第28話 同性同棲
こんばんは
とあるスレで私の作品を面白いと言ってくださる方がいて、それはもう感無量の思いでした。
ガチで泣きそうになりました(笑)
しかし、酷評もあり、悲しかったです。
ガチで泣きそうになりました(泣)
同じなろう作家様のお友達を作って慰めて欲しい気分です。
よければ、そこのあなた。
お友達になりませんか?
……ちょうしにのりました。
すいません
気を取り直して第28話です。
ホント嫌になる。
僕は「羽間」ではないのか
そう自問してしまうくらいの嫌悪感に襲われる。
それは強大で脅威だ。
そんな僕の内心を知ってか知らずか、澪桜姉は止めることなく魔術をひたすら発している。
心なしか表情まで冷めてきているように見える。
室温は、いまや氷点下を下回っているだろうと思えるくらい、
寒い。
それでも、僕は譲れない。
澪桜姉が弟に対して嫉妬するというのは当然知っている。
それによる被害も酷いものだというのもわかっている。
僕だって、もし澪桜姉に恋人が出来たら必ず嫉妬にかられるだろう。
現時点では有り得ない話だけど、将来はどうかわかんない。
澪桜姉はモテるから、引く手は数多だし、その中に気にいった人がいれば、そうなるのも考えられる。
それは僕にとって嫌なことだけど。
そうなったら澪桜姉との口づけもしなくなるのだろう。
お姉ちゃんだけど……。
澪桜姉の嫉妬は発展すると恐ろしくおぞましいモノになることはもちろんわかっている。
産まれた時から一緒に暮らしているので、そういう被害も何度かあったのだ。
それでも、今回のように血系魔術は使わなかった。
『羽間』の血系魔術。
寒暖魔術と家の中では呼ばれている。
それは魔力の届くところまで、魔術の範囲内の気温を変化させられることにある。
天原の天空魔術のような派手さはなく、南雲の形態魔術のような柔軟さはないが、これは厄介な代物だ。
羽間の誕生以来の実力者と呼ばれている澪桜姉が使うなら尚更
この空間に耐えきれず、耐えることもせず
「姉さん」
僕の冷え切った声が、冷え切った部屋に響く。
澪桜姉は僕の声を聞くなり顔を青ざめて、途端に魔術をやめた。
部屋に暖気が戻ってくる。
「あっ……ごめ……、トー君」
すぐに慌てて僕に謝る澪桜姉。
「別にいい」
「違うの!トー君。お姉ちゃんちょっと嫉妬しちゃって……」
「だから、別にいい」
「ホントに違うの! 別にトー君の事嫌いになんてなってないから!」
「だから……別にいいって……」
室温は戻っても、僕の声に暖気は戻らない。
その声が部屋に通るたびに、澪桜姉の顔色は少しずつきまり悪くなっていく。
僕が『羽間』として受け継がなかったものとして、一番痛みを負ったのは、『血系魔術』だった。
魔術の家に生まれ、『羽間』の嫡男として育てられた僕だけど、結局のところ魔術は使えなかった。
人一倍の『魔力』を有し、人よりも珍しい『能力』をもっても、『魔術』と言う形では、血は僕に力を与えなかった。
通常の簡易的な魔術(術式が軽く、使用魔力も少ない――通称、簡略魔術)は使えないが、血系魔術は使えるのではないか?
