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始まりはいつも突然に  作者: siro
第一章
39/50

39)逢瀬

誰かの息遣いが聞こえる。

まどろむ意識の中、手のぬくもりに気づいて意識が浮上する。


目に飛び込んできたのは、豪華な天幕。

目線を横にずらせば、それが天蓋だということに気づいた、その次に感じたのは、ほのかに香る石鹸の香りと柔らかなマクラと掛け布団。

重い体を起き上がらせれば、節々が悲鳴を上げて思わず眉間に皺がよってしまった。


手を持ち上げるようとして、右手が動かないことに気づく。


見ると自分の手よりも大きい、しっかりとした手が握り締めていた。

その手の持ち主はベットの端でうつぶせになって眠っている。

窓から差し込む光でオレンジがかった金髪はキラキラと宝石のように輝いていた。


リザリーは、震える左手でうつ伏せで眠っている人の頭を撫でた。

確かなぬくもりに、リザリーは目が熱くなった。

早く顔を上げて見してほしいと思う気持ちと、眠っている彼を起しては申し訳ないという気持ちがせめぎあっていた。


「り・・・カルド」

声が震える。


ピクリと握り締められていた手が震えた。


「リカルド」

もう一度呼ぶと頬からしずくが落ちた。


ポタ


落ちたしずくはシーツに染み込んで、色を変えた。



少し浮いた頭は、時が止まったかのように停止した。

だが、ガバリという音が似合いそうなほどの勢いで突如顔を上げた。


「っ・・・リザリー!!」

顔には寝後がついていて、せっかくの顔が台無しだ。

その様子にリザリーは笑みがこぼれた。

リカルドは、手を離してリザリーを力強く抱きしめた。


「リザリー・・・良かった。良かった。」


耳元で聞こえる安堵の声。

リザリーは、自身もリカルドの背に腕を回して首筋に顔を埋めた。

「リカルド。無事でよかった。」


「何言っているんだ、無茶なんかして!!」


そういうと、ぎゅっと腕に力をこめられた。

その力強さに戻ってこれたと思えた。


「ごめん」


うれしくて、思わず笑みがこぼれた。

リカルドは、顔を上げるとリザリーの涙の跡に唇をつけた。

触れられた所が熱を持ったように熱くなり、リザリーは目を伏せた。

こつん、と額が当たった。


「はぁ、言いたい事は山ほどあったのに。」

ため息をつかれて、リザリーは小さくごめんなさいと言った。

瞼を上げると、紅茶色の瞳とぶつかった。炎の揺らめきのような瞳にリザリーは目線を離せなくなった。


「リカルドが無事でよかった。毒は大丈夫だったの?」


「大丈夫だよ、俺も王族の一員だからね。毒の耐性はあるんだ。お願いだから危ない賭けをしないでくれ」

「だって、あれしか思いつかなかったし。リカルドが死んじゃうって思ったんだもん。」


「俺は、君を失う方が怖いよ」

「私も・・・」


その続きの言葉は続かなかった。


優しくて暖かい感触が唇にあたり言葉を塞いだのだ。







どのくらいそうしていたのかわからない、ただしばらくすると、ほんの少し離れ、角度を変えて触れてくる。

優しい感触に思わずリザリーは瞳を閉じてしまった。


キスをされている、それに気づいたときには、頭を優しく抑えられ息が出来ないほど深くなっていた。

しがみ付いていた手に力が入らなくなってやっとリカルドはリザリーを開放した。


「ごめん。」

ぼーっとした頭でリザリーはリカルドの言葉を聞いた。


 ー ごめん?・・・ん?あれ?私いま・・・


一気に顔を紅くしてリザリーは顔を俯かせた。


その様子にリカルドは笑みを浮かべながら俯いてしまったリザリーの頭にキスを落とした。


「ぁ・・・・な・・・」

その感触にリザリーは、声にならない声を発し、パニック状態。


 - ちょっと!!ちょっと!!!のぉー!!今!!いま!!きききききき・・・キスしちゃった?!しちゃったよね?!しかも濃厚なの?!いやいやいや?!ぁあああああ?!しかも今頭にも?!!なんでだ?!どうした?!自分!!!!しっかりしろ?!毒なんかに触れたせいか?!せいなのか?!


「かわいい」


 - かわいい?!!誰が?!かわいい?!!ちょっとまて!?何かおかしくないか?!なんかあああああああ甘い雰囲気じゃないですか?!この空気むりむりむりむりむりむりむりむり


「耳が真っ赤だよ」

そう言って、リカルドは俯くリザリーの耳をしゃぶった。


「うひゃぁあ?!」


思わず顔を上げて叫びリザリーはリカルドの顔を見てしまった、そして後悔した。

そこには、なんだか凄く色っぽい雰囲気のリカルド。

また顔が近づいてくる雰囲気にリザリーは腕を突っぱねながらパクパクと口をさせながらやっと声を絞り出した。


「な・・ななななな何するの?!」


「魔力補給」

笑顔で返された。


「いやいやいやいやいや!!意味わかんないし!!!」


「リザリーパニクってるね」

笑顔で迫ってくるリカルドにリザリーは顔を紅くしたまま半なき状態、手はいともたやすく絡めとられてしまった。


「待って待って待って!!」


キスが出来るほど顔が近づき、思わずリザリーは目を瞑った。

だが、予想していた箇所に触れる感触はなく、頬に軽く触れてリップ音が聞こえた。


「今日はこのぐらいにしとくよ」


 - 今日?!次もあるの?!!!


おそるおそる目を開けると、リカルドはすまなそうな顔をしていた。


「・・・嫌だった?」


いきなりの問いに、リザリーは視線をさまよわせた。

「ぇ・・・えと・・・・」

また、顔に熱が集中する感じにリザリーは頬に手を当てた。


俯きながら、リザリーはぽそりと呟いた。


「      」



リカルドはそのままリザリーを抱きしめた。










ラブラブーになってしまった。

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