最終話 分岐
四十四人。
突撃隊は、大所帯になった。
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ハーパーとルノーが、組織改編案を提出した。
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「三チーム制に移行する」
会議室。全員が集まっていた。
「一つのチームでは、対応できる任務に限界がある。三チームに分かれれば、同時に三つの任務をこなせる」
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スクリーンにチーム編成が映し出された。
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**アルファチーム(ジョンソン隊長)**
| 名前 | 役割 |
|------|------|
| マーカス・ジョンソン | 隊長・重火器 |
| ルイス・マルティネス | 重火器・突撃 |
| ヨナタン・レヴィ | 突撃・ブリーチング |
| 瀧本勝幸 | 偵察・バイク突入 |
| アブドゥル・ハッサン | 突撃 |
| ピーター・オコンクォ | 医療・戦闘 |
| キム・スヨン | 通信 |
| 陳志明 | 整備・支援 |
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**ブラボーチーム(ニコライ隊長)**
| 名前 | 役割 |
|------|------|
| ニコライ・ヴォロノフ | 隊長・重火器 |
| サラ・コールマン | 副隊長・突撃 |
| アレクセイ・ヴォロノフ | 医療 |
| 川島誠 | 通信・ドローン |
| アンナ・コワルスカ | 医療・戦闘 |
| デイヴィッド・チェン | 通信・電子戦 |
| ジャン=バティスト・ンゴマ | 突撃 |
| トーマス・ブレナン | 突撃(元SAS) |
| ジェームズ・ウィルソン | 突撃・爆発物(元SAS) |
| パク・ジュンホ | 通信・暗号 |
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**チャーリーチーム(柏木隊長)**
| 名前 | 役割 |
|------|------|
| 柏木勇気 | 総隊長・隊長 |
| マリー・デュポン | 狙撃 |
| ファリダー・チャンチャイ | 突撃 |
| ハンス・ミュラー | 参謀 |
| レイチェル・モーガン | 情報管制 |
| ライアン・マクドナルド | 突撃(元SASR) |
| ベン・ハリス | 突撃・偵察(元SASR) |
| マイケル・トレンブレイ | 突撃(元JTF2) |
| アダム・コワルスキ | 突撃・CQB(元GROM) |
| イ・ミンス | サイバー戦・電子戦 |
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**支援班(ハーパー・ルノー指揮)**
| 名前 | 役割 |
|------|------|
| ウィリアム・ハーパー | 部隊運営 |
| ジャン=ピエール・ルノー | 部隊運営 |
| イーゴリ・ペトレンコ | パイロット |
| ダニエル・オブライエン | ヘリ整備 |
| エイブラハム・ワシントン | 運転・車両整備 |
| カルロス・メンドーサ | 通信・傍受 |
| ナターシャ・ソコロワ | 事務・経理 |
| ラッタナー・ピチット | 事務・会計 |
| プラウィット | 通訳 |
| ナリン・チャットウィット | 被害者支援・通訳 |
| ルーカス・ペレイラ | 突撃予備(元BOPE) |
| マルコス・シルバ | 突撃予備(元BOPE) |
| ラモン・デラクルス | 突撃予備(元フィリピン特殊部隊) |
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「質問は」
ハーパーが聞いた。
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「なぜ俺がアルファなんだ」
瀧本が手を挙げた。
「柏木のチームじゃないのか」
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「お前のバイク戦術は、ジョンソンの重火器戦術と相性がいい」
ルノーが答えた。
「お前が敵の注意を引きつけ、ジョンソンとマルティネスが重火器で叩く。効果的な連携だ」
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「なるほど」
瀧本は頷いた。
「合理的だな」
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「他に質問は」
「ない」
「では、この編成で進める」
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一週間後。
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瀧本は、自分の家にいた。
ナリンと一緒に暮らしている家。
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夕食を終えて、二人はソファに座っていた。
テレビがついていたが、誰も見ていなかった。
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「勝幸」
ナリンが口を開いた。
「何だ」
「話がある」
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瀧本は、ナリンの声のトーンで分かった。
何か、重大なことだと。
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「聞く」
「......」
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ナリンは目を伏せた。
しばらく黙っていた。
それから、顔を上げた。
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「別れてほしい」
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時間が止まった。
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「......別れる?」
「うん」
「なぜ」
「......」
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ナリンの目に、涙が浮かんでいた。
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「私、ずっと嘘をついてた」
「嘘?」
「勝幸のこと、好きだった。本当に好きだった」
「なら、なぜ」
「でも......」
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ナリンは言葉を探していた。
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「私、勝幸に、柏木さんを重ねてた」
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瀧本の体が、固まった。
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「柏木を」
「うん」
「俺に」
「うん」
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「......」
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「勝幸が私を助けてくれた時、柏木さんを思い出した」
ナリンは続けた。
「山本から守ってくれた時。私のために戦ってくれた時」
「......」
「柏木さんが、ボドイから私を守ってくれた夜と、同じだった」
「......」
「だから、勝幸を好きになったと思ってた」
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瀧本は黙っていた。
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「でも、タイに来て、柏木さんに会って」
「......」
「分かった。私が本当に好きなのは、柏木さんだって」
「......」
「勝幸じゃなかった」
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ナリンの涙が、頬を伝った。
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「ごめんなさい」
「......」
