14)よい旅を・・・
飛竜船空港の駅に着くと、そこかしこに警備兵の人達がいた。
リザリーはリカルドにしがみ付いたまま車両から降りた。
「そこかしかにいて気持ちが悪いわ」
リカルドは笑いながら飛竜船のターミナルへ続く改札へと向かった。
「たった一人探すだけでこれだけの人数をね・・」
呟きは誰にも拾われること無く改札を通り過ぎた、そこでも2,3質問され、荷物も確認された。
リザリーは周りの人達と同じように不機嫌な表情をしながらやりすごした。
リカルドは繋いでいる手が冷たく、かすかに震えていることに気づいた。
繋いでいる相手の目線は回りにある土産や内装などに向けられ鼻歌交じりでご機嫌にも見えた。
- 手を繋いでいなければ気づかなかったな
飛竜船空港の中は十時に建物が広がっていた、駅はちょうど中心部分にあり階段を上がると中央広場となる。
中央の広場の天上は天窓となっていて、空を飛ぶ竜や飛竜船を見ることができる。
鉄の柱で頑丈に作られた内装は、装飾にもすばらしく鉄柱はピンクがかった茶色に唐草模様が施され、一瞬には鉄柱とは思わせられない内装だった。床は白と黒の大理石で作られ光を反射させていた。
「・・・」
リザリーは思わず大きな声で歓声を上げてしまいそうになったのを堪えた。
「ふふふ、ここを通るのは2度目だろ?」
リカルドは面白そうに笑いながらチケットを確認した。
乗り場は竜の色と乗り場番号で書かれている。
竜の色はこれから向かう方角をも表している、蒼い竜は東、赤い竜は南、西の竜は緑、北の竜は白銀
リザリーは看板を見ながら呟いた。
「乗り場は・・・」
「蒼の7番」
「蒼・・?」
リザリーはいぶかしんだ、リネウス国はここから北にあり乗るのなら白銀、しかも急遽出発するはずだったので当日券を買うものだと思っていたリザリーは、いつのまにかリカルドの手に握られているチケットを凝視した、先ほどの検問では見せていなかったのだ。
リカルドは微笑みながらリザリーの手をとり東、蒼の7番へ向かった。
ここで質問するべきか、リザリーは悩みながらも回りには警備兵がいることに気づいて口を閉ざした。
蒼の七番は長い廊下の一番端にあった、しかもあと20分後に出発するとアナウンスされリザリーとリカルドは急いで乗り込んだ。
飛竜船は文字通り巨大な飛竜2匹に引かれて空を飛ぶ。また飛竜が疲れないように周りを予備の飛竜2匹が一緒に飛ぶのだ。
人が乗る乗り物はマストの無い船のような形になっている。
内装は価格や距離によって違い、一般階級の人たちがのるものはただの木と鉄でできた内装でいたってシンプルだ。
だが、リザリーが乗ったものは豪華絢爛。床にはカーペットが引かれ壁紙もはれている、天井はシャンデリアがいたるところにあり、まるでどこかのホテルのようだった。
「・・・これって」
「部屋はこっちだ。」
リカルドは何事も無いように奥へと進んでいく、手を繋いでいたリザリーは引っ張られるように着いていった。
部屋も豪華だった。
部屋に着き扉がしまるとリザリーは質問しようと口を開くがリカルドに口を押さえられた。
そのままバスルームへと連れて行かれ、シャワーを全快にした。
「・・・」
「これでいい、どうぞ」
ザーという激しいシャワーの音を聞きながら、リカルドはリザリーの耳にささやいた。リザリーはしかたなくそのままの体勢のままリカルドに聞いた。
「・・盗聴器でもあるの?」
「あるね、これだけ派手に検問してるんだ。船にもあちこちに仕掛けてあるよ」
「・・・どうしてそこまで」
「それは俺がしりたいね、君は何者なのかとか」
「・・・この検問が私を探すものとでもいいたいの?」
「違うのかい?」
お互いの顔は見えないが、リカルドが笑っているように感じた。
「はぁ、知らないわ」
「・・・」
リザリーは先ほどまで感じていた緊張感がすこし抜け、リカルドにもたれかかるように顔を肩に置いた。
「東に向かってどうするの?」
「直接リネウス国にいく北の直行便は今でていない、確実に安全に行くには東から回っていくのが一番いい」
「・・・直行便がでてない?」
「あぁ、君の疑問もわかるよ。俺もさっき協力者から知らされたからね」
- 協力者?いつの間に仲間とあってたのかしら?
「この船は一等級の船だ、おいそれとガサ入れができない。といっても油断は禁物だけどね」
そういってリカルドはリザリーから離れ、シャワーを止めた。
「疲れただろ?ベットで休むといい」
「・・ぇぇ」
リザリーは素直にうなづき、バスルームからでて寝室へと移動した。
「ベットが一つ・・」
リザリーは思わず眉間に皺が寄りそうなのを我慢し、先ほどのリカルドの言葉を思い出した。
「・・・リカルドお兄様と一緒に寝れるわ!」
「はぁ~スアン、おれはソファーで休むよ」
「どうして?!」
「はいはい」
頭を優しく撫でられ、お休みとおでこにキスをされリザリーはそれ以上声を上げることをやめベットの上にダイブした。
- うわぁあああああ!!悶絶!!!したいけどできない!!
心の中で叫びながら。
リカルドは、寝室の扉を閉めるとちょうど部屋の扉が一回だけノックされた。
覗き穴からのぞくと、一人のボーイが白と蒼のリボンにと百合の家紋が縁取られた飾りが巻かれた箱をもって立っていた。
「・・・」
リカルドは無言で扉を開け、ボーイを中に入れた。
「本日はブルードライアンス号にご乗車ありがとうございます。」
ボーイは挨拶の言葉をいいながら、箱をリカルドに渡した。本来ならあるまじき行為だがリカルドは無言でその箱を受け取り中を確認した。
中には記念品のタオルと化粧品類の上に紙が一枚、手をかざすと文字が浮かび上がった。
リカルドは紙の内容を読むと箱に入っていた記念品のライターで紙を燃やした。
その間ずっとボーイは船の説明と室内の説明をし、リカルドが紙を燃やすとしゃべりながら手を動かした。
それは手話
リカルドも同じように手を動かした。
「では、よい旅を」
最後にボーイはそれだけ言うと部屋を出て行った。
扉を閉めリカルドはソファーに深く座り箱を見た。
- 本格的にやばいな
先ほどの紙に書かれていた内容は・・・
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神の庇護の元に集え
S
天上に触れることなかれ
G
罪無き隣人を飼い殺すことなかれ
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紙に書いてあるのは暗号です。
そのうちに解明させます。