第25話 無駄な抵抗
タイトルを「すいません」にしようかと思いました(笑)
いや(笑)じゃねえよ!
冗談ではなく、結構ガチでこのように載せるか悩みました。
でもプロットの段階でこうしようと決めていたし、もともとUPしようとも思っていなかった作品なので、今回は(も)完全に自分の趣味です。
暖かい目で読んでください……
これまで日本の話しかなかったが、決して魔術や剣術は日本特有のものではない。
元々欧州から広がったモノが文化や歴史と共に発展したのだ。
文化の側面には、魔術師や宗教徒の争いがあり、歴史の側面に、技術の発展があった。
文化的なわかりやすい例でいえば、日本の仏教はどちらかといえば魔術派に属し、神道は宗教徒に属した。
欧米でも、魔術には文化的側面があるし、日本以上に文化との結びつきが強力だ。
そして歴史的な側面には、やはり戦争だろう。
日本の話だけではないが、政権や政府が何度となく変化していったのは、戦いが裏にあってのことだ。
戦争には、魔術師の使う術でもなく、宗教徒の使う術でもない人海戦術が多かった。
魔術師にも宗教徒にも唯一無いといっていい、兵数の優位だ。
魔術師も宗教徒も戦いには、全く参加しなかった。
しかし、政権にはそれなりの興味があった。
それゆえに戦争などという面倒くさく、時間のかかる手を使わずに、政府の有力者を暗殺するなどして自分たちの思い通りにした。
お互いに国家からの報復などもあり、その時こそ言うことをそれなりに聞いているものの、時間が経てばすぐに同じことをした。
それの繰り返しという、言ってみれば大したことのない日本の歴史なのだが、他国では少し変わってくる場合もある。
もちろん、日本のような国もいくつかあるが、大抵は魔術師がトップに君臨していて、教徒の弾圧をおこなっていたり、その逆もまた然りだ。
ようするに国家と魔術師が結合していたり、宗教徒が国家を併呑していたりと様々になっている。
国によっては、魔術しか存在していない国があったりする場合すらある。
未開の地には、呪術的な面が含まれている部族もいたりするので、そういうのがそれに値する。
それらが歴史との結びつき。
他国では、それぞれ各々違う呼ばれ方をしている魔術師と宗教徒だが、日本でこう呼ばれているのは、魔術は日本が古来より信じてきた魔羅の使う術から派生し、宗教徒は文字通り、神に捧げる者が多かったからだ。
魔術師の魔術はいうまでもないが、宗教徒の剣術も、戦争での、刀を振り回していた武士とは大きな違いがある。
もちろん、『武器』の発展が宗教徒の発展にも繋がっていたのは否定しないが、国家の軍との違いはそれではない。
ようするに魔力だ。
魔術師が魔術を使うべく、魔力を使用しているが、宗教徒も魔術と同じで魔力を使う。
魔術師が、『空気』や『物体』などを媒体にするように、宗教徒は、『武器』を媒体に魔力を使用し、剣術を行使する。
それは魔術と同じく、形状変化や付加効果など、多岐にもわたる。
元が同じ魔力を使っているので、それは当然のことでもある。
魔力を使う魔術、魔力を使う剣術。
それらを合わせて、この世界では『魔法』と呼ぶ。
魔力を行使する『方法』で『技法』で『違法』。
それがこの世界の『魔法』。
神にあらがう力。
あらがえる力。
閑話休題
そんな力を持つのは、冒頭に戻るが、日本特有というわけでない。
日本の魔法との結びつきは期間的な立場から見れば、世界に比べて浅いものだといえる。
それは長年使える人口が一向に増えなかったというのもその理由の一つだが、それ以上に研究というものをしてくることがあまりなかったからだ。
魔法はそこにそうある、だから存在しているのだ。
という何ともいい難い考え方が日本の中に長年横行していたために、研究しようと気が起こる前に、研究とはなんだ?という考えで国内が埋まっていたのだ。
国家はしきりに研究したがっていたが、魔術師や宗教徒がそのようなことを許すわけもなく、そのままの停滞状態であった。
打開策が約50年前にようやく取れる状況に至った。
魔・宗戦争の終結、それによる国家への魔・宗帰属がそれを行えるようにした。
それを最初に行ったのが国家魔法研究機関だ。
文字通り国家による魔法の研究機関なのだが、そこから二つに分岐し、今はより専門的に魔術や剣術を研究している、国家魔術研究機関と国家剣術研究機関がとなっている。
双方ともに国立で、そこに勤めているものは総じて、超エリート級の存在であり、そこから学院の教授になる者、国家お抱えの者、そしてうまくいけば魔術・教徒結社の一員として含まれることもあり得るのだ。
短期間でも在籍していれば、その後の人生に拍がつくのである。
これだけ優遇される条件があるならば、誰しもが望んでその研究機関に入りたいとなるだろう。
それこそ、何千倍という倍率を勝たなければいけないような機関だ。
きっと刻季の通う優遇学園にも、卒業後にここへ就職したいという者は多いだろう。
そんな国立研究機関。
何故こんな話を長々としているのかは、刻季が、そして刻季に身近な存在がやはり関係しているからに他ならない。
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ここ最近すっかり、自室が自分の部屋ではないのか、と勘違いするほど部屋に帰ると迎える人(主に華音)がいたけど、今日に限っては見当たらなかった。
今日は華音+クラスメイトの会談の後、授業を受けて帰れるという恐ろしい平和ぶりだった。
華音と会うまではそれが普通だったのに、それを平和と捉えるかはさておき、静かなことは嫌うどころか、むしろ歓迎いたします的な状態なので、僕はそれを享受していた。