「私、最低だよね」
「......」
「勝幸は、私を守ってくれた。日本を捨ててまで、一緒に来てくれた」
「......」
「なのに、私は......」
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瀧本は立ち上がった。
窓に向かって歩いた。
背中を見せた。
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「......分かってた」
「え?」
「分かってたよ。何となく」
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瀧本は振り向かなかった。
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「お前が柏木を見る目。俺を見る目と、違ってた」
「......」
「俺を見る時は、感謝だった。柏木を見る時は、憧れだった」
「......」
「気づかないふりをしてた。俺は」
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ナリンは泣いていた。
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「ごめんなさい......」
「謝るな」
「でも......」
「謝るな。お前は、正直に言った。それだけで十分だ」
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瀧本は振り向いた。
笑っていた。
無理やりの、笑顔だった。
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「俺は、お前を幸せにしたかった」
「......」
「でも、俺じゃ幸せにできないなら、仕方ない」
「勝幸......」
「お前が幸せになれるなら、それでいい」
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ナリンは首を振った。
「そんな、優しいこと言わないで」
「優しくない。本音だ」
「嘘。本当は、怒ってるでしょ」
「......」
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瀧本は黙った。
それから、小さく笑った。
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「怒ってるかもな。少しだけ」
「......」
「でも、お前を恨む気にはなれない」
「......」
「お前は、俺の人生を変えてくれた」
「......」
「山本を追いかけてた時、俺は一人だった。お前がいたから、俺は正気でいられた」
「......」
「感謝してる。本当に」
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ナリンは泣き崩れた。
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「ごめんなさい......ごめんなさい......」
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瀧本は、ナリンの頭を撫でた。
最後に。
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「幸せになれよ。ナリン」
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その夜。
瀧本は、荷物をまとめた。
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「俺が出ていく」
「え? この家は......」
「お前が使え。俺は、拠点の宿舎に戻る」
「でも......」
「いいから」
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瀧本はバッグを持った。
ドアに向かった。
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「勝幸」
「何だ」
「......ありがとう」
「......」
「私を、守ってくれて」
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瀧本は振り向かなかった。
「ああ」
それだけ言って、出ていった。
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深夜。
拠点の食堂。
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瀧本は一人で酒を飲んでいた。
テーブルの上に、ウイスキーのボトル。
半分、空になっていた。
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「瀧本」
声が聞こえた。
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ニコライだった。
後ろに、マルティネス、カルロス、ヨナタン、アレクセイがいた。
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「こんな時間に、一人で飲んでるのか」
「ああ」
「何かあったのか」
「......」
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瀧本は黙っていた。
それから、ウイスキーを一気に飲んだ。
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「ナリンと、別れた」
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五人が、固まった。
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「別れた?」
「ああ」
「なぜ」
「......振られた」
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ニコライは椅子を引いた。
瀧本の隣に座った。
他の四人も、座った。
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「話せ」
「話すことは、ない」
「話せ。溜め込むな」
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瀧本は、笑った。
空っぽの笑顔だった。
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「ナリンは、俺じゃなかった」
「何?」
「ナリンが好きだったのは、俺じゃなかった」
「......」
「別の男だ」
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マルティネスが聞いた。
「誰だ。その男は」
「......」
「言えないか」
「言えない」
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ヨナタンが、無表情のまま言った。
「柏木か」
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瀧本の手が、止まった。
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「......なぜ分かる」
「見れば分かる。ナリンは、柏木を見る目が違う」
「......」
「お前も、気づいてたんだろう」
「......ああ」
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アレクセイがウイスキーを注いだ。
瀧本の前に置いた。
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「飲め」
「飲んでる」
「もっと飲め」
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カルロスが肩を叩いた。
「辛いな」
「辛いか? 分からない。何も感じない」
「何も?」
「ああ。山本を撃った時と同じだ。何も感じない」
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ニコライが言った。
「それが、一番辛い時だ」
「そうか」
「ああ。何も感じない時が、一番深い傷だ」
「......」
「俺も、そうだった」
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瀧本はニコライを見た。
「お前も?」
「ああ。ロシアを出る前に、妻と別れた」
「妻がいたのか」
「いた。子供もいた」
「......」
