12)チャコールグレイ
電車にのり、飛竜船空港までいくことになった。
電車は個室がついてる金持ちが乗る電車だった。
内装はホテルのような壁紙にふかふかのソファーのような椅子が向かい合わせで配置され
カーテンもどこの上質な生地で白地の薄いカーテンと厚手のカーテンと二重になっていた。
―凄い・・・
リザリーは圧倒されていた。
「もしかしてこういう個室に乗るの初めて?」
「えぇ、あまり電車にのって遠出をしたことないから」
「そうなんだ、意外だな。」
荷物を脇に置き、リザリーはフカフカの椅子に座り外を眺めた。
ちょうど電車が動き出し、ゆっくりと景色が流れはじめていた。
「ちょっと席をはずすけど、ここから出ちゃ駄目だよ。」
「えぇ」
リザリーの目は車外へと向けられていた。
リカルドは個室からでて、化粧室に移動した。周りを確認してからポケットから紙を取り出した。
それは、カフェで渡された紙。
魔力をかけると文字が浮かび上がった
~ 軍が探している娘はいわくありげ 至急調査されたし ~
ー タイミングが良すぎる、軍が探してる娘だと?公開捜査のやつか・・・?
リカルドは紙を燃やすと、個室に戻った。
個室の中では、リカルドが朝買った新聞をリザリーが読んでいた。
リザリーは新聞をみて、父がなくなったことをしった、そして職業も。
ー お父様は、軍師だったのね・・・・。
しかもかなり有名だったなんて、なんで今まで知らなかったのかしら?
リザリー貴族が住むような屋敷に住んでいなかった、それなりに噂なり、ニュースなどで自分が知っていてもおかしくない内容だったが、それは、秘密裏に父ボルドーが情報操作をして阻止していたことだった。
それでもリザリーは自分が狙われる理由が分からなかった。
載っている記事を読みふける、怪しまれないように違う記事も読むフリをして記事の内容を整理する。
内容は自分が行方不明になり公開捜査が行われていること、容姿が記載されているがなぜか顔写真がのっていなかった。
そして、父が前もって教えていた屋敷・・・そこに置いてあった物。
容姿を変えて海外に逃がすために用意された・・・それら。
逃げなくては行けない者が軍ではないかという自分の考えに愕然とした。
- 軍?軍から逃げているの?私は?!なぜ?!お父様は軍師でしょ?
父親の声が頭に響いた、それは昔よく遊びながらいわれたこと。
《近づくもの足音はよく聞け、静かなもの規則正しいものは気をつけろ特に軍人の足音は!》
《手をよく見ることだ、その者の職業が一番でやすい、ペンや剣、銃、職人には必ずタコや指が変形し特殊になる》
《人と話すときは目を見ろ、どんなに感情を隠すのがうまいものでも一瞬は瞳にでてくる》
《とりあえず笑え、相手に警戒心を持たせないのに有効な手段だ。馬鹿だと思わせろ、人は自分より下だと思うと警戒心がゆるくなる》
リザリーは目をぎゅっとつぶると、気持ちを落ち着かせた。
ー 今重要なのはこの国から出ること、そしてリカルドがどこまで信用のおける人物か、どこまで一緒にいるべきかよ。
そう心の中でとなえて、リザリーは新聞をめくった。
リカルドはその様子を横目に見ながら考えた。
ー 黒に近い灰色の状態でリザリーは軍が探している娘、そして軍師ボルドーの娘だ。
それでも、なぜ軍師の娘を軍が探す必要があるのか疑問でならなかった。
ボルドーの家柄はそんなに高いわけではなく、むしろ母親の方が古くからある貴族、といっても今は落ちぶれているが家柄がいいだけで利用できる価値はなく、婚約者がいるわけでもなかった。
- 軍がキーワードだ。ヤバイ感じがするな。
リカルドは、これからの旅路が危険をはらむものを感じた。
チャコールグレイ=黒に近い灰色