寮内で食事を取った後、今日も仁吾の部屋で、そして今日は彼と竜也の3人でひたすら喋っていた。
珍しく竜也が来たと思ったら、話の内容は8割型華音に絞られ、「天原会長が~」という切りだしを何回も聞いて、少しだけ鬱になった。
仁吾と僕が何度も話を変えようと、他の話を交えているのだけど、結局「天原会長が~」と言いだすので、最終的に2人でただ聞いているだけの竜也の独壇場だった。
機嫌が悪かった今朝が嘘のようで、華音との繋がりが出来て、すっかり機嫌を直したどころか、上機嫌だった。
さすが、非公式ながらファンクラブに所属しているだけはあるね……
ファンクラブでも珍しい華音の知り合いにレベルアップした竜也だった。
その後、僕は結局今日も疲れて自室にもどった。
部屋の電気を寝るために消すと、昨日、一昨日に比べ、穏やかに過ぎていた今日に終わりを告げるように、空から月明かりが窓から射し込んでいた。
月はもの寂しく、そして孤高の狼のように独りで闇の中に潜み、しかし隠しきれない輝きを放っていた。
ときどき雲がかかり、その隙間から放つ光も幻想的なものにしか見えない。
それを見ていると、ここが異世界なのかと勘違いしてしまうほど、浮世離れしているような情景だ。
月から兎が牛車を牽いて焦燥感を運んで来そうだった。
そんなことを想いながら、僕はベッドに入った。
まだ季節が変わったばかりだから、布団をしっかりかける。
いつもより狭く感じるのは、きっと焦燥感のせいだろう。
普通広く感じるものだけれど、こんなこともあるよね。うん。
ここ数日で色々あって疲れてたんだろう。
疲れからかすぐにウトウトとし始め、眠りの前兆がやってくる。
たまらなく睡眠欲に侵され、それに抗えず、抗おうとも思えない。
その時、
僕の右手が何かに誘われ、連れ去られるように、僕の意思を無視して前方へ向かった。
その先には、なにやら柔らかいモノ。
一度掴むと、ふにゃんと揺れた。
「んっ……」
掴んだ時の音だろうか?
柔らかいものを握ると、たまに変な音を出すので、それだろう。
なにか柔らかいモノは握るたびに形を変え、そのたびに唸るような「うんっ……」って音が鳴る。
どこか色っぽい音だった。
僕は眠いにも関わらず、それを握っていたい気持ちが何処にも逃げていかず、いつまでもその欲求に身を任せて、ウトウトしながら何度も、それをにぎにぎしていた。
何度も何度も……
「んっ……」
何度も何度も……
「あっ、んんっ……」
何度も何度も……
「いっ……、あんっ……」
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なんかまずい気がする。
溺れて行きそうだったので握るのを本能的に一旦止めると、音が止まる。
当然だ。
音が鳴っていたのは、握っていた時の歪なんだからね。
音のせいか、少し眠気が覚めていた身体も、握るのを止めたおかげか、すぐに眠気が復活し、再び前兆がおとずれる。
すると、意思を失っていた右手は、柔らかいモノから離れ、所定の位置にもどった。
なにかに操られていたのかな?
さっきまで、右手と同調していたため、身体が横向きになっていたけど、少し苦しくなりすぐに仰向けになった。
万全の調子で寝ることが出来そう……だ……よ……。
もう、ほとんど意識なく、部屋には規則的な呼吸音と時計の音、不規則な布団のモゾモゾという音が静寂のなかで響く。
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これは夢だろうか……?
「んっ」
夢の中で突然唇がなにかにふさがれる。
さきほどの柔らかいモノに勝るとも劣らない柔らかさだった。
一度ふさがれたと思いきや、僕の唇を貪るように吸われる。
そして、吸われたことによって出来た僕の上唇と下唇の間に、湿ったねっとりとしたものが侵入してくる。
僕はそれに抵抗するように、舌を動かし、食い止めようとする。
しかし抵抗むなしく、舌は絡め取られ、もう自分の意志では動けなくなるほどだった。
夢から逃げるように、僕は目に力を込めて、必死で開ける。
暗闇の中で、目を慣らすように、眼球をあちこちに動かす。
その間も、夢で舌を蹂躙されていた。
夢……、だよね……?
目が慣れてくると、月明かりが唯一の部屋にある光だということがわかった。
窓から射しこむ光が僕に見せてくれたモノは二つ。
一つは時計の時刻は眠り始めてからそこまで進んでいなかったこと。
もう一つは僕の目の前に誰かがいて、それが唇を食するようにしていたことだった。
逆光で見えにくい。
虚ろな目で、それでもしっかりと僕はその人物を定めるために見つめる。
ちなみに、いまだ唇は解放されていない。
口内のレジスタンスが必死に抵抗を見せているが、あえなく撃沈し、されるがままになっている。
ようやく、判定できるような力が目に戻ってくる。
ピントがあうように、見えてきた。
その人物は、華音でも、もちろん萌葱でもなかった。
だからといって腐り姫が好きそうな、竜也でも仁吾でもない。
|ここ(部屋)にくる人物といったら、この4人しか思い浮かばないが、僕の予想を外して、僕の一番身近な存在だった。
最近知り合った華音でもない。
生まれから、育ちまで、ほぼ一緒に過ごした萌葱でもない。
その存在は、僕の生まれから育ちまで全てを見てきて、その上で一緒に過ごしてきた存在だった。
――羽間澪桜
正真正銘、僕と同じ名字の、血のつながった姉である。
姉が僕の唇を貪っていた。
澪桜やっちゃってますね!
セリフが一つもない(笑)
いやホントすいませんでした(笑)