後編
思ったより早く書きあがった。
優希視点からノエル視点へ
帰宅後、何のこともなく時間は過ぎ、夜になりました。
昼間から降り続けている雪は、うっすらと地面に積もっています。
早めの夕食を優希のうちで食べた私は、彼にのぞかないように念を押してから部屋のドアを閉めて、仕事着に着替え始めました。
着ていた服を脱いで、伝統の衣装である赤と白のサンタ服に着替ようとします。
最初に、白いシャツの上に赤いチョッキを着こんだ後にふと気がつきました。
「あれ、下のズボンがない…」
きょろきょろと周りを見渡します。
「ない…。」
どうも夕食のときにいたリビングに置き忘れていたようです。
「優希ー、そっちにズボン落ちてない?」
大声を出して彼を呼びます。
「……」
いくらか待つものの返事はありませんでした。
壁が音を吸収したのかな。
そう思って声が通りやすくなるようにドアを開けます。
「「えっ?」」
優希と目が合いました。
先ほどの声を聞いてズボンを探して、
ズボンを持って来てくれていたようです。
えっ…ズボン…
私は今、腰の部分に何を穿いているのでしょう?
Q:下着のみ
バチ―ン
「きゃあー」
後で聞いたところによると、優希を思いっきりはたいた後の私の悲鳴は昼に行った公園あたりまで響いたらしい…。
「本当にごめんなさいっ。」
「うん、返事しなかった僕も悪いんだからおあいこだよ。」
私が着替え終わった後、私と彼は顔を突き合わせて謝り合っていました。
もともとは私がドアを開けたのが最大の原因なのに…。
それなのに…あまつさえ自分も悪いと言ってくれる優希。
彼は本当に私にはもったいないくらいの彼氏だなと思います。
「どういたしまして。」
えっ、私声に出してた?
自分の顔が真っ赤になって行くのが分かります。
「まあ、ノエルの顔を見たら大体分かるから。」
満面の笑顔で彼は言ってくれました。
「しょっ、しょんにゃことにゃ、にゃいもん。」
必死になって彼の言ったことを否定しようとして、思いっきり噛みました…。
二回も…。
「まあまあ。
そんなこといっても可愛いだけなんだから。」
優希はそう言って、ギュッと私を抱きしめました。
急にです、急にですよ!
そんなことされたら…、
まっすぐに顔を見れないじゃないですか…。
二人でしばらく抱き合っていると、「ピピピピ、ピピピピ」とどこからか電子音が鳴り始めます。
優希は名残惜しそうに私から身体を離して、ポケットに手を入れます。
そうして携帯を取り出して、鳴り続けるアラーム音を切りました。
「時間みたいだし、行きますか。」
その言葉にはっと気がつきます。
「そうだ、仕事…。」
「忘れてたのか…。」
あきれられてます…。
本当に毎年やってることなのにいつまでたっても覚えれません…。
シュンとしてしまった私に優希おどけたようには言います。
「サンタさんがそんなに落ち込んでいたら、プレゼントをもらう子たちも喜んで受け取れないんじゃないかな?」
彼の言う通りです。
そう言われてちょっとやる気が出てきました。
「よっし、やるよ!」
「その意気だよ、ノエル。」
彼は私を玄関まで見送りに来てくれました。
「本当に今年は大丈夫?」
「去年に優希と一緒にやってやり方は分かってるから大丈夫よ。」
私がそう言うと、ニヤニヤ笑って彼はポケットの中から一枚の紙を出します。
「そう言うんなら、配達先のメモを忘れちゃダメだよ。」
「むにゃ…」
返すべき言葉もありません。
「はぁー、ちょっと待ってて。」
「うん?」
そう言って優希は一旦家の前に戻った後、すぐにUターンして戻ってきました。
「心配だから今年もついて行くよ。
家の鍵も閉めてきたし。」
そういって私に鍵を見せながら彼はそう言いました。
「でも…」
「でももなにもないよ。」
私が必死に反論しようとした言葉は彼の一言に封殺されます。
「それに、クリスマスに彼女と一緒に居たいっていうのは贅沢な願いことかい?」
彼が真っ赤になりながら言っているのが目に見えますが、私の顔も同じくらい赤くなっていることでしょう。
「じゃあ、行こう」
彼は私の手を取って、歩き始めます。
私は彼に寄り添いながら前に進みました。
周りには、クリスマスケーキの上に振りまかれるよう砂糖のような雪がちらちらと舞い散っていました。
プレゼントを配り終えた後…
優希 「ノエル。」
ノエル「どうしたの?優希。」
優希 「僕にはプレゼントないの?」
ノエル「これは子供たちの分だったから…」
優希 「そうじゃなくて、ノエルから僕へのプレゼントはないの?」
ノエル「じゃ、じゃあ…キスとか…」(顔を真っ赤にして)
優希 『可愛いなぁ…』(心の中で)