49)後は二人っきりで
久しぶりの更新です。
すみません。
「リカルドさん。あなたのリザリーへの思いは、あの葬式でみしてもらったわ。」
「お婆様・・」
「私は婚約ならいいと思う。普通に付き合うだけだとイロイロ問題になるしね」
そう言ってミレンダはウィンクした。
確かに陸軍中将であるリカルドが女子高生と付き合うなど世間一般では認められない、だが婚約者ならばおかしくはない。
「ありがとうございます。」
「ふふふ、それに婚約したからと言って必ず結婚するとは限らないしね。」
そう意地悪そうにミレンダは言葉を足してリカルドを見た。
リカルドは苦笑しながら
「精進します。」
と言葉を足した。
コルツエは眉間に皺を寄せて唸りながら俯いた。
「コルツエ、いいでしょ?むしろココで反対して、付き合い続けるほうが問題なんじゃない?だったら認めてあげましょう」
「だが・・・」
「不誠実な付き合い方をするわけじゃないのよ?婚約よ?それに、リカルドさんはリザリー保護して私達の所まで連れてきてくれたのよ?何を反対する理由があるの?」
リザリーはウンウンと頷くが、コルツエは顔をあげて怒鳴った。
「だからだ!吊り橋効果というのがあるだろ?!一時の感情で流されて傷つくのはリザリーじゃないか!!まだ17歳なんだぞ!」
「お爺様・・・」
リザリーはコルツエの言葉に反発する感情と、まだ2回しか会っていない孫の自分を心配してくれることに嬉しく思う感情がない交ぜになっていた。
「それに、まだ学生だ。これからは魔力の調節を覚えるためにも通わねばならんしな。学生の本分は勉強だ」
コルツエの言葉にリザリーは驚いた。学校に通うなんて初耳だった。リザリーが困惑しているうちに話は進んでいく。
「それは、重々承知しています。」
「もう、これだから男って。リザリーが驚いてますよ?」
渋い顔をしてコルツエは開きかけていた口を閉ざし、リカルドは小さく謝った。
その様子にミレンダは頷くとリザリーの両手を握って話し始めた。
「リザリー貴方に今日話さないといけないことがあったの。夫がもう言ってしまったけど、貴方にはこちら側の学校に通ってもらうわ、今までの学校と違って魔法に特化しているから驚くかもしれないわね、でもちゃんと一般教養もあるから安心して。それと貴方が嫌でなければ、私達と一緒に住まない?貴方の保護者として・・・家族として一緒に」
「お婆様」
まさか、そんなことを言ってくれると思わずリザリーは涙が浮かんだ。もう自分の家族は居ないと思っていたのに、今まで一度も会ったことの無い孫を家族として向かいいれてくれるという言葉に嬉しくないはずがなかった。
リザリーの様子にミレンダは微笑んだ。
「まだこっちに来て慣れないことばかりでしょう?文化も価値観もいろいろ違うからびっくりすると思うけど、徐々に慣れて行けばいいわ。言い争いは二人に任せて、私達二人でお話しましょう」
そう言ってミレンダはリザリーの手を引いて部屋を後にした。
柔らかな、しわくちゃの手は暖かくリザリーは優しく手を引かれるまま後を付いていく。
階段を上りある部屋に入ると、そこは蒼と白を貴重にした部屋だった。
「ごめんなさいね、リザリー。あの人ったら一緒に住めると解った途端父親面しちゃって。フフフ」
「ぇ、・・・いえ」
「この部屋はね、貴方のお父さん、ボルドーの部屋なのよ」
「ぇ」
部屋の中は物が少なく、壁には世界地図が張られている程度だった。
促されるまま中庭が見れるベランダに出ると白い机と2脚の椅子が置かれていた、そこに腰を下ろすとミレンダが部屋を見ながら話し始めた。
「物があまりないでしょ?小さいときから特殊任務に着いていたから、あまり物が無いの。私達王家の一員は元々グアンダーノース側に住んでいる場合は、リザリーたちが住んでいた側に行くことは基本禁じられているの、出れるとしたら任務を背負った者だけ。」
「じゃーお婆様は一度もこの土地というか、アンダーノースから出られていないんですか?」
ミレンダは笑いなが横に振った。
「いいえ、私は元々リネウス国の一般家庭の生まれなの、でもね魔力が強すぎてね。あ、魔力が強すぎると王宮に召抱えられるのよ?それは表向きで実際は、アンダーノースに移動させられるだけなんだけどね」
「ぇ?」
「魔力のバランスを取るために、一般生活が出来なくなるの。私は貴方と同じ17歳でこちら側に来たの。そこで今の夫コルツエに出会ったのよ」
そう言ってミレンダはウィンクをした。
「じゃーお爺様は元々アンダーノースに住んでいたんですね。」
「えぇ、しかも王家の一員。末端といっても貴族でしょ?もう学校では凄かったのよ?ふふふ話がそれてしまったわ。まー私達も恋愛結婚でね、そうするともうアンダーノースからは家族に帰省する時くらいしか出れないの。でも、年に一度は出れるせいかボルドーが興味を持ってしまってね、しかもアンダーノース生まれにしては魔力が弱かったせいか、特殊任務に志願してしまって・・・外に出て行ってしまったの」
悲しそうに言う様子にリザリーはなんと声をかけていいか解らなかった。
「でもね、時々絵葉書や、お土産が届いてね。今どこそこにいるとか、こうゆうと頃に居るくらいしか書いてなかったけど、楽しかったわ。それに貴方が生まれたときにも届いたのよ。」
嬉しそうに笑う姿はとても綺麗でリザリーは釣られて微笑んだ。木々が揺れ爽やかな光と共に風が舞い込んだ。
「じゃ、お婆様たちは、私をご存知だったんですね。」
「えぇ。知っていたわ。貴方の髪質のことも生まれの事も。貴方の成長をずっと見ていたわ。一生会えないと思っていたんですもの、夫には10歳まで生きられないって言われて辛かったわ、でも貴方は10歳を超えた、でも超えたら超えたで違う意味で命の危険に晒されると聞かされたときは、一刻も早く貴方をこっちへ連れてくるように頼んだわ」
そんなやり取りがあったなど初めて聞いてリザリーは驚いた。
「でもね、そのときには軍が貴方達家族を見張っていたらしくて、国から出るのが難しかったらしいわ。そうこうしているうちに、あの子は病気になってしまったし。・・・暗い話になってしまったわね。」
「・・・いえ」
ミレンダは空気を変えるために中庭を見つめていった。
「この庭素敵でしょ?ここに住んでる人しか使えないから、綺麗に整備されているし、部外者が入って来れないから安全なのよ」
その言葉にリザリーは中庭を見た。中にはには木々が生い茂り、レンガの細道が造られ、各家々からレンガの細道が伸びていた、その先は中央に伸びていて途中には薔薇のアーチや休めるような椅子や広場があった。
今は広場で子供達が遊んでいる。
「・・・私はココに住んで大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ?一緒に住んで欲しいくらい。女の子が欲しかったのよ私!一緒にショッピングに行きましょ。」
その言葉にリザリーは小さくハイと答えた。顔がほのかに熱い。
和やかに、リザリーはミレンダと話しながら爽やかな風をうける。
ココが、新しい我が家と家族。
なんだかむず痒いような、くすぐったいような不思議な気分だった。