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始まりはいつも突然に  作者: siro
第一章
3/50

3)バイバイ

真っ白い空間にいた。

両側に白い壁がずっと続いている、とても寂しい空間だと思った。

ふと誰かと手をつないでいることに気づいた。

顔を上げると父がいた、だがなぜか顔がぼやけて見える。

そして、このまま父をこの先に行かしては行けないと思った。


「いっちゃだめだよ」

そう言った私は足を止めようとしても、なぜか足は止まってくれなかった。

父は微笑んだように見えた。


ずっとこのまま真っ直ぐに道が続いていればいいと思った。終わりなど来なければ・・・違う道が現れないことを祈っている自分がいた。


次第に目の前に違う道が横切っているのが見えてきた、じんわりと心の中で悲しみが広がってきた。目の前の道には、ぼんやりと人型が見えるだけだがなぜか怖くなかった、そしてその人型はみな同じ方向に歩いていった。

「ここでお別れだ。」

父が感情のこもらない声で言った。

お互い顔をみずに目の前の人型の波を見ていた。

「いっちゃうの?」

「あぁ」

「私はお見送りしかできないのね。」

「あぁ」


涙が頬をつたった。頭をやさしくぽんぽんされた。幼いころ以来だ。


「・・・自分の身は自分で守りなさい、そして普通に暮らし、普通の幸せをつかみなさい。」

後半は父の願いのように聴こえた。

「・・・がんばってみる」

「あぁ」

つないでいた手からぬくもりが離れた。

「ばいばい」


返事は返ってこなかった。




大きな揺れで目が覚めた。

頬は涙で濡れていた。

「・・・夢・・・?」

いや夢枕・・・だ。

この世から本当に父がいなくなった事を実感した、そして足元から急に地面がなくなったような感じに思わず目をつぶって手で覆った。

一人になってしまった、不安が心の中を支配した。世間知らずな自分がどこまで一人で生活できるかなんて想像がつかない、自分が男ならまだしも17歳の女子で自分に何が起こって逃げているのかも分からない。

助けを求めたくても誰に求めればいいか分からない、なぜか自警団や警備兵に見つかってはいけないことだけは、漠然と分かっていた。


親戚もあてにしては駄目だ。

袖が涙に湿っていく感触だけが、自分をここに留まらせているように感じた。


『10分後、カスタリア、カスタリア駅に着きます。」


車内放送が流れリザリーは涙をぬぐい、目を開けた。

車窓から見える外は、夕暮れ色に染まっていた。

「・・・早く服屋にいって服を調達しなきゃ」


地図をもう一度確認をし、商店街の位置と町の大まかな道を確認した。



「バイバイ。お父様。」

「バイバイ。退屈だったけど普通で幸せな生活」


ガタンという音とともに列車は止まった。


『カスタリア、カスタリア』


ひざを叩いて私は立ち上がった。


夢枕は実体験を混ぜつつ。


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