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魔力世界の時操者(CHroNuS)  作者: 更科 甘味
二章 帰結ない物語
22/33

第20話 知女?


いいえ、痴女です。

といっても浅いほうだとおもうので気にしないで読んでください。

2話連続華音さんでした。


ちなみにこの後仁吾に詮索されたが、明日になればわかると、言葉を濁した。



その晩、刻季は夢を見た。

実際には翌日早朝見たというのが正しいが、さほど差異は無いだろう。


その夢の中で刻季は観測者であり、王でもあった。

自分は動かずに、ひたすら傍観者であった。

王宮のようでもあるその場所の中で、王はまるで時計の中にいるかのように、時間だけが刻一刻と流れていく感覚を感じた。


退屈にしながらも、目の前を通る老若男女国籍問わず誰もが、こちらを見るとにこやかに笑いながら跪いてくる。

この夢に国籍という概念、年齢という概念が存在するかは知り得ないことだが、目の前を通る者の極端な例は、土下座に近いものをする者もいた。


土下座に近いものをする者は、それなりに多数いたが、それよりも際立って目立っていたのは、立派な鎧と立派な剣を腰にさした、おそらく剣士と、妖しいローブに身を包み、更に妖しい、どこかの偏屈な土産物屋においてありそうな杖を持った、おそらく魔術師だ。

剣士と魔術師は、共に仲良く王の前に立つと、すぐに跪いた。

なにやら大声で、忠誠の言葉らしきモノを2人で述べているが、耳はそんな声を受け取らず、そんな音を受け入れずに、雑音にも似たような言葉らしきモノをひたすら聞いた。


話が終わったと思えば、2人は面を上げ、剣士は剣、魔術師は杖をそれぞれ掲げると、それを重ねた。

王宮のシャンデリアとステンドグラスからさす光を受け、その二つは各々の輝きを見せる。

その輝きは、どこか高貴で、幻想的で、そして妖しく、鮮やかであった。

剣が見せる輝きというのは、ある程度わかるつもりだが、杖が輝くというのは、予想外で、それを王は、どこか不思議に思いながら見蕩れてしまう。


しかし、その時間も体感では一瞬で、すぐに2人はそれらを下ろした。

そのまま剣士は鞘へ、魔術師は杖本来の使い方に戻すと思いきや、2人は王の前に歩み出て、それらを王に献上した。

そして2人は、また跪くと、何を言っているかわからない言葉を長々と述べる。


ようやく口上が終わったと思うと、なぜか王である自分の体が勝手に動いた。夢だから動きたいように動けないのは当然なのかもしれない。

王宮にいる者全てが、緊張の面持ちで王の事を見つめる。

そして王は献上を受けた、それらを両手で掴むと、思い切りぶつけ合った。

自分のしている事なのに、したいことがわからなかったが、ともかくそういう行動に自ら出た。


二つを見ると、圧倒的に丈夫そうな剣と弱弱しい木製の杖とでは、張り合いがないと思っていたが、ぶつけ合った結果は意外にも、両方が同時に壊れて砕けた。

立派な剣も妖しい杖もこの夢から消えた。

剣も杖もこの世から消えた。


それが何を暗示するのか、夢で過ごす者にしか理解できないのだろう。

夢に片足を突っ込んでいる状態では何も知らない。

むしろこの夢が、夢である以上、夢に過ぎない。


現実から隔離された、幻想の中にいた者達は、剣と杖の崩壊に、歓喜した。

どこか、もう怯えるものはなにもない、といった様子に、王として見えた。


最後に剣士と魔術師の後頭部が見えて、夢は終えた。

目の前が暗くなる。

夢から現実に引き戻すように



____________________________



夢は終えた。


刻季は人の部屋の予備の布団に寝ていた。

寝る前しきりに、仁吾になんやかんや聞かれたが、全て『明日わかる』とだけ言っておいた。

それでも気にはなっていたようだが、時間が経てばわかるという刻季の言葉を信じて、諦めの意を表していた。


刻季としては、とりあえず休息が欲しかった。

そしてそれも無理はないだろう。

2日続けて、この世の全ての苦労を合わせたような状態だったのだ。

早く寝ようと思っても、一昨晩も昨晩も元凶が現れて、それどころではなかった。

だから刻季は、早く寝るためにと、華音から離れるために、仁吾の部屋を訪れた。

仁吾も嫌とは言わなかったが、理由を聞きたがった。

こういう時に、仁吾は『超気合い説』を発動して、何も聞かずに、気合いだけで止めてくれれば、暑苦しいだけで言うことなしなのに、やはり一度仁吾の部屋から自室に戻って、また仁吾の部屋に戻っているようなら、気になる仁吾の気持ちもわかる。

というか隣に部屋があるのに、ここに泊まりに来る理由がわからないだろう。

それもある程度予想が着いているみたいだが



ともあれ、刻季は仁吾の部屋の予備布団で朝を迎えた。

なにやら、夢でも見ていたような気分だったが、夢など起きて殆ど覚えていることなんてないし、興味もないから、すぐにそのことを頭の片隅に放り出した。

まだだいぶ眠く、惰眠を貪っていたい気分だったが、本日も学業を行わなければならない学生であることは言うまでもないので、起き上がり小法師のように、頭を何度か揺らし、眠気を騙し、布団から這い出た。


