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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第3章 聖域
85/131

最終話 分岐

四十四人。


 突撃隊は、大所帯になった。


---


 ハーパーとルノーが、組織改編案を提出した。


---


 「三チーム制に移行する」


 会議室。全員が集まっていた。


 「一つのチームでは、対応できる任務に限界がある。三チームに分かれれば、同時に三つの任務をこなせる」


---


 スクリーンにチーム編成が映し出された。


---


**アルファチーム(ジョンソン隊長)**


| 名前 | 役割 |

|------|------|

| マーカス・ジョンソン | 隊長・重火器 |

| ルイス・マルティネス | 重火器・突撃 |

| ヨナタン・レヴィ | 突撃・ブリーチング |

| 瀧本勝幸 | 偵察・バイク突入 |

| アブドゥル・ハッサン | 突撃 |

| ピーター・オコンクォ | 医療・戦闘 |

| キム・スヨン | 通信 |

| 陳志明 | 整備・支援 |


---


**ブラボーチーム(ニコライ隊長)**


| 名前 | 役割 |

|------|------|

| ニコライ・ヴォロノフ | 隊長・重火器 |

| サラ・コールマン | 副隊長・突撃 |

| アレクセイ・ヴォロノフ | 医療 |

| 川島誠 | 通信・ドローン |

| アンナ・コワルスカ | 医療・戦闘 |

| デイヴィッド・チェン | 通信・電子戦 |

| ジャン=バティスト・ンゴマ | 突撃 |

| トーマス・ブレナン | 突撃(元SAS) |

| ジェームズ・ウィルソン | 突撃・爆発物(元SAS) |

| パク・ジュンホ | 通信・暗号 |


---


**チャーリーチーム(柏木隊長)**


| 名前 | 役割 |

|------|------|

| 柏木勇気 | 総隊長・隊長 |

| マリー・デュポン | 狙撃 |

| ファリダー・チャンチャイ | 突撃 |

| ハンス・ミュラー | 参謀 |

| レイチェル・モーガン | 情報管制 |

| ライアン・マクドナルド | 突撃(元SASR) |

| ベン・ハリス | 突撃・偵察(元SASR) |

| マイケル・トレンブレイ | 突撃(元JTF2) |

| アダム・コワルスキ | 突撃・CQB(元GROM) |

| イ・ミンス | サイバー戦・電子戦 |


---


**支援班(ハーパー・ルノー指揮)**


| 名前 | 役割 |

|------|------|

| ウィリアム・ハーパー | 部隊運営 |

| ジャン=ピエール・ルノー | 部隊運営 |

| イーゴリ・ペトレンコ | パイロット |

| ダニエル・オブライエン | ヘリ整備 |

| エイブラハム・ワシントン | 運転・車両整備 |

| カルロス・メンドーサ | 通信・傍受 |

| ナターシャ・ソコロワ | 事務・経理 |

| ラッタナー・ピチット | 事務・会計 |

| プラウィット | 通訳 |

| ナリン・チャットウィット | 被害者支援・通訳 |

| ルーカス・ペレイラ | 突撃予備(元BOPE) |

| マルコス・シルバ | 突撃予備(元BOPE) |

| ラモン・デラクルス | 突撃予備(元フィリピン特殊部隊) |


---


 「質問は」


 ハーパーが聞いた。


---


 「なぜ俺がアルファなんだ」


 瀧本が手を挙げた。


 「柏木のチームじゃないのか」


---


 「お前のバイク戦術は、ジョンソンの重火器戦術と相性がいい」


 ルノーが答えた。


 「お前が敵の注意を引きつけ、ジョンソンとマルティネスが重火器で叩く。効果的な連携だ」


---


 「なるほど」


 瀧本は頷いた。


 「合理的だな」


---


 「他に質問は」


 「ない」


 「では、この編成で進める」


---


---


---


 一週間後。


---


 瀧本は、自分の家にいた。


 ナリンと一緒に暮らしている家。


---


 夕食を終えて、二人はソファに座っていた。


 テレビがついていたが、誰も見ていなかった。


---


 「勝幸」


 ナリンが口を開いた。


 「何だ」


 「話がある」


---


 瀧本は、ナリンの声のトーンで分かった。


 何か、重大なことだと。


---


 「聞く」


 「......」


---


 ナリンは目を伏せた。


 しばらく黙っていた。


 それから、顔を上げた。


---


 「別れてほしい」


---


---


 時間が止まった。


---


 「......別れる?」


 「うん」


 「なぜ」


 「......」


---


 ナリンの目に、涙が浮かんでいた。


---


 「私、ずっと嘘をついてた」


 「嘘?」


 「勝幸のこと、好きだった。本当に好きだった」


 「なら、なぜ」


 「でも......」


---


 ナリンは言葉を探していた。


---


 「私、勝幸に、柏木さんを重ねてた」


---


 瀧本の体が、固まった。


---


 「柏木を」


 「うん」


 「俺に」


 「うん」


---


 「......」


---


 「勝幸が私を助けてくれた時、柏木さんを思い出した」


