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魔法少女と銀の法札  作者: 李音
STAGE1 魔法はカードで放つもの!?
4/16

STAGE1-4

【】で表現されているのはゲームの流れをある程度示す為の情報です。遊戯王等で言うと、モンスターの攻撃力やプレイヤーのライフが表示されるのと同じものだと思って下さい。例外的に新たなカードが出て来た場合、登場人物の台詞の中に現れることもあります。

   【ステージ4】

 ファーラは勝利を確信した余裕のある笑みを浮かべながらデッキに手をかける。

「わたしのステージ! ドローっ!」

   【ファーラの手札3枚 マナ9個 ライフ15000】

【ファーラの使い魔】【炎獄のケルベロス 魔力9000 レベル3】

           【フレイムハウンド 魔力6000 レベル2】

「いくらシャイナさんがついていても、この状況は覆せないさ。これがラストステージだ! わたしはフレイムハウンドをマジックソウルに送り、2体目の炎獄のケルベロスをサモンだ!」

   【炎獄のケルベロス 魔力9000 レベル3】

「さらに、レベル2のクリエイトマジック【灼熱の世界(ヒートワールド)】を発動!」

 いきなり日由理の足元の地が裂けて炎が噴き出す。

「わわっ!? 何これ!?」

 日由理たちがいる光のドーム内の地面だけが割れて見る間にステージは炎の赤で彩られた。幻なので熱くはないが、なんとも息苦しい世界になった。日由理が余りの変化に半ば呆然としていると、シャイナは言った。

「これはクリエイトマジックよ。フォロースペルの一種なんだけれど、フィールド全体に2ステージの間効果を与えるの。通常のフォロースペルとは一線を画しているから、クリエイトマジックという別の名で呼ばれるわ」

 日由理がシャイナの言葉に頷く間もなく、ファーラは攻めてきた。

「アタックステップだ! 炎獄のケルベロス、攻撃!」

 ケルベロスの炎の吐息が日由理に迫る。

「灼熱の世界の効果により、2ステージの間だけ炎属性の使い魔の魔力が攻撃時に2000ポイントアップする! よってケルベロスの魔力は11000だ!」

「ええ!? 強すぎるよ!?」

「ニルとピンクラビーナの結界を使いなさい!」

 日由理は後ろから聞こえたシャイナの声に咄嗟に反応した。

「ニ、ニルとピンクラビーナの結界!」

「ピンクラビーナはスキルにより、攻撃された時だけ魔力が7000になるわ」

   【白翼のニルとピンクラビーナ 合計魔力8000】

   【炎獄のケルベロス 魔力11000】

ニルとピンクラビーナは炎を受けて、悲鳴をあげながら消えていった。

   【日由理のライフ4500→1500】

「うう、みんなやられちゃった……」

「次の攻撃で終わりだ!」

 その時、日由理のマジックソウルから二つの輝きが舞い上がった。その瞬間に、シャイナはにやりとした。光は日由理の左右に舞い降りてその姿を見せた。日由理の左側には白翼のメルティが、右側には白い翼を広げて長槍を持つ勇壮な姿の白き乙女がいた。

   【白翼のメルティ 魔力4000 レベル2】

   【白翼の戦乙女レオニア 魔力7500 レベル3】

これらを見たファーラはさすがに焦った。

「メルティが出てくるのは分かっていたけれど、レオニアなんていつマジックソウルに送ったんだ……そうか、さっきエクストラサモンで日由理を守ったのはそいつか!」

「そういう事よ」

 シャイナがファーラに答えた。日由理はというと、何が起こったのか訳が分からず、ファーラ以上に驚いていた。

「なになに!? この子達はどこから来たの?」

「使い魔のスキルによって、あなたのマジックソウルから出て来たのよ。まず、ニルはサモンステージからマジックソウルに送られたとき、マジックソウルにあるレベル2以下で白翼のニル以外の白翼と名のつく使い魔をエクストラサモンする。そして、レオニアはニルがアタックステップでマジックソウルに送られたとき、マジックソウルにこのカードがあればエクストラサモンされる。ニルとレオニアのスキルはどちらも強制だから、例えそれを知らなくても勝手に発動するわ」

「何だかよく分からないけど、ニルはすごい力をもってるんだね」

「ニルは白翼の絆そのものなのよ、あなたにもそのうち分かるわ」

 状況は一変した。おおよそを理解した日由理は、狡猾な策士にでもなったかのような嫌味な微笑を浮かべ、少しもったいぶった後に言った。

「これで、その真っ赤な犬だけじゃ打ち崩せなくなったよ!」

「かっこよく決める所で真っ赤な犬とか言うのか、お前は……。だが、やはり初心者だな! お前は状況を把握していない。いくぞ、もう一体のケルベロスで攻撃! 灼熱の世界の効果により、魔力2000アップだ!」

