第00話 プロローグ
――魔法、それは神にあらがう力
――人間はその力を持ったとき、一族の安寧の為だけに使おうと決めていた。
――しかし現代、魔法は世界の常識として蔓延っていた。
――これはそんな世界の、神に匹敵する力を持った人間の中でも「王」と呼ばれる者の物語である。
「我が君、刻季様。お願いしたいことがあります」
学園のトップであるところの生徒会長である天原華音が、羽間刻季の元に来るなり恭しく頭を下げて言った。
「せっかくのプロローグなのにな……」
刻季は訳の分からないことを呟くと視線に気づいて周りを見渡した。
1-Cの教室中の生徒という生徒がこちらを見ていた。いや、教室の外にも集まっているようだった。
その視線の原因はわかっている。
もちろん華音だ。
魔法の専門学園、魔術優遇第三区空明ヶ崎学園の生徒会長
魔術師としても強力と有名。
頭脳明晰、家柄も良し。
その上とても、とてつもなく美人なのだ。
大きく澄んでいる目や高く整った鼻、ぷるんとしている柔らかそうな唇を持ち、それらを包み込むように絹のような長い髪が神々しいばかりに輝きを放ち。その上身長が高く、揺れるような胸にくびれた腰もまた魅力的すぎる。
そんな完璧な淑女を地でいく彼女の視線の先には、
ただの一年生にしか見えない少年。
顔は整っているものの、長い髪を結び、それに覆われていて影が残り少し根暗な印象に見受けられる。
魔法に関しては入学して程なくなのでまだ分からないものの、Cクラスでも特に異彩を放っているわけでもなさそうだ。
名前も知らず。
碓氷仁吾と南雲萌葱の友人としか知らない。
そんな少年。
そんな特筆すべきところのない目立たない少年。
現状ではかなり名前負けしてる刻季は誰に聞かせるでもなく、しいて言えば空の先にいるであろう神に向かい問いかけた。
「なんでこんなことになったんだろう……」
それほど注目されることの慣れていない刻季が注目されることになった原因を思い出そうと思案し始めた。
思い出すには昨日まで時間を戻さなければいけないな。
そんな言葉もひとりごちた。
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