表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第4章 鋼鉄
90/131

第5話 復活

ウドンターニー県立病院。


 緊急手術室。


---


 瀧本は、手術台の上にいた。


---


 医師たちが必死に処置をしていた。


 心臓マッサージ。


 輸血。


 除細動器。


---


 「心拍、まだ戻りません!」


 「もう一度! 充電!」


 「クリア!」


---


 電気ショック。


---


 瀧本の体が跳ねた。


---


 「......まだです!」


 「くそ......! もう一度!」


---


---


 スヨンは、手術室の外で待っていた。


---


 泣いていた。


 祈っていた。


---


 「お願い......お願い......」


---


---


---


 手術室の中。


---


 三度目の電気ショック。


---


 「クリア!」


---


---


 瀧本の体が跳ねた。


---


---


 そして。


---


---


 瀧本の目が、開いた。


---


---


---


 「死んでたまるかボケェ!!!!」


---


---


 瀧本が叫んだ。


---


 医師たちが、飛び退いた。


---


---


 「な......!?」


 「心拍、戻りました! 戻りました!」


 「血圧、上昇中!」


 「意識あり! 意識あり!」


---


---


 瀧本は、天井を見ていた。


---


 「ここ......どこだ......」


 「病院です! 動かないでください!」


 「病院......」


---


 瀧本は、自分の体を見た。


 包帯だらけだった。


 管がたくさん繋がっていた。


---


 「俺......生きてるのか」


 「生きてます! 奇跡です!」


 「奇跡か......」


---


---


 瀧本は、少し笑った。


---


 「当然だ......」


 「え?」


 「俺は......死ぬ気がない......」


 「......」


 「生きる気......満々だ......」


---


---


 そして、また意識を失った。


---


 だが、心拍は安定していた。


 呼吸も戻っていた。


---


---


 医師が呟いた。


---


 「......何なんだ、この男は」


---


---


---


 手術室の外。


---


 医師が出てきた。


---


 スヨンが駆け寄った。


---


 「瀧本は......!?」


 「生きてます」


 「生きて......!?」


 「はい。意識も一瞬戻りました」


---


 スヨンの膝が、崩れた。


---


 「良かった......」


---


 涙が、止まらなかった。


---


 「良かった......良かった......」


---


---


---


 数時間後。


 集中治療室。


---


 瀧本は、ベッドの上にいた。


 まだ意識は朦朧としていた。


---


 スヨンが、横で手を握っていた。


---


---


 瀧本の目が、ゆっくり開いた。


---


 「......スヨン......?」


 「瀧本......!」


 「お前......泣いてるのか......」


 「泣いてない」


 「泣いてる......」


 「泣いてるわよ! 当たり前でしょ!」


---


 瀧本は、弱々しく笑った。


---


 「心配......かけたな......」


 「心配なんてもんじゃない......!」


 「悪い......」


 「謝らないで......! 生きてるんだから......!」


---


---


 スヨンは、瀧本の手を強く握った。


---


 「もう......こんなこと......しないでよ......」


 「無理だ......」


 「無理じゃない......!」


 「無理だ......俺は......こういう奴だから......」


 「......」


 「子供が......いたんだ......」


 「知ってる......」


 「守らなきゃ......と思った......」


 「......」


 「考える前に......体が動いた......」


---


---


 スヨンは、何も言えなかった。


---


 それが、瀧本だった。


 それが、彼女が好きになった男だった。


---


---


 「スヨン......」


 「何......」


 「俺......死ぬ気ないから......」


 「......」


 「結婚も......してないし......」


 「......え?」


 「子供も......いないし......」


 「......」


 「そんな状態で......死んでたまるか......」


---


---


 スヨンは、瀧本を見た。


---


 瀧本は、真剣な目をしていた。


---


 「それだけで......生き返った......」


 「それだけで......?」


 「ああ......それだけで......」


---


---


 スヨンの頭の中で、何かが弾けた。


---


---


 『結婚もしてない』


 『子供もいない』


 『そんな状態で死んでたまるか』


---


---


 つまり。


---


---


 結婚して、子供を作れば。


---


---


 この男は、もっと死ななくなるのでは?


