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魔法少女と銀の法札  作者: 李音
STAGE2 あなたは魔女ですか?
8/16

STAGE2-4

【】で表現されているのはゲームの流れをある程度示す為の情報です。遊戯王等で言うと、モンスターの攻撃力やプレイヤーのライフが表示されるのと同じものだと思って下さい。例外的に新たなカードが出て来た場合、登場人物の台詞の中に現れることもあります。

  【ステージ3】

「わたしのステージ! ドローっ!」

   【日由理の手札3枚 マナ5個 ライフ28500】

「何か強そうなカードを引いたけど、ここはダイレクトリンクするよ! ドローしたカードをそのままリンクゾーンに置いて、更にドローだよ!」

   【日由理のフィールドレベル3 属性光】

「うう、こっちは使い魔もいないしマナも少ないよ。ここで巻き返さないと負けちゃいそうだよ……」

 日由理は目の前の手札を見て少し考えた後、人生の分かれ道を決心した者のようにきりっとして言った。

「わたしはレベル2のフォロースペル【マナの源泉】を使うよ。この魔法の発動にマナは必要ないけれど、手札を一枚捨てないと駄目だよ。わたしは手札を一枚捨てて、マナを二つ回復するよ。これでマナが7個になったよ!」

 日由理は、ここからが勝負と言わんばかりの強気な態度でデッキホルダーに手を添えた。

「マジックブレイク発動だよ! ライフを8000支払うよ!」

   【日由理のライフ28500→20500】

「2枚ドローーーっ!!」

 日由理は引いた2枚のカードを見て曇り空が晴れるように表情が明るく変わっていく。

「やった、銀色のカードを引いたよ!」

 ミルディアの目深に被ったとんがり帽子から覗く片方の目が驚きでわずかばかり見開かれた。

「まず、レベル3の白翼の騎士クラインをサモンだよ!」

 背中に白い翼のある純白の鎧兜を纏った騎士が上空に現れ、日由理の右側に降りる。騎士は楕円形の盾と大振りの剣を交差させて佇んだ。

   【白翼の騎士クライン 魔力8500 レベル3】

「さあいくよ! わたしはマナ4つを支払い、カードを一枚捨てて、レベル3のシークレットスペル【シャイニング・ストーム・レイ】発動だよ!!」

 天上に白く輝く巨大な魔法陣が展開していく。

「わたしは魔力5000を得て、敵のマスターと全ての使い魔に同時に攻撃を行うことが出来るよ!!」

「……!!?」

 それを聞いて驚いたのはミルディアだけでなく、ファーラもだった。

「うわ、マジかよ、魔力15000で全ての敵に攻撃出来るって事かい、鬼のような魔法だな…」

「その上、ミルディアにはダメージを防ぐ手立てがないわ。5枚も手札をもっているけれど、3枚はアリアの効果で引いたフォロースペルだし、さっき手札にリニィを加えていたわ。そしてマジックフェイズではアタックスペルを発動しようとしていた」

「もしかして、日由理が勝っちゃうんじゃないのか?」

 魔法陣はドームの天上一杯に広がり、輝きを増す円陣からミルディアに向かって光の雨が降り注ぐ。ミルディアの周りで次々と小爆発が起こった。

「………」

 ミルディアのステージは光の波動の爆撃を受けて目をおおわんばかりの輝きがドームの中に溢れた。マジカルステージのど派手な演出に慣れ始めていた観客たちは、日由里のすさまじい魔法に魅せられて大いに喜んだ。特に子供たちなど大はしゃぎだった。

   【ミルディアのライフ32000→17000】

「まだ攻撃は終わりじゃないよ! クラインで攻撃だよ!」

「……それも受ける…」

 白い騎士が飛び上がり、上空から剣でミルディアを切りつけた。

   【ミルディアのライフ17000→8500】

「わたしはこれでステージエンドだよ」

 日由理のステージの状態を見ながらファーラは言った。

「日由理は手札とマナを使い切ったな。ステージにはレベル3の使い魔が一体か。次のミルディアの攻撃を耐えられればまだ勝機はあるが……」

「それはかなり難しいわね。ミルディアは手札もマナも多いし、それに今の攻撃で彼女は本気になってしまったわ」

 シャイナが言ったとおり、ミルディアのとんがり帽子から覗く瞳はぎらぎらと燃え滾るような輝きを放っていた。

「……わたしのステージ……ドロー!」

   【ミルディアの手札6枚 マナ9個 ライフ8500】

「……ファーストステップ、わたしは手札の一枚をリンク…」

   【ミルディアのフィールドレベル3 属性闇】

 ミルディアは目の前の少女を見つめた。ミルディアは何か底知れぬ力を日由理から感じていた。

(……嫌な予感がする…このステージで決める!)

