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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第3章 聖域
83/131

幕間 銃と仲間

瀧本が突撃隊に加わって、三日目。


 意外な友人ができた。


---


---


 食堂。夜。


 瀧本は、三人の男と酒を飲んでいた。


---


 ヨナタン・レヴィ。元モサド。無表情。


 ルイス・マルティネス。元CID。テキーラ狂い。


 カルロス・メンドーサ。元メキシコ軍通信士。陽気。


---


 「で、お前の愛銃は何だ」


 マルティネスが聞いた。


 「持ってない」


 「持ってない?」


 「日本の警察官だぞ。拳銃は官給品だ。好きなのを選べるわけじゃない」


 「官給品って何だ」


 「ニューナンブM60。リボルバー。五発。威力は......まあ、あれだ」


 「あれって何だ」


 「察しろ」


---


 ヨナタンが無表情で言った。


 「ニューナンブか。聞いたことがある」


 「お、モサドでも知られてるのか。光栄だな」


 「弱いことで有名だ」


 「......褒めてねえじゃねえか」


---


 カルロスが笑った。


 「で、本当に好きな銃は何なんだ」


 「本当に好きな銃か」


 瀧本は少し考えた。


 「ベレッタM92FS」


 「おお」


 「映画で見てから、ずっと憧れてた。ジョン・マクレーン。ダイ・ハード」


 「ダイ・ハードか。いい映画だ」


 「いい映画だ。俺のバイブルだ」


---


 マルティネスがテキーラを注いだ。


 「じゃあ、柏木と被るな」


 「被る?」


 「柏木の愛銃がM92FSだ」


 「マジか」


 「マジだ。あいつ、ライフル持たないからな。ベレッタ一丁で戦場に出る」


 「狂ってるな」


 「狂ってる。だから強い」


---


 瀧本は酒を飲んだ。


 「なら俺は別のにするか」


 「別の?」


 「同じ銃ってのは、なんかな。先輩の真似みたいで」


 「先輩って......お前、柏木と同い年だろ」


 「タイに来たのは柏木が先だ。先輩だ」


 「律儀だな」


 「律儀さだけが取り柄だ。あと、生きる気力」


---


---


 翌日。


 局長室。


---


 瀧本は、呼び出されていた。


---


 「瀧本勝幸」


 局長が言った。


 「はい」


 「元白バイ隊員。十五年。山本健二を射殺。日本を出国」


 「経歴を暗記してるんですか」


 「覚えるのが仕事だ」


---


 局長は椅子から立ち上がった。


 「銃は持っているか」


 「持ってません。日本から逃げる時、官給品は置いてきました」


 「当然だな。持ち出したら、窃盗罪も追加される」


 「そうです。俺は殺人犯ですが、泥棒じゃありません」


 「いい心がけだ」


---


 局長は、デスクの引き出しを開けた。


 黒いケースを取り出した。


 テーブルの上に置いた。


---


 「開けろ」


 「......」


---


 瀧本はケースを開けた。


---


 目が見開かれた。


---


 「これは......」


 「ベレッタM93R」


 局長の声が、少し弾んでいた。


 「三点バースト。フォールディングストック。フォアグリップ。フルオートも可能だ」


---


 瀧本は銃を手に取った。


 重さを確かめた。


 グリップを握った。


---


 「......最高だ」


 「だろう」


 局長はニヤリと笑った。


 「M92FSは柏木が使っている。お前がマクレーンになりたいなら、こっちを使え」


 「こっち?」


 「M93Rは、M92FSの強化版だ。バースト射撃ができる。威力も精度も上だ」


 「つまり」


 「マクレーンより強くなれる」


---


 瀧本は銃を見つめた。


 「局長」


 「何だ」


 「あんた、ガンマニアだな」


 「元大佐だ。銃を愛さない軍人がいるか」


 「いない」


 「だろう」


---


 局長は続けた。


 「聞いたぞ。お前、ヨナタンやマルティネスと仲がいいらしいな」


 「ガンマニア同士、話が合うんです」


 「カルロスもか」


 「カルロスは通信士ですけど、銃の知識がすごい。どこで覚えたんですかね」


 「メキシコだ。銃がないと生き残れない国だ」


 「なるほど」


---


 「お前も、仲間に入れ」


