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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第4章 鋼鉄
98/129

幕間 請求

組織改編から二週間。


---


 アルファチームは、局長の指揮下で動いていた。


---


---


 チェンライ県。


 麻薬組織のアジト制圧。


---


 ジョンソンのGAU-19が火を噴いた。


 建物の壁が粉砕された。


---


 「派手だな」


 局長が無線で言った。


 「派手でいいんです」


 ジョンソンが答えた。


 「敵に考える暇を与えない」


 「......まあ、いい」


---


---


 ソンクラー県。


 人身売買組織の拠点。


---


 瀧本がバイクで突入した。


 窓を突き破った。


 廊下を走った。


 ドアを三枚、破壊した。


---


 「瀧本、ドアを壊すな」


 「すみません、癖です」


 「癖で壊すな」


 「癖なので」


---


---


 ナコンラーチャシーマー県。


 武器密輸組織のアジト。


---


 ヨナタンがRPGを撃った。


 トラックが爆発した。


 倉庫が燃えた。


---


 マルティネスがM240を乱射した。


 逃走しようとした車両が蜂の巣になった。


---


 「......派手だな」


 局長は呟いた。


---


---


---


 二週間で、五つの作戦を完了。


 全て成功。


 犯人、合計八十七人を確保。


 麻薬、武器、現金、莫大な量を押収。


---


 だが、問題があった。


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---


 局長室。


 机の上に、書類が積み重なっていた。


---


 損害賠償請求書。


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 局長は、一枚目を手に取った。


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 『チェンライ県 ○○村


  建物損壊に関する請求


  金額:三百万バーツ』


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 二枚目。


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 『ソンクラー県 △△地区


  ドア破損・窓ガラス破損に関する請求


  金額:五十万バーツ』


---


 三枚目。


---


 『ナコンラーチャシーマー県 □□倉庫


  倉庫全焼に関する請求


  金額:二千万バーツ』


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 四枚目。


 五枚目。


 六枚目。


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 請求書は、どんどん増えていった。


---


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 局長は計算した。


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 二週間で、合計四千五百万バーツ。


---


 「......」


---


---


 局長は、ふと思った。


---


 『今まで、どうしてたんだ』


---


 アルファチームは、二週間前も同じように動いていた。


 いや、もっと前から。


 チームが結成されてから、ずっと。


---


 ガトリングで建物を粉砕。


 バイクでドアを破壊。


 RPGで車両を爆破。


---


 損害は、毎回出ていたはずだ。


---


 『請求書は、どこに行っていた』


---


---


 局長の顔が、青ざめた。


---


 「まさか......」


---


---


 局長は立ち上がった。


 執務室を出た。


 廊下を早足で歩いた。


---


 向かった先は、柏木の執務室だった。


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---


 ドアを開けた。


---


 柏木はいなかった。


 訓練場にいるらしい。


---


 局長は、部屋を見回した。


---


 机の上は、比較的整理されていた。


 書類は少ない。


---


 だが、机の横に、何かがあった。


---


---


 段ボール箱。


 三つ。


 山積みになっている。


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 局長は、最初の箱を開けた。


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 中には、書類がぎっしり詰まっていた。


---


 『損害賠償請求書』


 『損害賠償請求書』


 『損害賠償請求書』


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 全て、未開封だった。


