第26話 赤髪美姉
お久しぶりです。
書かないとは言っていたんですけど、なんか時間できて書いたら、全然書けなくなっていました。
なんかもう前にもまして酷いですね。
タイトルはなんとなく四字熟語っぽいっていうのと赤い髪と赤くなった姉ということです。
羽間澪桜
中等時、魔術は実技・座学ともに主席で卒業。
刻季の4歳年上。
澪桜曰く「姉さん女房だね!」
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それには苦笑いしか返せなかった刻季だが、彼はそんな姉を尊敬し、そして好意をもっている。
欠点として、度を超えるブラコンという点があるのは、刻季ももちろん知っているが、それすらも嬉しく感じられるほど刻季もシスコンなので、まぁ問題はない。
問題は無い
きっと………
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問題大アリだよっ!
度を超えた姉上様は、寝ぼけ眼で見つめた姉の姿は、どうみても姉弟ですることの壁から越えた行為をしていた。
澪桜姉となんか唇合わせちゃってますけどっ?
唇どころか舌まで絡ませちゃってますけどっ?
澪桜姉の唾液がこちらに絶え間なく送られ、こちらの唾液もひたすら分泌を続け彼女に送られる。
送られた液体は、とても甘美な香りをしていて、それだけで酔いそうになってきた。
行為に耽る澪桜姉を見て、僕は自覚する。
これまずいことなんじゃないかな?
と
そう思考が至ると同時に、僕は口が塞がれている状態だったので
「むーっ! むぅーっ!」
と声にならない声をあげる。
こんなの軽く脅威でしかないよ!
澪桜姉は僕の声に気付いたように唇を離した。
と思ったら腕をがっしりと掴んで
「トーくぅん~。トーくぅぅん~!」
酔いどれ犬のように僕の名前を呼びながら、また唇を貪り始める。
月明かりが僕たちの唇たちの間を照らす。
それもやはり幻想的なモノだった。
見たことのない世界に住んでいる気分に陥りそうになる。
……とは思ったもののこれはまずいよ。
実の姉が寝ている僕を押し倒して?それでキスまでしている。
父さんと母さんに顔向けが出来ない……
ていうか世間様に顔向けが出来ない……
これはホントにまずい。
「むー! むー!」
これしか抵抗する方法がないので、ひたすらその意を表す。
それでも姉は唇を離すことなく、もちろん腕を離すこともなく行為に耽る。
逃げ場がない!
魔術でも使っているのか澪桜姉の力が強く、僕に逃げる隙を与えない。
腕を掴まれたまま、身体が全く動かせない。
弟にキスをするために魔術を使う姉がそこにいた。
たぶん本能的に使っているんだろうけど……
ん?
魔術?
魔術ならば
これが魔術なら、逃げる隙というものがあるよね!
この為に使うのは、嫌な気分になるが、使わなければ逃げることが出来ない。
僕の能力
知っているだけでも、この能力は魔術を分解し、その魔力を吸収出来る。
それを使えば、澪桜姉を離すことも出来るはずだ。
能力のことは澪桜姉も知っている。
ひょっとしたら僕よりも知っている。
だからここで使うのは、良策どころか得策だろう。
気付かれても、なんの損失もなければ、これによる被害もない。……だろう。
そう思い立ったら、それ以外が解決策にならないと思い、僕は能力を範囲せまめで、発動する。
ちょうど僕と澪桜姉を包むくらいの範囲にしている。
魔術学校はどこもかしこも、魔術が張り巡らせられているため、能力を使うとうっかりと何かを壊してしまう可能性もあるのだ。
中等の時に、競技場の魔術を解除してしまったこともあるから、それ以来注意している。
あれは、萌葱が庇ってくれなければ、退学していたかもしれない……
と、能力に対するトラウマを語れば夜が明けてしまう。
それまで、姉にキスされ続けるのは、体力的にも精神的にも限界にきたす可能性がある。
いや、こんなことされるのは、数分が限界だ。
あまりにも濃厚で甘美だ。
僕をどこまでも酔わせる。
姉なのに……。
能力を発動すると、澪桜姉の身体が少し軽く感じてきた。
澪桜姉も不審に思い始めたのか、唇は離さないが、舌を動かすのを止めた。唇は離さないけどっ!
