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魔力世界の時操者(CHroNuS)  作者: 更科 甘味
一章 始まりの物語
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第10話 奴隷<性奴隷

タイトルは有って無いようなものなんで気にしないでください(笑)

今回は文字数はさほどではないですが結構書くの大変でした。

授業の遅刻は『生徒会権限』とやらのおかげで不問となっていた。

授業途中に帰ったためクラスメイトの疑惑の込められた眼は逃れられなかった。

しかしそれはまだ耐えられたのだが、竜也からの悪感情しか込められてない眼からは本気で逃れたかった。

……悪感情とは要するに、嫉妬などである。

まだ仲良くなる前の奇異の眼差しのほうがマシな気がしたのだが、仲良くなったことは仕方ないし、刻季自身も仲良くなって学園が楽しくなったのは事実だ。


これからの関係改善が大事だと刻季は前向きに捉えて、授業のある間は竜也の熱い眼差しを甘んじて受け入れていた。



やがて昼休み後の座っているだけでいいような退屈でしかない授業は全て終わり、放課後を知らせるチャイムが鳴った。


一年生はまだ魔術の実技を受けていない。

実技は学期ごとに2回ある筆記テストのうち、1回目のテストが終わり次第始まる。

何故そのような体系をとっているのかと聞かれれば簡単だ。

実技はチームで行うことになるからだ。

チーム――集団演習のことである。


魔術師は古来より家に集まる。


規模の小さな戦争や合戦と思えば近いのかもしれない。

もちろん個人で戦う場合もあるのだが、それは騎士道精神に基づいてとかなんとかで決闘があったりするだけでほとんどは集団対集団という形になる。

個人で戦うには戦略に限度がありすぎる。


たとえば身体を強化する魔術を使う魔術師がいたとする。

その魔術師は、チームにいればとても有効に働き、戦うことができるだろう。

強化魔法を使えば、最前線で相手と渡り合えるからだ。

フットボールでいえばフォワードとして攻めることも出来れば、相手の攻めも壁として止めることができる。


しかしその魔術師が一人で戦っているとする。

相手に遠距離戦が得意な魔術師が一人でもいれば、その時点で近づいて近距離戦にもちこむことが難しくなり、その時点でほとんど一人で戦っている側が不利となる。

相手にダメージを与えることはおろか、相手に近づくことすら難しくなるのだ。


そのため、魔術師は集団戦を選ぶ。


もちろん、強化魔法しか使えない魔術師というのは少ないだろうが、魔術師にも得手・不得手が存在する上に、ただでさえ使える魔術が少ないのに得意魔術しか使わないような魔術師が大勢いる。


