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魔力世界の時操者(CHroNuS)  作者: 更科 甘味
二章 帰結ない物語
18/33

第16話 THE 姉

なんか書いたんで更新しました。

健康に生きる尾床様。

黄金拍車様。

感想ありがとうございました。

ハーレム主人公最強大好き王様も感想メールありがとうございました。



と、いうわけで


姉です。


羽間澪桜はざまみお

彼女を知る者は、彼女の話をする時に必ず出す名前がある。

――『トー君』と



もともと気立てが良く、そして刻季の姉ということからでもわかるように、とても――とてつもなく美人だった澪桜は生来何事にもほとんど不自由なく過ごすことが出来ていた。

『ほとんど』と言うのは『羽間』への縛りなどが含まれている。

それ以外には、こんなエピソードもある。


刻季が産まれる前、4歳になったばかりという年齢で聡明、且つ類稀なる容姿を兼ね備えていた澪桜は、幼さゆえか危機感という徐々に鍛えられていく感覚がまだ乏しかった。

そのため暇になると、それなりの広さを持つ羽間家から飛び出して、没落貴族のような家に住まうような女中ではなく、しっかりと雇っている女中の目を離した隙に、街を探検していた。


その日も澪桜は上女中の目が離れた一瞬の隙に、姿を忽然と消していた。

上女中が気づいた時にはもう遅く、澪桜はすでに門を超え街に出ていた。

上女中は、邸内にいる女中を集めていつものように簡易的な捜索隊を結成させ、何かが起こる前に一人娘である澪桜お嬢様を探すように命じた。

いつもはその捜索隊に見つけられるか、自分で帰ってくるか、町内の気の良い人に連れられて帰ってくるというのがオチなのだが、その日は違った――



澪桜はいつものように街を散策していた。

そこで見慣れない中年男性がじっと澪桜の事を見ているのに気付いた。

少し気味が悪くなり、足早にその場から離れようと進む。

すると、その男も澪桜を追うように進んでくる。

100mほど進むと、もう完全に自分を追っていると把握した澪桜は、走って羽間の家に向かおうとした。

その時点で魔術をある程度使えていた天才少女の澪桜は、身体強化魔術を使い速度上昇に努めたのだが、所詮は4歳、いまだ幼年部の1年に通うという幼い彼女は、大人とは基礎体力も魔術の使い方、力量にも差があったので、結局男に先回られてしまった。

その男はこう言った。

「ボクトアソボウ?」

鼻息荒く、唾液がこぼれそうな男に嫌悪感が最大限に膨れ上がるが、怖くてどうにも動くことが出来なかった。

男の目的は、とても可愛らしいその少女が気にいったので一緒に遊ぼう・・・としたらしい。

もちろん、澪桜と遊ぶというのは砂場でお城を作ったり、滑り台やブランコで遊ぶことではなかった。

怖くなって身体が震え上がり、それでも動けないという最大の危機が訪れた時、運よく澪桜捜索隊の一人がはぐれてしまい、隊に戻ろうとしていたその一人が澪桜を見つけた。

男は臆病風に吹かれたのか、捜索隊員に見つかるとすぐさま方向転換をして逃げて行った。

そこでようやく助かったと思い、そう思ったら安心してまた、動けなくなってしまった。

見つけられた捜索隊員におぶってもらい家に帰った。

あらかじめ連絡していた隊員が上女中を呼び、その日はものすごく長い間説教をされた。


このような、容姿が原因の縛りもあった。

4歳という年齢でさらわれそうになるというのは、相手が少女嗜好でなおかつ、自分が魅力的ではなければ起こらなかったといえよう。

そのようなことがあったということも含め、この事件の数ヵ月後刻季が誕生し、澪桜は幼年部に行く以外は家に入り浸って、刻季と遊ぶことばかりになった。

そうなるとお転婆だった頃と比べてずいぶんと女の子らしく遊ぶようになった。

女中達からしてみれば、本当に刻季さまさまであることだろう。



年も経つにつれて、徐々に美しさが精練されていき、高校生になった時には『稀代の美少女』と周りから褒め称えられた。

もちろん、異性からの人気というもの、それはもうすさまじく、彼女を一目見るために最大九州から飛んできたという人もいて、時には魔術を行使しなければ、校門から抜け出ることも出来なかったというほどの人気ぶりだった。