---


---


---


 スヨンの目が、変わった。


---


---


 「瀧本」


 「何だ......」


 「結婚しましょう」


---


---


 瀧本の目が、見開かれた。


---


 「......は?」


 「結婚。私と」


 「......」


 「そうすれば、あなたはもっと死ななくなる」


 「いや、待て......」


 「子供も作りましょう」


 「待て待て待て」


 「三人くらい」


 「話を聞け」


 「いや、五人」


 「聞けって!」


---


---


 瀧本は、必死に首を振った。


---


 「お前、何言ってんだ......」


 「結婚よ。結婚」


 「分かった、分かったから落ち着け」


 「落ち着いてるわ」


 「落ち着いてない! 目が据わってる!」


 「据わってない」


 「据わってる!」


---


---


 スヨンは、瀧本の顔を覗き込んだ。


---


 「あなたを現世に繋ぎ止める」


 「怖いこと言うな」


 「繋ぎ止めるの。絶対に」


 「怖い......」


 「逃がさない」


 「怖い!!」


---


---


---


 同じ頃。


 ウドンターニーの拠点。


---


 アルファチームが集まっていた。


---


 「瀧本、生き返ったらしいぞ」


 ジョンソンがスマホを見ながら言った。


 「マジか」


 マルティネスが言った。


 「マジだ。スヨンからメッセージが来た」


---


 アブドゥルが首を傾げた。


 「なんで死なないんだ、あいつ......」


 「18発だぞ? 18発」


 「普通、死ぬだろ」


 「普通は死ぬ」


---


 ヨナタンが言った。


 「ああいう奴は、死なない」


 「どういう意味だ」


 「死ぬ気がない奴は、死なない。それだけだ」


 「......」


 「モサドにもいた。何度撃たれても死なない奴が」


 「......」


 「瀧本は、あのタイプだ」


---


 マルティネスが胸を張った。


 「俺が神に祈ったからだ」


 「お前、クリスチャンだったか?」


 「クリスチャンだ。クロスのネックレス、見えないか」


 「見える」


 「だから、俺の祈りが通じたんだ」


 「......まあ、いいか」


---


 ジョンソンは溜息をついた。


 「あいつはアメリカンヒーローかよ......」


 「アメリカンヒーロー?」


 「ああ。子供を守って18発食らって、それでも死なない」


 「......」


 「映画だったら、スタンディングオベーションだ」


 「映画じゃないけどな」


 「映画じゃないから、もっとすごい」


---


---


 ピーターが言った。


 「で、バンコクには連絡したのか」


---


 全員が、ジョンソンを見た。


---


 ジョンソンは、固まった。


---


 「......」


 「ジョンソン?」


 「......」


 「連絡したのか?」


 「......」


---


 ジョンソンは、ゆっくりと首を横に振った。


---


 「......忘れてた」


---


---


 全員が、絶句した。


---


 「忘れてた!?」


 「色々あったんだ! 瀧本が撃たれて、ヘリを呼んで、犯人を始末して......!」


 「それでも連絡しろよ!」


 「すまん......」


---


---


---


 同時刻。


 バンコク。


 突撃隊の本部。


---


 騒然としていた。


---


---


 「瀧本が撃たれた!?」


 「18発!?」


 「心肺停止!?」


---


---


 ニコライが机を殴った。


---


 「なぜ連絡が遅い!」


 「ジョンソンから報告がありました! 今さっき!」


 「今さっき!? いつの話だ!」


 「三時間前の事件です!」


 「三時間も何をしていた!」


---


---


 サラが青ざめていた。


 「瀧本が......」


---


 マリーも動揺していた。


 「心肺停止って......」


---


---


 柏木は、無言で立っていた。


---


 「......」


---


---


 川島が無線を繋いだ。


 「ジョンソン! ジョンソン、応答しろ!」


---


 『......こちらジョンソン』


---


 「瀧本は!? 瀧本はどうなった!?」


---


 『ああ、瀧本は......』


---


 全員が、息を呑んだ。


---


 『生きてる』


---


---


 「生きてる......!?」


---


 『ああ。さっき意識が戻った』


---


 「意識が戻った......?」


---


 『心肺停止から蘇生した。医者も驚いてた』