魔術師はいくつもの魔術の中で自分に合ったそれを見つけるため、それの純度を高め、訓練して、その魔術を''自分の中に確立''することでようやく魔術師となる。

要するに魔術を覚えるのは誰にでも出来ることだが、魔術を使う、使いこなすには時間をかけにかけて形になるのだ。形にするのだ。


だから魔術師はその魔術を我が子に愛情を向けるように大切にする。

それだけ時間をかけて形になった魔術に愛着が湧くのだ。

そのためその魔術を大切に扱うのと同時に、その魔術に――依存する。

新しい魔術を覚えるより、魔術の強化・練成を選ぶ。

それにより得手・不得手の差がさらに拡がるという悪循環に陥る。


故に戦いの中で使う魔術は初手であり、切り札でもあるのだ。

その切り札すら簡単に手放せないため悪循環の一要因でもあるのだが……


閑話休題


集団戦を選ぶ理由は以上の通りだが、だからといって実技が何故遅くなるのかと聞かれれば、クラスメイトに慣れる為というのが一番の理由だ。

結局は、クラスメイトで仲良くなり魔術での諍いを減らそうとし、連携をうまく組めるようにし、そしてあわよくばチームを組んでくれれば儲けものといったところである。

さすがにそのような準備期間を与えられるのは一年生の内だけで二年次からはクラスこそ変更になるが、一年次のチームをそのまま使うことが大抵だ。


そうなると、刻季たち5人組みはほぼチーム化しているため学園にとって一番の理想形であろう。

なんか今その理想が崩れそうで危ないが……、竜也も本音では仲違いしたいわけではないと刻季もわかっている。なので問題ないはずだ。



チャイムの音が鳴り終わると竜也が刻季の方に歩いてきた。

教室中の目が刻季と竜也に向かう。

「刻季、あのさ……」

「ん?」

ある程度何を言われるか予想のついた刻季だが聞くことに徹するとした。

その予想とは「お前、会長と付き合ってるのか?」が妥当なラインである。

奴隷だなんだは冗談と受け取るだろう。



「お前会長に『ピー』な服を着せて『ピー』で『ピー』に『ピー』なことさせた上に、『ピー』に『ピー』と『ピー』をいれて『ピー』なプレイしてるって本当か!?」

「…………」

もう色々大変なことになっている。

刻季の予想という壁を数十枚突き破っている感じだ。


「……ナニソレ?」

「噂になってるぞ! 刻季と会長が夜な夜な『ピー』なことしてるって」

噂になるのは免れないと思った刻季だが、尾ひれがつきすぎている。

「なんなのその噂……?」

声にならない声を上げて訊く。


「噂だよ、噂! ま、俺が流したんだけどな!」

「はぁああああ!?」

とんでもない噂を流してくれている。

完全に18禁の噂だ。クラスには年齢制限を越える生徒がいない。


「な、なんで?」

「ん? 妬ましいから」

理由を聞くとあっさり返ってきた。


「学園のアイドルであろう生徒会長にあんなことやこんなことをしやがって~。ずるいぞ。俺にもその権利を分けてくれ!」

「渡せるならいくらでもあげるよ!」

切実な願いである。


「なに……? 今度は『ピー』なプレイに飽きたからって捨てるのか……?」

「そんなことしてないからぁ!」

「お前せめて責任はとれよ! 会長を傷モノにしたくせに……」

「もうやめて……」

教室がざわつく。

もはやこの話を聞く以外の行為をしていない。


「釣った魚には餌をやらないってか!? 会長をあんなにしておいてよくも……」

「あんなってどんなだよ!」

「よくも性奴隷にしておいて……」

「してな……!「はい、私こと天原華音は刻季様の性奴隷です」……」

いつのまにか華音がいた。


「どんだけタイミングいいんだぁーーー!」

「私は、いつも我が君のおそばに……」

「ほらやっぱり性奴隷じゃないか!」

言質をとったとばかりに大きく出る竜也。


「違う違う、竜也! 華音、違うって言って」

「出来れば嫌です」

毅然として言う華音。

「なんで!?」

「面白そうだからです」

「お前ぇーーー!!」


「ちなみに私、陸奥くんが話しかけるところからいました」

「最初っからじゃん!」

「だから出るタイミングを選んでました。どうでしたか?」

「絶妙なタイミングでしたね!!」

実に満足そうなしたり顔をしている。


「それでは面白かったところでそろそろ行きますか? 南雲さん」

「は、はい!」

萌葱が刻季たちのもとへ来た。

「ちょ、ちょっと待って華音! この誤解を……」

「さ、行きますよ。刻季様」

刻季の腕をぐいっとつかんで引っ張る華音。


「か、華音! 頼むからぁ……」


刻季の声が徐々に小さく響いていった。


________________________



「華音は僕の事嫌いなのかな……?」

「いいえ、そのようなことはございませんよ。刻季様」

とぼとぼ歩きながら呟くと天使のように慈愛の目で見つめてきた。


「それにしてはずいぶんなことしてくれたけど」

「それは愛情ゆえです」

「へ?」

情けない声を出す刻季。


「あれだけ言っておけば刻季様以外の方に尽くすことは出来なくなりますから安心ですね」

「安心できないよ!」

「性奴隷がいる高校生なんてそうそういないですよ」

「そのカテゴライズの中に僕を入れないで!」

ずいぶんな括りである。

そのなかに入る者が刻季以外いるのか気になるところだ。

いや刻季も入らないのか……?


「あの、会長!」

ふいに萌葱の声が聞こえる。

「なんですか?」

刻季と楽しく・・・話していたつもりの華音は話の腰を折られて少量の虚しさを感じながら訊いた。


「家に刻季を呼んでどうするつもりですか?」

「どうするつもり、とは?」

「ホントに会長のお父様に会わせるだけですか?」

「えっ?」

驚いたのは刻季だ。


「師団の一家の長である会長のお父様が会いたいなどと簡単に仰らないと思うんです」

「なぜそう思うんでしょうか?」

「天原の家格は日本でもトップの一つですから『羽間』のような家の者に謁見を許すと思えないんです」

「それは南雲家も同じじゃないでしょうか?」

「南雲は自由な家風ですから。ですが天原は違いますよね?」

「…………」

伝統を重んじる家はどこか、と聞かれれば多くの家の名前が出てくるだろう。

魔術師にも宗教徒にも伝統を重んじる家は多数存在する。

というより、古い家はほとんどが伝統というものに縋っている。

南雲が異質なだけだ。


質問を、最も伝統を重んじる家はどこか、と変えると答えは自ずと絞られる。

いくつかの家名があがるが、間違いなく天原はその中に入るだろう。


そのような家の当主。

萌葱の言うとおり、たかだ『羽間』刻季に会おうと思うのか、と刻季は考える。

答えは否だ。

会うなど考えるはずもない。

刻季は『羽間』刻季だからだ。


羽間のしたことは表に出てきたわけではないが、師団の家が許すはずもない。

まして会うことなんて言うまでもなく拒否するだろう。

ならなぜなのか……?