いやはや美人に人が集まるというのは本当のことだったのだ。


それに澪桜は同姓からも人望厚く、友人も大勢いた――まさに学園の、ひいては日本のアイドルのような存在だったのだ。


……が、


彼女の軸がぶれる唯一にして最大の存在があった。

澪桜曰く、唯一無二、最大の存在でもあり最高の恋人でもある、とのことであるが、

それはもちろん


『トー君』


のことだろう。


彼女の4歳までの人生は刻季の誕生により、あっという間に塗り替えられた。

それまで、大切だったモノという個人的なランキングは上位に家族・家など、一般的な幼稚園生並みのランクだったが、刻季が産まれた途端に彼女のランキングのトップ20ほどまでは刻季の全てで埋まることになった。

刻季の全てとは顔に髪の毛、泣き声などである。


そのランキングは刻季が成長するにつれて、徐々に範囲を広げていった。

当初トップ20までだったものが、現在では全て刻季で埋まっているのではないかと澪桜ですら錯覚している。

もしかしたら錯覚ではないのかもしれないのが怖いところではあるが……


だからといって彼女は刻季だけを大切にしていたのではない。

家族、家、友人、伝統、その他もろもろあるが、それらも大切にしていた。


……刻季の次に


家族は勿論のこと、澪桜の友人も、彼女のブラコンっぷりを知っている。

それゆえ・・に澪桜は友人が多いと言えなくもない。

なぜならば、この青春に多感な時期、男女関係でいろいろな問題があるだろう。

惚れた腫れたなどで友人関係に亀裂が入ることも多い時期だ。


モテる女は同姓から嫌われる。

それが世の常である

もちろん、羽間澪桜もモテる女である。

なにしろ高校のほとんどの男性が彼女に一度は惚れてしまうのだ。

だが、そんな男にまるで恋愛感情など湧きもしない澪桜は何度もの告白を全て断ってけちらしていた。

そうしてついた渾名が『難攻不落のブラコン


最初はやはり疎んでいた者もいたのだが、彼女の性格とブラコン話の面白さが人を惹きつけ、知らない内に女生徒からもかなり人気が出ていた。

そうなると渾名もかなりの面白みが出てきて、ルビなんかはそのブラコン話を聞いた男子生徒がつけたといわれるほどだった。

それでも恐れ知らずの者がその後も何人も撃沈していった砦なのだが。



そんな姉は刻季の自慢でもあった。

学校も中等部までは、彼女の通った学校を追うように通っていた。

初等部では2年間だったが一緒に通うことができたし、中等部でも澪桜の噂は、卒業後にも関わらず聞くことが出来た。

高等部は違った、というか今現在刻季が通っている空明ヶ崎学園ではないので現状違うのだが、中等の頃に遊びに行った高校では、男子生徒からの嫉妬に狂った視線は少々怖かったが、女生徒から暖かく受け入れられたのは、やはり澪桜の人望が為すモノだとわかったので、それも嬉しかった。

男子生徒の嫉妬の視線も馴れてくると、ただ羨ましいということがわかったので、そんなところまで愛されている姉が誇らしかった。


そして刻季は澪桜の友人達から、澪桜以外誰も呼ばない呼び方で呼ばれた。

――『トー君』と……

そう刻季が呼ばれると澪桜はいちいち顔を赤くして怒っていたが、そんな様子も刻季にとっては微笑ましい姉の1ページだった。



_____________________



『ねぇ……トー君? お姉ちゃんは早くしないと待てなくなっちゃうよ?』

その刻季は現在19歳の自慢の姉と通話中ではない一方通話中である。

聡明ではあっても語彙力の少なかった幼年時に比べ、成長しきっている現在は、度を超えた扱いづらさの姉であった。

ちなみに刻季の携帯電話には通話開始からの時間が出てくるのだが、今見てみるとちょうど8:00を表していて、沈黙の時間を抜いてもざっと5分はノン・ストップで話し続けていたと考えてもらえばまず間違いはないだろう。


