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The Man Who Would Not Die: 死んでたまるか  作者: Operator3118
第3章 聖域
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第14話 訓練

四十四人になった突撃隊。


 訓練が始まった。


---


---


 訓練場。朝七時。


---


 新メンバーが整列していた。


 デイヴィッド、アンナ、陳志明。


 それに、この半年で加わった全員。


---


 柏木が前に立った。


 「今日から、本格的な訓練を始める」


 全員が注目した。


 「目標は一つ。全員が、俺たちと同じレベルで戦えるようになること」


 「同じレベル?」


 「そうだ。聖域を潰した時のレベルだ」


---


 ニコライが続けた。


 「訓練は三段階に分かれる」


 「第一段階。基礎体力と射撃」


 「第二段階。近接戦闘と連携」


 「第三段階。実戦形式の模擬戦闘」


 「期間は三ヶ月。地獄を見せてやる」


---


 新メンバーの何人かが、顔を引きつらせた。


---


---


 第一段階。


 基礎体力。


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 朝五時起床。


 十キロのランニング。


 腕立て百回。腹筋百回。スクワット百回。


 懸垂五十回。


---


 「死ぬ......」


 デイヴィッドが呻いた。


 「死なない。まだ序の口だ」


 ジョンソンが笑った。


 「序の口?」


 「ああ。本番は、これからだ」


---


---


 射撃訓練。


---


 射撃場。


 的が並んでいる。


---


 「基本姿勢を確認する」


 マルティネスが指導していた。


 「足は肩幅。膝は軽く曲げる。両手でグリップを握る」


 「了解」


 「撃て」


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 銃声が響いた。


 的に穴が開く。


---


 「デイヴィッド、右にずれている」


 「すみません」


 「謝るな。修正しろ」


 「了解」


---


 「アンナ、いい腕だ」


 「ありがとうございます」


 「衛生兵でも撃てるんだな」


 「ポーランド軍では、全員が射撃訓練を受けます」


 「いい軍隊だ」


---


 「陳志明、お前は......」


 マルティネスは首を傾げた。


 「整備士なのに、なんでそんなに上手いんだ」


 「台湾軍では、整備士も戦闘訓練を受けます。いつ敵が来るか分からないので」


 「なるほど。台湾か」


 「はい。中国がいつ攻めてくるか分からない。だから、全員が兵士です」


---


---


 そして、問題児がいた。


---


 瀧本勝幸。


---


 「瀧本、お前の射撃は......」


 マルティネスは頭を抱えた。


 「悪くはない。だが、動きながら撃つな」


 「動きながらの方が当たるんだ」


 「当たるわけないだろ」


 「当たる。見てろ」


---


 瀧本は走り出した。


 走りながら、M93Rを構えた。


 三点バースト。


 的の中心に、三発が集中した。


---


 「......当たってるな」


 「だろ。俺は止まると死ぬタイプだ」


 「どういうタイプだ」


 「マグロと同じだ。泳ぎ続けないと死ぬ」


 「お前はマグロか」


 「マグロだ。生きる気満々のマグロだ」


---


---


 第二段階。


 近接戦闘。


---


 柏木が指導した。


---


 「CQCの基本を教える」


 「CQC?」


 「Close Quarters Combat。近接格闘だ」


 「はい」


---


 「敵との距離が近い時、銃は使えないことがある。その時、素手で戦う技術が必要だ」


 「了解」


 「俺がやってみせる。ニコライ、来い」


---


 ニコライが前に出た。


 190センチの巨体。


---


 「かかってこい」


 柏木が言った。


---


 ニコライが突進した。


 柏木は横に動いた。


 ニコライの腕を掴んだ。


 捻った。


 投げた。


---


 ニコライが床に叩きつけられた。


---


 「......相変わらず速いな」


 「お前が遅い」


 「遅くない。お前が速すぎる」


