第24話 クラスメイトの色事
タイトルはおなじみ、有っても無くても話にはまったく影響しません。
今回はだいぶ短めです。
前回の〆の話といった感じになります。
それから僕たちが落ち着いたのは、10分程後のことであった。
気づけば、昼休みの時間が限りなく限界に迫っていた。
もしかしたら華音ならなんとかしてくれるのかもしれないけど、これ以上クラスメイトから変な目で見られたくないので、僕は話をここで打ち切りにして、生徒会室をでようと華音を含め申し出た。
竜也は少し残念そうな顔をしたが了承した。
もちろん、仁吾や萌葱や阪野さんもだ。
しかし華音は
「少しお待ちください」
と僕たちを止める。
なんだろうか?
さっきまでの僕へのからかい?などをする気持ちは捨て、真剣そのものの態度で僕たちを呼びとめた。
「南雲さん、碓氷くん、陸奥くん、阪野さん。皆様、刻季様の学級内での事をお願い致します」
声と同時に頭を下げて、そしてあげる。
「我が君は魔術こそ使えませんし、能力も自身に制御を掛けてなるべくつかわないようにしています。ですから、実技の試験でも授業でも、なにかと不便なことも多くなるでしょう。それでも刻季様の為に動いていただけないでしょうか?」
口調こそ提案だったが、それは華音の要望でもあるように感じられた。
華音の要望でもあり、僕の願望でもある。
こんなこと普通自分で頼まなければいけないし、華音に頼まれなくても、自分でいずれ話すつもりだったけど、僕の為にやってくれていることがわかるので心底嬉しい。
少し澪桜姉みたいだ。
おせっかいだけど嫌ではなく、むしろ嬉しいおせっかい。
そんなことを15年間、いつでもしてくる姉。
それと今回の華音がかぶって見えた。
そして華音の要望に仁吾は
「もちろんっすよ」
とあたかも、自分の仕事を取られたような感じで言った。
萌葱もそんな仁吾と同じ表情をして、あたしが話すつもりだったのに……、と少しだけ不機嫌そうに呟いた。
流石は、この2人だった。
「わ、わたしこそ、よろしくお願いします」
阪野さんが、僕にむかってお辞儀をしてくる。
「いやいや、僕こそ、よろしく」
出来るだけ、気を使わせないように手を合わせた。
竜也も今までで一番頼もしそうな顔をして……今まで頼もしい顔なんてしたことなかったけど、今回はとても頼もしく見えた……僕と華音を交互に見て
「それが会長の為になるなら乗り気ではありませんがやります」
頼もしく、だるそうな言葉だったけど、竜也の気持ちがなんとなくだけどわかった。
華音の為と言いつつも、どことなく決意が表れているような、そんな感覚……
「……これで会長とより近づけたら……………………ククッ」
………………………………………………………
…………………………………………
……………………………
だったらよかったけど、贅沢は言えないよねぇ……
下心があるとはいえ、協力があるのとないのとでは、大きく違う。
竜也の実力はわからないけど、僕としては、心から頼みたいことなので、竜也の下心はきかなかったことにして
「ありがとう、竜也」
「まぁいいってことよ! 俺ら友達だろ?」
「う、うん。そ、そうだね。うん、そうだよね!」
少し釈然としなかったのは言うまでもないことだ。
仁吾と萌葱は堂々と、阪野さんはどこかやはりおどおどして、竜也は嬉しそうに、僕への協力をしてくれると言ってくれた。
2人に関しては入学してから仲良くなったのに、ここまで踏み込んできてくれる。
僕にとっても初めての事だ。
萌葱はそれこそ物心ついた時にはすでに信用している状況に達していたけど、仁吾に関してはここまで早く馴染めなかったし、むしろ毛嫌いしているきらいがあった。
あの時はここまで仲良くなれるとなんて全く思っていなかったし、なろうと思うことすら嫌だった気がする。
そう思うとホントに、人生は小説より奇なりだよね。うん。
阪野さんは未だに壁を感じざるを得ないけど、仲良くしようとする気はビシビシ感じられるし、竜也は壁どころか、むしろ壁で囲まれた同じ空間に一緒にいるくらい最近は仲良くなってきた。
高等の1年次で、というより入学して2週間足らずで、こんなに信頼し合っているのは、それなりに理想の関係だろう。
僕は巡り合わせに感謝すると同時に、本人たちにも言いつくせない程の感謝をした。
もちろん、今回の機会を与えてくれた華音に対しても含まれている。
言いつくせないけど、言葉にしないなんて軽い事は言わない。
だから僕は出来る限り、皆が視界に映るような場所に移動しては振り向き言った。
「みんな、ホントにありがとう。こんな言葉なんかで足りるとは思えないようなことを言ってくれたし、これからしてもらうと思うけど、感謝の気持ちだけはずっと忘れないでいるよ。もしみんなが困ったら最優先で助けるから、なんでも言ってほしいな」
純粋な感謝の気持ちというのは伝えると恥ずかしいものだったけど、それ以上にお礼をいえて良かったという気持ちの方が、僕の中には強くあった。
僕の言葉に仁吾たちは揃って頼もしい顔を見せ、
そしてそれぞれ
「親友なんだから当然だろ」
「刻季にはいつまでもあたしがついてないとダメなんだからっ」
「ぜ、是非、よろしくお願いします」
「まぁ、これもなんかの縁だし、これからもよろしくな」
阪野さんは頼もしいけど頼りない、実に器用な表情。
竜也は、今度は下心が見えなかった。
そして華音は
「私から刻季様にお願いすることは、私の為というより、ご自分の為になるようなことを最優先してください」
なんてことを言った。
最近はわりと華音優先のことが多かった気がするけど、結果的には、僕の為になっていることも多かった。
結社のことは、その一つだろう。
これから、長いこと付き合っていきそうなメンバーだった。
華音、仁吾、萌葱は言わずもがな、竜也なんかも、仲良くしていけたら嬉しいし、阪野さんもだ。
僕はその5人に向けて、笑顔を向けた。
すると一人一人の個性が出ている、しかし笑顔を返してくれた。
華音は僕を信頼しきって、仁吾は親友にむけるような、萌葱は過保護な親のような、阪野さんは、やはり恐る恐ると、
そして
竜也は笑顔の華音に見蕩れていた。
どこまでもしまりのない奴だね……
それでも良い奴には変わりはないだろうけど
それから教室に戻るとすぐに開始のベルがなった。
竜也は気持ちの悪い笑みを浮かべて、単体で気持ち悪がられていたが、今は気分が良かったので見ないふりをしておいた。
改めて、短いですね。
姉は次回に繰り越しです
楽しみにしてくださった方は、申し訳ありませんが、澪桜は然るときに出さないと効果がかなり薄くなるので……(笑)