 ナリンは続けた。


 「山本から守ってくれた時。私のために戦ってくれた時」


 「......」


 「柏木さんが、ボドイから私を守ってくれた夜と、同じだった」


 「......」


 「だから、勝幸を好きになったと思ってた」


---


 瀧本は黙っていた。


---


 「でも、タイに来て、柏木さんに会って」


 「......」


 「分かった。私が本当に好きなのは、柏木さんだって」


 「......」


 「勝幸じゃなかった」


---


 ナリンの涙が、頬を伝った。


---


 「ごめんなさい」


 「......」


 「私、最低だよね」


 「......」


 「勝幸は、私を守ってくれた。日本を捨ててまで、一緒に来てくれた」


 「......」


 「なのに、私は......」


---


 瀧本は立ち上がった。


 窓に向かって歩いた。


 背中を見せた。


---


 「......分かってた」


 「え?」


 「分かってたよ。何となく」


---


 瀧本は振り向かなかった。


---


 「お前が柏木を見る目。俺を見る目と、違ってた」


 「......」


 「俺を見る時は、感謝だった。柏木を見る時は、憧れだった」


 「......」


 「気づかないふりをしてた。俺は」


---


 ナリンは泣いていた。


---


 「ごめんなさい......」


 「謝るな」


 「でも......」


 「謝るな。お前は、正直に言った。それだけで十分だ」


---


 瀧本は振り向いた。


 笑っていた。


 無理やりの、笑顔だった。


---


 「俺は、お前を幸せにしたかった」


 「......」


 「でも、俺じゃ幸せにできないなら、仕方ない」


 「勝幸......」


 「お前が幸せになれるなら、それでいい」


---


 ナリンは首を振った。


 「そんな、優しいこと言わないで」


 「優しくない。本音だ」


 「嘘。本当は、怒ってるでしょ」


 「......」


---


 瀧本は黙った。


 それから、小さく笑った。


---


 「怒ってるかもな。少しだけ」


 「......」


 「でも、お前を恨む気にはなれない」


 「......」


 「お前は、俺の人生を変えてくれた」


 「......」


 「山本を追いかけてた時、俺は一人だった。お前がいたから、俺は正気でいられた」


 「......」


 「感謝してる。本当に」


---


 ナリンは泣き崩れた。


---


 「ごめんなさい......ごめんなさい......」


---


 瀧本は、ナリンの頭を撫でた。


 最後に。


---


 「幸せになれよ。ナリン」


---


---


---


 その夜。


 瀧本は、荷物をまとめた。


---


 「俺が出ていく」


 「え? この家は......」


 「お前が使え。俺は、拠点の宿舎に戻る」


 「でも......」


 「いいから」


---


 瀧本はバッグを持った。


 ドアに向かった。


---


 「勝幸」


 「何だ」


 「......ありがとう」


 「......」


 「私を、守ってくれて」


---


 瀧本は振り向かなかった。


 「ああ」


 それだけ言って、出ていった。


---


---


---


 深夜。


 拠点の食堂。


---


 瀧本は一人で酒を飲んでいた。


 テーブルの上に、ウイスキーのボトル。


 半分、空になっていた。


---


 「瀧本」


 声が聞こえた。


---


 ニコライだった。


 後ろに、マルティネス、カルロス、ヨナタン、アレクセイがいた。


---


 「こんな時間に、一人で飲んでるのか」


 「ああ」


 「何かあったのか」


 「......」


---


 瀧本は黙っていた。


 それから、ウイスキーを一気に飲んだ。


---


 「ナリンと、別れた」


---


 五人が、固まった。


---


 「別れた?」


 「ああ」


 「なぜ」


 「......振られた」


---


 ニコライは椅子を引いた。


 瀧本の隣に座った。


 他の四人も、座った。


---


 「話せ」


 「話すことは、ない」


 「話せ。溜め込むな」


---


 瀧本は、笑った。


 空っぽの笑顔だった。


---


 「ナリンは、俺じゃなかった」


 「何?」


 「ナリンが好きだったのは、俺じゃなかった」


 「......」


 「別の男だ」


---


 マルティネスが聞いた。


 「誰だ。その男は」


 「......」


 「言えないか」


 「言えない」


---


 ヨナタンが、無表情のまま言った。


 「柏木か」


---


 瀧本の手が、止まった。


---


 「......なぜ分かる」


 「見れば分かる。ナリンは、柏木を見る目が違う」


 「......」


 「お前も、気づいてたんだろう」


 「......ああ」


---


 アレクセイがウイスキーを注いだ。


 瀧本の前に置いた。


---


 「飲め」


 「飲んでる」


 「もっと飲め」


---


 カルロスが肩を叩いた。


 「辛いな」


 「辛いか? 分からない。何も感じない」


 「何も?」