---


 新メンバーが唖然としていた。


 「あの巨体を、片手で......」


 「技術だ。力じゃない」


---


---


 連携訓練。


---


 二人一組で、部屋の制圧を練習する。


---


 「ドアを開けたら、最初の一人が左、二人目が右を制圧」


 「了解」


 「息を合わせろ。一秒の遅れが、死につながる」


 「了解」


---


 ドアが開いた。


 二人が突入した。


 「クリア!」


 「クリア!」


---


 「遅い」


 柏木が言った。


 「もう一度」


---


 何度も繰り返した。


 何十回も。


 何百回も。


---


---


 そして、第三段階。


 実戦形式の模擬戦闘。


---


---


 廃墟を使った訓練施設。


 三階建ての建物。


 中には、ダミーの敵と人質が配置されている。


---


 「これから、模擬戦闘を行う」


 ハーパーが説明した。


 「目標は、建物内の人質を救出すること。敵は十人。人質は五人」


 「時間制限は」


 「五分」


 「五分で十人を制圧して、五人を救出?」


 「そうだ。できるか」


---


 チームが編成された。


 柏木、ニコライ、サラ、マリー、瀧本、デイヴィッド、アンナ、陳志明。


 八人。


---


 「作戦は」


 デイヴィッドが聞いた。


 「正面から突入。一階から三階まで、順番に制圧」


 「了解」


---


 「マリーは外から狙撃支援」


 「了解」


 「アンナは後方で待機。負傷者が出たら、すぐに対応」


 「了解」


---


 「瀧本」


 柏木が言った。


 「何だ」


 「お前は......」


---


 柏木は少し考えた。


 「好きにしろ」


 「好きに?」


 「ああ。お前のやり方でやれ」


 「......マジか」


 「マジだ」


---


 瀧本はニヤリと笑った。


 「了解。じゃあ、ちょっと準備してくる」


---


---


 五分後。


 模擬戦闘開始。


---


 「突入!」


---


 柏木たちが正面から突入した。


 一階。


 敵が二人。


 ニコライが一人を殴り倒した。


 サラがもう一人を撃った(ペイント弾)。


---


 「一階クリア!」


---


 二階へ。


 階段を上がる。


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 敵が三人。


 柏木が最初の一人の銃を奪った。


 二人目を蹴り倒した。


 三人目をサラが撃った。


---


 「二階クリア!」


---


 三階へ。


---


 その時だった。


---


---


 轟音が響いた。


---


 エンジン音。


 建物の中から。


---


 「何だ?」


 デイヴィッドが叫んだ。


---


---


 三階の窓から、バイクが突っ込んできた。


---


 瀧本だった。


---


 外の階段を駆け上がり、窓を突き破って、三階に侵入した。


 バイクに乗ったまま。


---


 敵が四人いた。


 全員、呆然としていた。


---


 瀧本はバイクを走らせた。


 廊下を。


 建物の中を。


---


 最初の敵を、バイクで轢いた。


 「うわあああ!」


 二人目に、走りながらM93Rを撃った。


 ペイント弾が命中。


 三人目は、バイクを急旋回させて、後輪で蹴り飛ばした。


 四人目は、バイクから飛び降りながら、空中で撃った。


---


 四人全員、三秒で制圧。


---


 「三階クリア!」


 瀧本が叫んだ。


---


---


 柏木たちが三階に到着した時、全ての敵は倒れていた。


---


 「......何をやったんだ」


 ニコライが呆れた顔で言った。


 「バイクで突入した」


 「見れば分かる。なぜ建物の中でバイクなんだ」


 「速いから」


 「速いからって......」


 「建物の中でも、バイクが一番速い。だから使う」


---


 サラが頭を抱えた。


 「あなた、正気?」


 「正気だ。生きる気満々だ」


 「生きる気満々で、窓から突っ込むの?」


 「死ぬ気がないから突っ込める。死ぬ気がある奴は、怖くてできない」


 「......論理が破綻してるわ」


 「破綻してない。完璧だ」


---


 デイヴィッドが瀧本を見た。


 「あなた、本当に元警察官ですか」


 「元白バイ隊員だ」