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 二つ目の箱を開けた。


---


 同じだった。


 未開封の請求書。


 山のように。


---


---


 三つ目の箱を開けた。


---


 同じだった。


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---


 局長は、一枚を取り出した。


 日付を見た。


---


 『八ヶ月前』


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---


 別の一枚を見た。


---


 『六ヶ月前』


---


---


 また別の一枚。


---


 『一年前』


---


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 局長は、箱の中身を全て床に広げた。


---


 請求書。


 請求書。


 請求書。


---


 督促状。


 督促状。


 督促状。


---


 『最終通告』


 『法的措置を検討中』


 『至急ご連絡ください』


---


---


 局長は、計算を始めた。


---


 一枚、また一枚。


 電卓を叩いた。


---


 数字が、どんどん増えていった。


---


---


 最終的な金額。


---


 『十二億三千万バーツ』


---


---


 局長は、その場に崩れ落ちた。


---


 「十二億......」


---


 膝が床についた。


 手が震えていた。


---


 「十二億三千万......」


---


---


 しばらく、動けなかった。


---


---


---


 三十分後。


 訓練場。


---


 柏木は、CQCの訓練をしていた。


---


 「柏木」


---


 声が聞こえた。


 振り向いた。


---


 局長が立っていた。


 顔が、死人のように青かった。


---


 「局長、どうしました」


 「......来い」


 「は?」


 「俺の部屋に来い。今すぐ」


---


 柏木は、局長の様子に気づいた。


 何かがおかしい。


---


 「何かあったんですか」


 「あった」


 「何が」


 「お前の執務室で、三つの段ボール箱を見つけた」


---


 柏木の顔が、固まった。


---


 「あれは......」


 「十二億三千万バーツだ」


 「......」


 「十二億三千万バーツの請求書が、未処理で放置されていた」


 「......」


 「一年以上、放置だ」


---


 柏木は黙った。


---


 「お前、あれをどうするつもりだった」


 「......処理しようと思っていました」


 「いつ」


 「......そのうち」


 「そのうち!?」


---


 局長の声が、裏返った。


---


 「十二億をそのうち!?」


 「......」


 「法的措置を検討中って書いてあるぞ! 訴えられるぞ!」


 「......」


 「王室犯罪対策局が訴えられたら、どうなると思ってる!」


 「......」


 「国の恥だ! 俺の首が飛ぶ!」


---


---


 周囲の隊員たちが、こっそり見ていた。


---


 「局長、また怒ってるな」


 瀧本が囁いた。


 「今度は何だ」


 「知らん。だが、十二億って聞こえた」


 「十二億?」


 「ああ」


 「......やばいな」


---


 マルティネスが言った。


 「俺たちの破壊活動の請求書じゃないか」


 「請求書?」


 「ああ。建物壊したり、車両爆破したり、色々やってるだろ」


 「やってるな」


 「その請求書だ。多分」


 「......」


---


 ヨナタンが言った。


 「俺たちのせいか」


 「俺たちのせいだな」


 「......」


---


 瀧本はメンソールに火をつけた。


 「まあ、処理してなかった柏木さんのせいだろ」


 「それはそうだが」


 「俺たちは悪くない」


 「悪くないか?」


 「悪くない。壊すのが仕事だ」


 「......まあ、そうだな」


---


---


 局長と柏木は、局長室に向かっていった。


---


 柏木の背中は、また小さく見えた。


---


---


---


 局長室。


---


 床には、請求書が散乱していた。


---


 「見ろ」


 局長が言った。


 「これが、お前の仕事だ」


 「......」


 「お前が処理すべきだった書類だ」


 「......」


 「なぜ放置した」


---


 柏木は黙っていた。


---


 「答えろ」


 「......分かりませんでした」


 「分からなかった?」


 「はい。どう処理すればいいか、分からなかった」


 「分からなかったら、聞け!」


 「......」


 「ハーパーでも、ルノーでも、俺でもいい! 聞けばいいだろう!」


 「......」


 「なぜ、放置した!」


---


 柏木は目を伏せた。


---


 「......戦闘の方が、楽だったからです」


---


 局長は絶句した。


---


 「楽だった......?」


