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始まりはいつも突然に  作者: siro
第一章
36/50

36)捕らわれの姫君

2話連続投稿でう

先ほどの攻撃で、強気になったのか、クラウスとリカルドの対戦を見守っていた兵士がリカルドに対して攻撃を仕掛けてきた。

それらは、全てスノップ国で開発された武器。


リカルドは小さく舌うちをした後に、全て避け地に手を着けた瞬間に魔力を放った。

土はリカルドの魔力を吸い込み、思いの通りに動く。攻撃を仕掛けた兵士の足元からツララのようにせり上がり、息の根を止めていった。


その様子に、あとに続いて攻撃を仕掛けようとした兵士は動きを止めた。


 - ざっと20人・・・。なるほど、魔力を感知できなければ一気に始末できるということか

クラウスは内心冷や汗をかいた、自身は魔力の動きを感知でき攻撃を避けることができるが感知ができないものにとっては、避けることは不可能だった。


「邪魔が入ったな。」


カチャリと剣を握り直したリカルドにクラウスは笑った。


 ー 顔色一つ変えない


「リザリー嬢が今のお前を見たらなんていうかな」

「・・・」


わずかに動いた感情にクラウスは笑みを深めた。


「そういえば、リザリー嬢は以外に胸があったな。」

「・・・黙れ」


明らかに、怒りを含んだ睨みにクラウスは心の中で高笑いをあげた。

 

 ー こいつ、プライドを傷つけられて俺を憎んでると思っていたが、そうか。


「泣いてお前の名を叫んでいたよ。結構可愛い声だった」

「黙れ!!」


怒気を孕んだリカルドの剣は重みを増し、受けとめたクラウスの剣は真っ二つにわれた。

すばやく後方へ飛躍したが、フードの布は切れクラウスの体から落ちていく。

 - 魔力増強の剣と防御魔法を織り込んだフードが切れるとは・・・


クラウスは懐からまた、術式を書いた紙を取り出予備の剣を出現させた。

かすかに痛みが走った肩に舌打ちをしながらも、リザリーを襲ったときのことを思い出した。


仕返しとばかりに、剣を振るう。

お互い一歩も引かずに押し合い、クラウスは笑いながらリカルドの耳元で囁いた。

「白と淡いピンクのレースはお前の趣味か?」

「?!」


「がはっ!!」

腹への衝撃と共にクラウスは地面へと転がった。肩の傷が広がったのかズキズキとした痛みが走り始めていた。だが、今だに笑みをつけたまま。


「白くて綺麗な足だったぞ、さわり心地もなかなか」


「黙れ!!!」


「ふははははははははは!!!!」


ゆらりと立ち上がりながら、クラウスは笑うのをやめた。

「ますます、貴様の首が欲しくなった」

カチャリと剣をリカルドに向けて言った。


「誰がやるか」

リカルドは不愉快そうに同じようにクラウスに向かって剣を向ける。

クラウスの口からリザリーの名が出るだけで不愉快でたまらなかった。


「安心しろ、お前が死んだあと俺の側室として迎え入れてやるつもりだ」


「黙れと言っているんだ!!」


辺りで響く地鳴りなど気にせず、リカルドは剣に魔力を込め突進した。


剣と剣がこすれ、火花が散る。

リカルドの赤茶色の瞳のは怒りで赤く燃え上がっているようだ。

魔力による風圧で木々や砂が舞い上がっていく。

リカルドは冷静でいようと勤めるも、心は怒りで制御できなくなっていた。目の前の男と殺してやりたいが、そんなことをすればリザリーを助けることが出来ない。

その矛盾に歯軋りをした。


戦いながら、クラウスが呪文を書き込んでいることにリカルドは気づいていた。それはリザリーが閉じ込められている牢を召還するためのもの。

そして今、術が完成し展開されていることにリカルド怒りで気づいていない。







◆◆◆




暗い空間にガコガコという音と共に地響きが響き渡った。

「な、何?!」

リザリーは、突如起こった揺れと音に横に居たブルーフェアリーに抱きついた。

「んーどうやら始まったみたいね」

のほほんとした声で、ブルーフェアリーは答えながらリザリーの背中をなでた。

「ぇ?始まったって」

「天上界への攻撃」

「ぇ?!」

「この牢屋は私の力を吸い取って天上界への穴を開けるために作られたらしいのよ」

ニコニコしながら言うブルーフェアリーにリザリーは唖然とした。

「そんなのんびりと!」


そんなことを行っている間にも地面は揺れ動き、変な圧迫感がおこりはじめた、それはジェットコースターで天辺まで競りあがっていくような感覚。

「ん~だって、いつでも逃げられるもの」

「ぇええ?!だったら逃げましょうよ!!」

いきなりの爆弾発言に、リザリーはブルーフェアリーの肩を掴んでゆすった。

「ぇー。それだと、いろいろ関係ない被害が出ちゃうから駄目って言われてるの。私、力の調節が下手だから~」

「いやいや!!!調節って、逃げられるのなら逃げたほうがいいですよ!!」

「あらら、でも逃げたときに自分が住んでいた土地が無くなってたら困るでしょ?」

キョトンとした顔で小首をかしげてブルーフェアリーが言った言葉にリザリーは固まった。


 - 土地が無くなる?


「天上界と違って下界って脆いの」

「えっと」

「言葉の通りよ、ごめんなさいね。でも、大丈夫、誰も私を傷付けられないのよ。それに!リザリー、ここは王子様が助けるべきだと思わない?」


「ぇ?」

先ほどの暗い雰囲気から一転して明るい声で投げかけられた言葉にリザリーは違う意味で絶句した。


「そ、そんな夢見がちな!!どこの王子が助けに来るって言うんです!!」


そう言っているうちに、檻はどんどんと競りあがっていき何十にもある天上が開いては風圧と気持ち悪さにブルーフェアリーにしがみつき無駄口を挟む余裕さえなくなった。そして大きな音と共に割れた最後の天上が割れ地上へと露出した。

その瞬間、檻を包んでいたカーテンはフワリと浮き上がり飛んでいった。

そこは天高く聳え立つ塔の上。


眼下に見えるは砲台と森、森の中には武装した兵士と竜が所狭しといた。右手に見えるのは湖、水面には黒い艦隊が浮かんでいた。

音は何かに遮断されたように何も聞こえていないが、森と湖から向こう岸の国へと砲撃が休むことなく行われていた。

上空には竜が飛び交っている。


砲撃が向こう岸に渡る途中の湖と湖から流れる川の上辺りで呪文が浮かび上がっては消え、全てを塞いでいるように見えたが、時々それをも突き破って土煙を上げていた。


戦火のど真ん中にリザリーとブルーフェアリーは現れたのだった。


「ブルーフェアリー・・・」

手に力を込めてしがみ付いた。

「大丈夫よ」



床の文様が光りだし、リザリーは力が抜けていくのを感じた。




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