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前編

ちょっと長くなりそうなので短編から急きょ変更。

後編で終わる予定。

 12月25日、

それは恋人たちにとっての記念となる日である。


 大学生である僕にもありがたいことにそんな記念日を一緒に過ごしてくれる彼女がいる。

まあ、僕が思っていたクリスマスの過ごし方とは大幅に違っているものではあったのではあるがとてもいい彼女と言っていいだろう。


「優希、ぼーっとしてないの!

こんなところに来るのが久しぶりなのかもしれないけど、私達だってちゃんとした目的があって来てるんだから。」

「はいはい、分かったよ。

 僕だってノエルとデートしてるのが楽しいんだから、ちゃんと仕事はしますよ。」


デートという言葉を聞いてか、彼女は顔を真っ赤にさせた。

「分かってるんならいいわよ。」

ツンっと彼女は顔をそらす。


昔は手をつなぐのでさえも恥ずかしがってできなかった彼女がここまで大丈夫になったのかと、僕は微笑ましく思う。

そして、二人でつないでいる暖かな手の感触をもう一度しっかりと感じた。


僕が思いでに浸っていた入っている間に、赤くなっていた顔が戻ったのか、ノエルが僕の方を向いて聞いてくる。

「じゃ、じゃあ優希はどんなのがいいと思う?」

…顔は戻ってもまだ恥ずかしいのは継続らしい。


ノエルは一つの商品の棚の前で立ち止まる。

そこに置いてある「年単位で毎回名前が変わる、なんちゃらライダーの変身ベルト」を、空いている左手で指さした。

「毎年毎年違うやつに変わるのに毎回こういうのほしがる男の子多いのよね。

 なんでなのか分かる?」

そういって、小首を傾げる。


うーん。

正直そんなことまで子供のころには考えてなかったなぁ。

とりあえずは…

「おもちゃ会社の画策じゃないかな。」

一番最初に思いついたことを言ってみる。


その言葉に対して、あきれたようなため息をついたノエル。

「夢を壊すようなこと言わないでよね。

 私達は子供に夢を届ける仕事をしてるんだから。」


そう、僕の彼女はサンタクロース(・・・・・・・)(の一人)なのである。



彼女との出会いについて思い起こすとなると、莫大な時間がかかってしまうのでここでは割愛する。

とにかく、紆余曲折あって相思相愛の今の状況があると思ってもらっていい。



「…優希、優希ってばぁ。」

ぼおっと回想にふけっていた僕を現実に引きもどそうとするかのような高く澄んだ声、

そして……ブルンブルンと体調を壊しそうなぐらい振るわれる体。


「いや…もう戻ってきたからそれ以上はやめて。

 気持ち悪い…。」

自分でも死にそうだなと思うような声がでた。


「あうっ…ごっ、ごめん…。」

ノエルはそう言ってやっと身体を揺するのをやめた。

そうして、落ち込んでしゅんとしてしまう。

「せっかく優希にデートに誘ってもらったのに何してるんだろう…私。」


僕は、ノエルの頭にポンっと右手を置いてやる。

「せっかくのノエルとのデートなのに(ほう)けていた僕も悪いんだよ。」

僕を見上げてくる彼女にそう声をかける。


「うん…」

そういって彼女は僕の服の胸元をつかんでくる。

顔が近い。

いい雰囲気だ。

彼女の耳が真っ赤になっている。

たぶん、僕も同じくらい真っ赤になっているのだろう。

彼女と目が合う。

何かに浮かされているかのようになおも顔を近づけてくる。

僕も顔が熱い。

そうして、二人の距離がどんどん縮まって行き、後数センチで二人の唇が重なろうとしていたその時。


「ねぇ、ママぁ。

 あのお姉ちゃんたち何やってるの?」

「みっ、見ちゃダメよ。

 まだ早いわ。」

「まだ早いって何がぁー。」


子供とその母親の声を聞いて急に冷静になる。

ここは…スーパーのおもちゃ売り場だ。

そこで…彼女とキスをしようとしていた。

周りに人は…たくさんいる。

結論、とっても恥ずかしい。


僕はさっきとは別の意味で顔を赤くしてた。

そして、僕と同じ結論にたどりついたであろう彼女を横に寝かせるように抱きかかえなつつ、脱兎のごとくおもちゃ売り場から逃げだしたのだった。




「ふひゅー、ふひゅー」

彼女を脇に下ろした後、息をきらしたままベンチに座り込む。

結局おもちゃ売り場を出たその勢いで、スーパーまでも出てしまった。

今僕らがいるのはスーパーと僕の家の中間地点ぐらいにある公園である。


「……。」

彼女は顔をさっき以上に赤くした状態で無言だ。

よくよく考えるとお姫様だっこで走りまわるのもそうとう恥ずかしいことである。

思わず僕も無言になる。

そうして、僕と彼女が無言で座っていると、白く柔らかいものがふわりふわりと舞い踊りながら落ちてくるのが見えた。


「雪…。」

そういったのはどちらだっただろうか。

二人して落ちてくる雪を眺め続ける。


「よいしょっと」

「えっ?」

ベンチからいきなり立ち上がった僕にノエルは驚きを見せる。


僕はそのまま彼女の目の前に右手をのばす。

「帰ろうか。」


「うん。」

ノエルはそう言って、僕の手を取った。

そうして、僕たちは手をつなぎながら家路へと急ぐのだった。

後編は25日0時までに投稿予定。

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