……どれだけ執着しているのかわからないが、それでも、もう腕を動かせるくらいになっている。
片手で押えられていた、僕の両手をずらし、澪桜姉の手から放される。それでも澪桜姉は唇を離さない。
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もう怖いっ!
ここまできて離さない執念って何!?
そりゃあ僕だって、お姉ちゃんとチューするのが、嬉しいかどうかと言われたら、……嬉しいけど、それはもっとチュッって感じのソフトキスで、こんな腰が抜けちゃうようなのじゃないよ!
べ、別に腰抜けてないけどさっ
身体が重く、一刻も早く離れたかったので、艶やかに光る唇ごと、澪桜姉の肩を掴み一気に引き離した。
くっついていた時は、そこまで見えなかったが、月明かりに照らされる姉は、残念そうな顔を浮かべながらも、それでも綺麗だった。
おっとりした表情だがはっきりした目鼻立ち、腰まで伸びた赤髪に、成熟している身体。
どこをとっても、澪桜姉は可愛らしく、美しかった。
華音・萌葱という、身近にもとんでもない美少女、または美女がいるけど、それに引けを取ることなく、勝るとも劣らないくらい美人だ。
贔屓目なのかもしれないが、誰よりも自慢の姉で、いつまでも自慢の姉。
大人な女性の部類に位置する立場の人間で、それなりに責任のある仕事もしている。
そんな姉がキスを止めたらとても残念そうな顔をしている。
「トー君……、どおして?」
「どおして? ってそっちこそなんでかな……?」
澪桜姉が、部屋へ侵入してきて、その上唇を貪るように合わせていた理由が聞きたい。
「質問に質問で返さないで!」
「えっ……」
その声に少しビックリする。
それでも追撃は止まらなかった。
「どおしてお姉ちゃんとのキスを止めたの? それに能力を使ってまで」
「澪桜姉こそなんで……」
「だから質問に答えて」
僕の声は切られ、有無を言わさない口調で言ってくる澪桜姉。
さて、どう答えるべきか……
キスされているのが嫌だったと答えるのは言語道断も良いところだ。
個人的にされるのが嫌なわけでもないし(こんなに深いのはちょっと……だけど)、第一こんな答えをしたら、澪桜姉がどうなるかしれたものじゃない。
ここは無難なところにいくしかない。
「いや、あのさ、息が少し苦しくなっちゃったんだよね」
これだ。これ以上の答えは無い気がする。
――回避完了
すると澪桜姉はニンマリと表情を穏やかに戻した。
「そっかぁ……、じゃあ今度は息継ぎしながらしようか」
…………
――回避失敗
いや、まだまだ取り戻せるはず。
……と思いきや、澪桜姉は僕めがけて、僕の唇めがけて、突進してきた。
そのまま、またされるがままに、舌を隅々まで入れられましたとさ。
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どれだけ時間が経ったのか、わからない。
幸い、腕は抑えられていなかったので、ズボンにのびる手からは守ることが出来た。
それでも満足したのか、ようやくキスから僕を解放してくれた姉がベッドの僕の横に座る。
妙に色っぽい座り方で、ときどき僕の膝のあたりを指でこする。
誘われているのかな…………ていうか腰がもたない……。
姉に××を誘われる弟がそこにいた。
でもひとまずキスだけで満足してくれたみたいだ。
それにしても澪桜姉とチューするのも久しぶりだなぁ。
舌をいれるまで、は無かったけど、実家に住んでいる時は毎朝、毎晩一回ずつしてたしね。
この話を萌葱に知られた時は、軽く……いや、本気でひかれたけど、『澪桜さん、だもんね……』とよくわからないことを言われ、すぐさま納得された。
それに対し、こっちが納得出来なかった。
なんで、お姉ちゃんとチューすることでひかれなきゃいけないの?
