第5話 復活
ウドンターニー県立病院。
緊急手術室。
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瀧本は、手術台の上にいた。
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医師たちが必死に処置をしていた。
心臓マッサージ。
輸血。
除細動器。
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「心拍、まだ戻りません!」
「もう一度! 充電!」
「クリア!」
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電気ショック。
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瀧本の体が跳ねた。
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「......まだです!」
「くそ......! もう一度!」
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スヨンは、手術室の外で待っていた。
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泣いていた。
祈っていた。
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「お願い......お願い......」
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手術室の中。
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三度目の電気ショック。
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「クリア!」
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瀧本の体が跳ねた。
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そして。
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瀧本の目が、開いた。
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「死んでたまるかボケェ!!!!」
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瀧本が叫んだ。
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医師たちが、飛び退いた。
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「な......!?」
「心拍、戻りました! 戻りました!」
「血圧、上昇中!」
「意識あり! 意識あり!」
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瀧本は、天井を見ていた。
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「ここ......どこだ......」
「病院です! 動かないでください!」
「病院......」
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瀧本は、自分の体を見た。
包帯だらけだった。
管がたくさん繋がっていた。
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「俺......生きてるのか」
「生きてます! 奇跡です!」
「奇跡か......」
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瀧本は、少し笑った。
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「当然だ......」
「え?」
「俺は......死ぬ気がない......」
「......」
「生きる気......満々だ......」
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そして、また意識を失った。
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だが、心拍は安定していた。
呼吸も戻っていた。
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医師が呟いた。
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「......何なんだ、この男は」
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手術室の外。
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医師が出てきた。
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スヨンが駆け寄った。
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「瀧本は......!?」
「生きてます」
「生きて......!?」
「はい。意識も一瞬戻りました」
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スヨンの膝が、崩れた。
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「良かった......」
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涙が、止まらなかった。
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「良かった......良かった......」
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数時間後。
集中治療室。
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瀧本は、ベッドの上にいた。
まだ意識は朦朧としていた。
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スヨンが、横で手を握っていた。
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瀧本の目が、ゆっくり開いた。
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「......スヨン......?」
「瀧本......!」
「お前......泣いてるのか......」
「泣いてない」
「泣いてる......」
「泣いてるわよ! 当たり前でしょ!」
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瀧本は、弱々しく笑った。
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「心配......かけたな......」
「心配なんてもんじゃない......!」
「悪い......」
「謝らないで......! 生きてるんだから......!」
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スヨンは、瀧本の手を強く握った。
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「もう......こんなこと......しないでよ......」
「無理だ......」
「無理じゃない......!」
「無理だ......俺は......こういう奴だから......」
「......」
「子供が......いたんだ......」
「知ってる......」
「守らなきゃ......と思った......」
「......」
「考える前に......体が動いた......」
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スヨンは、何も言えなかった。
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それが、瀧本だった。
それが、彼女が好きになった男だった。
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「スヨン......」
「何......」
「俺......死ぬ気ないから......」
「......」
「結婚も......してないし......」
「......え?」
「子供も......いないし......」
「......」
「そんな状態で......死んでたまるか......」
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スヨンは、瀧本を見た。
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瀧本は、真剣な目をしていた。
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「それだけで......生き返った......」
「それだけで......?」
「ああ......それだけで......」
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スヨンの頭の中で、何かが弾けた。
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『結婚もしてない』
『子供もいない』
『そんな状態で死んでたまるか』
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つまり。
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結婚して、子供を作れば。
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この男は、もっと死ななくなるのでは?
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スヨンの目が、変わった。
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「瀧本」
「何だ......」
「結婚しましょう」
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瀧本の目が、見開かれた。
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「......は?」
「結婚。私と」
「......」
「そうすれば、あなたはもっと死ななくなる」
「いや、待て......」
「子供も作りましょう」
「待て待て待て」
「三人くらい」
「話を聞け」
「いや、五人」
「聞けって!」
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瀧本は、必死に首を振った。
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「お前、何言ってんだ......」
「結婚よ。結婚」
「分かった、分かったから落ち着け」
「落ち着いてるわ」
「落ち着いてない! 目が据わってる!」
「据わってない」
「据わってる!」
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スヨンは、瀧本の顔を覗き込んだ。
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「あなたを現世に繋ぎ止める」
「怖いこと言うな」
「繋ぎ止めるの。絶対に」
「怖い......」
「逃がさない」
「怖い!!」
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同じ頃。
ウドンターニーの拠点。
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アルファチームが集まっていた。
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「瀧本、生き返ったらしいぞ」
ジョンソンがスマホを見ながら言った。
「マジか」
マルティネスが言った。
「マジだ。スヨンからメッセージが来た」
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アブドゥルが首を傾げた。
「なんで死なないんだ、あいつ......」
「18発だぞ? 18発」
「普通、死ぬだろ」
「普通は死ぬ」
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ヨナタンが言った。
「ああいう奴は、死なない」
「どういう意味だ」
「死ぬ気がない奴は、死なない。それだけだ」
「......」
「モサドにもいた。何度撃たれても死なない奴が」
「......」
「瀧本は、あのタイプだ」
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マルティネスが胸を張った。
「俺が神に祈ったからだ」
「お前、クリスチャンだったか?」
「クリスチャンだ。クロスのネックレス、見えないか」
「見える」
「だから、俺の祈りが通じたんだ」
「......まあ、いいか」
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ジョンソンは溜息をついた。