 そして、ミルディアの前にあるカードが反転した。

「……レベル2のシークレット発動、【黒翼召喚儀式術(レイヴン・サモン・リチュア)】…」

「シークレットスペル!?」

「三つのマナを支払い、カードを一枚捨てる……このカードの効果は黒翼召喚魔法陣と同じ……ただし、必要なカードを手札とデッキから選択出来る…」

「え!!? …どういう事なの?」

 日由理は驚いたはいいが、何がすごいのかよく分かっていなかった。

「……見ていれば分かる……デッキからレベル4の黒翼魔龍ティアマットをマジックソウルに送り、それと同じレベルの黒翼をデッキから……エクストラサモン!!」

 ミルディアの前に漆黒の魔法陣が広がって回転し、そこから巨大な黒い翼が飛び出してくる。

「いでよ…黒翼魔龍(こくよくまりゅう)ティアマット!」

 ミルディアが手を上げると、それを合図にしたかのように漆黒の龍が魔法陣から姿を現し、巨大な黒い翼を広げ、日由理に向かって雄叫びをあげた。

   【黒翼魔龍ティアマット 魔力11000 レベル4】

「きゃーっ! 何この龍、大きいし怖いよ! それにレベル4ってどういう事なの!?」

「カードのレベルは4が最大よ」

 異常に混乱する日由理にシャイナは言った。

「え、そうだったんだ…フィールドレベルが3までしかないのに!?」

「一応フィールドレベルは4まで上げられるわ」

 日由理がシャイなの話を聞いていられるのはここまでだった。ミルディアは相手の状況などお構いなし言った。

「…手札から捨てたリニィのスキル発動、マジックソウルにいるレベル2以下の黒翼を手札に戻す……リスティを手札に加えて、さらにリスティのスキル…この使い魔を手札から捨ててデッキから黒翼一体を手札に加える……2体目のメイルダを手札に…」

ミルディアは更にカードを反転させた。

「……発動、黒翼召喚魔法陣、さらに手札の黒翼召喚鏡の効果も発動、このカードはレベル3までの黒翼の身代わりに出来る……黒翼召喚鏡をレベル3の黒翼としてマジックソウルに送り……黒翼召喚魔法陣の効果で手札の黒翼の戦乙女メイルダをエクストラサモン!」

   【黒翼の戦乙女メイルダ 魔力7500 レベル3】

「……アタックステップに移って攻撃…」

「!!?」

 日由理は何故か驚いていた。ティアマットの登場に驚く余り、相手が攻撃してくることを忘れかけていたのであった。

「……ティアマットの攻撃…イザラのスキルで魔力1000アップ」

「わ、わたしはクラインの結界を使うよ!」

   【白翼の騎士クライン 魔力8500 レベル3】

   【黒翼魔龍ティアマット 魔力12000 レベル4】

「…行け、ティアマット、暗黒焼炎破(あんこくしょうえんは)!」

 漆黒の龍は大きく息を吸い込み、一瞬で日由理のステージを焼き尽くすほどの黒い炎を吐き出した。白い騎士は瞬く間に黒い炎に焼かれて消えた。

   【日由理のライフ20500→17000】

「……メイルダの攻撃、マジックソウルにある黒翼は6体、イザラのスキルと合わせて魔力が…4000上る……」

「ちょっ、上りすぎだよ!?」

   【黒翼の戦乙女メイルダ 魔力11500 レベル3】

 漆黒の翼がはためく。上空から襲ってきたメイルダは、黒い槍を突いて日由理の胸に一撃を見舞った。幻なので何の衝撃もないが、日由理は思わず小さく悲鳴を上げて、何かに押しのけられるように後退した。

   【日由理のライフ17000→5500】

「何とか耐え切ったよ!」

「……いえ、まだアタックステップは終わらない……オリジナルスペルを発動するわ」

「え!? オリジナルスペルって!?」

「マナを4つ支払い、ステージレベル以下の黒翼をマジックソウルに送る……わたしはそのレベル×1000の魔力を得て攻撃する」

「ということは、魔力3000とあの人の魔力は……」

 日由里の目の前に【魔力9000】の文字が現れる。

「合計12000!? 高いよ!」

 ミルディアが前に突き出した掌を中心に紫色の魔法陣がい広がり、魔法陣の中心に暗いエネルギーが集まり膨れ上がっていく。

「……受けなさい、フォトン・シャドウ・バスター!!」

 黒い波動が魔法陣から一挙に噴出し、日由里はそれにあっという間に飲み込まれてしまった。今の日由里にこの攻撃を止める術はなかった。

   【日由里のライフ5500→0】

「うう、負けた……」

 日由里は大地に両ひざをついて項垂れた。まだ2回目のマジックステージではあるが、それでも自分でも不思議なくらいに悔しかった。

 日由里は目の前に迫ってきた気配に気づいて顔を上げた。その時に、日由里はシャイなの言ったことを思い出して青ざめた。ミルディアは無言で日由里を見つめていた。

「………」

「あ、あぁう、魂とられる!?」

 日由里は恐怖に跳ね上げられて逃げ出すが、まだマジカルステージの結界が残っていて、光のドーム内から外に出ることができなかった。ミルディアは早足で日由里に近づいてくる。