澪桜姉は『お姉ちゃんと弟はキスして(家族)愛を深めていくもんだよ』と言っていた。
チューをしたら仲良くなるのは当然だから、それが間違っているとは思えない。
萌葱は、弟もお兄ちゃんもいないからわかんないんだね、とその時は一応納得したけど。
ごめん、萌葱。
君が正しかったかも……
ズボンにまで、迫ってくる手を見た時、少しそう思ったよ……
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ともあれ、今は解放されているので、もう安心だ。
澪桜姉もうっとりした目で、膝を’’さすりさすり’’としてくるけど、自分も腰が抜けているのか、誘うだけで、自分からなんかしてきそうにもない。
僕ももう高校生だから、’’なんか’’のことはもちろんわかっている。
澪桜姉もわかっていることだろう。
それはともかく、なんで澪桜姉がここに来たんだろう。
一応、学園の敷地内で仕事しているみたいだけど、入学以来会ってなかった。
澪桜姉は実家から通えるように、学園の理事会からしっかりパスをもらっているはずだから、帰らないのはおかしい。
もう夜も更け始めている。
19歳の女性がこんな夜遅くに帰って無いことは大変なことだ。
澪桜姉は、それはもう、魔術優遇学園に入れるくらいの実力者なんだけど、不安は不安である。
僕は澪桜姉に事情を訊いてみた。
「なんで、澪桜姉はこんな夜遅くに、僕の部屋にいるの?」
「トー君に会いたかったからだよっ」
「僕もそう言ってもらえて嬉しいけど、なんか用があったからじゃないの? お父さんとお母さんもきっと心配しているよ」
「ちゃんと、『今日からはトー君の部屋にとまるから安心して』って連絡いれといたから大丈夫」
「えっ……?」
とまる?泊まる?止まる?停まる?留まる?
さてどれなのかな?
予想では、一時的に『停まる』のオッズが高いと思う。
一時停止的な、ね。
第一『泊まる』だったら大変だ。
僕の両親は、僕の入学を機に、澪桜姉のブラコンの解消の為に色々画策しているからだ。
例えば、
澪桜姉からの電話には、出来る限り出るな、とか
澪桜姉からのメールには、出来る限り返すな、とか
もし、寮に来たら居留守を使え、とか
自分の身体は自分で守れ、などなど
実の姉では有り得ないようなことまで、対象になっている。
同じ結社に入ることが決まったので、連絡を取ることは最低限必要なことだから、約束はいきなり破ったんだけど、それ以外は大丈夫。
と思っていたら、ダメでした。
寮どころか、自室に知らない内に入ってきてたし、身を守るどころか溺れかけていた。
上記のは、別に僕に対しての強制的な制約ではないけど、でも僕が出来る限り気を利かせて守らせなければいけない約束だ。
まぁ無理だと、最初からある程度わかってたけど……
それはもういい。
しちゃったことは戻ることも戻すことも出来ないから、今後の事を考えよう。
さっき澪桜姉が言った『とまる』について聞かなければ、まだわからない。
ここは男子寮なのも澪桜姉は知っているはずだから、まさか『泊まる』なんてことはないだろう。
万が一バレたら結構まずい気がする。
「姉さん、今日は何時頃帰るの?」
とりあえず角の立たない聞き方をする。
それにほんわか、色っぽく返す澪桜姉。
「何言ってるのかな?トー君は。『泊まる』ってさっきいったばっかりでしょ?」
「で、ですよね~……」
「うんっ!」
嬉しそうに頷く澪桜姉。
わかっていたよ、それ以外有り得ないことを、そしてそれに抗えないことを。
僕だってお姉ちゃんとお泊りしたいもん!
大好きなお姉ちゃんとお泊りするの、のどこがイケナイことなのかな?
お父さん、お母さん。
今まで一緒に暮らしてきたんだし、僕はお姉ちゃんに、お姉ちゃんは僕にベッタリだった。
それが入学と同時に離れなければいけなくなって、僕も悲しかったし、お姉ちゃんは号泣していた。
だからたまにはいいだろう。
たまには……
「今日からお世話になります」
どこか赤い吐息を吐きながら、お姉ちゃんが艶っぽく言った。
今日から……?
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それは僕も少し予想外っ
刻季シスコンだなぁと思う今日この頃……
話も進まねえなぁとも思う今日この頃……