「南雲さんの仰る通り、私は天原です。しかし父が会おうと申しましたのは真実です。羽間の家が何をしたのかは、私の知るところではありませんし、ただ私は父の意向にそうことをするだけです」

「……ほんとですか?」

「はい、父が何を企んで、何を望んでいるのかはわかりませんが、会いたいと申してました。それから……」

そこで一度言葉を切る華音。


「兄も刻季様に会いたいと申しておりました」

「お兄さんも?」

「やですわ、刻季様。お義兄さんだなんて……、気が早いですね」

「いやそれはもういいから」

先程と同じ流れに呆れる刻季。


「でもなんで?」

「予想はつきますが内緒にしておきます」

「ええっ?」

少しだけ楽しそうに声を弾ませている。


「刻季、いいの?」

萌葱が声をひそめて刻季に問いただす。

「え? なにが?」

警戒心の無い声で聞き返す。


「行ったらあんた何されるかわかんないわよ」

「んー? 大丈夫じゃないかな?」

「あんたねえ……。知らないからね」

萌葱の忠告は尤もなことだったが、あまり気にした様子もなく安心しきっている。


「それに、澪桜みおさんに知られたらどうするのよ?」

「あ゛っ!」

突然声を張り上げる刻季に華音は怪訝な表情を少しだけ浮かべたが、すぐに無表情に戻った。


「あんた、今までのことも知られたら、大変なことになるんじゃない? あの人あんたとあたしが少し一緒に買い物しただけで豪く騒いだくらいだから、今回はどうなるのかしら。澪桜さん嫉妬深いんだから……」

「どうしよう……」

澪桜との事をいきなり思い出して、その思い出・・・の密度の濃さに刻季は眩暈した。


「まぁ自分のことなんだからなんとかしなさいね」

まるで最終通告でもするように言う萌葱。

今言わないと断れないよ、と目は告げている。


今からでも断れば遅くないか?

あの人・・・のことだから許しはしないだろうが、断る姿勢を見せたから減刑してくれるか?

いやそもそも断って華音は帰してくれるのか?


等々、刻季の頭の中を駆け巡る。


やはり断ろう、そう結論づけた刻季に非情にも時間切れのベルが鳴った。


「着きました」

「はやっ!」

まだ歩き始めて5分も経っていない。

寮よりも近い家とは何なのだろう。


「どうかなさいましたか?」

「い、いや……」

華音が見ている方を見てみると、いつも寮から学園の校舎まで行くときに通る道沿いにあった大きな木造の家があった。

というか大きすぎだろ、と思わず呟きが洩れる刻季。


一言で伝えると、荘厳だった。

それ以上にうまく伝えることのできないような古風な家。

さすがの天原だ。

華音が家の方に歩き出すと仕方なくついていくような形で、刻季と萌葱も一緒になった。



家に入ると、まず長い廊下だった。

一番先が見えそうにないくらいの長さだ。

そして給仕の人だろうか、華音の帰宅に刻季たちの方も見ながら挨拶した。

「お帰りなさいませ、お嬢様。いらっしゃいませ。旦那様でしたら、お部屋にいらっしゃいます」

「ただいま。ええ、わかりました。」


このようなのは刻季も萌葱の家で見ているがどうも馴れそうになかったのでとりあえず会釈をしておく。

萌葱はしっかりと挨拶をかえしているようだった。


板張りの廊下を華音を先頭に歩いていく。

途方もない距離だった。

きっと華音は一番奥の部屋を目指しているのだろう。


1分くらい早歩きをしてようやく奥の部屋の戸の前に着く。

コンコンと華音が戸を叩きながら

「ただいまかえりました。華音です」

「開けなさい」

中から厳しそうな渋い声が返ってきた。


はい、とだけ華音がかえし戸を開いた。


中はいかにも古く大きな家の一室といった様子の部屋だった。

生徒会室の荘厳さとは全く違う形の威厳をもっている、そんな部屋だ。

はっきり言って刻季には場違いだとしか思えなかった。

それでも仕方なしに部屋の中ほどまで華音に連れられて向かう。


社長が使うような長机の奥で椅子に座っている壮年の男性とその横に仕えているように立っている青年がいた。

きっと華音の父と兄だろう、と想像する刻季。


刻季と目があった青年のほうは刻季に向かって笑みを送ってくる。

愛想よく刻季もかえすと壮年の男性が

手前てまえが天原の当主だ。卿が羽間か?」

自分たちの身分を位置付けるようにいうような声だった。


自分が『天原しだん』でお前が『羽間てき』、自分が『天原うえ』でお前が『羽間した』とでもいうように。


刻季はもともと歓迎されると思っていたわけではないが、結局萌葱の予想通りあまり歓迎されたものじゃなかった招待に心の中で暗雲が立ち込めてきた。


澪桜はそう遠くない日に出します。

どんな関係なのかは楽しみにしてくれるとありがたいです。


あと羽間家の話もいずれ出します。


全部の『魔法学園』を『魔術学園』に直しました。

見切り発車で投稿した今作ですから、最初からやりなおしたいです。

でもキャラに愛着わいちゃってそれもかなわないのでマイナーチェンジ?しました。

あんまりマイナーじゃないかも……

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