仁吾はベッドの上でまだぐぅすかと、鼾をかいていた。

時計を見るとまだ、6時半だったので、学園には十分間に合う時間だ。

いつも8時頃に寮を出発するが、それでもクラスでは早い方である。

萌葱なんかは、刻季達なんかよりもよっぽど早いそうだが、現在生徒会に所属する者としては当然の振る舞いなのだろう。朝の集会もあるし


しかし、仁吾は鼾まで、雄々しくて、野獣らしさが滲み出ていた。

それを刻季は、羨ましく見つめるが、自分には生涯手に入らないだろうスペックなので、わりと諦めている。


諦めながらも少し非難する様な眼を向けてしまい、慌ててぶるぶると首を振る刻季。

彼は自室に戻らなければならなかったので、机の上に、『起きたら部屋に来て』とだけ書き置きをして仁吾の部屋を出た。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


昨晩はわりと刻季の頼みを聞いてくれたほうである華音のいる自室に向かった。

そんな感じだから、刻季は油断していた。

彼女の普通の登場シーンのほうが、今まで珍しかったのにも関わらずだ。


ドアノブに手を掛ける刻季。

こちらから部屋の様子はうかがえないが、部屋からは少しだけ、廊下を通る物音がしたりする。

まぁそれも注意深く聞いて、なおかつ静かでないと難しいことだが

とりあえず、一気にドアを開けた。

もちろん、ドアを開けるのに何の躊躇いもない。

それは、そうだ。

自室のドアを開けるのに警戒する人がいたら、それは相当な恨みを買っている者くらいだろう。

もしくは、上から見た要注意人物などもあてはまるが、刻季はまだその域に達していない。

一応、要注意秘密魔術結社の頭首だが、なってからまだ丸一日も経っていないので、知る人の方が、上層部でもごく少数だけだろう。


そんな今後要注意人物になるであろう刻季も、未来の事はわからないので、警戒のしようもない。

それは、遠い未来も、近い未来もだ。


遠い未来はさておき、近い未来の危機は、すぐ近くに迫っていた。

これを危機と言っていいのか、わかりかねるが、刻季にとっては危機でしかなかった。

おそらく、竜也なんかは見た瞬間飛びあがって喜ぶだろうし、世の男たちは大抵それに準ずる行動をするだろう。

刻季も、なんの事情がなければ、ありがたく享受して、それを堪能するくらい年頃の男の子なのだが、現在はそれを受け入れると、何やら不幸が襲ってくる予感が、第六感にヒシヒシ感じるので、当然ながら受け入れられない。

第六感は仁吾の言う気合いよりも信用度が高い。刻季の中では


これだけ言えばわかるだろう。

竜也が求め、刻季が恐れる人物。

というよりも、単純に刻季の部屋には彼女しかいない。


ドアの奥には華音がいた。

おそらく、刻季の廊下を歩く音でも聞こえたのだろう。

一昨日と昨日と同じ姿勢で刻季を迎えた。

しかも、今回は随分強烈な格好で、強烈な肢体をちらつかせている。

もちろん、刻季は驚いた。

しかし、彼は驚きすぎて、冷静になるという、極めて奇妙な状態に陥った。


(一昨日は制服にエプロンという家庭的な格好。昨日はメイド服という実に不純なコスプレ。次は何だろうと少しは考えていたけど、これはないよね。姉さんじゃないけど、まだ姉さんの言ってたコスプレのほうが健全な気がするよ。スク水、セーラー、ブルマetc. あれも大概だったけど、これは凄いね)

と、まぁ、刻季にしては冷静に分析出来ている。


しかし分析が出来れば、対応が出来るか、と聞かれると、必ずしもそうじゃない。

むしろ、高等部1年の男性に、これをうまく対処しろ、と言っても成功率は5%を切るだろう。

刻季はもちろん、95%の中に入るに決まっている。

そうでなければ、これまでもっとうまく立ち回りできたはずだ。

華音と決闘、華音との主従、華音のお願い、華音の父兄との面会、華音の兄との決闘、華音の家などの結社問題……

ざっとあげるだけでこれだけのことがある。

これをうまく対処できていたら、刻季の現在は大きく変わっていただろう。


変なところで器用で、変なところで不器用とは、刻季に対する、仁吾の批評である。

もちろん、この言葉を言われて、喜べはしなかったが、否定も出来なかった。

むしろ、自分に器用なところがあるのか、と疑問に思ったくらいだ。


閑話休題


要するに今華音が、刻季の前に晒している姿を、お伝えすれば、わかることだろう。


昨日のメイド服を経て、彼女は今エプロンを身に着けていた。


エプロンのみを身体に着けていた。


その格好は俗に言う、



――『裸エプロン』だった。



「おはようございます、我が君。刻季様」

彼女は正座したまま、頭を下げた。


そうすると背中が丸見えになっているのが見える。

ブラの紐すらなく、その背中には、エプロンの紐しか見えなかった。


刻季は、頭の中が冷静なだけで、内心はどうしようもないほど、動揺していた。

そんな状態では、思考はできても、発言ができず、ただ華音の美しい肢体を眺めることしかできなかった。


華音は頭を上げると、刻季がじっと見ていることに照れたのか

「いやですわ、刻季様。そんなにじっと見ないでください」

赤くなりながら言う。

裸エプロンは見なければ意味のない、視覚的なものだったが、それは置いておいて、刻季にもようやく発言できる状態回復が機能した。いかんせんポンコツな機能だが、ないよりましだ。


