10)準備
そろそろお茶らけたい
リカルドが部屋に戻ると、スアン(リザリー)は寝室部屋の隅で眠っていた。
―男の部屋にいるのに警戒心ないなー・・・。
リカルドが近づくと、リザリーはパチリと目を覚ました。
「・・・あなた軍人?」
「・・・軍人?なぜ?」
「・・・足音」
「足音?」
「なんでもない、夢を見ていただけ。」
リザリーは父親に言われたことを思い出したのだ。軍人の人間は規律を重んじるせいか足音が規則正しく一定のリズムで聞こえる。そう、リカルドのような足音のリズムに。
―もしかしたら、この人も軍人なのかも。
リカルドはスアン(リザリー)を伺うように見てから部屋に戻るまで考えていたことを言った。
「さて、お嬢さん。これから言う君の素性を覚えて貰う。そしては完璧に演技してもらうよ?」
「素性?」
「そう、君は俺の姪っ子。スワン・リゼル。16歳 生まれはリネウス国ウォレント出身。
貴族の娘。俺のことが大好きすぎて、休暇中の旅行にでた俺を追いかけてきた女の子。」
「?!ちょっと、姪っ子まではいいわ!大好きすぎて追いかけるって!」
「そこ重要だから、はずさないよ?」
「無理よ!追いかけるほど好きってどんだけよ?!」
「俺への呼び名は、『リカルドお兄様 (ハート)』ね」
「ちょっと!それってあなたの趣味なんじゃないの?!!」
「うん。そうだよ?」
「この変態!」
「でも、その変態に助けてもらわないと君はこの国から出られない、最悪追われている人間に捕まるよ?」
「っぐ」
「つづけるよー
で、君は大好きなリカルドお兄様を追ってだね、親の許可無く出てきたから俺は保護者である兄夫婦に連絡とって、君を国に送り返さないといけない、大切なバカンスを潰してね?俺は君にはただの可愛い姪っ子としてしか意識していなくて、冷たい態度とるかもしれないけどがんばってね?」
「・・・えぇ」
嫌そうな顔でリザリーは答えた。
「で、君は俺のことが片時も離れたくないほど好きだから、ちゃんとくっ付いてくるんだよ。べったりとだ」
リザリーがリカルドの顔を伺うと、先ほどのおちゃらけていた顔とは違い真剣な顔をしていた。
「・・・ええ」
リザリーは真剣な顔で答えた。リカルドの側に常にいれば、何かあった時対処してくれるということだろう。
「あと、朝は明日出発といったけど、今日出発することに変更したから」
「わかったわ」
「いい返事だね、じゃーこの中から服を選んで着替えて準備してね」
そう言うと、リカルドは先ほど買った服を渡してバスルームを指差した。
リザリーは服をもってバスルームに移動し、リカルドは出発する準備を始めた。