「あいつはアメリカンヒーローかよ......」
「アメリカンヒーロー?」
「ああ。子供を守って18発食らって、それでも死なない」
「......」
「映画だったら、スタンディングオベーションだ」
「映画じゃないけどな」
「映画じゃないから、もっとすごい」
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ピーターが言った。
「で、バンコクには連絡したのか」
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全員が、ジョンソンを見た。
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ジョンソンは、固まった。
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「......」
「ジョンソン?」
「......」
「連絡したのか?」
「......」
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ジョンソンは、ゆっくりと首を横に振った。
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「......忘れてた」
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全員が、絶句した。
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「忘れてた!?」
「色々あったんだ! 瀧本が撃たれて、ヘリを呼んで、犯人を始末して......!」
「それでも連絡しろよ!」
「すまん......」
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同時刻。
バンコク。
突撃隊の本部。
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騒然としていた。
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「瀧本が撃たれた!?」
「18発!?」
「心肺停止!?」
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ニコライが机を殴った。
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「なぜ連絡が遅い!」
「ジョンソンから報告がありました! 今さっき!」
「今さっき!? いつの話だ!」
「三時間前の事件です!」
「三時間も何をしていた!」
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サラが青ざめていた。
「瀧本が......」
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マリーも動揺していた。
「心肺停止って......」
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柏木は、無言で立っていた。
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「......」
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川島が無線を繋いだ。
「ジョンソン! ジョンソン、応答しろ!」
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『......こちらジョンソン』
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「瀧本は!? 瀧本はどうなった!?」
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『ああ、瀧本は......』
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全員が、息を呑んだ。
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『生きてる』
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「生きてる......!?」
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『ああ。さっき意識が戻った』
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「意識が戻った......?」
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『心肺停止から蘇生した。医者も驚いてた』
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全員が、呆然とした。
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「蘇生した......?」
「18発撃たれて......?」
「心肺停止から......?」
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ニコライが言った。
「......あいつ、化け物か」
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川島が言った。
「化け物ですね」
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サラが言った。
「良かった......本当に良かった......」
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マリーが言った。
「信じられない......」
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柏木は、小さく笑った。
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「瀧本らしいな」
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局長が入ってきた。
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「瀧本は生きてるのか」
「生きてます」
「そうか」
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局長は、椅子に座った。
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「......あいつは、ゴキブリより強いな」
「ゴキブリ......」
「踏んでも潰れない。撃っても死なない」
「......」
「いい意味で言っている」
「分かってます」
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局長は、窓の外を見た。
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「ジョンソンに伝えろ。瀧本が回復したら、勲章を授与すると」
「勲章ですか」
「ああ。子供を守って18発。これは英雄だ」
「了解」
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翌日。
ウドンターニー県立病院。
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瀧本は、ベッドの上で目を覚ました。
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体中が痛かった。
だが、生きていた。
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横を見ると、スヨンが椅子で寝ていた。
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瀧本の手を握ったまま。
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「......お前、ずっとここにいたのか」
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スヨンが目を覚ました。
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「起きた......?」
「起きた」
「良かった......」
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スヨンの目が、また潤んでいた。
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「お前、また泣いてるのか」
「泣いてない」
「泣いてる」
「泣いてるわよ!」
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瀧本は笑った。
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「心配かけたな」
「心配させすぎよ」
「悪い」
「悪いじゃ済まない」
「じゃあ、何で済む」
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スヨンは、真剣な顔をした。
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「結婚で」
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瀧本は咳き込んだ。
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「まだ言ってるのか......!」
「言ってるわよ。諦めてない」
「諦めろ」
「諦めない」
「俺はまだ、心の準備が......」
「準備なんていらない」
「いる!」
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ドアが開いた。
ジョンソンたちが入ってきた。
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「おお、起きてるな」
「起きてる」
「どうだ、調子は」
「最悪だ。体中痛い」
「当然だ。18発だぞ」
「18発か......自分でも信じられない」
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マルティネスが言った。
「で、何の話してたんだ」
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スヨンが即答した。
「結婚の話」
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全員が固まった。
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「結婚......?」
「ええ。瀧本と私の」
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瀧本が慌てて否定した。
「違う! こいつが一方的に言ってるだけだ!」
「一方的じゃない。あなたが『結婚してないから死ねない』って言ったのよ」
「言ったけど、そういう意味じゃない!」
「じゃあどういう意味よ」
「だから......!」
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ヨナタンが、珍しく声を出して笑った。
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「ははは......」
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マルティネスも笑った。
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「お前ら、もう結婚しろよ」
「だから違うって!」
「違わないわよ」
「違う!」
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ジョンソンが言った。
「まあ、生きてて良かった」
「ああ......」
「局長から伝言だ。勲章を授与するってさ」
「勲章......?」
「子供を守って18発。英雄だとさ」
「英雄か......」
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瀧本は天井を見た。
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「俺は、英雄じゃない」
「謙遜するな」
「謙遜じゃない。本当にそう思ってる」
「......」
「俺は、考える前に動いただけだ」
「......」
「あの子を守らなきゃ、と思った。それだけだ」
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スヨンが、瀧本の手を握った。
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「それが、英雄なのよ」
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瀧本はスヨンを見た。
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「......高飛車女」
「無謀男」
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二人は、少し笑った。




