーーーーーーーい! マヤーーーー!! パパだぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


「パパ!?」


「「「「ええええええええええ!?」」」」


 おもいおもいの叫び声をあげる皆。

 っていうか、なんでここでマヤの親父が出てくるのよ?


「ちょっとマヤ、どういう事?」


「いや、聞かないでよそんな事。私だって知らないよ」


 いつまはパパにベッタリのマヤも今回ばかりはどういう事かわからないみたい。

 本当にタイムリーに出てきたからな、まるで何かの変身ヒーローの如く。

 というか、何でマヤのパパがマチコさんを助けてるんだ?


「ひ、ひどいなマヤ……せっかくのパパだというのに」


「いやマヤのお父さん、とりあえずどういう状況だったから完結に説明してほしぃっちゃ」


 マヤもひどいけどドロシーもかなりひどい。

 でも、そうまで言わないと、この馬鹿親父の場合は話しが進まないから丁度いいかもしれない。


「わ、わかったよドロシー君」


 思ったよりも素直だ。


「私がカイバーベルト社に潜入している旨は話していたと思うが……」


 ?

 ……え~っと?

 ああ、そういえば独自に潜入捜査を続けるって言ってたな!!


「そう、独自に潜入捜査を進めていた私は、このオデッセイの情報を入手し内部調査を進めていた。そして降りしきる雨の中で、一目散に逃げて行くジョニー君をみかけたんだ」


 こ、この親父、人の心が読めるのか!?

 さりげなくお返しとばかりに私の事を悪く言ってるし……


「そしてロサ・ペディエンヌにやられて川に叩き落とされたマチコ君を救出し。迅速な治療のためにそのままオデッセイに乗り込んで現在にいたるわけだよ」


「要約すると、オデッセイの捜査をしていた親父さんに助けられて。そのままバリアを張られて中で立ち往生。で、今のピンチに内側から駆けつけたわけよ」


 親父の説明の意味わからない感をマチコさんがわかりやすく説明してくれた。


「意味がわからないとは、何だジョニー君!」


 こいつ……本当に心が読めるようになったんじゃ……


「ほら、マヤも何かいってやってくれ!」


「ごめん、パパ。今はそれどころじゃないし……」


「グボハァ!」


 軽くマヤに流されて「グボハァ!」になるマヤのパパ。

 多分、吐血したんだと思う。

 ともかく、今はマヤの言う通り。親父にかまっている場合ではない。


「マチコさん、ツヴァイとドライをお願いできます?」


「まったく、本当に怪我人使いが荒いな。まぁ、まかせておけ。今回は私達は蚊帳の外の存在だしな……いや、お前には因縁が残ってるか? なぁ、アンナ」


 不意にアンナさんに話しを振るマチコさん。

 ファルコも通信が届くところまで接近していたのか、夢中になってて気がつかなかった。


「ぜ、ぜんぜん心配なんてしとれへんからね! い、生きてるって信じとったんやからね!」


「何だアンナ風邪でもひいたか? 声がかすれているぞ」


 わかりやすい反応のアンナさんに、ひょうひょうとした態度のマチコさん。

 口ではあんな事をいってたけど、アンナさんもやっぱりマチコさんの事をすっごく心配してたんだな。


「BB、聞こえてるですか? BB!!」


「なぁに、ドロシー? どうしたのん?」


「フェイフェイは、フェイフェイはそっちに転送されてるですか? フェイフェイのサルバトーレが落とされたです! そっちに戻ってるはずです! BB!」


 そうだ、やられたフェイフェイはファルコに戻ってるはずなんだ。

 通信が繋がったから状況を確認しなきゃ。


「え、ちょっと……どういう事なのん? 状況が掴めないんだけど……」


 ……え、あれ?


「……そんな……です」


「……嘘よね……フェイフェイ」


 状況を理解したドロシーとアルミが悲嘆の声をあげる。

 これはちょっと酷い。

 ボロボロになったサルバトーレを見て、私も涙が溢れてきた。


「ちくしょう……」


 ドロシーが一言漏らす。

 担いでいたサルバトーレを手放して、あるみのヴァンピールに預けると、凄い勢いでロンドニア飛び出した。


「こんちくしょーーーー!!」


 絶叫しながらメメントモリに突っ込んでいくロンドニア。

 それを迎え撃つメメントモリ。

 わかる、気持ちはわかる。でも、それは駄目。


 駄目ーーーーー!!


 私が声にならない声をあげる、けれどメメントモリのあの常軌を逸した速度はロンドニアでは捉えられない。

 ドカンと交通事故みたいな勢いでロンドニアとメメントモリが激突する。

 ロンドニアの羽ビームがロンドニアを貫いた。

 しかし、そこを狙ってロンドニアがメメントモリが逃げられないように身体を掴んでいた。


「もう逃げられないです!!」


 言葉と同時にロンドニアの周囲に展開されていたゴシックスが一斉にメメントモリに向かい、そして一斉に照射する。

 もうビームの網にしかみえないくらい交錯して撃たれるゴシックスから放たれるビーム。


 でも、どういう装甲してるのかわからないけど、メメントモリはそれでも沈黙しない。

 ロンドニアの腹部を蹴り飛ばすと無理やり掴んでいた腕を振り解く。


「メメントモリィィィィ!!」


 見た目にはメメントモリのが酷いダメージをうけたっぽいけど、今のどてっぱらに穴があいてるロンドニアのがダメージがデカイのがあきらか。

 でも、ドロシーがいまだに機体に残っていられるって事はそんなにダメージはないのか?

 どうなんだろう、何か今のは違和感があったような気がする。


「障害は……排除します……」


 再び、ワープと見まがうほどの超高速攻撃!

 ロンドニアを擦りぬけたと思った瞬間にロンドニアの両足がメメントモリの両足を切断した。


「ふぐぅ!?」


 悔しさが入り混じった悲痛な叫びがロンドニアから聞こえてくる。


「ちくしょうっちゃ……! ちくしょうっちゃあ!!」


 腕だけで泳ぐように宙を舞うロンドニアの前にヴァンピールが庇うように立ちはだかる。


「もうやめなさい」


 アルミがいつだったかダイアに見せたような厳しい表情と声でマテリアを制止する。

 それに従うように動きをとめてアルミを見るマテリア。

 少しの間があったけど、意外にもメメントモリはきびすを返してヴァンピールの目の前から去っていく。


「私も……もう時間が残されていませんので……受け入れるなら何もしません」


 どうしよう、これでこっちの戦力は足の無い月凪とバクテンカイザー、戦闘機械獣マクベス、そしてエクレアのボナペティエと私のアンダンテしかいない。

 マチコさんはツヴァドラ姉妹の事があるから無理はさせられない。


「んマぁクレぇエーーーーン! まだだぁ!!」


 ゲゲーーッ!

 ただでなくても厄介なのに手負いとはいえブラニーが復活しやがった!


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