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始まりはいつも突然に  作者: siro
第一章
37/50

37)姫は王子の夢を見る

突如地中から出てきた石の塔に、周りの兵士建ちはどよめいた。

リカルドは石の塔に目を向けた。


リネウス国の兵士には見えているであろう、幾重にも重ねられた呪文。他国では一部の魔力に突起した兵士でしかみれないのではいかと思うほど古い術は、ただ一人を閉じ込めるためだけに作られたもの。

古い時代からずっと重ねてつくられた塔。


その先端は鳥かごのように見える、鉄で形作られた呪文の檻、その下には大砲がリネウス国へと向いていた。

大砲にも術式が幾重にも書かれている。


「リネウス国もお仕舞いだな。」

クラウスの言葉にリカルドは笑みを浮かべ、声を上げた。


「解除!!!」


その声は魔力によってあたりに響き渡り、リネウス国側からも同じように声が上がった。

するとガラスが割れるような音と共に突風がリネウス国から流れ込んできた。


「なっ・・・」

それは、今まで感じたことがない魔力を含んだ風。

驚いた兵士立ちは一斉にリネウス国側に砲撃を行おうとするが、銃は突如暴発や機能しなくなった。

スノップ国の艦隊は砲弾が暴発し、爆炎をあげている。


「いい事を教えてやる、リネウス国は魔力に驕って機械を使用しないんじゃない、魔力が溢れているために機械が誤作動や機能しなくなるから使用しないんだ」


 ー 解除と言ったのは、魔力を他国に漏らさないための結界を解除したということか。


先ほどから、リネウス国は傍線の一歩だったのが、解除した途端攻撃をし始めた。

それは魔力による攻撃。

スノップ国のように機械を使用しない戦い方は、一見して古臭い戦い方だが今魔力に溢れた土地では機械はタダの鉄くずとなり何の役にも立たなくなっていた。


攻撃が始まったと同時に、リカルドは塔へと走った。

塔の周りには幾重にも結界が張られているが、リカルドは気にすることなく魔力をぶつけて破壊していく。


「リザリー!!」

ただ一人の少女の名を叫んで。


その後をクラウスが追いかけた。

「くそ、俺との戦いはセーブしてやがったのか。」

躊躇なく破壊していく様を見て、クラウスは歯軋りをしながらも追いかけた。自身にとっても今がリザリーに契約を成立させるチャンス。

大砲に光りが集まり始めた、それを見てリカルドは焦った。


 ー まずい、魔力が集められてる。


リカルドは石壁を蹴って高く飛躍した、体にかかる負荷に腕が悲鳴を上げ始めていたが気にすることもなく結界を突き破っていく。

やっと塔の最上部に到達しリカルドは、リザリーを目に捉えた。

「リザリー!!」


その声にリザリーは振り返る、そこには蒼い軍服に身を包んだリカルドがいた。

「リカルド!!」

リザリーはフラフラな体に叱責をしながらリカルドへと駆け寄った。

「リザリー」

檻越しにリザリーとクラウスは抱きしめあった。

「迎えに行くのが遅れてごめん」

「おそい・・よぉ」

リザリーは声が震え、泣き出してしまいそうになるのを堪えながら掴んでいたリカルドの服に力を込めた。

だが、そんな二人を邪魔する者が現れた。


「感動の再会といった所か」


降ろされた剣をリカルドは受け止めながら、リザリーを突き飛ばした。

「リカルド!!」


「離れてろ!!」

剣を押し返しながら、リカルドはリザリーを見ずに叫んだ。


クラウスが放った魔力はリカルドの手によって霧散した。

その様子にクラウス自身も舌打ちをし、剣を振り下ろした、鉄と鉄がぶつかりあう。

意識が朦朧としていく中リザリーはハラハラしながら二人を見ていた、気を抜けば倒れてしまいそうになる。


「リ・・・カルド」


リカルドは横目でリザリーを確認しながら焦っていた。

自身の体からも魔力を塔に吸われている事に気づいていたが、それよりもリザリーの魔力の奪われ方が尋常ではなかった、このままでは急激な魔力の喪失でショック死してしまう可能性があった。


 - 早く、檻をこわさないと。


何度目かの打ち合いの末、リカルドはクラウスの剣を弾き飛ばした。

高く舞う剣はキラリと瞬き地へと堕ちていった。クラウスは自身の剣が落ちていくの見ているしかなかった。

「くそっ!!」


その隙にリカルドは魔力を込めて強度をました剣で檻を破壊し、檻の中へと侵入した。

床に倒れこむリザリーを抱き起こすが、うっすらと開いている緑色の瞳にはリカルドをうつしていなかった。

「リザリー!!しっかりしろ!!」

声をかけてもぐったりとした様子に、リカルドは自身の魔力を注ぐために、リザリーに口付けをした。




ピクリと反応を起したリザリーに気づいたリカルドが、顔を起し確認をした。

「リザリー・・・」

「・・リカルド」


意識をもどした、リザリーの目にはリカルドの背後に立つクラウスが見えていた。クラウスの手には綺麗な剣があり、その切っ先はリザリーの目の前に赤く濡れた状態であった。

それは、リカルドの右肩を貫いて。


「?!」


「リザリー取引をしようか?」


「ぁ・・」


「この剣には毒が塗られている、解毒薬はこれ」

左手でかざした小瓶を振って見せた。

「騙されるな!!」

クラウスは突き刺している剣をまわした。

「うわぁっ!!」

「黙れ」


「リカルド!」

「リザリー、毒はね即効性でね。魔力が高ければ高いほどよく効く死の毒なんだ」

「やめて」


「僕の半身になってくれるかい?」

リザリーはリカルドの顔を見た、その顔は蒼くなり始め不自然な汗を流していた、流れ出る血の色が黒ずみ始め、明らかにおかしい。コレが毒のせいなのか、迷っているうちにリカルドが死んでしまう。

リザリーは口を開けたが、リカルドの口が動いたのを見て、いったんと閉じてから口を開いた。

「・・・それは本物なの?解毒薬をくれるの?」


「ふふふ、なかなか賢いな。本物だよ、君が頷いてさえくれれば、この解毒薬は君に上げよう」


「本当に?」


「迷ってる暇はないよ?」


「そう」

そう言って、リザリーは手をリカルドの背に回し突き刺さっている剣を握り締め、引き抜いた。


「なっ?!」

クラウスは驚き、途中からは自身で剣を投げ捨てた。


「解毒薬を頂戴、私が死んだら困るんでしょ?」

リザリーはリカルドを抱きしめたまま、血だらけの手をクラウスに差し出して、挑発的に微笑んで見せた。



リザリーは呼吸が乱れていくのがわかった、体はどんどん冷えていき悪寒がする。体から力が抜けていく気がするのは魔力を吸収されているからなのか、薬のせいなのかもわからない。

目の端では、まばゆい光りが集まっている。そこには大砲があったはずだった。


だが、そんなことはどうでもよかった、重要なのは今リカルドを助けること。


「くそ!!」

クラウスは小瓶を床に叩き付けた。


その様子にリザリーは笑った。


「あはは!!やっぱり解毒薬じゃなかったのね」


爆発音と共に大砲に集まっていた光りが放たれた。


リザリーはその光りが綺麗だと不謹慎にも思いながら、リカルドの肩に顔を埋めた。

懐かしいぬくもり、彼を失ってまで生きたいとは思わなかった。


リザリーはリカルドのぬくもりに安堵し、目を瞑って意識を手放した。




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