 局長は言った。


 「仲間?」


 「ガンマニア組だ。俺も含めて」


 「局長も?」


 「当然だ。俺が一番詳しい」


 「マジですか」


 「マジだ。今度、射撃場で勝負しよう」


 「望むところです」


---


 瀧本はM93Rをホルスターに収めた。


 「ありがとうございます。大事にします」


 「大事にするな。使い倒せ。銃は道具だ。使ってこそ価値がある」


 「了解です」


---


---


 その夜。


 食堂。


---


 瀧本がM93Rを見せびらかしていた。


---


 「見ろ、これ」


 「おお」


 マルティネスが目を輝かせた。


 「M93Rじゃないか。どこで手に入れた」


 「局長にもらった」


 「局長に?」


 「ああ。『マクレーンより強くなれ』って」


 「局長、ノリノリだな」


 「ノリノリだった。目が輝いてた」


---


 ヨナタンが銃を手に取った。


 「いい状態だ。整備が行き届いている」


 「局長の私物だったらしい」


 「私物を渡すとは。気に入られたな」


 「そうかな」


 「そうだ。局長は、気に入らない人間には銃を渡さない」


---


 カルロスが言った。


 「これで、ガンマニア組にベレッタ使いが二人になったな」


 「二人?」


 「柏木がM92FS。お前がM93R」


 「被ってないか?」


 「被ってない。全然違う銃だ」


 「そうか」


 「M92FSは単発。M93Rはバースト。コンセプトが違う」


 「なるほど」


---


 マルティネスがテキーラを注いだ。


 「よし、今夜は瀧本の歓迎会だ」


 「また飲むのか」


 「飲む。テキーラは魂の燃料だ」


 「お前、毎晩それ言ってるな」


 「毎晩言ってる。真実だからな」


---


---


 翌日。


 会議室。


---


 ハーパーとルノーが報告していた。


---


 「現在の人員、四十一人」


 「目標は四十四人」


 「あと三人だ」


---


 柏木が聞いた。


 「候補者は」


 「いくつかある。だが、決め手に欠ける」


---


 ハーパーは資料を広げた。


 「第一候補。元イギリス陸軍の整備士。技術は確かだが、タイに来る意思が弱い」


 「弱い?」


 「家族がイギリスにいる。離れたくないらしい」


 「無理強いはできないな」


---


 「第二候補。元オーストラリア軍のパイロット。ヘリの経験が豊富」


 「いいな」


 「だが、問題がある」


 「問題?」


 「アルコール依存症だ。回復中だが、完全ではない」


 「......リスクがあるな」


 「ある。パイロットがアルコール依存では、任せられない」


---


 「第三候補。元インド軍の通信士官。優秀だが、英語以外の言語が話せない」


 「タイ語は」


 「全く」


 「学ぶ意思は」


 「ある。だが、時間がかかる」


 「時間か......」


---


 ルノーが言った。


 「正直に言えば、残り三人を見つけるのは難しい」


 「難しい?」


 「ああ。優秀な人材は、すでに声をかけた。残っているのは、何らかの問題を抱えている人間ばかりだ」


 「問題を抱えている」


 「そうだ。だからこそ、ここに来る可能性がある。だが、リスクもある」


---


 柏木は考えた。


 「......俺たちも、問題を抱えていた」


 「何?」


 「俺も、ニコライも、ジョンソンも、サラも。全員、何らかの問題を抱えてここに来た」


 「......」


 「問題があるから、ダメとは限らない。問題があっても、ここで立ち直れる人間もいる」


 「......」


 「リスクを取るか、取らないか。それは、俺たちが決めることだ」


---


 ハーパーは頷いた。


 「分かった。候補者を呼ぶ。面接する」


 「ああ」


 「最終判断は、柏木に任せる」


 「任せてくれ」


---


---


 三週間後。


---


 三人の候補者がタイに来た。


---


 一人目。


 デイヴィッド・チェン。元シンガポール軍。三十五歳。通信と電子戦の専門家。


 「なぜシンガポール軍を辞めた」


 「上官と対立しました。不正を告発しようとして、逆に追い出されました」


 「不正?」


 「装備の横流しです。上官が、武器を闇市場に売っていました」


 「告発したのか」


 「しようとしました。だが、証拠を握りつぶされました」


 「......」