「俺が軍を辞めて、国外に出ると言った時、妻は出ていった」
「......」
「子供を連れて」
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マルティネスが言った。
「俺も、離婚した」
「お前も?」
「ああ。CIDの仕事が忙しすぎて、家庭を顧みなかった」
「......」
「気づいた時には、妻も子供もいなかった」
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ヨナタンが言った。
「俺は、結婚したことがない」
「なぜ」
「モサドにいたからだ。家族を持つと、弱みになる」
「......」
「だが、好きな女はいた。今は、別の男と結婚している」
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カルロスが言った。
「俺も、彼女に振られた」
「お前も?」
「ああ。メキシコを出る時に。『危険な仕事をしている男とは、一緒にいられない』と」
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アレクセイが言った。
「俺は、妻を亡くした」
「亡くした?」
「病気だ。アレクセイが三歳の時に」
「......」
「再婚は、しなかった。できなかった」
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瀧本は、五人を見た。
「お前ら、みんな......」
「みんな、傷ついてる」
ニコライが言った。
「だから、ここにいる」
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瀧本は、グラスを見つめた。
「俺も、か」
「お前も、だ」
「仲間か」
「仲間だ」
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マルティネスがグラスを掲げた。
「傷ついた男たちに」
「傷ついた男たちに」
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六人が、グラスを合わせた。
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その時。
食堂のドアが開いた。
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柏木が入ってきた。
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「お、まだ飲んでたのか」
柏木は六人を見た。
「珍しいな。こんな時間に」
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瀧本の体が、固まった。
他の五人も、固まった。
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「どうした。何かあったのか」
柏木は近づいてきた。
「瀧本、お前、顔色が悪いぞ」
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瀧本は、笑った。
無理やりの、笑顔。
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「何でもない。飲みすぎただけだ」
「飲みすぎか。ほどほどにしろよ」
「ああ」
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柏木は冷蔵庫から水を取った。
「俺は眠れなくてな。水を取りに来ただけだ」
「そうか」
「お前ら、あまり遅くまで飲むなよ。明日も訓練だ」
「ああ」
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柏木は食堂を出ていった。
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ドアが閉まった。
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沈黙。
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「......」
「......」
「......」
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マルティネスが呟いた。
「あいつ、何も気づいてなかったな」
「気づいてない」
ニコライが言った。
「柏木は、そういう奴だ」
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瀧本は、ウイスキーを飲み干した。
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「ああ」
「ああ、そうだな」
「あいつは、何も悪くない」
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瀧本は立ち上がった。
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「俺は、寝る」
「大丈夫か」
「大丈夫だ。死ぬ気はない。生きる気満々だ」
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瀧本は食堂を出ていった。
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五人が残された。
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「......あいつ、大丈夫かな」
カルロスが言った。
「大丈夫だ」
ニコライが答えた。
「あいつは、強い」
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「でも、柏木は......」
「柏木には、言わない方がいい」
ヨナタンが言った。
「言っても、柏木は困るだけだ」
「そうだな」
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五人は、黙って酒を飲んだ。
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翌朝。
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瀧本は、いつも通りに訓練場に現れた。
いつも通りに、バイクで建物に突っ込んだ。
いつも通りに、皮肉を言った。
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「瀧本、ドアを壊すな」
「すまん。癖だ」
「癖で壊すな」
「癖だから仕方ない」
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誰も、昨夜のことには触れなかった。
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ナリンは、支援班の仕事を続けていた。
瀧本とは、目を合わせなかった。
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柏木は、何も気づいていなかった。
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夜。
瀧本は、一人で屋上にいた。
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M93Rを手に持っていた。
局長にもらった銃。
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メンソールの煙草に火をつけた。
冷たい煙が、肺を満たした。
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「マクレーンより強くなれ、か」
呟いた。
「強くなったよ。局長」
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夜空を見上げた。
星が瞬いていた。
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「俺は、死なない」
「生きる。生きて、戦う」
「それが、俺の仕事だ」
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メンソールの煙を吐き出した。
M93Rをホルスターに収めた。
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「さて、明日からまた仕事だ」
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瀧本は、屋上を後にした。