 「はい。戦闘なら、迷わない。敵を倒せばいい」


 「......」


 「でも、書類は......分からなかった。だから、後回しにした」


 「......」


 「そしたら、どんどん溜まって......」


 「......」


 「開けるのが、怖くなりました」


---


---


 局長は、椅子に座った。


 頭を抱えた。


---


 「お前......」


 「......」


 「お前は、戦闘の天才だ」


 「......」


 「だが、組織運営は......」


 「......」


 「絶望的だ」


---


---


 柏木は何も言えなかった。


---


---


 局長は深呼吸した。


---


 「いい。もういい」


 「......」


 「俺が処理する。全部」


 「......すみません」


 「謝るな。謝られても、十二億は減らん」


 「......」


 「ナターシャとラッタナーを呼べ。経理担当だ」


 「はい」


 「ハーパーとルノーも呼べ。緊急会議だ」


 「はい」


 「お前は......」


---


 局長は柏木を見た。


---


 「お前は、訓練場に戻れ」


 「......」


 「戦闘だけしてろ。それしかできないんだからな」


---


---


 柏木は、部屋を出た。


---


---


---


 廊下。


 柏木は、壁にもたれかかった。


---


 「......」


---


 戦闘だけしてろ。


 それしかできないんだからな。


---


 局長の言葉が、胸に突き刺さった。


---


 「俺は......」


---


---


 そこに、ニコライが通りかかった。


---


 「柏木、大丈夫か」


 「......ああ」


 「大丈夫じゃないだろう。顔が死んでる」


 「......」


---


 ニコライは柏木の隣に立った。


---


 「十二億の話、聞いた」


 「......もう広まってるのか」


 「ああ。瀧本が広めた」


 「......あいつ」


 「悪気はない。ただ、うるさいだけだ」


---


 柏木は小さく笑った。


 力のない笑いだった。


---


 「俺は、ダメだな」


 「ダメじゃない」


 「ダメだ。戦闘以外、何もできない」


 「......」


 「女も選べない。組織も運営できない。請求書も処理できない」


 「......」


 「何のために、総隊長になったんだ」


---


 ニコライは黙っていた。


---


 「俺には、戦闘しかない」


 「......」


 「それしか、できないんだ」


---


---


 ニコライは、柏木の肩を叩いた。


---


 「それでいい」


 「......え?」


 「お前は、戦闘の天才だ。それでいい」


 「でも、組織は......」


 「組織は、俺たちがやる」


 「......」


 「ハーパーがいる。ルノーがいる。ミュラーがいる」


 「......」


 「経理は、ナターシャとラッタナーがやる」


 「......」


 「お前は、戦えばいい。それが、お前の仕事だ」


---


 柏木はニコライを見た。


---


 「俺は......役立たずじゃないのか」


 「役立たずじゃない」


 「でも、十二億......」


 「十二億は、みんなで何とかする」


 「......」


 「お前一人の責任じゃない」


---


---


 柏木は、少し救われた気がした。


---


 「......ありがとう」


 「礼はいらん」


 「でも......」


 「いいから、訓練場に戻れ。お前がいないと、訓練にならん」


---


 柏木は頷いた。


---


 「ああ」


---


---


 二人は、訓練場に向かって歩き始めた。


---


---


---


 同じ頃。


 局長室。


---


 ナターシャとラッタナーが、請求書の山を見て固まっていた。


---


 「これ......全部ですか」


 「全部だ」


 「十二億......」


 「十二億だ」


---


 ナターシャは計算機を取り出した。


 ラッタナーはノートを開いた。


---


 「とりあえず、分類から始めましょう」


 「ああ。頼む」


 「督促状が来ているものを優先して......」


 「ああ」


 「法的措置を検討中のものは、最優先で......」


 「ああ」


---


 ハーパーとルノーが入ってきた。


---


 「局長、呼ばれましたが......」


 「ああ。これだ」


 「これは......」


 「十二億の請求書だ」


 「......」


---


 ハーパーは床に散らばった書類を見た。


 ルノーも見た。


---


 二人とも、何も言えなかった。


---


 「柏木が、一年以上放置していた」


 「......」


 「俺たちで、何とかする」


 「......了解」


---


---


 ハーパーは溜息をついた。


---


 「また徹夜ですね」


 「また徹夜だ」


 「何回目ですか」


 「数えるな」


---


---


 長い夜が、また始まった。

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