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始まりはいつも突然に  作者: siro
第一章
20/50

20)邂逅

どのくらい時間がたったのだろうか?

薄暗い衣装部屋だと時間の経過がわからなかった。

リザリーは目が覚えてしまって、眠ることができなかった。

そして、化粧室にいきたくてしょうがなかった。

起き上がり、衣装箱の陰から顔をだすとリカルドがどこにもいなかった。


声を出そうかださまいか悩んだ末、出さずに周りを伺いつつ部屋を徘徊した。

物陰にも衣装の裏にもやはり、リカルドはいなかった。


徘徊して気づいたのがこの衣裳部屋には扉が3つあった。一つは裏の階段に続いているもの、もう二つはどこに繋がっているのか・・・

リザリーは一つの扉に耳を当てて外の様子を伺った。

音は何もしなかった。

もう一つの扉にも同じように伺うが扉が分厚いのか音が何も聞こえなかった。

向こう側がみえないかと、隙間を探すがまったくもってなく、しかたなくリザリーはそっと扉を開け外をうかがった。

そこは、表のような豪華なたたずまいでなく無機質な木と鉄で覆われたどこかの裏通路のようだった、周りには誰も人がいなかった。

リザリーはそっと出て、衣裳部屋の扉を確認してから、化粧室を探した。

少し廊下を進むと壁に案内板をみつけた。現在地と化粧室のマークを探すと程なくしてみつけたが、一番近い場所は表の廊下にある化粧室だった。

リザリーはしばし考えた後、いつ人がここを通るかもしれないことも考え、表の廊下に出ることにした。

表への扉を開けると少し奥まった隠れた場所に出た。

短いこの字型の通路をでると、豪華な廊下にでた。

廊下は静かで人は歩いてなかった。

化粧室は左手の廊下の先、途中右手に吹き抜けの階段があるようだが、その先にあった。

リザリーは音を立てないように早足で化粧室に飛び込んだ。


化粧室で誰とも遭遇せず、このままうまく誰にも会わずに戻れる気がした。

辺りを伺いつつ、廊下に出てると吹き抜けの階段の下から人の気配がした。


なぜか、そのときリザリーはほんの少し、階段の下が見えるくらいに吹き抜けのほうに近づいてしまった。



手すりの隙間から見えたのは若い男の頭。

他にも人はいた、黒い服を着た軍人が・・・でも目はその男を捕らえた。

後姿のみだったのに、男は振り返り目があった。

遠めにもかかわらず、男の特徴を間直にみているような感覚に捕らわれた、薄茶色の髪の毛に、濃い紫色の瞳をした男。

目があった瞬間、体中の血液が一気に流れるような感覚に陥った、だがそれも男の笑みによって一気に血の気が引いた。


それは決して優しい笑みではなく、獲物を見つけたような獣のような笑み・・・。


リザリーは足音が立つのもかまわずに、その場を駆け出した。

寒くも無いのに、歯がガチガチとなった。


 ー 何? なんなの?! あいつは何者なの?!

 


階下では、ざわつきがおきはじめていた。


「見つけた!!追え!!」

男の怒鳴り声が響いた。


「やはり、この船に乗っていたか!逃がさないぞ!!」

男は笑みを浮かべながら、リザリーが居た階へと駆け上った。


リザリーはなんとか、その後誰とも会わずに衣裳部屋へと戻った。

そこには、リカルドがすでにいた。

「どこにいってた!」

静かに怒りをぶつけるリカルドにリザリーはかまわず抱きついた。

顔を青ざめ、ガタガタ震えるリザリーに何かがあったことに気づいた。

「どうした?スアン」

肩に触れるとわずかに魔力をかけられた形跡に気づき、急いで痕跡を消すとリザリーが口を開いた。


「み・・・見つか・・った」


外の騒がしさが近づいてきていた。


リカルドは、舌打ちをしてリザリーの腕を引っ張り衣裳部屋の奥にある箪笥をあけ、箪笥の奥に隠された扉を開けてリザリーを押し込み自身も中に入り込んだ。

中は暗く何もみえなかったが、横に続いているようだった。


外の箪笥の扉を閉め、隠し扉も閉めるとちょうど衣裳部屋の扉がけたたましい音と共に開けられた。


二人は息を呑んだ。

リカルドはしっかりとリザリーを胸に抱きしめ、外の様子をうかがった。

恐怖からリザリーはリカルドの胸に顔をうずめて必死にしがみついた。


「リザリー嬢、近くにいるのはわかっている。・・・早く出ておいで」


あいまいだった事が確証へと変わった。

やはり、軍が探しているのはリザリーだったのだ。リカルドは腕に力を込めた。


「我々は君を保護しにきたんだ」


優しい声で語りかける声は、先ほどの顔を見ていなければ信じてしまいそうな声色だった。


だが、リザリーは先ほどの友好的とは思えない笑みを見ている。


バザリバザリと衣装を掻き分けるお音が室内に響いていた。

ドタドタと数人の足音も聞こえる。

リザリーは、なんの目的で自分が軍に狙われているのかますます解らない恐怖と戦っていた。


バンっと激しい音が響いた。


「俺はあまり、気が長いほうではないんだよ?リザリー嬢、姿形を変えても会えば解るんだよ俺には」


男の言葉にリカルドは引っかかりを覚えた。


 - 姿形を変えても会えば解る?嫌な勘しかしないな・・・


そのとき遠くのほうから名が呼ばれた。

小さな声だったが、息を潜めていた二人には聞こえた。

「クラウス様」


「なんだ?今リザリー嬢と隠れんぼしている最中なんだよ」

「アルデルド国内にあと・・で入ります、これ以上は・・・で・・・」


男は小さな声でボソボソと耳打ちしているようで所どころしかききとれなかった。


「ちっ」

クラウスと呼ばれた男はしたうちをし、腰に下げていた剣を振りかざした。


衣裳部屋にいた人たちが息を呑んだ雰囲気がした。

ガンという音と共に壁に剣を突き刺したのだ。


「いまいましい、・・・・・今日はここまでか、リザリー嬢すぐに会えるよ。こちらから迎えにいくからね。どこに行こうとも・・・」


そう言って、クラウスは剣を壁から引き抜いた。


完全に衣裳部屋から人の気配がなくなると、リザリーとリカルドはずるずると抱き合ったまま座り込んだ。


クラウスが突き刺した壁の向こう側にはちょうどリザリーとリカルドがいたのだ。

剣はちょうどリザリーの目の前を通りすぎ、リカルドの肩を傷つけるか付けないかくらいの距離だったのだ。

あまりの恐怖のおかげで、剣を突き刺されたときにも声を上げることも出来ずリカルドにしがみついていた。


どのくらい時間がたったのか、リカルドが呟いた。

「スアン・・・いや、リザリー」

「・・・」

「動ける?」

リザリーはかすかに首を横に振った。

顔はまだ青白く、握り閉めている手は固く冷たかった。

細く長く、リカルドは息を吐くとリザリーの頭を撫でた。

恐怖で緊張しているリザリーを今動かすことが出来ず、ほぐれるまで待つことにした。

 

 ー 今回はやばかった。しかし、クラウス・・・どこかで聞いたことのある名前だ。

   しかも、リザリーに会えば姿を変えてても分かるだと?

   ・・・まるで半身・・・


そこまで考えてリカルドは手を止めた。


 - 半身。まさか・・・



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