 「ああ。山本を撃った時と同じだ。何も感じない」


---


 ニコライが言った。


 「それが、一番辛い時だ」


 「そうか」


 「ああ。何も感じない時が、一番深い傷だ」


 「......」


 「俺も、そうだった」


---


 瀧本はニコライを見た。


 「お前も?」


 「ああ。ロシアを出る前に、妻と別れた」


 「妻がいたのか」


 「いた。子供もいた」


 「......」


 「俺が軍を辞めて、国外に出ると言った時、妻は出ていった」


 「......」


 「子供を連れて」


---


 マルティネスが言った。


 「俺も、離婚した」


 「お前も?」


 「ああ。CIDの仕事が忙しすぎて、家庭を顧みなかった」


 「......」


 「気づいた時には、妻も子供もいなかった」


---


 ヨナタンが言った。


 「俺は、結婚したことがない」


 「なぜ」


 「モサドにいたからだ。家族を持つと、弱みになる」


 「......」


 「だが、好きな女はいた。今は、別の男と結婚している」


---


 カルロスが言った。


 「俺も、彼女に振られた」


 「お前も?」


 「ああ。メキシコを出る時に。『危険な仕事をしている男とは、一緒にいられない』と」


---


 アレクセイが言った。


 「俺は、妻を亡くした」


 「亡くした?」


 「病気だ。アレクセイが三歳の時に」


 「......」


 「再婚は、しなかった。できなかった」


---


 瀧本は、五人を見た。


 「お前ら、みんな......」


 「みんな、傷ついてる」


 ニコライが言った。


 「だから、ここにいる」


---


 瀧本は、グラスを見つめた。


 「俺も、か」


 「お前も、だ」


 「仲間か」


 「仲間だ」


---


 マルティネスがグラスを掲げた。


 「傷ついた男たちに」


 「傷ついた男たちに」


---


 六人が、グラスを合わせた。


---


---


 その時。


 食堂のドアが開いた。


---


 柏木が入ってきた。


---


 「お、まだ飲んでたのか」


 柏木は六人を見た。


 「珍しいな。こんな時間に」


---


 瀧本の体が、固まった。


 他の五人も、固まった。


---


 「どうした。何かあったのか」


 柏木は近づいてきた。


 「瀧本、お前、顔色が悪いぞ」


---


 瀧本は、笑った。


 無理やりの、笑顔。


---


 「何でもない。飲みすぎただけだ」


 「飲みすぎか。ほどほどにしろよ」


 「ああ」


---


 柏木は冷蔵庫から水を取った。


 「俺は眠れなくてな。水を取りに来ただけだ」


 「そうか」


 「お前ら、あまり遅くまで飲むなよ。明日も訓練だ」


 「ああ」


---


 柏木は食堂を出ていった。


---


 ドアが閉まった。


---


 沈黙。


---


 「......」


 「......」


 「......」


---


 マルティネスが呟いた。


 「あいつ、何も気づいてなかったな」


 「気づいてない」


 ニコライが言った。


 「柏木は、そういう奴だ」


---


 瀧本は、ウイスキーを飲み干した。


---


 「ああ」


 「ああ、そうだな」


 「あいつは、何も悪くない」


---


 瀧本は立ち上がった。


---


 「俺は、寝る」


 「大丈夫か」


 「大丈夫だ。死ぬ気はない。生きる気満々だ」


---


 瀧本は食堂を出ていった。


---


 五人が残された。


---


 「......あいつ、大丈夫かな」


 カルロスが言った。


 「大丈夫だ」


 ニコライが答えた。


 「あいつは、強い」


---


 「でも、柏木は......」


 「柏木には、言わない方がいい」


 ヨナタンが言った。


 「言っても、柏木は困るだけだ」


 「そうだな」


---


 五人は、黙って酒を飲んだ。


---


---


---


 翌朝。


---


 瀧本は、いつも通りに訓練場に現れた。


 いつも通りに、バイクで建物に突っ込んだ。


 いつも通りに、皮肉を言った。


---


 「瀧本、ドアを壊すな」


 「すまん。癖だ」


 「癖で壊すな」


 「癖だから仕方ない」


---


 誰も、昨夜のことには触れなかった。


---


 ナリンは、支援班の仕事を続けていた。


 瀧本とは、目を合わせなかった。


---


 柏木は、何も気づいていなかった。


---


---


 夜。


 瀧本は、一人で屋上にいた。


---


 M93Rを手に持っていた。


 局長にもらった銃。


---


 メンソールの煙草に火をつけた。


 冷たい煙が、肺を満たした。


---


 「マクレーンより強くなれ、か」


 呟いた。


 「強くなったよ。局長」


---


 夜空を見上げた。


 星が瞬いていた。


---


 「俺は、死なない」


 「生きる。生きて、戦う」


 「それが、俺の仕事だ」


---


 メンソールの煙を吐き出した。


 M93Rをホルスターに収めた。


---


 「さて、明日からまた仕事だ」


---


 瀧本は、屋上を後にした。

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