そう思われた時もあったが、それは有り得ない。
なぜなら血系魔術は、開花させるのが、簡略魔術より難しいものだからだ。
古い家に産まれれば使えるという簡単な話ではない。
そこに産まれてようやくスタートラインに立てるということだ。
そんな魔術が、簡略魔術も使えない僕に使えるわけがない。
能力があり、魔術がない。
魔力を使う術があるが、魔術はない。
そんな矛盾した僕。
それが顕著にわかるのが、『羽間』の血系魔術だ。
誰を恨めば魔術が手に入るのだろう。
きっと誰を恨んでも、羨んでも手に入ることのない力。
それをいとも簡単に手に入れた姉に嫉妬しているだけなのだ。
だから、子供のようなワガママを澪桜姉に押しつけている。
僕はガキだ。
そんなことすらも嫌悪感の一部に含まれている。
それが嫌だ。
澪桜姉が使う血系魔術も、
それを許せない自分も、
そしてこの温まりかけた空間も、
冷え切った僕の声も、
澪桜姉の心配そうな眼つきも、
――嫌だ。
僕は特別なんかじゃない。
異能を持った異端なんだ。
この寒暖魔術の魔力を感じるのとそれがわかってしまう。
そんなことを肌が敏感に感じ取ってしまう。
それも能力の一つなのだろうか。
それとも体質なのだろうか。
嫌だ。
嫌だ。
なにもかも嫌になる。
学園も
結社も
華音も
萌葱も
仁吾も
澪桜姉も
…………………
突然。
グッと思い切り抱きしめられる。
冷えた身体が、熱を取り戻すかの如く温まり、心臓もドクドクと鼓動の音を響かせる。
「トー君。ごめんね、わたしがちょっとしたことで使っちゃって……。トー君が苦手だって知ってたのに、嫉妬にかられちゃってつい……」
それは、本当に申し訳なさそうで、そして心があったまるような声だった。
「澪桜姉……」
気づけば僕も声を出していた。
それも、澪桜姉同様、声に熱が籠っていた。
先程の冷えた声とは、彩りがちがうような、そんな声色だった。
「もうトー君の前では絶対使わないから……、お姉ちゃん使わないようにって思ってたんだけど、久しぶりにトー君に会ったこともあって、それでトー君の部屋から知らない女の人の匂いがして……、それが寂しかったの」
澪桜姉は泣いているみたいだった。
抱きしめられていたのが、いつの間にか抱きつかれているような形になって、僕の胸に澪桜姉は顔を押しつけていた。
鼻をすする声がかすかに聞こえる。
「寂しかったの、逢いに来て知らない女の匂いがしているなんて浮気みたいなこと……」
浮気ってなんだ、と今は無粋なことは言わない。
体温が戻ってきて、自覚もおまけに戻ってくる。ついでにツッコミも
澪桜姉は確かに僕が一緒にいる時に血系魔術を使わなかった。
それは初めて目の前で血系魔術を使われた時からだったと思う。
僕は拒絶した。
初めて姉を拒絶した。
姉が持っているモノを僕が持っていなくて、悔しくて、たまらなく悔しくて
その先には、今と同じように澪桜姉の鼻声と泣き顔があった。
澪桜姉は、今までにないぐらい悲しそうな表情をしていて、僕のしたことを心配していた。
それを見て幼いながらに恥じた。
自分のしたことで姉が悲しんでいると知って、そしてそれでもなお、僕の心配をしていると知って。
それ以来澪桜姉は寒暖魔術を僕のいるところでは使わなかった。
今日まで。
きっと本当に寂しかったのだろう。
産まれてから一緒の存在とたとえ数日でも離れているということが。
これなら父さん達に怒られようと電話とかにはちゃんと出てあげるべきだった。
「澪桜姉ごめん。もう大丈夫だから」
「ホント?」
顔を上げる澪桜姉の縋るような目にはやはり涙が零れていた。
その涙にぬれた顔も月明かりが照らしていて、美の女神に愛されているのではないかと思えるほど艶美だった。
神なんていないけど……
「ホントだよ。ホント」
「お姉ちゃんのこと嫌いにならない?」
「ならないならない。なるわけない」
不安げな澪桜姉を振り飛ばすように何度も、ならない、と連呼する。
それに呼応するかのごとく澪桜姉の顔から、憂いに揺れていた表情が消え去り、そこには美しさしか残っていなかった。
「よかったぁ。お姉ちゃん、トー君に嫌われちゃったら死ぬしかなかったよ~」
「は……はは……」
冗談だよね?
面白い冗談だなぁ。
澪桜姉は一度眼をこすり涙を拭うと、
「お姉ちゃんはトー君がどうだろうと、ずっと妻として支えたいと思っているからね。たとえトー君が魔術に見放されていても、わたしには関係ないからね」
ところどころツッコミしたくなる姉の発言だけど、真実味だけは籠っていた。
今僕が一番言ってほしいことを的確に狙ってくる澪桜姉。
魔術が使えなくても澪桜姉は、僕に対する愛情を損なわなかった。
あたかもそれが当たり前のように
やっぱり……
「敵わないなぁ。澪桜姉には……」
そうなのだ。
姉弟で夫婦と読んでいるこの姉には一生敵う気がしない。
「お姉ちゃんこそトー君にメロメロで敵わないよっ!」
楽しげな声を出す澪桜姉。
もう泣いていたことなんて飛んでいってしまったように明るかった。
「「アハハ」」
2人で顔を合わせ笑った。
声を出し、夜なのにそれをきにせず。
ひたすら……
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根本的な解決をしていなかった。
笑っちゃうなっ。アハハ……
なんだか最近すごい残念な人になっている気がするという悩みはいまのところ置いて、本題に移らなければならない。
澪桜姉どこに泊まるの?
