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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第4章 鋼鉄
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第6話 抑止

瀧本が退院したのは、被弾から三週間後だった。


---


 18発の銃創。


 5発は致命傷になりうる位置。


 普通なら、三ヶ月は入院だった。


---


 瀧本は、三週間で歩いて出てきた。


---


---


 「退院許可、出てないんですけど」


 医師が言った。


 「出てなくても、出る」


 「無茶です」


 「無茶じゃない。俺は元気だ」


 「元気じゃないです。18発撃たれたんですよ」


 「撃たれたけど、治った」


 「治ってません」


 「治った」


---


 医師は諦めた。


---


 「......せめて、週に三回は通院してください」


 「分かった」


 「絶対ですよ」


 「絶対だ」


---


---


---


 ウドンターニーの拠点。


---


 瀧本が帰ってきた。


---


 「おう、帰ったぞ」


---


 全員が出迎えた。


---


 「早すぎるだろ」


 ジョンソンが言った。


 「早くない。遅すぎるくらいだ」


 「三週間だぞ。18発撃たれて三週間」


 「三週間もベッドにいたら、体が鈍る」


---


 マルティネスが言った。


 「お前、本当に人間か?」


 「人間だ」


 「人間は18発撃たれたら、もっと休む」


 「俺は休まない」


 「......」


---


 スヨンが駆け寄ってきた。


---


 「瀧本! 退院許可、出たの!?」


 「出てない」


 「出てないの!?」


 「出てないけど、出てきた」


 「何やってるのよ!」


 「元気だから、いいだろ」


 「良くない!」


---


---


 ヨナタンが言った。


---


 「まあ、本人が元気なら、いいんじゃないか」


 「良くないわよ!」


 「スヨン、落ち着け」


 「落ち着けない!」


---


---


---


 瀧本は、その日から任務に復帰した。


---


 周囲の反対を押し切って。


---


---


---


 だが、ウドンターニーは変わっていた。


---


---


 市内パトロール。


---


 瀧本が白いバイクで走っていると、人々が手を振った。


---


 「瀧本さん!」


 「英雄だ!」


 「ありがとう!」


---


 子供たちが駆け寄ってきた。


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 「おにいちゃん、かっこいい!」


 「おにいちゃん、強い!」


---


 瀧本は苦笑いした。


---


 「俺、そんな大したことしてないんだけどな......」


---


---


---


 そして、もう一つの変化があった。


---


---


 犯罪者が、瀧本を見ると逃げるようになった。


---


---


 ある日。


 瀧本がバイクで通りを走っていた。


---


 路地裏で、男たちが何かを取引していた。


 明らかに麻薬だった。


---


 瀧本がバイクを止めた。


---


 男たちが振り向いた。


---


 白いバイク。


 Arai製のヘルメット。


---


 「あ......」


---


 男たちの顔が、青ざめた。


---


 「18発の男だ......!」


 「逃げろ!」


---


 男たちは、荷物を捨てて逃げ出した。


---


---


 瀧本はヘルメットを脱いだ。


---


 「......追いかけなくても、逃げるのか」


---


---


---


 別の日。


---


 違法賭博場の情報があった。


 アルファチームで突入する予定だった。


---


 だが、瀧本が近くをパトロールしただけで、賭博場は閉鎖された。


---


 「白バイが来た!」


 「18発の男だ!」


 「撤収! 撤収!」


---


---


 ジョンソンが呆れた。


---


 「お前、パトロールしただけで、賭博場が潰れたぞ」


 「俺のせいじゃない」


 「お前のせいだ」


 「......」


---


---


---


 また別の日。


---


 人身売買組織のアジトに突入した。


---


 ドアを蹴破った瞬間、中にいた男たちが叫んだ。


---


 「突撃隊だ!」


 「18発の男がいる!」


 「抵抗するな! 死ぬぞ!」


---


 全員が、両手を上げて降伏した。


---


---


 マルティネスが言った。


---


 「戦闘、なかったな」


 「なかったな」


 「お前が来ると、敵が戦意喪失する」


 「俺のせいじゃない」


 「お前のせいだ」


 「......」


---


---


 ヨナタンが言った。


---


 「抑止力だな」


 「抑止力?」


 「お前がいるだけで、犯罪者が動けなくなる」


 「......」


 「18発撃たれても死なない男。誰が戦いたいと思う」


 「......」


 「お前は、存在自体が武器だ」


---


---


 瀧本は複雑な顔をした。


---


 「俺、戦いたいんだけど」


 「戦わなくても勝てるなら、その方がいい」


 「でも......」


 「贅沢を言うな」


 「......」


---


---


---


 ウドンターニーの犯罪率は、急激に低下した。


---


 アルファチームが来てから、二ヶ月。


 犯罪発生件数は、半分以下になった。


---


 その大半は、瀧本のパトロールによるものだった。


---


---


 「18発の男が来る」


---


 その噂だけで、犯罪者たちは動けなくなった。


---


---


---


 同じ頃。


 バンコク。


---


 局長は、王宮に呼び出されていた。


---


---


 王宮。


 謁見の間。


---


 局長は跪いていた。


---