「2体の使い魔の結界を使うよ!」

  【白翼のメルティと白翼の戦乙女レオニア 合計魔力11500】

  【炎獄のケルベロス 魔力11000】

 ケルベロスの吐いた炎を受けた日由理の使い魔たちのうち、メルティだけが消え去ってマジックソウルに送られる。続けてファーラは言った。

「まだわたし自身の攻撃が残っている!」

「あっ!? そうだった、忘れてた!!」

「お前のライフはあと1500、レベル1のアタックスペルで十分だ! 受けろ、ファイアブラスト!」

 ファーラが右手を上げると、その手に火の玉が宿り、次第に大きくなっていく。ファーラはそれを日由理に向かって投げつけた。

「ファイアブラストの魔力は3500、わたしの魔力と合わせて11000のダメージだ!」

「手札の使い魔をエクストラサモンしなさい!」

 諦めかけていた日由理は、後ろから聞こえてきた叱咤と言ってもいいくらいの声に、驚いて体を震わせ、同時に破れかぶれという感じで叫んだ。

「手札のシルバーラビーナをエクストラサモン!!」

  【シルバーラビーナ 魔力0 レベル3】

「シルバーラビーナは自らのスキルにより、結界を使ったときに攻撃を無効に出来る。でも、スキルを発動したこの使い魔は、アタックステップ終了と同時にマジックソウルに送られるわ」

 シャイナが言うと、銀色の兎に似た獣の前に魔法陣が展開され、火の玉はそれに当たって爆発した。銀色の獣は無傷で、得意な表情で日由理の前に立っていた。ファーラは地団駄を踏みたいような気分になった。

「くそ、しぶとい奴め! わたしはファイナルステップを飛ばしてステージエンド!」

「ステージエンド時に、マジックソウルに三体のラビーナが揃っていれば、一度だけカードをドロー出来るわ」

「やった、偉い、兎ちゃんたち!」

 日由理がカードを引くと、ファーラは少し顔をしかめた。その様子をちらと見てから、シャイナが言った。

「日由理が勝てるとしたら、もうここしかないわ、これが最後のドローよ!」

 日由理は頷いてからデッキに手を添えた。その顔には驚くような気迫があり、小学生とは思えないほど大人びてもいた。日由理の姿にファーラは思わずたじろいだ。

「いやに真剣じゃないか。初めてのマジックステージだっていうのに、どうしてそこまで真剣なんだ。負けて当然のステージなのに……」

 日由理は集中する余り、自分が相手を驚かせるほど真剣であることに気付いていなかった。そして、日由理はこの一瞬に人生の全てがかかっているというような真剣さでカードを引いた。

「いくよ! わたしのステージ! ドローっ!!!」

   【日由理の手札2枚 マナ10個 ライフ1500】

 さっきまで灰色の雲に覆われていた空がいつの間にか晴れてきて、雲間から注がれた陽光が日由理の引いたカードを照らし出した。日由理はそのカードを見て、目を輝かせた。

「このカード、枠が銀色だよ」

 シャイナは日由理の引きに心から歓喜して指を鳴らした。

「最高の引きよ! どうやら貴方には、マジカルステージの才能があるようね!」

 シャイナと日由理は向かい合って頷く。それから日由理はファーラのほうに振り返って言った。

「アタックステップに入って攻撃するよ! 行って、レオニア!」

 白き翼の戦乙女が飛び上がり、槍を突き出しながらファーラに向かって急降下していく。

「ここでダメージを受けるのはまずい。炎獄のケルベロスの結界だ!」

 ケルベロスがファーラの前に出てきて赤い魔法陣を広げると、シャイナが言った。

「白翼の戦乙女レオニアは、攻撃時にマジックソウルに存在する白翼と名のつく使い魔一体につき、500魔力が上るわ。日由理のマジックソウルには三体の白翼がいる。よってレオニアの魔力は9000よ。同時に灼熱の世界のデメリットも発動するわ」

「くっ、灼熱の世界が発動中に炎属性の使い魔が攻撃されると、魔力が1000下がってしまうんだ……」

   【白翼の戦乙女レオニア 魔力9000 レベル3】

   【炎獄のケルベロス 魔力8000 レベル3】

 戦乙女の槍は、真紅の魔法陣を貫き、ケルベロスの胸に突き刺さった。ケルベロスは一声吠えて消え去った。

   【ファーラのライフ 15000→14000】

「やられた……けど、大丈夫だ。サモンステージにはケルベロス、手札にもレベル3の使い魔がいる。この布陣なら心配はない」

 ファーラが色々考えている間に、日由理は銀色のカードを難しい顔をして見ていた。

「何か、色々書いてあって難しい魔法だねぇ…」

「枠が銀色のカードはシークレットスペルよ。デッキに2枚しか入れることが出来ない強力なカードだけれど、発動条件も厳しいわ。でも、今なら使える。さあ、ファーラに目にものを見せてあげましょう!」

