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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第3章 聖域
78/130

幕間 新居(続)

支援組の設計提出。


 局長は、もう期待していなかった。


---


 最初の提出者。イーゴリ。


---


 「これが俺の設計だ」


 図面を見た。


---


 一階:リビング、キッチン、フライトシミュレーター室。


 「フライトシミュレーター?」


 「そうだ。本物のヘリのコックピットを再現する」


 「家の中に?」


 「家の中に。いつでも訓練できる」


 二階:寝室、バスルーム、航空資料室。


 「航空資料室?」


 「世界中のヘリの資料を集めている。マニュアル、設計図、整備記録......」


 「趣味か」


 「趣味であり、仕事だ」


 屋上:ヘリポート。


 「......屋上にヘリポート?」


 「通勤用だ」


 「通勤? 基地は目の前だぞ」


 「ヘリで通勤したい」


 「百メートルの距離を?」


 「百メートルでもヘリで行きたい」


 「......家族は」


 「ヘリが家族だ」


 「機械だろう」


 「機械も家族だ」


 局長は頭を抱えた。


---


 次の提出者。ダニエル。


---


 「これが俺の設計だ」


 図面を見た。


---


 一階:リビング兼ガレージ。


 「リビング兼ガレージ?」


 「そうだ。車を見ながらテレビを見る」


 「......車は外に置けばいいだろう」


 「駄目だ。雨が降ったら錆びる」


 「バンコクはそんなに雨降らないぞ」


 「降る時は降る」


 二階:寝室、バスルーム、工具室。


 「工具室」


 「整備用の工具を全部置く。五百点以上」


 「五百点」


 「足りないくらいだ」


 敷地内:整備ピット付き駐車場。


 「整備ピット?」


 「車の下に潜って整備するための穴だ」


 「知っている。なぜ自宅に必要なんだ」


 「趣味だ」


 「また趣味か」


 「趣味だ」


 「......家族は」


 「車が家族だ」


 「イーゴリと同じこと言うな」


---


 次の提出者。エイブラハム。


---


 「これが俺の設計だ」


 図面を見た。


---


 一階:ガレージ。


 「一階が全部ガレージ?」


 「そうだ。車を六台置ける」


 「六台も持っているのか」


 「これから買う」


 「買うのか」


 「買う。クラシックカーを集めたい」


 二階:寝室、バスルーム、小さなキッチン。


 「リビングは」


 「要らない」


 「要らない?」


 「ガレージがリビングだ。車を眺めながらビールを飲む。最高だろう」


 「......家族は」


 「面倒だ」


 「また面倒か」


 「面倒だ。車の方がいい。文句を言わない」


 「車は会話もしないぞ」


 「だからいいんだ」


---


 次の提出者。ナターシャ。


---


 「これが私の設計です」


 図面を見た。


 局長は少し期待した。女性なら、まともな設計かもしれない。


---


 一階:リビング、キッチン、ダイニング。経理事務室。


 「経理事務室?」


 「自宅でも仕事ができるように」


 「......仕事熱心だな」


 「領収書は待ってくれませんから」


 二階:寝室二つ、バスルーム、ワインセラー。


 「ワインセラー」


 「ロシアワインを集めています」


 「ロシアにワインがあるのか」


 「あります。クラスノダール地方の」


 「知らなかった」


 「美味しいですよ」


 「......寝室が二つあるな」


 「はい」


 「家族用か」


 ナターシャの顔が少し赤くなった。


 「......もし、将来......アレクセイが......」


 「アレクセイの家の隣でいいか」


 「......お願いします」


 局長は少し笑った。


 「分かった」


---


 次の提出者。カルロス。


---


 「これが俺の設計だ」


 図面を見た。


---


 一階:リビング、キッチン、通信傍受室。


 「通信傍受室?」


 「趣味で無線を聞いている」


 「趣味で傍受?」


 「そうだ。世界中の無線を聞く。飛行機、船、軍、警察......」


 「それは合法なのか」


 「聞くだけなら合法だ」


 「......」


 二階:寝室、バスルーム、アンテナ設置スペース。


 「アンテナ設置スペース?」


 「大型アンテナを十本立てる」


 「十本」


 「足りないくらいだ」


 屋上:さらにアンテナ。


 「屋上にもアンテナ」


 「パラボラアンテナを三基」


 「家がアンテナだらけになるぞ」


 「そうだ」


 「近所迷惑では」


 「近所はみんな仲間だ。文句は言わないだろう」


 「......家族は」


 「電波が家族だ」


 「電波は家族じゃない」


 「俺にとっては家族だ」


---


---


 局長は、全ての設計を見終わった。


 溜息をついた。


---


 「まとめると」


 局長は指を折った。


 「ニコライ:ウォッカと武器」


 「ジョンソン:映画とゴルフ」


 「マルティネス:宗教と酒」


 「ヨナタン:セキュリティ」


 「川島:日本とサーバー」


 「アレクセイ:医療」


 「マリー:狙撃」


 「イーゴリ:ヘリ」


 「ダニエル:整備」


 「エイブラハム:車」


 「ナターシャ:経理とワイン」


 「カルロス:電波」


 「柏木:煙草」


---


 「まともなのは」


 局長は続けた。


 「サラ、ファリダー、プラウィットとラッタナー、そしてナターシャだけだ」


 「四人」


 「十六人中、四人」


 「二十五パーセント」


 「低すぎる」


---


 局長は窓の外を見た。


 「......俺の『家族を持て』作戦は、失敗だな」


 呟いた。


 「みんな、趣味に走りやがって」


---


 だが、少しだけ笑っていた。


 「まあ、いい。生きているうちは、好きに生きろ」


 「死んだら、何もできないからな」


---


---


 三ヶ月後。


 住居エリアが完成した。


---


 上空から見ると、異様な光景だった。


 アンテナが林立している家。


 屋上にヘリポートがある家。


 ガレージが家より大きい家。


 窓が一つもない要塞のような家。


---


 「統一感がないな」


 柏木が言った。


 「ないな」


 ニコライが答えた。


 「だが、それでいい」


 「いいのか」


 「いい。俺たちは、そういう奴らだ」


---


 夕日が沈んでいく。


 異様な住居エリアが、金色に染まっていた。


---


 「悪くない」


 柏木は呟いた。


 「悪くない」

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