---


---


 全員が、呆然とした。


---


 「蘇生した......?」


 「18発撃たれて......?」


 「心肺停止から......?」


---


---


 ニコライが言った。


 「......あいつ、化け物か」


---


 川島が言った。


 「化け物ですね」


---


 サラが言った。


 「良かった......本当に良かった......」


---


 マリーが言った。


 「信じられない......」


---


---


 柏木は、小さく笑った。


---


 「瀧本らしいな」


---


---


---


 局長が入ってきた。


---


 「瀧本は生きてるのか」


 「生きてます」


 「そうか」


---


 局長は、椅子に座った。


---


 「......あいつは、ゴキブリより強いな」


 「ゴキブリ......」


 「踏んでも潰れない。撃っても死なない」


 「......」


 「いい意味で言っている」


 「分かってます」


---


---


 局長は、窓の外を見た。


---


 「ジョンソンに伝えろ。瀧本が回復したら、勲章を授与すると」


 「勲章ですか」


 「ああ。子供を守って18発。これは英雄だ」


 「了解」


---


---


---


 翌日。


 ウドンターニー県立病院。


---


 瀧本は、ベッドの上で目を覚ました。


---


 体中が痛かった。


 だが、生きていた。


---


---


 横を見ると、スヨンが椅子で寝ていた。


---


 瀧本の手を握ったまま。


---


---


 「......お前、ずっとここにいたのか」


---


---


 スヨンが目を覚ました。


---


 「起きた......?」


 「起きた」


 「良かった......」


---


 スヨンの目が、また潤んでいた。


---


 「お前、また泣いてるのか」


 「泣いてない」


 「泣いてる」


 「泣いてるわよ!」


---


---


 瀧本は笑った。


---


 「心配かけたな」


 「心配させすぎよ」


 「悪い」


 「悪いじゃ済まない」


 「じゃあ、何で済む」


---


 スヨンは、真剣な顔をした。


---


 「結婚で」


---


 瀧本は咳き込んだ。


---


 「まだ言ってるのか......!」


 「言ってるわよ。諦めてない」


 「諦めろ」


 「諦めない」


 「俺はまだ、心の準備が......」


 「準備なんていらない」


 「いる!」


---


---


 ドアが開いた。


 ジョンソンたちが入ってきた。


---


 「おお、起きてるな」


 「起きてる」


 「どうだ、調子は」


 「最悪だ。体中痛い」


 「当然だ。18発だぞ」


 「18発か......自分でも信じられない」


---


---


 マルティネスが言った。


 「で、何の話してたんだ」


---


 スヨンが即答した。


 「結婚の話」


---


 全員が固まった。


---


 「結婚......?」


 「ええ。瀧本と私の」


---


 瀧本が慌てて否定した。


 「違う! こいつが一方的に言ってるだけだ!」


 「一方的じゃない。あなたが『結婚してないから死ねない』って言ったのよ」


 「言ったけど、そういう意味じゃない!」


 「じゃあどういう意味よ」


 「だから......!」


---


---


 ヨナタンが、珍しく声を出して笑った。


---


 「ははは......」


---


 マルティネスも笑った。


---


 「お前ら、もう結婚しろよ」


 「だから違うって!」


 「違わないわよ」


 「違う!」


---


---


 ジョンソンが言った。


 「まあ、生きてて良かった」


 「ああ......」


 「局長から伝言だ。勲章を授与するってさ」


 「勲章......?」


 「子供を守って18発。英雄だとさ」


 「英雄か......」


---


 瀧本は天井を見た。


---


 「俺は、英雄じゃない」


 「謙遜するな」


 「謙遜じゃない。本当にそう思ってる」


 「......」


 「俺は、考える前に動いただけだ」


 「......」


 「あの子を守らなきゃ、と思った。それだけだ」


---


---


 スヨンが、瀧本の手を握った。


---


 「それが、英雄なのよ」


---


 瀧本はスヨンを見た。


---


 「......高飛車女」


 「無謀男」


---


---


 二人は、少し笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