 「悔しかった。だから、辞めました。正義が通らない組織には、いられなかった」


---


 柏木は頷いた。


 「お前は、本物だ」


 「......」


 「ようこそ、王室犯罪対策局へ」


---


---


 二人目。


 アンナ・コワルスカ。元ポーランド軍。三十二歳。衛生兵。


 「なぜ軍を辞めた」


 「燃え尽きました」


 「燃え尽きた?」


 「アフガンで、何人も死ぬのを見ました。助けられなかった人が、何十人もいます」


 「......」


 「ある日、もう無理だと思いました。手が動かなくなりました」


 「PTSD か」


 「はい。治療を受けました。今は、だいぶ良くなっています」


 「だいぶ?」


 「完全ではありません。でも、また人を助けたい。そう思えるようになりました」


---


 柏木はアレクセイを見た。


 「どう思う」


 「俺も、似たような経験がある」


 アレクセイは言った。


 「燃え尽きた人間は、また立ち上がれる。俺がそうだった」


 「彼女を受け入れるか」


 「受け入れる。俺が面倒を見る」


---


 柏木はアンナを見た。


 「ようこそ、王室犯罪対策局へ」


---


---


 三人目。


 陳志明チェン・ジーミン。元台湾軍。四十歳。整備士。


 「なぜ台湾軍を辞めた」


 「定年です」


 「定年?」


 「台湾軍は、四十歳で退役します。まだ働けるのに、追い出されました」


 「四十歳で定年か」


 「そうです。馬鹿げています。俺はまだ動ける。まだ戦える」


 「だから、ここに来た」


 「そうです。俺を使ってくれる場所を探していました」


---


 瀧本が口を挟んだ。


 「なあ、あんた、バイクの整備はできるか」


 「できる。何でもできる」


 「何でも?」


 「車、ヘリ、バイク、銃。整備できないものはない」


 「マジか」


 「マジだ。四十年、機械と生きてきた」


---


 柏木は笑った。


 「ようこそ、王室犯罪対策局へ」


---


---


 こうして、三人が加わった。


 デイヴィッド・チェン。通信・電子戦。


 アンナ・コワルスカ。衛生兵。


 陳志明。整備士。


---


 合計、四十四人。


 目標達成。


---


---


 夜。


 拠点の屋上。


---


 柏木は煙草を吸っていた。


 瀧本が隣に来た。


---


 「四十四人か」


 「四十四人だ」


 「すげえな。半年前は二十人だったのに」


 「倍以上になった」


 「倍以上だ」


---


 瀧本はM93Rを取り出した。


 「これ、いい銃だな」


 「局長にもらったやつか」


 「ああ。『マクレーンより強くなれ』って言われた」


 「局長らしいな」


 「あんた、局長と仲いいのか」


 「仲がいいかは分からない。だが、信頼している」


 「信頼か」


 「ああ。局長は、俺たちを信じてくれている。だから、俺も信じる」


---


 瀧本は銃をしまった。


 「なあ、柏木」


 「何だ」


 「俺、ここに来てよかったと思ってる」


 「そうか」


 「ああ。日本じゃ、俺は殺人犯だ。でも、ここじゃ、俺は仲間だ」


 「仲間だ」


 「それが、嬉しい」


---


 柏木は煙草を吸った。


 「俺も、ここに来てよかったと思ってる」


 「お前もか」


 「ああ。日本じゃ、俺は奴隷商人の手先だった。ここじゃ、俺は正義の味方だ」


 「正義の味方か」


 「恥ずかしいか」


 「恥ずかしくない。いい言葉だ」


---


 二人は、夜空を見上げた。


 バンコクの夜景が広がっていた。


---


 「さて」


 柏木が言った。


 「明日から、また忙しくなる」


 「忙しい?」


 「四十四人になった。訓練を始める。新しい仲間を、俺たちのレベルまで引き上げる」


 「大変だな」


 「大変だ。だが、やるしかない」


 「了解」


---


 瀧本は笑った。


 「俺、死ぬ気はないからな。生き残るために、訓練するさ」


 「死ぬ気はないか」


 「ない。ナリンと幸せになる。それが俺の計画だ」


 「いい計画だ」


 「だろ」


---


 夜風が吹いた。


 煙草の煙が、流れていった。


---


 突撃隊は、四十四人になった。


 目標達成。


 だが、戦いは終わらない。


 むしろ、これからだ。

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