「よーし、わたしはレベル3のシークレットスペル【フォトン・シャイニング・バスター】を発動するよ!」

「ここでシークレットを引いたのか!?」

 ファーラは日由理の引きの良さに驚愕せざるをえなかった。日由理の上空でカードが反転して、シークレットスペルの姿がファーラの前に露となった。

「シークレットスペルは、手札を一枚マジックソウルに送り、レベルよりも一つ多いマナを支払うことで発動できるわ」

「わたしは手札の一枚をマジックソウルに送って、マナを四つ支払うよ!」

 日由理の上空に魔法陣が現れ、その中心から先に銀色の三日月のような飾りがついたスタッフが出現した。スタッフの長さはかなりのもので、下と右側に突起があり、それらを掴んで照準を定めるようになっていた。日由理がそれを持ってファーラに狙いを定める姿は、砲身の長い砲台さながらだった。そして、スタッフの先端の銀色の三日月の中の空間に、輝きが生まれる。外同時にスタッフの先端部を中心に白く光る巨大な魔法陣が展開されていった。

「フォトン・シャイニング・バスターは魔力10000の魔法だよ! さらに、マナを一つ消費するごとに魔力を2000ポイント上げることが出来るよ! わたしは残った6つのマナ全てを使うよ!」

 ファーラは急激に上ってゆく日由理の魔力を、虚空に表示させて見ていた。

「魔力32000!!?」

「いくよ! フォトン・シャイニング・バスターっ!!」

 巨大な魔法陣から光の波動が噴出する。ファーラは慌てて手札を確認した。

「サモンステージには魔力9000のケルベロス、手札のギガンテスは魔力8500、だめだ届かない……」

 光に飲まれる寸前に、ファーラは微笑を浮かべて言った。

「この勝負はわたしの負けだ。だが、お前に敬意を表してステージは最後まで続ける。わたしは手札のギガンテスをエクストラサモン! 2体の使い魔で結界を使う!」

【日由理の魔力32000】

   【炎獄のケルベロスとギガンテス 合計魔力15500】

 ファーラの使い魔たちは光に飲まれて一瞬にして消え去り、さらにファーラも光に飲まれた後、大爆発が起こった。

   【ファーラのライフ 14000→0】

 ファーラは16500のダメージを受けて敗北した。超過ダメージは僅かに2500で、ぎりぎりのところで日由理は勝利したのだった。

 ファーラのライフが0になった瞬間に、色とりどりの魔法陣は消え去り、互いのカードは全てホルダーに回帰していった。そして最後にマジカルステージの空間を作り出していた光の幕で覆われたドーム状の結界が消えていった。その後に、日由理の後ろで見守っていたシャイナからささやかな拍手が送られた。

「よくやったわ、日由理」

「わたし、勝っちゃった! 勝っちゃったよ!」

 日由理は勝ったのが余程嬉しいらしく、小学生の無垢さを前面に現して、はしゃぎまくっていた。そこへファーラが歩いてきて手を差し出した。

「負けちゃったよ。良い勝負だったな」

 日由理は満面の笑みで、ファーラの手を握った。この瞬間からもう二人は友達になっていた。

「あれ? さっきまで雨が降りそうだったのに、すっかり晴れたね」

「ここいら一帯だけな」

 ファーラが言うと、日由理は不思議に思って周りを見渡した。すると、日由理たちを中心としてぽっかりと穴があいたように、せいぜい半径5キロくらいの範囲だけ雲ひとつなく晴れていて、その周辺は厚い雲に覆われていた。そのあまりにも不可思議な光景に日由理は目を奪われたが、川の方から陽光がいやに反射してくるので、今度はそちらの方に目を向けた。そうすると更にびっくりしてしまった。

「えええぇっ!!? この川こんなに綺麗じゃなかったよ!!?」

 日由理の見慣れている濁っていたはずの川の水は、今は完全に透き通っていて、水の中で泳ぐ魚まではっきりと見ることが出来たが、間もなく後から流れてきた濁った水に浸食され始めた。混乱する日由理に、シャイナが言った。

「それはマジカルステージの影響よ。マジカルステージで魔道士たちが戦うと、膨大な魔力が発生するわ。その魔力で外界を浄化する事が出来るの。わたしたち魔道士にとって、マジカルステージは世界を綺麗にするための仕事なのよ」

「マジカルステージって楽しいだけじゃなくて、こんな素敵な事も出来ちゃうんだね」

 日由理の楽しいという言葉を聞いて、シャイナは嬉しそうに笑顔を浮かべた。日由理は今の話を聞いて、マジカルステージがとても好きになった。


魔法はカードで放つもの!?・・・END


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