その彼女は刻季の話を一切聞かずに――知らない内に妄想でもしたのか――何故か何時の間にかプロポーズを要求している。

もちろん刻季としては、15歳にして人生の墓場に行くつもりもなければ、姉弟で結婚などという禁忌中の禁忌に触れることを望んでもいないのでどう返事をしていいモノかわからなくなり、黙っていた。


『ねえ、お姉ちゃんに電話したのは、トー君でしょ!? なんでプロポーズ直前でそうやって待たせるの? ……はっ! もしかして、これが噂に聞く焦らしプレイなのね! そうならそうと早く言いなさいよ! もうお姉ちゃん騙されちゃったよ。……でも大丈夫、お姉ちゃんならどんなプレイも対応可能だし、慣れればきっと身体に馴染むから!』


「…………」


『……焦らして焦らして焦らしたその先に、トー君との幸せな日々が待っていることがわかれば、お姉ちゃんいつまでも待てるからね。……大丈夫、大丈夫』


「…………」


『……大丈夫、大丈夫……』


「…………」


『……大丈夫、……グスッ……、大丈夫』


「…………」


『……グシュッ、大丈夫、……だ、大丈夫……』


「…………?」


『……だいじょうびゅ、……、だ、だ』


「…………!?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


『全然大丈夫じゃ、っなーい!!!』


突然大声を出す澪桜。


『ごめーん、お姉ちゃん耐えられないよ! せっかくトー君からの14日と21時間9分ぶりの電話なのに、話せないなんて寂しすぎるよ! トー君はお姉ちゃんの為を思って焦らしプレイをしてくれたのかもしれないけど、お姉ちゃん、焦らしプレイだけはダメみたい。直接会っている時なら分からないけど、電話でまで焦らしプレイなんてトー君の事何もわからないじゃん! なんかわたしが一人で喋っているみたいになっちゃったよ!』

喋っているみたい、ではなく、完全に刻季をおいて一人で喋っていたではないか。


だが実際、刻季は置いてけぼりにされた意趣返しというわけではないが、最後のほうはわざと黙っていた。(もちろん、焦らしプレイなんかではない)

まさか、泣き出しそうになるとまでは思わなかったが


「ごめん、姉さん。なんか姉さんがいつも以上に突っ走ってるからさ……」

『トー君! やっとだ。……そうかな? 別にいつも通りだったけどぉ?』

この台詞から姉のいつも・・・がわかるのが怖い。


『もしかしたらトー君のこと好きすぎて、ちょっぴり・・・・・やりすぎちゃったかも』

完璧にちょっぴりではないのは確かだ。

だが刻季も15年間の人生で慣れたもので、

「ははは、全く姉さんはおっちょこちょいだなぁ」

と笑いながら返している。

この姉弟なんなのだろう。


『それで、プロポーズはまだなの? いくら婚約確実とはいえ、言葉にしてくれた方がお姉ちゃんとしては安心できるなぁ』

「なに言ってるのさ姉さん。姉弟は結婚なんて出来ないよ」

『トー君こそ何言ってるの? 姉弟というのは結婚して然るべしって格言もあるくらいだよ』

そんな言葉は断じて無いと言える。


「……?(そんな格言聞いたことないけど……。まあいいか) そっか、それで話なんだけど」

姉の戯言はスルーして本題に入った。

『(そっかってことはOKだよね)うん、なにかな?』


これからが大変だぞ!刻季



今回はファンタジー要素皆無ですが、姉を掘り下げないと話が進められないことも多々あったので、書きました。

いずれ、萌葱との話や仁吾との話も書きたいです。


書いてて楽しいんですが読むと怖いです(笑)

ちなみに澪桜はまだ未だ女ではありません(笑)

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