そして、早朝の自室で、叫ぶのだ。

「あんたは、痴女なのか!? 変態なのか!?」

心の底からの訴えだった。

姉みたいなこと・・・・・・・をするもんではない、と


しかし、刻季の言葉に憤慨したように、華音。

「失礼ですね。痴女というのは、誰かれ構わずですが、私は刻季様限定です」

「余計質が悪いよ!」

こんなところで、性奴隷みたいなことを言われても困る。

そんな律儀に契約履行しないでほしい。

契約した覚えはさらさらないが


「そして、変態というのも刻季様の前でのみです」

「そこも否定してよ!」

彼女は変態だった。

素質はあるとおもっていたが、これほどだったとは……


そして華音は憤慨しながら

「実のところ、昨晩はシャワーを浴びてから、ずーっと待っていました。刻季様が私を何時襲うのかと……、ベッドにいなければまずいのか、それともシャワーを浴びているところから始めるほうが、興奮するのか……、なにぶんそういう経験がないので、わかりませんが、刻季様を満足させようと、色々考えていたのです。別室に行ったのも、それの為の伏線だと思っていたのに……。シャワーはそう何時間も浴びてはいられませんでしたので、刻季様とお揃いのパジャマ(ポッ)を着て、ベッドの中で待っていました。寝てしまっても刻季様の突然の夜這いでも対応できると思っていたのです。それなのに、私は寝てしまって、刻季様は部屋に訪れることもなく……一体どうしてこんなことに!」

「僕が聞きたいよ!」

華音が長々と碌でもないことを喋っているが、刻季は一言で返した。


「なにその夜這いって!? 僕がそんな男に見える?」

「見えません。むしろ男では無く、制服を着ていない状態だと、女性にすら見えます」

「議論はそこじゃない!」

気にしているところを突かれる刻季。


「というか美人ですね」

「やめて!」

この否定の仕方まで、女みたいだったのはさておき

「それは、いいとして……、いやよくない、けど今は置いて……。さっきの華音の言葉に色々聞き逃せないのが含まれていたんだけど……、むしろ全て聞き逃せないんだけど……」

ひとまず怒りは置いて、話を進める。


「刻季様も一応!高等部の男性ですから、私も覚悟しておりました」

一応を強調して言う華音。続けて

「その覚悟を一夜無駄にしてくださいました」

その言葉は、してくれたと言うわりには、恨みがこもったものだった。

こめられても、刻季の責任どころか、華音の乱心でしかないのだが


「はたして、本当に女性ではないのか、ということを確かめるために、前回のエプロンを使ったというわけです。これなら襲いたくなりますでしょう?」

「なるか! それに僕は男だ!」

いろいろ失礼なことを言っている華音。



その後、刻季は一通り、華音の話に付き合うと呆れた表情で、諦めきった表情で言った。

「華音の言いたいことはわかった。そして言い分もわかった。だからさすがにそれは着替えてくれないかな? 仁吾もそろそろ来るだろうし」

「わかりました。今度はしっかりしてください。ただの処理とお考えでも、よろしいですので。私はお情けで十分です」

また爆弾発言だったが、もうつっこむ余力すら残されていなかった。



このやりとりの10分後、華音は着替え終わり、仁吾も部屋にきて、仲良く・・・食事をすると、華音は一足先に学園の校舎に向かった。

朝の集会があるのだろう。


仁吾は、部屋に来た時こそ、驚いていたが、順応性の高い生物なので、すぐに馴染み、華音の料理をうまいうまいと食べていた。

華音に向けて『いいお嫁さんになれますね』とか余計なことを言って、華音は案の定顔を赤くしていたが、それも刻季に向けられていた。

刻季はもちろん、それをつつけば、蛇どころか龍が出てきてもおかしくないと思っていたので、スルーした。

別に刻季はMではない。



華音は先を行き、刻季と仁吾は、ゆっくりと仕度を終えると、学園までの道のりを歩いた。

すぐに校舎に着くことになるだろう、最短距離の道である。


そして、着くといつも通り人だかりがあった。

人だかりの中心には、生徒会役員がそれぞれの美しい容姿をばら撒くように披露していた。

今日はいつも以上に、人だかりの男性比率が高かった。


その中には竜也も混ざっていることだろう。



最後はかなり走りましたが、全体的にゆっくりしすぎてますね。

まだこれでこの世界で3日目という恐ろしさ……。


というか、萌葱や澪桜やクラスや生徒会が書きたーい。

次くらいに入れるかもしれません。


とりあえず竜也の後に……(笑)

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