 目の前に、国王がいた。


---


---


 「ウィチャイ」


 「はい、陛下」


 「瀧本勝幸の件だ」


 「はい」


---


 国王は、穏やかな声で言った。


---


 「世界中で、彼の行動が称賛されている」


 「はい」


 「子供を守るために、18発の銃弾を受けた」


 「はい」


 「そして、生き延びた」


 「はい」


---


 国王は立ち上がった。


 窓に向かって歩いた。


---


 「日本は、彼を殺人犯と呼んでいる」


 「......はい」


 「だが、我がタイは違う」


 「はい」


 「彼は、我がタイの国民だ。我が王室犯罪対策局の隊員だ」


 「はい」


 「そして、我が剣だ」


---


 国王は振り向いた。


---


 「彼に、勲章を授与する」


 「ありがとうございます、陛下」


 「だが、それだけでは足りない」


---


 局長は顔を上げた。


---


 「足りない、とは」


---


 国王は微笑んだ。


---


 「彼を、騎士に叙する」


---


---


 局長は絶句した。


---


 「騎士......陛下、それは......」


 「王室騎士団への叙任だ」


 「......」


 「タイ王国の歴史上、外国出身者が騎士に叙されるのは、極めて稀だ」


 「......」


 「だが、彼にはその資格がある」


---


---


 国王は続けた。


---


 「18発の銃弾を受けても、子供を守った」


 「......」


 「心肺停止から蘇生しても、任務に復帰した」


 「......」


 「これこそが、騎士の精神だ」


---


---


 局長は深く頭を下げた。


---


 「陛下のご厚意、瀧本に必ず伝えます」


 「ああ。伝えてくれ」


 「はい」


---


 国王は言った。


---


 「叙任式は、来月行う」


 「来月......」


 「彼が回復次第、王宮に来るように伝えろ」


 「はい」


---


---


 国王は、窓の外を見た。


---


 「瀧本勝幸......良い男だな」


 「はい。最高の男です」


 「ゴキブリより強い、と聞いたが」


 「......誰が言ったのですか」


 「お前が言ったのだろう」


 「......はい」


---


 国王は笑った。


---


 「良い例えだ。褒め言葉として受け取ろう」


---


---


---


 バンコク。


 突撃隊本部。


---


 局長が帰ってきた。


---


 「王宮から、何かあったのですか」


 ハーパーが聞いた。


 「ああ。あった」


---


 局長は椅子に座った。


---


 「瀧本が、騎士に叙される」


---


 全員が固まった。


---


 「騎士......?」


 「王室騎士団への叙任だ」


 「......」


 「タイ王国の歴史上、外国出身者としては、極めて稀なことだ」


---


---


 ニコライが言った。


---


 「あいつ、騎士になるのか」


 「なる」


 「......」


 「信じられないだろうが、事実だ」


---


 サラが言った。


---


 「瀧本、すごいわね......」


---


 マリーが言った。


---


 「18発撃たれて、騎士になるなんて」


---


---


 柏木は、窓の外を見ていた。


---


 「瀧本らしいな」


---


---


 川島が言った。


---


 「本人に伝えましょうか」


 「ああ。伝えろ」


 「はい」


---


---


---


 ウドンターニー。


 アルファチームの拠点。


---


 瀧本は、訓練場でバイクの整備をしていた。


---


 「瀧本」


 ジョンソンが来た。


 「バンコクから連絡だ」


 「何だ」


 「お前、騎士に叙されるらしい」


---


 瀧本の手が止まった。


---


 「......は?」


 「騎士だ。王室騎士団への叙任」


 「......」


 「来月、王宮で叙任式がある」


 「......」


---


---


 瀧本は、ゆっくりと立ち上がった。


---


 「俺が、騎士?」


 「そうだ」


 「嘘だろ」


 「嘘じゃない。局長から直接の連絡だ」


 「......」


---


---


 マルティネスが近づいてきた。


---


 「騎士か。かっこいいじゃないか」


 「かっこよくない。意味が分からない」


 「意味は分かるだろ。18発撃たれて子供を守った。それが評価されたんだ」


 「......」


---


 ヨナタンが言った。


---


 「お前、タイの騎士になるのか」


 「なるらしい」


 「すごいな」


 「すごくない。俺は普通のことをしただけだ」


 「普通じゃないから、騎士になるんだ」


 「......」


---


---


 スヨンが駆け寄ってきた。


---


 「瀧本! 騎士って本当!?」


 「本当らしい」


 「すごい! すごいじゃない!」


 「すごいか?」


 「すごいわよ! 王室騎士よ!?」


---


 スヨンは瀧本の手を取った。


---


 「騎士と結婚できるなんて、私、幸せ者ね」


 「結婚はしてない」


 「するの」


 「してない」


 「するの」


 「......」


---


---


 瀧本は空を見上げた。


---


 「なんでこうなるんだ......」


---


---


 マルティネスが笑った。


---


 「お前、英雄で、騎士で、スヨンの婚約者か」


 「婚約してない」


 「してるようなもんだろ」


 「してない」


 「スヨン、どうなんだ」


 「してる」


 「してない!」


---


---


 アルファチームは、笑いに包まれた。


---


---


---


 死ぬ気ゼロ。


 生きる気満々。


---


 それだけで、英雄になり、騎士になった男。


---


 瀧本勝幸。


---


 彼の伝説は、まだ始まったばかりだった。

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