議題はこれである。
さぁ、どうにかして居着くのは避けてもらわなければならない。
寂しくなったら会いに来ても良いし、こっちから会いに行くのもいいけど、住みつかれると困る。
姉とはいえ、一緒に住んでいることがばれれば、厳罰モノだろう。
それは回避しなければ……。
「お姉ちゃん、今日は遅いからいいけど、明日はどうするの?」
勇気を出して訊く。
暗にここはだめだよ、というのを伝える。
「明日? 明日はトー君の朝ご飯作って、トー君の制服姿をじっくりしっかり写真にとって、それを悔しいけどお母さんにデータ送信して、トー君の学園まで一緒に行って、トー君がしっかり勉強してるかな?とか想いながら、仕事して、そんでトー君のお迎えに行って、仕事の合間に買い物しておいたものでトー君の夕食作って、トー君と一緒にお風呂入って(キャッ)、トー君と一緒に(ウフフ)おねんねするだけだよ?」
ホントに面白いお姉ちゃんがいて僕は幸せだなぁ。
「ってなるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「トー君、どうしたの!?」
「どうしたのじゃないよ、お姉ちゃん! ここは男子寮なの!」
「うん、知ってるけど?」
「知ってるのになんで1日中一緒のビジョンなの!?」
「1日中じゃないよ! 仕事中はトー君のことを想って仕事するって言ったでしょ!」
「それだけじゃねぇかぁ!」
それすらも僕に影響を受けている。
仕事の合間に買い物とかも行ってるし……
「まぁいいや、予定はあくまで予定だから……。でも男子寮にこのままいられると僕学園退学になっちゃうかもしれないよ……」
「トー君退学になったらお姉ちゃんが一生養ってあげるね! お礼はトー君との赤ちゃんでいいからねっ!」
「いいわけあるかぁ!」
そして嬉しそうに言わないでください。
「もおっ! トー君さっきから怒鳴ってばっかり……」
「誰のせいで……」
「別にトー君に退学してほしいなんて思ってないし、それだからってトー君との子供が欲しくないとも思ってないよ?」
「子供からいったん離れてください、お願いします!」
澪桜姉はベッドから下り立つと、僕のことを腰に手を当て見降ろして言った。
「一緒に住む方法が、なにもこの学生寮とは決まってないでしょ?」
「えっ? ……どういうこと?」
「だからトー君がここからでて行けばいいのですっ」
「……へ?」
「そしてお姉ちゃんと2人暮らししましょう」
なにをいっているのかな、この愚姉は……
出ていったら住むところなくなっちゃう。
お姉ちゃんが今住んでいるところは実家だから帰っても2人暮らしにはならないし……
だけど同時にホッとする。
男子寮に居着かないという言質を取ったも同然だからだ。
けどどういうことなんだろう……?
その答えはすぐに返ってきた。
「学園と機構の近くに良い物件があったんで、そこを買います」
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なにをいってるのかな、この愚姉は……Part2
「そんなお金どこにあるのさっ!」
「ええと……、銀行だけど……?」
「なんで!?」
「お仕事してるからかな……?」
ぼんやりとしている澪桜姉。
対して僕の声は張り詰めている。
「お仕事って……! ……あぁ、そっか」
思い出す。
澪桜姉の職場の給料の良さに驚いたことを。
そうだ。姉さんは天才だったんだ。
日本魔術研究機構は日本のエリート(魔術界の)が集まる場所。
そこで澪桜姉は研究者として勤めている。
当然のごとく倍率の高いその研究機関は、倍率と研究員の知性だけでなく、給料もバカみたいに高かった。
いくら国家の仕事でも……、とはもちろん思ったが、それだけ倍率を維持するためにも必要なことなのだろう。
高待遇をするには、高能力でないといけない。
これが機構では明白なこととなっていると澪桜姉も何時だったか言っていた気がする。
待遇が良ければ、倍率が上がる。
倍率が上がれば、機構内の機能率も上がる。
機能率が上がれば、実績が出来る。
そうすると結局、待遇が良くなる。
こういった良循環が生まれる。
僕もここの末端にでも取り入れてくれないかな……。
と将来の事を本気で考えたことはいいとしよう。
僕に研究員なんて向かないんだから。
そして愚姉、改め金持姉。
それは19歳にしてはおかしいくらいのお金を持っていることだろう。
この土地のバカ高い学園内の家が買えてしまえるくらいには……
仕事ちゃんとしているのかな……
心配になってきた。
あの電話もそうだし
と不毛なことをしても仕方がないので澪桜姉と話を進める。
「お父さんとお母さんにはちゃんと言ってあるの?」
「言ってないけど、別に一括で買えるから問題ないかな?って思うよ」
「問題大アリ……、は、まぁいいや。それにしてもお金勿体ないでしょ?」
「そんな!」
と大げさに言う澪桜姉。
溜めに溜めて言った言葉がこれだ。
「お姉ちゃん、トー君の為に働いているんだよ!? お姉ちゃんには必要最低限のお金があれば十分だから、あとはトー君に使うの!」
「なにその、ヒモ男!?」
「いいじゃん、トー君! お姉ちゃんが養うから大丈夫っ」
「いやいや大丈夫なレベルからかけ離れてるから!」
「だからお礼は2人の赤ちゃんで……」
「そっから離れて!!」
あなた実のお姉ちゃんですよね?
