7)隠
チュンチュン
サワサワ
森林の朝の音が聞こえる。起きなくちゃ
カツ カツ カツ カツ カツ
サワサワ
―足音・・・?
森林の音とは違う石に響く音が聞こえてきた。しかもその音はだんだんと近づいてきていた。
急速に頭が覚醒した。リザリーは周りを見渡しながら、ポケットにしまっていたナイフを握った。
リザリーはまだ倉庫の中、天窓からは朝の日差しがさんさんと降り注ぎ中を照らしていた。
足音は壁側から聞こえてきていた。
―・・・おかしい、この小屋は離れた所にぽつんと立ってたはず。
ギィギィギィ
音と共に石壁が動いて人一人分通れる隙間が出来た。
息を詰めて隠れていると男が一人出てきた。
天窓から漏れる光のある場所まで男が出てきた。
オレンジがかった金髪、瞳は紅茶のような赤に近い茶。
胸元があいたシャツからは程よく引き締まった筋肉が見えた、藍色のズボンにショートブーツをはいていた。腰には短剣がさげられていた。
一目見ただけで、一般人ではないとリザリーは感じた。
「出ておいで、匿ってあげるよ」
男は突然話し始めた。
ばれた?そう思うが、男はこちらをみておらず、倉庫内を見渡していた。
―匿ってあげる?この男はお父様が用意していた人?でも違う気もするわ
出て行くべきか悩んでいるうちに男がため息をついた。
「俺も暇じゃないんだ。あと5秒数えて出てこなかったら、俺は戻るよ。ちなみにそこの隠し扉はこちら側からは開かない」
じゃ、数えるよといって男は数え始めた。
「1」
リザリーは男の後ろにある隠し扉をみた。
ここからだと、隠し扉に行くには男の目に確実に触れることに気づいた。
「2」
男は隠し扉のほうに下がった。
ナイフを腕に隠してリザリーは男の前に出ることを決めた。
「3」
リザリーは隠れていた場所から立ち上がった。
「まって」
「・・・・女の子?」
男は器用に方眉だけ上げて、驚いた風にみせた。
そして、口の端を上げて言った。
「おいで」
言葉と共に壁の隠し扉の中に入っていった。リザリーは駆け出し隠し扉の中に入っていった。
男は入ったすぐの場所に居たため、リザリーは男の胸の中に飛び込むような形になった。
「ぁ!」
「やっぱり女の子か」
男はリザリーがかぶっていたフードをはずして言った。
「扉を閉めるから動かないで」
男が何か小さくつぶやくと扉はゆっくりと閉まり、辺りを闇で覆った。
そしてリザリーは、男の手が腰と背中に回されていることに気づいた。
女学校に通っていたため、若い男に対する免疫が少ないリザリーは内心焦っていた。
―近い!近い!暴れたいけど真っ暗で暴れられないし!どうしたらいいの?!
心音は早鐘のように全身に鳴り響いていた。
男は、身動きしないリザリーを見て楽しそうに笑っていた。暗闇の中、男にはリザリーの姿がはっきりと見えていた。
―耳が真っ赤だ。もしかして男に免疫がないのかな?
もうちょっと、こうしてたいけどそろそろ戻らないとやばいかな。
「失礼」
そういって男はリザリーを抱きかかえた。
「しっかり掴まって、あとじっとしている事」
「・・・ぇぇ」
男はリザリーを抱きかかえて暗闇の中を歩き始めた。
リザリーは男の腕の中で、壁沿いに階段があり降りていっていることに気づいた。
―どこに繋がっているのかな?
階段を降りきると、木の扉があり男がまた何かつぶやくと開いた。その先はまっすぐな道になっていた。
リザリーは頭の中でなんとなく歩いている方向を推測すると、薔薇庭園のある屋敷の方向に思えた。
また、男が階段を上っていき、何事かをつぶやくと重たい音と共に、暗闇から光が差し込んだ。
リザリーは思わず目をつぶっていると、男は光中にはいっていた。
そこは、どこかの寝室で朝の日差しがたくさん差し込んでいた。
「・・・ここは?」
「俺の宿泊場所」
「ぇ?」
「薔薇庭園のある屋敷の客室だよ」