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始まりはいつも突然に  作者: siro
第一章
29/50

29)ブルーフェアリー

フワリとした浮遊感がしたと思った瞬間、体をしたたかに打った。

痛さに目を開けると、薄暗い場所にいた。


周りを見ると檻のような、鳥かごのようなレースのような鉄格子が円形に囲っており、広さは教室2個分と言ったところだろうか。

鉄格子の向こう側はカーテンに遮られて見えなかった。

周りには小部屋に椅子や机、小物などが置かれていた、なによりも目に付いたのが枠の無いシンプルな寝台。


そこには、すでに先客がいた。

リザリーはよろける足を立たせて、寝台に近づいた。そこには、金色のウサギのぬいぐるみを抱いた蒼い妖精の女性がねむっていた、妖精と思ったのは彼女の背中から虫のような大きな虹色の薄い羽が生えていたのだ。

 

 ー これは夢?


現実に妖精などと言うもの者はリザリーの世界に存在などしていなかった。だからリザリーは確かめるように近づいて手を伸ばした。

女性は、漆黒の長い髪、整った顔立ちは同い年くらいだろうか、肌は白く人形のようで思わず触れると、目がぱちりとあいた。瞳は黒いのか、と思った。


「・・・」

ぼーっとしながら辺りを確認すると、リザリーにまた目線を合わせた。

「あなたも攫われたの?」

「あなたも・・・ってあなたも攫われたのですか?」

「えぇ、花畑で娘と遊んでいたら。いきなり」

娘を産んでいるように見えないほど若い女性にリザリーはびっくりした。

「・・・あら。あなた・・・」

じーっと見られる。

「?」

「だから攫われたのね」

うんうん。とうなづきながら女性は勝手に話をすすめた

「あの、私が攫われた理由をご存知なんですか?」

「あら?あなた知らないの?」

「いえ、知っています。クラウスとかいう人の半身で攫われたはずなんですが、なぜかダリウスとかい男に飛ばされたみたいで。」

「ふ~ん・・・そっちの理由なのね」

「そっち?」

「ふふふ」

「ぇ」

何がおかしかったのか、女性はウサギのぬいぐるみの頭に顔をうずめて笑った。

「そうそう。あなた、お名前は」

顔をうずめたまま、女性は聞いてきた。リザリーは疲れていたせいか、夢だと思っているせいか素直に名前を答えた。

「リザリーです。」

「そう」

「あの貴方は?」

「ん~」

女性は自分の姿を確認してから口を開いた。

「ブルーフェアリーです。」

凄い悩んでいた様子で、あきらかに本名でなく今考えた感がたっぷりだった。思わずリザリーは呆れた顔で言ってしまった。

「ぇ・・・本名ですか?」

「違うわ。そういう役なの」

「はぁ」

なんだろ、この女性のゆったり感はほわほわしすぎてる、そういえばクラスでこういった不思議ちゃん系の子がいたな~とリザリーは学校を思い出した。こういう人は意外に頑固で曲げない、別に呼ぶのに支障がなければ名などどうでもいいと思い直し、本名を聞くのを辞めた。

そして、彼女は何かしっているような口ぶりだったのを思い出した。

「・・・で、なぜ私が攫われたんですか」

「それは、貴方が自分で言ってたじゃない」


小首をかしげて微笑みながらブルーフェアリーは答えた。

ちょっとイラっとしつつリザリーは口を開いた。


「それ以外にもあるように伺えたんですが」


その様子にブルーフェアリーは視線をそらして、腕に抱いていたウサギを向かい合わせにさせてウサギの顔をじーっと見つめて唸った。

「ん~そうだけど・・・ん~それは~。・・・・でも~」

ウサギにむかって独り言を言い始めたのをみて、脱力感に襲われた。凄いメンドクサイこの人とリザリーは思いながらその場に腰を下ろした。すると

「はい、リザリー。教えます。あなた魔力の根源て言われるくらい、魔力の量が凄いのよ。今まで封印されてたみたいだけど」

「ぇ・・」

いきなりリザリーに振り返ってブルーフェアリーは話を再開させた。

「知らなかったのね~ん~。ということは魔力の使い方なんて知らない?」

「まったく持って知らないです。」

「あらららら、困ったわ。私も魔力の扱い得意じゃないのよね~」

どうしようウサチャンっと手に持っていたウサギにまた話しかけた。


 - 夢の世界からこんにちわ系か・・・・。


「あの・・・あなたは何故攫われてきたのですか?」

「ん?・・・ぁー私天上界の人間だから」


ブルーフェアリーは自分の頬にウサギを合わせると一緒になってリザリーを見た。


「ぇ・・・天上界って神様がいるっていう・・・」

「ぁー下界の人たちは天上界の人達のことを神様って呼んでるらしいわね。」

「はぁ」


こんなほわほわした人で、神様というような感じには見えなかった。むしろ、世間知らずのお嬢様、守られて屋敷の中で育てられたような感じがする。

この場所にとても不似合いな女性。


くしゅん


下着姿のままだったリザリーはおもわず出たくしゃみで肌寒さを感じた、やっぱりこれは、夢でなく現実なのかというズキズキとした痛みが頭に響いてきた。


「あらら、このままの格好じゃだめね、うさちゃん。この子にお洋服貸してあげて」

「・・・」

愛くるしいぬいぐるみが鼻の辺りに皺が寄り一気にむすっとした顔になった。

リザリーはびっくりしてぬいぐるみを凝視した、明らかに意思を持って動いたぬいぐるみは、機械仕掛けではなさそうだった。

その様子にブルーフェアリーは困った顔をして目線をウサギと合わせた。

「うさちゃん。お願い」

そう言って、ウサギの鼻にキスを落とした。

ウサギの手は、テシテシと胸を叩いたり、揉んでいるように見えた。


「貸すような服は無い」

ウサギのぬいぐるみ発した声は低く、腹に響くような心地のよい男性の声だった。見た目と反していて気持ちが悪い。


「私がこないだ着たズボンがあるでしょ」

「あれは、お前の・・・」

「うさちゃん、このままじゃリザリーが風邪を引いちゃうわ」

「・・・」

じーっとしばらく見詰め合っていると、ウサギは大きなため息をついてリザリーに向かって腕を振るった。

と同時に顔面に服がぶつけられた。


「うっ!」


「それでも着てろ、小娘」

「うさちゃん!!」

「ふん」

すねたように耳を垂れ下げたウサギは、ブルーフェアリーの腕から抜け出すとそのままスカートの中にもぐりこんだ。

「きゃっ!!駄目よ!うさちゃん」

ウサギのぬいぐるみはブルーフェアリーのスカートの中にもぐりこんで出てこなくなった。

ブルーフェアリーは顔を真っ赤にして、リザリーに背を向けてドレスをたくし上げて怒っていた。

「駄目だったら!!」


リザリーはくしゃみをして、貸し手貰った服を着ることにした。

服からはほのかに甘い香りがした。生地は滑らかで、あきらかに高級品と思われるものだった。

突っ込みどころが満載だったが、もう疲れて突っ込む気にもなれず、リザリーは服を着ると横になりそのまま寝てしまった。


やっとこさ、重要人物にあわせられました。。


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