「とにかく! 家を買うことはお姉ちゃんの中で決定しました。そしてそこにトー君と2人暮らしすることも決まりました。異論は認めません。譲歩もしません。ですがお姉ちゃんとのコスプレ・プレイは認めます」
「そこだけは認めなくていいよっ!」
やばい、これはどうしよう。
「ちなみにお金を出せば、本物のナース服が買えますがどうしますか?」
「ナース、服……?」
ふいに頭の中にナース服を着た3人が表れる。
華音
萌葱
澪桜姉
どれも甲乙つけがたく、似合っていた。
「トー君は、ナース服アリと……」
「何メモしてるの!?」
どこからだしたのか、澪桜姉はメモに『トー君、ナース服好き』と書いていた。
その上に『トー君、おっぱいが相変わらず好き』とも
相変わらずってなんだ!?
それより僕なんか胸に関することで澪桜姉にしたっけ?
いやしてないはず。
なにより記憶にない。
うーん……
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やめよう。なんか怖くなってきた……
僕が知らないところでこんなことを思われているのは癪だけど、これ以上考えて藪蛇になるよりましだ。
「それじゃあ、トー君、引っ越しは明日です」
「いやいや、ちょっと待ってよ姉さん」
「コスプレの追加なのかな?」
「違うよ!」
「では、愛の巣に明日から突入です」
「あ、愛の巣!?」
「姉弟ならば当然です」
「夫婦じゃねぇぇ!!」
夜の寮に僕の声が響いた。
しかしこれ、ホントですかね?
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――天原邸内
現当主の音彦は一枚の資料を見ていた。
それは家の者に急いで調べさせた刻季の調査票だった。
今代こそ、『主席』を逃したものの天原の力は魔術界でも衰えてはいない。
その力は至るところに及ぼせる。
権力を使い音彦は刻季の資料に辿りついた。
(何者だ……!?)
それは感情があまり出ることのない華音の父にふさわしい音彦の感情だった。
そう、――驚愕。
彼は刻季の資料を見て驚く。
能力について詳細は載っていないが、そこには魔術界はおろか世界をも征服できそうな能力が書かれていた。
即ち、時空を超える力。
魔術などという物理法則を歪めるだけでなく、世界自体を歪める。
反則で驚異的な能力だ。
(これは師団の集結を急いだ方がいい。音弥と華音が陰でなにかやっているようだが、それよりもこちらの案件のほうが一大事だ)
資料を持つ手が震えているのに気付く。
それはどんな感情なのだろうか。
感情が希薄な音彦にとってそれがなんなのかわかっていなかった。
師団の集結は約2カ月後に控えている。
それでは遅かった。
この話を師団家で話し合い、結論を出したかった。
それが音彦の想いだった。
(南雲に話せば、聞き入れてくれるか? いや、あそこの娘と『羽間』が仲良かったはずだ。やはり強権を使うしかないか……)
頭の固く古い音彦は、これ以上、刻季の情報を自分一人で抱えておくのは悪策と考えた。
天原、宛寺、木櫻、國末、車谷、重角、瑞葉、鈴建、仙道、常泰、南雲、皹村
この十二家で師団は構成されている。
この十二家には、緊急時に使う強権があった。
それは、使用状況によれば、権力を狂わせかねないものでもあったが、一応師団家全てが保有する権利だった。
その権利は
――師団結集
物語が動き始めた。
ようやく、初期段階を超えたのかな、とか毎章ごとに言ってる気がしますが、次章から話は進みます。
バトルパートも増えるつもりなのでお楽しみに。
宗教徒もちょろちょろ出していきます。
萌葱とのデート話いつ書こう……