 「白バイって、こういうことするんですか」


 「しない。だから辞めた」


 「辞めた理由、それですか」


 「それもある」


---


---


 模擬戦闘終了。


 結果。


---


 敵十人、全員制圧。


 人質五人、全員救出。


 所要時間、二分四十三秒。


---


 「二分四十三秒」


 ハーパーが時計を見た。


 「目標の半分だ」


 「瀧本のおかげだな」


 「おかげというか......」


 「異常というか」


 「異常だ」


---


---


 訓練後。


 柏木が瀧本に話しかけた。


---


 「お前、いつもあれをやるのか」


 「あれって」


 「バイクで突入」


 「やる。効果的だから」


 「効果的か」


 「効果的だ。敵は、建物の中にバイクが来ると思っていない。だから、対応が遅れる」


 「......」


 「奇襲の基本だ。敵の予想外のことをする」


 「予想外すぎる」


 「予想外だから効く」


---


 柏木は煙草を取り出した。


 「お前、死ぬ気がないと言ったな」


 「ない。生きる気満々だ」


 「だが、やっていることは、かなり危険だ」


 「危険じゃない」


 「危険だろ。窓から突っ込むのが危険じゃないわけがない」


 「危険じゃない。俺が運転してるから」


 「......」


 「俺のバイク技術を信じろ。十五年乗ってる。目を瞑っても乗れる」


 「目を瞑るな」


 「瞑らない。死ぬ気はないからな」


---


 柏木は煙草に火をつけた。


 「......お前、面白い奴だな」


 「褒めてるのか」


 「褒めてる」


 「なら、ありがたく受け取っておく」


---


---


 夜。


 ガンマニア組の集まり。


---


 瀧本が今日の訓練の話をしていた。


---


 「で、窓から突っ込んだら、敵が四人いてさ」


 「四人?」


 「ああ。全員、口を開けて固まってた」


 「そりゃそうだろ。建物の中にバイクが来るとは思わない」


 「だろ? だから、三秒で全員倒せた」


---


 ヨナタンが無表情で言った。


 「お前、モサドでも通用するな」


 「マジか」


 「マジだ。モサドには、お前みたいな狂った奴が何人かいた」


 「狂ってない。合理的だ」


 「合理的に狂っている」


 「それは褒め言葉か」


 「褒め言葉だ」


---


 マルティネスがテキーラを注いだ。


 「神よ、この狂った男に祝福を」


 「神に祈ってるのか呪ってるのか分からないな」


 「祝福だ。狂気は、神からの贈り物だ」


 「なるほど。じゃあ、俺は神に愛されてるな」


 「愛されすぎだ」


---


 カルロスが言った。


 「なあ、次の実戦でもバイクで突入するのか」


 「する」


 「マジで」


 「マジだ。バイクは俺のメインウェポンだ」


 「メインウェポンがバイク......」


 「銃は補助だ。本命はバイク」


 「......」


---


 局長が入ってきた。


 「何の話だ」


 「瀧本のバイク突入の話です」


 「ああ、聞いた。建物の中でバイクを走らせたらしいな」


 「はい。窓から突っ込みました」


---


 局長は椅子に座った。


 「面白い。今度、俺にも見せろ」


 「見せますよ。局長も乗りますか」


 「乗らない。見るだけでいい」


 「残念ですね」


 「残念じゃない。俺は死にたくない」


 「俺も死ぬ気はないですよ」


 「お前の『死ぬ気がない』は、普通の人間の『死ぬ気がない』と違う」


 「違いますか」


 「違う。お前の『死ぬ気がない』は、『死なない自信がある』だ」


 「......」


 「それは、狂気だ」


 「褒め言葉ですね」


 「褒め言葉だ」


---


---


 訓練は続く。


 三ヶ月間。


 新メンバーは、着実に成長していく。


---


 そして、瀧本は相変わらずバイクで突入していた。


---


 建物の中でも。


 階段でも。


 屋上でも。


---


 「お前、どこでもバイクで行くな」


 「どこでも行く。バイクがあれば、どこでも行ける」


 「限度があるだろ」


 「ない。俺に限度はない」


 「......」


---


 突撃隊に、新しい戦術が加わった。


 「バイク突入」。


 瀧本専用の、狂気の戦術。


---


 だが、効果は絶大だった。

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