「いや、助けて! シャイナ! ファーラさん!」

「日由里、短い間だったけれど楽しかったわ」

「せめてお前の魂が安らかであるように祈ってやろう」

「すごく薄情な人たちだ!!?」

 シャイナとファーラは手を組んでいかにも厳粛に祈りを捧げるようなそぶりを見せていたが、そこには笑いたいのに我慢している様がはっきりと見て取れた。だが、今の日由里にそんな事に気づく余裕はなかった。ミルディアが日由里の前に立ち、その手を伸ばすと日由里すでに魂が抜かれたように体から力が抜けてその場に座り込んで震えた。

「あわわ……」

 ミルディアはおもむろに日由里のデッキの一番上のカードを取り出して見た。

「…恵みの魔道書……」

 それはマナを二つ消費することでカードを2枚引くスペルだ。ミルディアはさらに2枚のカードを日由里のデッキから引いた。

「…!!?」

 ミルディアは気難しげに眼を細めた。その表情には驚きと深い思考の矛盾する両者が内包されていた。引いたカード2枚のうちの一枚は、シークレットスペル【フォトン・シャイニング・バスター】だった。魂を取られると思っていた日由里は、ミルディアの予想に反する行動を、呆然として見つめていた。

「……あなたのカードの使い方は滅茶苦茶よ」

「あう、ごめんなさい……」

「……もし、カードがちゃんと使えていれば…わたしは負けていたかも……」

 ミルディアの冷淡な声に、日由里は温かいものを感じて立ち上がった。ミルディアは言葉を切って日由里を見つめていたが、やがてまた言った

「……あなたのステージは真剣で良かった。あなたは良い魔道士ね」

「あ、ありがとうございます。あのぅ、魂は取らないんですか?」

 日由里が警戒しながら言うと、近くで女たちの豪快な笑い声が起こった。シャイナとファーラが腹を抱えて笑っていた。日由里が怪訝に二人を見つめると、シャイナが言った。

「その子は魔女なんかじゃないわ。魂を取ったりはしないから安心しなさい」

「ミルディアは、わたしたちの仲間だよ! それにしても、まさかここまで信じ込むとはな! ああ可笑しい!」

「ひ、酷いよ! 騙してたんだね!」

 日由里はひどく憤慨したが、ミルディアの姿が目に入るとすぐに気持ちを落ち着けていった。

「褒めてくれてありがとうございました。とっても嬉しかったです!」

 日由里が手を差し出すと、ミルディアは無言で握手を交わした。その顔には、はっきりと微笑が浮かんでいた。ミルディアの微笑は日由里がはっとしてしまうくらいの神秘性があった。周りからは自然に拍手が起こっていた。

 その時になって、遊園地の警備員が人だかりの中に駆け込んできた。

「こりゃ一体何の騒ぎだ!?」

「なあ、あんた。あれはどんなシステムなんだい?」

「何のことですか?」

「たった今、この遊園地のメインイベントで、実体化するカードゲームをやっていたじゃないか!」

 観客が興奮冷めやらずに叫ぶように言うと、関係者は首をひねった。

「そんなイベントは聞いていないぞ! 君たち、これは一体……」

「あう、えっと、これは、その……」

 日由里は警備員に凝視されてあたふたした。どう頭をひねっても弁解の言葉など浮かんでこなかった。我ながら機転の利かない頭が恨めしいと思った。だが、観客たちはいつまでも日由里たちを見てばかりはいられなかった。先ほどまで晴れていたのに、唐突にあたりが薄暗くなったのだ。そうかと思えば、今度は低く唸る声のような音が空から響いてくる。上空は一瞬にして黒い雨雲に覆われていた。そして、すぐに肌を刺すように強烈な雨が一挙に降ってきた。

「うわっ!? いきなり何なの!?」

「マジックステージで放出された魔力が天気を激変させたのよ」

 驚く日由里に対して、シャイナは雨に打たれながら言った。その姿はいかにも日常的という感じで、至極平然としたものだった。

「今のうちに逃げようぜ」

 ファーラが言った。観客たちは悲鳴を上げて瞬く間に四散していく中、日由里たちもどさくさに紛れてその場から逃げ出した。


あなたは魔女ですか?・・・終わり

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