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ワイルド・ワイルド・ガールズ  作者: 虹野サヴァ子
後編『月よりも優しい少女達』
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いつか完璧な輪になるように その4


 バリアを張っていたもう一体、ニルギルスが翼を広げて私へと迫ってくる。

 こっちはメメントモリだけで手一杯だってのにこんなのが迫ってこられた日にはどうしたらいいのやら。


「うぉぉぉぉ! カイザァーーーー!」


「あうっ!?」


 まずい事は重なるもので力任せに暴れていたバクテンカイザーがバーディクトの捕獲を振り払って自由の身になる。


「あー、くそ! とんだ目にあったぜ! よっしゃー、まとめてアタイがぶっ飛ばしてやる!」


 なんでこんなにめんどくさい事になるのか、かといって戦力を多くわけてしまってはメメントモリに全員がやられてしまう。


「どうするジョニー!?」


 どうするって言われても……私達の勝ちはこの子達を倒す事じゃなくて、あのタイムマシンを破壊する事。

 でも、どちらにせよ私の頭じゃそこまでの考えは思い浮かばず。それどころかこの状況を打破する考えすら浮かばない。


「ブラニーは私が引きうけた! カイザーとメメントモリはまかせた!」


「そんな! 私の月凪だって片足もげてるのに!」


 そうブーイングされても、私だってコイツを一人で抑えるのはかなり大変なのに。


「私が三機のうちの一機を抑えてバリアのところまで持っていけばなんとかなっちゃうんで!」


「それなら……カイザーが組みやすし。ね」


 アルミのヴァンピールがカイザーを補足する。

 ヴァンピールのオブセッション、ロンドニアのキャプチュード、さらにバーディクトの捕獲能力を持ってすればさしものカイザーでも逃げる事はできないだろう。

 でも、そうなるとメメントモリをボナペティエと月凪だけで抑えないといけないんだけど。


「マヤ、エクレア。アイツを抑えられる?」


「悪いけど長くは無理だかんね」


 もちろん、それは十分承知。

 チームワークの一発の瞬発力が彼女達の個々の戦闘力を上回らないと勝つのは難しい。

 そのためにも、このニルギルスを皆のところに行かせるわけにはいかないのだ。


「ここにきてアンタに出てこられると話がこじれるのよ!」


 迫ってくるニルギルスに剣を突きつけて私は素直に思った事を口にする。

 向こうもやる気まんまんらしく返ってくるのは同じ怒声。


「それはこっちの台詞です あと数時間であなただって目指してる事を達成できるのに、何で私達の邪魔をするの!」


 剣と剣がかちあわせになり、つばぜり合いの如くアンダンテとニルギルスの顔が肉薄する。

 モニター越しに見えるニルギルスの顔を透けてブラニーの顔が用意に想像できる。


「でも、それは今の私が経験するわけじゃないじゃない! それじゃ意味がないでしょうが!」


「ならば私達と共に来ればいい、ここにいれば私達の時間は戻らない」


「……それじゃあお父さんはいきなり成長した娘にしか会えないじゃない! 自分だけが特別になるなんてどうせ無理なんだ、世の中でやり直しがきく事なんてないんだよ!」


「それならば事の行く末を黙ってみていてなさい、やり直すのではなくて、過去から新たな未来を紡ぐのだから!」


「先の事がわかってるのに未来なんてないじゃない! お勉強しかできないお馬鹿さんはこれだから!」


「私達の苦しみの何がわかる! そうやって自分の意思しでしか正義をかざせない偽善者め!」


「自分の意思でここにいるけど正しいかどうか何て考えた事なんてねーよ、なんだその理論跳躍! そんの考えなくてもわかる事じゃないか! どの口が言うのか知らねぇけど自分の考えだけで正しいって信じてるのはお前だけだろうが! だいたい、先に苦労してるのはこっちなんだよ!」


「だからこそ安寧めばいいじゃない! 望んで何が悪い、母さんの心を取り戻して何が悪い! 私がいて母さんがいて、出会った皆と仲良くしたいと思って何が悪いの!」


「そうか……やっとわかった! いきなり殺されかけたりする以前にアンタの事が気に入らなかったけど、そうやって他人の目的と自分の目的を混同してるのが気に入らないのよ。大切大切っていってても結局は相手が大切なふりをして結局は自分が大切なだけなんじゃない! 自分がいい思いをしたいから相手に何かするなんて、そんな心のない優しさが生理的に気に入らないんだよ!」


「だからそうやって私をわかったような口を閉じろ!」


「わかんねーよ! 誰もお前のことなんてわかんねーよ、でも私ですら少しくらいならわかるかも信じられるから何があっても、こうやあって、やってけるんじゃないの!!」


 そこまで言った時点でつばぜり合いが弾け、お互いに距離を取る。


「この心、お前にわかってもらおうとは思わないわ!」


「私もだからってアンタと仲良くやるのはゴメンだわ!」


 機体ごしに睨み合い、やがて再び邂逅する。


「「イ~~~~だ!!!」」



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